ファストドクターの主要事業3つのうち、自治体の負担軽減・医療体制の強化をになっているのが自治体支援事業です。そして、2021年4月より自治体支援事業を主に担当するため発足されたのが『地域医療推進部』です。今後は新型コロナウイルス感染症の対応だけではなく、平時地域医療や社会インフラとしての組み込みを本格的に進めていく予定です。今回は、地域医療推進部の部長である服部直幸さんに、これまでの経歴や部署立ち上げの経緯、組織運営、今後の展望についてお話を伺いました。
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服部 直幸プロフィール
東京理科大学基礎工学部 生物工学科卒業後、製薬メーカーのノバルティスファーマに新卒入社。MR として主 に循環器系の医薬品の拡販に従事。その後インテリジェンス(現:パーソルプロセス&テクノロジー)に転職し、クライアントへのコンサル、新規事業企画〜立ち上げ、DX 戦略の立案、プロジェクトマネジメント業務などを担当。自治体案件も経験。
2021年11月ファストドクター入社。
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これまでの経歴と部署設立までの背景について
ーーまずは2022年12月に地域医療推進部の部長に就任した服部さんのこれまでのご経歴についてお伺いしたいです。
私のキャリアは、外資系製薬メーカーのMR(Medical Representative)からです。当時はバリバリの営業職という形で、医療機関を訪問して医師や薬剤師などに対する仕事をずっとしてきました。しばらく経った頃に、現場の一営業だけではなく、クライアントが抱える課題の設定と、その解決手段としての新規事業計画や営業企画を進めるような上流の仕事がしてみたいと思い、転職をしました。実際に大手企業をクライアントに持つと、コンサルのようなことも含めて新規事業に携わり、そして軌道に乗せたらまた次の企業へと繰り返すことを長年やってきました。
この仕事では、自分が携わった事業が世の中に出ていくことに喜びを感じ、やりがいのあるものでした。その一方で、事業はコンサルとして入っている企業のサービスであって、自分たちの会社のサービスではありません。そのことが頭のなかで引っかかり、今までやってきた新規事業を自分の会社を大きくするために力を注ぎたいと思うようになったのです。そこで、ベンチャー企業に絞って転職先を探していたところ、ファストドクターに出会い、入社したという経緯があります。
ーー服部さんはファストドクターの自治体支援事業に関する第一人者であるとお伺いしましたが、どのようなきっかけからこの事業を始められたのでしょうか。
私が入社して、最初に役員から言われたのは「ファストドクターとして、新しい柱になるような事業を一緒に作ってほしい」ということでした。当時、会社の各種資料をいろいろ見ていて、そのなかで目に止まったのが、医療から断絶された自宅療養者に対して、自治体と連携してサービス提供を行った件に関する書類でした。社会的に非常に有意義だと可能性を感じましたが、一方で事業として持続性を確立・維持する設計も必要であると感じました。医療サービスは「採算が取れないのでやめます」と途中放棄できるものではないからです。そこで、まずいくつかの自治体に対してヒアリングを行い、事業性を確信した上で改めて「コロナ対応における連携事業」を提案したところ、予想以上の反応でした。それで、それから本格的に事業として進めていったというところです。
地域医療推進部でのやりがい、組織運営においての心意気
ーー地域医療推進部の立ち上げを担った服部さんからみて、地域医療推進部のやりがいとはどんなところにあると思いますか。
私たち地域医療推進部はビジネスとしての側面を持ち、持続可能な状態で地域の医療のニーズに合ったサービスを展開しうる能力を持っています。例えば、医療過疎や都市部に医療が偏在している問題、医師不足の問題などはニュースやドラマでもよく出てきます。しかし、それらの問題を解決する方法はいろいろ考えられていても、実際には解決できていないことも多いです。結局は熱意のある医師がひとり、田舎に残って医療を提供するような状況が起きています。そうした問題に対する支援をファストドクターは地道に続けてきていて、文字通り日本の医療、地域の医療を変えられるところが最大の魅力ではないかと思っています。
ーー実際に自治体や地域の関係者と関わるなかで、印象に残っていることなどはありますか。
コロナ禍のことでいえば、最初は新型コロナウイルス感染症に関する業務や保健所の支援も含めて事業を始めたので、保健所の職員から「これまで月に何日も休みがないような状態だったところから帰れるようになって、人間らしい生活が送れるようになりました」という感謝のメールをたくさんいただきました。本当に忙しいなかで日々奮闘している現場の方々からの言葉で、今でもメールをいただくことがあるのですが、事業をやってよかったなと心から思いました。
ーー地域医療推進部はファストドクターのビジョンに直結する部署ではないかと思っていますが、服部さんは部長として事業や組織運営においての心意気みたいなものはありますか。
事業が成功すれば、日本の医療が変わったというところを、目に見える形で享受できると思っています。しかし、それはすべて地域医療推進部が出した結果ではありません。あくまでうちの部署の役割は、ファストドクターのサービスを全国に展開していくことです。展開していくためには、他の部署の働きや頑張りがあってこそです。多くの部署を巻き込んで1つのサービスを提供している部門として、他の部署の人たちが自分たちの存在意義や価値をしっかり実感してもらえるような責任を負っているという認識でいます。他の部署の人たちにも喜んでもらえるように事業を展開していきたいです。
2023年以降の地域医療推進部の体制、求める人材とは
ーー素敵なエピソードをありがとうございました。そうした自治体との取り組みを主に進めている地域医療推進部ですが、何か課題はありますか。
前の記事にもあったように、地域医療推進部はコロナ禍で生まれた事業です。現在では新型コロナウイルス感染症以外の連携、つまり平時の連携も視野に入れて活動をしておりますが、いくつかの課題があります。
まずは、平時地域医療の展開促進における予算の問題です。新型コロナウィルスへの対応については国として大きな予算がついているため、地方自治体もファストドクターと契約を結びやすいという状況にあります。しかし、平時地域医療の展開においてはそう上手くいかないのです。というのも、行政では年間の予算組が4月より以前に決定しているために動かしづらく、翌年の予算組に入れるように長期的な関わりが必要であり、粘り強さが求められています。
次に、自治体支援事業の運用を地域に応じて1つひとつ変えなければならない問題です。自治体ごとにルールが違う場合や医師会・薬剤師会などの団体のパワーバランスが異なる場合があるため、ファストドクターとして自治体支援事業の運用方法が一定ではない実情があります。そうなると、地域に応じたファストドクターの運用方法を1つひとつ設定していくため、ミスなく進めていくことがとても難しくなっています。
ーーその課題に関して、どんな解決策を打ち出していますか。
地域医療推進部はこれまで3名体制で運営してきました。しかし、長期的な関係性を専門的に行う必要性や地域のニーズに沿った運用を多岐に渡り展開する多様性を発揮するためにも、大規模な採用を進めているところです。また、これまで営業機能の人間が企画から契約書の作成、各部署への運用の落とし込みまで全てを1人でやっているような状況でしたが、もう少し機能を細分化して3つのチームに組織を再編成しようと考えています。
それは企画室、営業室、そして自治体との各業務や実際の運用を管理してサービスを開始するカスタマーサポートのチームです。
ーー地域医療推進部の役割を担う人材に求められること、こういう人に来てほしいという希望はありますか。
地域医療推進部の主な仕事は、まだ日本にないサービスを自治体に向けて提案をして、一緒に作り上げていくことになります。そのため、非常に夢があり楽しい反面、事業を進めていくためにはハードルが高いところもあります。既得権益や前例踏襲のような行政ならではの考え方も根強くあり、そうした方々を前に事業に関して納得していただくのは、とても難しいことです。それでもあえてチャレンジしていく、こうしたチャレンジ精神のある方に、ぜひ来ていただきたいですね。
地域医療推進部としての今後の展望
ーー地域医療推進部として、今後新しいメンバーを迎えて取り組みたいこと、チャレンジしていきたいことなどはありますか。
ファストドクターはコロナ禍という特殊な環境においての事業や業務が多くありました。しかし、これからはファストドクターのミッションやビジョンでもある「生活者の不安と、医療者の負担をなくす」「不要な救急車利用を3割減らす」にダイレクトにアプローチする、かつ都市部だけではなく、地方部でも展開していけるようにと考えています。正直なところ、事業を展開するためにはまだまだ法律の壁がたくさんあります。まずはやれる範囲で事業を展開する、それをしっかりとしたデータに基づいて、関係省庁に提案をしていく、そしてまた動ける範囲が広がったらさらに新たなサービスに向けて…とサイクルを作っていきたいです。まずは2年目(取材当時2023年1月)というところで、現行の法律のなかでできる最大限のことを見定めて、提案していくことから進めていきたいです。
また、部署としても全体的にチャレンジできる環境は大切にしていきたいと思っています。チャレンジした結果、失敗することがあってもそれを大きく恐れているようなことはありません。それよりも、持続可能ではないプロジェクトや目先のことしか考えていないようなプロジェクトを作るのは、チャレンジではないという風に私は思っています。この事業が成功したら、サービスを受ける人も、事業を進める自分たちも幸せであってほしい。そういう事業にこれからもチャレンジしていきたいと思っています。
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