スピードは命。スタートアップやベンチャーの世界において、スピードは最も重要視される指標のひとつと言っても過言ではありません。
昨日の常識は今日の非常識。時々刻々と移ろう世の中のトレンドに対応するため、思いついた施策や事業は、とりあえず試してみて、そしてとにかく素早くPDCAを回す。
身軽で小回りが効くことは、スタートアップやベンチャーならではの強みでもありますが、ときにはふと我に返り「これってどうしてやってるんだっけ?」「そもそもの目的ってなんんだっけ?」と、一瞬だけ立ち止まる瞬間も必要かもしれません。
今回インタビューさせてもらった、有限会社エキストラ 経営管理室室長の松尾 友理香(まつお ゆりか)は、自身と代表の角本 拓也(かくもと たくや)との性格を「正反対」と分析します。
そして、組織のトップとして事業を牽引していく立場にある角本を、ときには「それの目的はなに?」と投げかけたり、ときには尻拭いをしたりすることが、自身の役割のひとつだと語る松尾。
角本との出会いや、入社の経緯、これからの展望などについて聞きました。
出会いは高校一年
――入社のきっかけは、今年の2月ごろに角本さんが松尾さんを誘ったことだと伺っているのですが、もともとおふたりはどういうお知り合いだったんですか?
松尾:最初の関係は、私が高校1年生からやっていた、バイト先での同僚としてですね。いまから15年くらい前です。
――あっ、そんなに古くからのお知り合いだったんですね!
松尾:私のほうが先に働いていて、大学生だった角本が後からバイトとして入社してきたんです。だから、歳自体は角本のほうが上なんですね。けどそのお店では私のほうが先に働き始めてて先輩だったから、私は角本に対してタメ口を使うっていう、少しだけ変な関係をここまで引きずってます(笑)。
――でもそうやって、学生自体に同僚だった人と大人になっても関係が続いてるって、すごいですね。
松尾:実際にバイト先で一緒に働いてたのは、2年くらいだったんです。けどそのお店は学生のバイトがたくさんいてお互いに仲が良かったので、辞めたあとも定期的にみんなで遊びに行ったりご飯にいったりしてて。そうやって角本とも、ここまでゆるく長くっていう感じで続いてましたね。
求められているのは、良い意味での「ブレーキ役」
――松尾さんは今年の4月から経営管理室室長という形で、エキストラに入社されてますが、具体的にはどういったお仕事をされてるんですか?
松尾:基本的には、バックオフィス全般ですね。オフィスの掃除から備品発注、日程調整まで、いろいろとやってます。
――会社全体や他のメンバーのみなさんを支える業務を、幅広くやられてるんですね。ただ、学生時代の同僚と10年以上の時間を経てもう1回一緒に働くって、想像してみるとなんだかすごい不思議な感じがします。
松尾:角本にとっては、私が高校生のときのイメージが、たぶん1番強く残ってると思うんですね。それで私、高校生のときはいまより数倍くらい尖ってました(笑)。
――どんな感じで尖ってたんですか?(笑)
松尾:私のほうが歳下なのに、いろんな物事に対して遠慮せずどんどん意見してました。「これで本当に合ってるの?」とか「これよりこうしたほうが、もっといいんじゃない?」とか、どんどんツッコんでたんです。角本はもしかしたら、それを「律している」という感じに捉えたのかもしれません。逆に角本はわりと物事を「それ良いね!」といってどんどん進めるタイプで、私とは正反対なんです。
――角本さんは松尾さんに対して、良い意味でのブレーキ役を期待しているということなんですね。実際、松尾さんが入社してからの業務のなかで、そういった場面はありますか?
松尾:「これはなんのためにあるの?」みたいなことは、角本に聞くことはあります。あとは例えば、角本から「これについてリサーチしておいてほしい」って頼まれたときに、「これの具体的にはどういったことが知りたいの?」とか「どういった背景でこれを知りたいの?」とかって確認することもありますね。
唐突だけどナイスタイミングだった、角本からの連絡
――今年の4月からエキストラで働かれる前は、松尾さんはどういったお仕事をされてたんですか?
松尾:エキストラの前は営業事務をやってたんですけど、その前はずっとアパレル業界で働いていました。それで去年、私は結婚したんですけど、もともと結婚したり子供を生んだりしても、働き続けたいなと思ってたんです。ただ、アパレルだとそれが難しいかなと思って、営業事務の仕事に方向転換しました。
――アパレルだと難しいと思ったのはどうしてですか?
松尾:アパレルのキャリアのステップっていうのは、ふつう店舗のスタッフ、店長、その次がエリアマネジャーっていう順番なんです。ただ、1回エリアマネジャーになった人が、結婚や出産を機に、またもう1回店長になることもありました。そうなると、その店舗のスタッフやエリアマネジャーが気を使うこともあるじゃないですか。だから、実際に当時は店長をやらせてもらってもいたんですが、この業界は私がずっと働き続けられる場所ではないなと思って、とりあえず事務職をするために転職することにしました。
――転職先は、どんな会社だったんですか?
松尾:大企業の子会社でした。それで、けっこう古い会社だったので、取引先との連絡をFAXでやってるんですよ。相手企業によってフォーマットが違うので、同じものを指してても企業によって項目名が違ったり、そのFAXの内容をもう1回私たちがパソコンに打ち込まないといけなかったりして、すごい無駄な手間が多かったんです。あとは電話も毎日すごい量がかかってきてて、当時は私以外に営業事務が3人いて全員女の子だったんですけど、業務量が多すぎてなかなか定着しなくて。
――たしかにすごい大変そうです...。
松尾:定着しないから、その会社では結局、女性が昇給や昇格をできてなかったんです。あと、仕事をするなかで、もっとこうしたほうがいいのになって思うことがたくさんあったんですけど、やっぱり大きい会社なので、一人の現場の意見だけでは、なかなか簡単にはルールを変えられなくて。社員登用前提の派遣社員ということで働いてたんですけど、この会社で社員になっても働き続けるイメージが湧かないなあと思ってました。そういうことを考えていたときに、ちょうど角本から連絡があったんです。
――すごいタイミングですね。
松尾:いきなり「いまなにやってるの?」って文面で連絡が来たんです。だから最初、これは「きょうどこでなにをやってるのか?」という意味なのか、「いまはどういった仕事をしているのか?」という意味なのかが分からなくて(笑)。
――たしかに、どっちの意味にも取れますね。
松尾:たぶん後者かなと思って「仕事っていう意味だったら、事務をやってるよ」って返したんです。そしたら角本から「ウチのオフィスに遊びにおいでよ」って言われて。
――そこで角本さんからのお誘いがあったんですね。
松尾:これまでいろんな職場で働くなかで、私は自分のやり方や考えを提案しやすい場所のほうがいいんだなと感じていました。あと、これまではほとんどパソコンをメインに仕事をしたことがなかったんですけど、今後ずっと働いていくためには、やっぱりパソコンひとつで業務をできるほうがいいなとも思っていたんです。そのタイミングでちょうど、角本から連絡をもらって。もともと2019年の3月いっぱいで派遣の契約が切れる予定だったので、そこで退職して、4月からエキストラで働き始めるということにしました。
――本当にいろんな要因が重なっての転職だったんですね。では最後に、松尾さんの今後のエキストラでの抱負を教えてください。
松尾:私、組織のトップに立って物事を動かしていくっていうのは、正直向いてないです。それよりは、トップと現場のメンバーの間で、潤滑剤のような役割をするほうが合ってるなって自分では思います。だからエキストラの潤滑剤として、もっともっといろんな場面で角本や他のメンバーをサポートしていけるようになりたいですね。