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人生で一度も起業を考えたことがなかった自分が金融ベンチャーを作るまで

タイトル通り、私はクラウドクレジットを作ることにするまで人生で一度も起業を考えたことがありませんでした。

19歳の時に金融トレーダーになることを目指し始めて学生時代は金融工学の勉強に明け暮れ、卒業後は日本の証券会社の社内ヘッジファンドで勤務し、実需のお金の流れを理解する必要があると感じてイギリスのリテール銀行に転職しましたが、当時は実需のお金の流れを学んだ上で米国あたりの金融の大学院に留学して35歳くらいでまたヘッジファンド業界に従事するというようなキャリアプランでした。


リテール金融の魅力に惹かれる

ところがまず、イギリスのメガバンクで運用業務を行う傍らでみせてもらったリテール金融の魅力にとりつかれます。

市場が上げ相場だろうが下げ相場だろうが、インフラとしての金融サービスを提供していればお客さんの生活は便利になり金融機関は手数料をいただくことで利益をあげる。こちらの方が、相場で利益をあげることを目指すより自分には合っているのではないかと感じるようになりました。

そういった中で、日本でネット銀行を立ち上げるというプロジェクトが始まり、そのプロジェクトがかなり大がかりなものでイギリス本店やドイツ、そのほかにもインド、オーストラリア、南アフリカ、ラテンアメリカなど様々な国の同僚が日本支店に集結し、留学などしなくても世界の同僚とコミュニケーションをとれ、なによりこんなに大きなプロジェクトが目の前で行われていながら留学するのか、というところで海外留学の準備は2011年にやめてキャリアはリテール金融の道を進むことにしました。


世界を繋ぐ金融を実現するために

ただ上記のイギリスと日本を繋ぐネット銀行プロジェクトが進む中で、規制業種であることや大きい会社ならではの制約等でうまくいかないようになってしまい、世界の国と国を繋ぐ金融というものを現職ではなく日本の銀行に転職したりコンサルティング会社に転職して日本の銀行さんに世界にお金を供給する金融のやり方をアドバイスしたりする道を探り、2012年の初頭くらいに転職活動を始めました。

しかしいくら採用面接で世界にお金を供給する金融について熱く語っても2012年当時はだれも日本の銀行業の将来について危機感を持っている人はおらず、これはなかなか難しそうだと感じたりもしました。


29歳で初めて起業という選択肢があることを知る

当時はソーシャルゲーム大手のGREEさんが海外展開も含めて積極的に人材採用を行っている時で、人材エージェントの方からぜひ面接を受けてみるべきと薦めていただき、リテール金融以外のキャリアもあり得るのかなと思い面接を受けたのですが、その際予習としてGREEさんのウェブサイトを拝見していると田中社長がGREEを立ち上げたときの熱い想いを語っておられ、それを読んでいるうちに「自分で起業する」という選択肢があることに初めて気づきました。

GREEの面接自体は、ソーシャルゲームの会社の面接で1時間ひたすら世界の国と国を金融で繋ぐ意義について熱く語ったら落ちたのですが、とにかく(今から考えると面接官の方のお時間をいただいておきながら失礼だったのですが)ゲーム会社の面接でもひたすら世界でお金の流れをつくる金融について語っている自分に気づき、自分は無意識にもうこれ以外のことをやる気がないんだろうなと思い、世界でお金の流れを作る会社を作ることにしました。


銀行設立に必要な資本金額はだいたい100億円

当然自分で銀行を設立することになるので、すぐさま家の近くの本屋に行って銀行の設立の仕方が書いてある本、「起業のファイナンス」、あと1冊タイトルは忘れたのですがネット生保を立ち上げた方のご著書を購入して銀行設立準備を始めました。

バーゼル規制などの銀行規制は本業で知っていたので必要な資本金額を計算したところ、だいたい100億円くらいでした。

ちょうどネット生保を立ち上げる際に約130億円の資金調達をされた方が起業塾を開かれるという情報をネット上でみかけたためそこで事業企画をプレゼンテーションして100億円の資金調達を行う方法を教えてもらうことにして、会社で毎年とらないといけないことになっていた2週間休暇を利用して事業計画をブラッシュアップしてプレゼンテーション資料を作成して起業塾でプレゼンテーションを行ったりしましたが、やはり100億円の資本金を集めるというのはなかなか現実的ではないということで起業は一度諦めました。


別に銀行でなくてもいい

ちょうど日本の銀行さんで海外のローン債権に投資を行うポジションを募集されている銀行があったので私はそこに応募して選考プロセスを進んでいたのですが、「銀行を設立できそうだったら一緒にやろう」と話していた、オフィスで隣の席に座っていた同僚が諦めきれなかったようで何かヒントがあるかもしれない、と同じく起業に興味のある彼の友人を紹介してくれました。

その方のお話を聞いてると、「そういえば友人に自分で債権回収業の会社を設立して運営していた人がいたよ」のような話を聞き、そもそも銀行という免許にこだわる必要はなく普通に貸金屋でいいじゃんということに気づき、事業計画を再度練り始めることになりました。

貸金屋をするにしても貸すお金はどこから調達するのかということになりますが、これまた別の友人が投資型クラウドファンディングという仕組みを教えてくれました。


投資型クラウドファンディングは金融の民主化

銀行を設立するのに100億円が必要なのは免許業ならではの規制がある以上に銀行が預かる預金が元本保証商品であるため貸付金が大量に貸し倒れた時のための損失吸収バッファとしての資金を眠らせておく必要があるからなのですが、投資型クラウドファンディングという仕組みだと投資家の方が高い金利にアクセスできる一方でリスクテイクも行うことになるためこの損失吸収バッファを業者が持つ必要がなくなり、事業者としてきちんと運営を行っていけるだけの資金(開業前後だと1億円くらい)を調達できたら事業が十分形になる可能性あり、ということでクラウドクレジットの事業モデルがかたまりました。

ちなみに銀行を設立するのに資本金が100億円以上いることから、金融自由化以降に設立されたネット銀行はほぼメガ企業が子会社として設立したものですが、必要資本金が100分の1になったことでアイデアを持った個人が金融機関を作れるようになったのが投資型クラウドファンディングという仕組みのすごいところだと思っています。

実際、たまたまクラウドクレジットのコンセプトが世界を繋ぐ金融というだけで、国内外で様々なコンセプトを持った投資型クラウドファンディングのプラットフォームができてきています。

とにもかくにも、2012年4月に起業することにしてから事業モデルが固まりもっと細部を詰める段階にはいるのに3、4か月程度かかったことになります。

(続く)

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