世界を代表するエクセレントカンパニー・アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズは、かつてこのような言葉を残している。
「仕事は人生の大部分を占めるもの。本当に満足する唯一の方法は、素晴らしいものだと信じられる仕事をすることだ」
キャリアを小児医療の現場でスタートした服部祐介にとって、未経験で飛び込んだカスタマーサポートそしてカスタマーサクセスの仕事は、疑いようのない「素晴らしい仕事」だった。
幼い兄弟が病気がちで、女手一つで三人兄弟を育てる服部の母は、いつも病院で時間を過ごしていた。
服部自身も学校が終われば、自宅には帰らずに病院に足を運び、待合室で母親の帰りを待っていた。
毎日苦労していた母親の姿を見て育ったからこそ、「大人になったら、誰かをサポートする仕事がしたい」と子どもながらに考えていた。
「cotoboxでの仕事は、幼い頃から持ち続けてきた思いを実現する機会であり、歩んできたキャリアが正しかったことを証明する挑戦でもあります」。
数回の転職を経て、リーガルテック領域で「知財のDX」を目指すcotoboxへ。
現在に至る15年のキャリアを振り返りながら、知財業界で働く魅力とこれから挑むチャレンジの全貌を、5,000字のインタビューで明らかにしていく。
目次
- 母を支えたい気持ちが、キャリアの原点
- ポジティブな感情資源で世界をいっぱいに
- 世界に通用するCSチームを、cotoboxから
- “80年寄り添った夫婦”のような関係で
母を支えたい気持ちが、キャリアの原点
—— 大学を卒業後、医療業界でキャリアをスタートしたとお聞きしました。
大学を卒業後、乳幼児期から就学前までのお子さんに対して、療育相談・診療・通園支援などを行う療育相談センターに就職しました。
キャリア選択の背景には、幼少期のエピソードが関係しています。
私の母は、生まれつき入院していた弟の世話を一身に担っていました。母子家庭だったので、働きながら病院に通い続ける毎日です。
仕事と看病を必死にやりくりする母の姿を間近で見ていたからか、「ケアに励む大人たちの支えになりたい」と思いながら幼少期を過ごしました。
幼くして病を患った子どもたちに、少しでも元気になってほしい一心で働いていましたが、思い返せば、一番は子どもたちが元気になることで救われる親御さんのために働いていたのだと思います。
—— それほど強い思いを持って働かれていたのにもかかわらず、なぜ転職をされたのでしょうか。
やりがいを感じていたのですが、一方で無力さもあったんです。
入所していた子どもたちには重度心身障害児も多く、長く生きられない子も少なくありませんでした。
つまり、どれだけ頑張っても、救えない命があります。悲しい現場に遭遇するたびに、自分の存在意義を考えてしまいました。
そうした日々を過ごすうちに、自分が本当に実現したいことを模索するようになりました。
子どもたちに元気になってほしいし、お母さん、お父さんたちに少しでも安心してほしい。その気持ちの根源は、一体なんなのだろうと。
導き出した答えは、「ポジティブな感情資源を創出したい」というものでした。
僕は、自分の仕事を通じて心が安らいだり、元気になれたり、ポジティブな気持ちになれる人を増やしたかったのです。
それまでは原体験のあった医療現場で働いていましたが、よくよく考えてみると、ポジティブな感情資源は違う業界でもつくることができます。
医療現場の仕事も大好きでしたが、僕ができることには限界があったので、より力を発揮できる場所を見つけてみたくなりました。
—— そこで、未経験のCS職で、IT業界に転職されたのですね。
MacBookを触ったこともありませんでしたし、そもそもカスタマーサクセスという言葉も知りませんでした。
freeeは、求人サービスでたまたま見つけた会社です。会社について認知はしていませんでした。
しかし、興味を持ってよくよく調べてみると、社会的に意義のあるサービスであり、自分の経験が生きる可能性も感じました。
当時面接をしてくださった方には、「一対一でお子さんに向き合ってきたそのスタンスを、freeeでも発揮してほしいです」と声をかけていただきました。
「今までやってきたことが間違いじゃなかったんだ」と、うれしくなりましたね。
ポジティブな感情資源で世界をいっぱいに
—— 未経験で飛び込んだIT業界では、どのような仕事をしていたのですか。
最初の仕事はカスタマーサポートです。その後、CSM(カスタマーサクセスマネジメント)にジョブチェンジしています。
カスタマーサポートとカスタマーサクセスは、似ているようで違う仕事です。
前者はお客様が明確な困りごとを持っているのに対し、後者はお客様が気付いていない課題を見つけ出し、それを解決し、成功に導く仕事と考えています。
ただ、共通点はあります。それは、お客様の気持ちになって寄り添うということ。
ここ数年スタートアップに身を置いていると、社内外でよく聞く言葉が「お客様に歩み寄って接しよう」とか「ユーザーファーストでいこう」とか…近い言葉で言うと、「ホスピタリティ」とか「親身になって〇〇」があると思います。
この言葉自体、とても良い言葉といいますか、素敵だと率直に思いますし、僕も好きです。
ただ、これらの言葉に付随する責任は重いし、本気で体現しないとダサいなと思うことが多々あります。
例えば、臨床現場ではトリアージという、患者さんの『ふるい分け』が行われる場面があります。
多数患者さんがきたときに、タグをつけ、タグの色で優先順位を判断するというものですが、カスタマーサクセスでもヘルススコアーつけてサポートしていくということをすることが多いです。
考え方は似ていますよね。
業界は違えど、どの世界にも「命」があることをどれだけ認識しているかが重要です。
臨床現場では対人間(目で見て体調悪そう、病気、障害など)なのでリアルですが、現在僕のいるITの世界でも同じだなと、ずっと思ってます。
僕のキャリアがへんてこキャリアということも影響しているかもしれません…。
「そこまで考えていたら、神経もたないよ。気軽に行こうよ。そこまで考える必要ある?」といった考えもあるかもしれせん。そういった意見もとてもわかります。
しかし、「お客様に歩み寄る」とか「ユーザーファースト」という言葉を使う以上、そのサービスを使うユーザーさんの命、toBでしたら、会社や従業員さんの人生を狂わせてしまう可能性はゼロではないと肝に銘じ、ユーザーさん、プロダクト、メンバーと接したいと自戒を込めて、僕は強く思ってます。
—— 前職の経験は、CSの仕事に生かされましたか。
前職も、症状の異なる一人ひとりの子どもたちに合わせて指導をしていました。
目の前の一人に本気で向き合ってきた経験は、現在のキャリアにも生かされていると感じます。
しかし、ビジネスをする以上、ただ「相手のことを考えていればいい」とはなりません。
どれだけ素晴らしいビジョンを掲げ、優れたサービスを提供していても、売り上げが立たなければ会社は存続できないからです。
当たり前のことですが、医療業界から転職した僕にとっては、非常に大きな学びでした。
「freee」というサービスが世界に必要だと強く感じていたからこそ、数字を達成する意識が染み付いたのだと思います。
—— cotoboxに入社されるまで、複数の会社でCSを担当されたと聞いています。
freeeは今でも大好きなサービスで、ずっとでも働いていたいと思っていました。それでも退職したのは、自分でサービスをつくりたいと考えたからです。
実は、本業のかたわら、非営利で『KILINOKA』というメディアを運営しています。
きっかけは、freee在籍時に、自らサービスを立ち上げる仲間たちを間近で見て、「自分も挑戦してみよう」という気持ちになったこと。
僕が母子家庭で育ったこと、そして弟が生まれつき入院していたという原体験から、障害児者や医療的ケア児者とご家族の物語を届けるメディアを立ち上げました。
freeeを退職したのは、『KILINOKA』の運営にコミットしたかったからです。
ただ、スポンサーを表明してくれる企業さんがいたり、ボランティアとして運営を支援してくれる方がいたりしたことで、僕が実務をせずともメディアが運営できるようになりました。
そうした背景もあり、より多くのポジティブな感情資源をつくりだそうと、いくつかの企業でお仕事をさせてもらいました。
ハードウェアサービスを運営する会社と金融サービスを運営する会社で正社員として働き、ほかにも業務委託としてサービスの成長を支援していましたね。
そのどれもが、「ポジティブな感情資源を創出したい」という僕のミッションにひもづくサービスを運営していた会社です。
本当に貴重な経験をさせてもらったことに、心から感謝をしています。
世界に通用するCSチームを、cotoboxから
—— 現在はリーガルテック領域で働かれていますが、どのような経緯で転職されたのですか。
ミッションに忠実に働く経験をしてきて、その選択は間違いではないという確信がありました。そのうえで、もっと自分が力を発揮すべき場所があるのではないかと考えるようになったんです。
これまで働いてきた会社はどれも大好きな職場だったので、退職するか迷いましたし、退職するにしても、今度はどんな仕事に就くかのイメージも湧いていませんでした。
業務委託として複数の企業のお手伝いをさせていただいたり、本当にやりたいことを見つめ直すために、ボランティアとして働かせていただいたこともありました。
そうやって迷いながら毎日を過ごしていたときのこと。一つの考えに思い至りました。「これまでスタートアップでキャリアを築いてきたのに、スタートアップに何の恩も返せていない」ということです。
自分のキャリアをつくってくれたスタートアップに感謝していたので、今度は一社だけでなく、スタートアップという生態系を支えるような仕事がしたいと思うようになりました。
—— たどり着いたのが、リーガルテックだったと。
どんな素晴らしいサービスも、売り上げが立たなければ継続できなくなってしまいます。それと同様に、知的財産権を侵害されてしまうと、大切にしてきた名前を、変えなくてはならない可能性もあります。また、サービスそのものがなくなってしまう可能性もゼロではないかもしれません。
僕も自分でメディアを運営していますが、たとえば商標権の侵害で訴えられてしまったら、サービスを終了しないといけなくなる可能性だってあります。
自分で言うのもなんですが、そうしたことが起これば、更新を楽しみにしてくださっている読者の方を悲しませてしまいます。
そんな折に出会ったのが、cotoboxだったんです。サービスについて調べていくうちに「僕が探していた仕事だ」と直感しました。
とはいえ、まだまだ小さな組織です。正直なことを言えば、不安もありました。
でも、スタートアップの成長には知財の力が必要不可欠だと思いましたし、なにより代表の五味が掲げる想いとビジョンに魅力と可能性を感じました。
最終的には、「海外進出を目指すにあたり、世界に通用するCSが必要だ」という熱いメッセージに心を打たれ、「それなら自分がその責任を担おう」と決心しました。
cotoboxの仕事は、CSとしてキャリアをつくってきた僕の一つの集大成なんです。
—— cotoboxに入社してから今日まで、どのような仕事をされてきたのですか。
まずは、CSチームの立ち上げに従事しました。
僕自身も現場の仕事をしながら、これまで培った知見や技術を仲間に伝え、人によって偏りがない対応クオリティを形にしてきたところです。
サブスクリプション型のサービスがどんどん増えているので、今後CSのニーズは高騰していきます。きっと、CSとしてキャリアを歩みたいと考える人も増えていくでしょう。
そんなときに「cotoboxのCSとして働きたい」と思っていただけるには、どうすればいいのか。
お客様や弁理士さんのサクセスと理想のチームについて頭を巡らせながら、毎日の仕事に取り組んでいます。
“80年寄り添った夫婦”のような関係で
—— これまでCSとしてキャリアを築いてきた服部さんが考える、「理想的なカスタマーサクセスの形」とは、どのようなものでしょうか。
お客様と「80年寄り添った夫婦のような関係」を築くことです。
お互い無理せずに同じ時間を過ごせて、それがお互いにとっての幸せになる。意識せずとも、適切なタイミングで適切なフォローができれば、それが理想形だと思っています。
もっと言えば、カスタマーサクセスとして働くのであれば、お客様との関係性以外もそうであれたらいいなと思っています。
部下と上司、メンバー同志、親と子ども、兄と弟…。
そっとしておくことがベストなタイミングもあれば、ときには耳の痛いことを言わなければいけないこともあります。
どちらにせよ、関係性が築けていれば、それがお互いのためであることが分かると思うのです。
カスタマーサクセスは、ただ歩み寄るだけでは成立しない役割です。
お客様が事業を伸ばすために、たとえクライアントだとしても、メンバーと同じ気持ちで接しなければいけません。
それが理解できるのであれば、きっと優れたカスタマーサクセスになれると、僕は考えています。
—— cotoboxでも、全てのお客様と理想の関係性が築けるよう、CSチームをつくっているんですね。
もちろんです。
優れたCSチームをつくるには、お客様のサクセスはもちろん、メンバーのサクセスが必要不可欠だと思っています。
自分たちの仕事の価値を理解し、才能を発揮できて、それがお客様のサクセスにつながっていく。そんな組織をつくることが、僕のミッションです。
—— 最後に、cotoboxへの入社を考えている「未来の仲間たち」に向け、メッセージをお願いします。
cotoboxの仕事を一言で表現するなら、「お客様の資産を守ること」だと考えています。
サービスは価値創出の原資であり、その権利を守るのが僕たちの役割です。スタートアップのみならず、企業のコアコンピタンスを守るcotoboxの仕事は、素晴らしいものだと確信しています。
現在は、知的財産の保護を通して会社や個人の価値創出を支援し、僕たちも成長していく。そんなストーリーを紡いでいる途中です。
ぜひ僕たちと一緒に、ストーリーの主人公になりましょう。