ワークショップレポート|プロジェクトマネジメント×「編集力」~編集的思考のすすめ~ | 株式会社コパイロツト
2月28日(木)にNight Flight by COPILOTと題し、講演とアンカンファレンスを組み合わせたワークショップを開催しました。 初開催となった今回、おかげさまで定員人数を大きく上回...
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7月19日(木)にNight Flight by COPILOTの第5回目を開催いたしました。
5回目となった今回は「ゲームデザイン」✕プロジェクトマネジメントをテーマにお集まりいただき、大盛況に終えることができました。
コパイロツトでは「プロジェクトマネジメントをアップデートする」ことを目的に、次の2つの課題を意識しつつ、Night Flightというオープンな勉強会を開催しています。
①「プロジェクトマネジメント」をもっと広くとらえ、時代に合わせた定義をする。
②新しい定義のプロジェクトマネジメントが定着し、それができる人を増やす。
幅広い分野の有識者の方を招いた講演と、ワークショップなど実践的な学びを通して、実際の仕事の現場に活かせる知識を深めていく場にしたいと考えています。
今回はゲームソフト「ワンダと巨像」などのゲームデザイナー、シナリオライターとして活躍されている𥱋瀨洋平さんをお迎えしました。現在はユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社のプロダクト・エヴァンジェリスト、東京大学先端科学技術研究センター 客員研究員として、多岐にわたるご活躍をされていらっしゃいます。
前半は、「ゲームデザインとは何か」について𥱋瀨さんにご講演いただき、後半では「ゲームデザインの思考法から得た知見を、プロジェクトマネジメントにどう活かすか」という主題でワークショップと交流会を行いました。
ゲームの基本構造は「コンセプト×ユーザー体験×ルールとメカニクス」の3つのレイヤーである。
例1:「バットマン:アーカム・ナイト」の場合
コンセプト
ユーザー体験
ルールとメカニクス
上記の3つのレイヤーが隅々まできちんと噛み合わさる事で、プレイヤーはキャラクターの行動に違和感を感じない設計になっている。
RPGの場合は、大きな目標の提示のあとに、小さな目標を作っていくことが重要である。
ドラゴンクエストの場合は、以下のような大きなゴールが提示され、そこに至るための小さな目標が設定されている。
目標例:「魔王を倒す」→「魔王を倒すために武器や仲間を探す旅に出る」→「ダンジョンやフィールドを探索していると敵が出てくる」→「敵を倒す」→「レベルを上げ、成長を積み重ねる」
例2:ドラゴンクエストの「コンセプト×ユーザー体験×ルールとメカニクス」
コンセプト
ユーザー体験
ルールとメカニクス
ドラゴンクエストは「選択肢」を選ぶゲーム。戦う以外にも逃げる、戦略の変更等、様々な選択肢があるから面白い。
ドラクエの魅力は、物語の起伏とシステム的難しさがうまくリンクして、面白さを生み出していること。
作業にさせない工夫
やる気にさせるシナリオ作り
講演後、ゲームデザインとプロジェクトマネジメントをより紐づけるために、簗瀬さんとコパイロツトの共同創業者の定金による質疑応答を行いました。
定金(以降定):ゲームデザインを分析してプロジェクトマネジメントに応用することについて講演していただきましたが、このような分析の応用について、実際体験された例はありますか?
簗瀬さん(以降簗):以前、その分野のゲームを一切していないのに、ネットで自分に近い感覚のプレイヤーのプレイ動画*を大量に見て分析し、ゲームを作ってきた高校生に会いました。動画は何かしながら見られるので、ゲームプレイと同じ時間をかけなくてもそのゲームの特徴を分析できたのでしょう。
*ゲームをプレイしている状況を録画・編集した動画
定:学生の持ってきた企画書に全体像がないと詳細を見ないと言っていました。我々の企画の見方も同じで、まずは全体像の把握を重要視しています。簗瀬さんは企画書を持ってきた学生にどのように指導しているのでしょうか?
簗:指導をすることはあまりなく、結果を見て感想を言うくらいなのですが、企画書を見てユーザー体験やメカニクスがどういったものなのかが最初の1ページでわからないといけないと思います。
定:学生が全体像を描けないとして、では全体像を描く能力はなにをやっているから身につくのだと思いますか?
簗:ゲームをどれだけたくさん作っているかです。手数が直結すると思っています。今は簡単にゲームが作れる環境ですし、作りながら考えることだと思います。
定:ゲーム内でのゴールの設計のやり方について、大きなゴールの提示のあと、小さいゴールを作っていくとおっしゃっていました。そのゴールの登場するタイミングや、バランスの取り方や難易度調整はどうやっていますか?
簗:基本的には時間単位です。ゲームとゲームのメカニクスが何によるかも関連します。ただ、長い方が達成感はあります。ゴールまでの道のりと難易度により、途中で諦める人がいますので、そこは注意が必要です。長短のバランスは試してみるしかありません。そういった検証データは完成品からしか取れないので、難しいところもあります。
定:実生活でゲームデザインの思考を取り入れてうまくいくようになった例はありますか?
簗:買っている犬の散歩です。犬は暑いのが苦手なので、気温が20〜25度くらいの涼しい朝方に散歩しないといけません。夏が近づくにつれて、涼しい時間は朝早くなっていくので、明日何時に起きられるかをゲームのようにデザインしています。やろうと思ったことがクリアできるのは嬉しいですね。
定:実験をする際の着想はどこから得ますか?
簗:論文を大量に読んでいます。3つ以上のジャンルに詳しくなると新しいことが生まれる可能性が大きいです。(2つ以上詳しい人は少ないので。)それを組み合わせる事です。
定:日々をゲームとして楽しむマインドセットはどうやって培ったんですか?
簗:常にリスクとリターンについて考えながらゲームを作っていますし、それが楽しいことを知っているので、日常のなかでも何かしらの動きを遊びにして、小さなリスクやリターンを楽しんでいることが関係しているかもしれません。
定:小さなリスクを楽しめるコツ、心がけを教えてください。
簗:大きなリターンを求めない事でしょうか。そして、リターンが小さくても楽しいと思えることです。
ゲームデザインの思考をプロジェクトマネジメントに生かす今回のテーマが目新しく、面白かったです。これからの仕事においては、人々が自身のゴールを的確に定めることができ、自分なりのルールを決めて仕事のやり方を発想することが出来る状態を作り出すことと、何よりも仕事を楽しいと思える環境を構築する能力が重要になってきていると思います。
ゲームを設計するように、常に仕事における大きな目標は何か(コンセプト)、仕事を通して誰に何を提供できるか、(ユーザー体験)、そして、自分が仕事をやりやすく続けられるルールを作っていく意識(ルールとメカニクス)を持ち、自分がやる気を出すシナリオを編む経験を繰り返して、仕事をしていきたいと思います。(清水)