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AI・機械学習・RPA#1 「太陽表面爆発を機械学習で予測する」

Photo by Jen Theodore on Unsplash

はじめに

はじめまして、豆蔵の松永です。
機械学習やビッグデータ解析について学びながら、データ分析の業務を日々行っています。

私は、入社する前、宇宙地球環境研究所という研究機関に在籍し、理学系(火星大気)の研究を行っていました。
技術情報ページに載せられるような話題はないかと悩んでいたところ、研究者時代の分野において機械学習と理学系研究が組み合わさった興味深い論文を見つけましたので、今回はその論文を簡単にご紹介したいと思います。

ご紹介する論文は、Nishizuka et al., 2017, “Solar Flare Prediction Model with Three Machine-Learning Algorithms using Ultraviolet Brightening and Vector Magnetograms”, The Astrophysical Journal, Vol.835, Issue 2, 156です。
 内容をひとことで言うと、複数の機械学習手法を用いて、太陽表面の爆発現象(太陽フレア)予測を行ったというものです。
全文はこちらから閲覧することができます。

太陽表面での爆発

2017年9月初旬、太陽表面が爆発する「太陽フレア」が発生したので、通信障害やGPSの誤作動が起こる可能性がある、というニュースが報道されました。このとき、多くの方が「太陽フレア」ってなに?と疑問に思われたかと思います。

太陽の表面では、表面で蓄えられた磁場のエネルギーが基になって、突発的な爆発現象が起こることがあります。これを太陽フレアと呼んでいます。
太陽フレアが起こりますと、それと同時に電磁波や高エネルギー粒子が太陽から放出されます。この高エネルギー粒子は地球にまで到達し、通信障害や人工衛星・高高度にいる人(国際ステーションに滞在中の宇宙飛行士や飛行中の航空機にいる人)に悪影響を引き起こすとされています。

また、1989年に起こった太陽フレアでは、カナダのケベック州の送電網が破壊され、大規模な停電も起きました。一方で、ダイナミックに変動する美しいオーロラも、太陽からの高エネルギー粒子によって引き起こされています。

太陽フレアによる被害を防ぐために、アメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)などは、太陽観測衛星を打ち上げ、太陽を常に観測しています。JAXAは2006年に「ひので」という太陽観測衛星を打ち上げました(現在も観測中)。これらの衛星により、膨大な太陽観測データが蓄積されているのですが、人間が一つずつ解析していくことは不可能ですので、機械学習を応用した研究・解析が行われ始めています。

機械学習と太陽フレア予測

今回紹介する論文は、NASAが打ち上げたSolar Dynamics Observatory (SDO)と Geostationary Operational Environmental Satellite (GOES)という2台の人工衛星からの太陽観測データ(太陽の画像)を基に、複数の機械学習手法から太陽フレア予測モデルの構築を行ったというものです。

始めに、予測モデルの構築について、ご紹介します。

黒点(周りより温度が低いため、黒く見える領域)周辺の活動領域と呼ばれる場所で、磁場のエネルギーが突発的に放出されることによって太陽フレアは起きると考えられています。そこで、著者らは膨大な太陽観測データから活動領域を検出し、その活動領域の画像から約60項目の特徴量を自動計算しました。その後、特徴量をもった画像に対して、観測後24時間以内に太陽フレアが起きたかどうかのラベル付けを行い、学習用のデータを作成しました。

さらに、学習用のデータを無作為にトレーニング用とテスト用に分けた(7:3の割合で分類)データセットをもとに、複数の機械学習を行い、太陽フレア予測モデルの構築を行いました。著者らは、一般的な機械学習手法である、サポートベクターマシン、k近傍法、ランダムフォレストを使用して、モデルを構築しました。

その結果、k近傍法を使用したモデルでの予測精度が最もよく、その予測精度(1が完璧な予測)は、Xクラスのフレアについては予測精度0.91±0.03、Mクラスの太陽フレアについては予測精度0.912±0.005となりました。(Xクラス、Mクラスは太陽フレアの規模の指標で、最大がXクラス)これまでの情報通信研究機構(NICT)による予報では、Xクラスのフレアについては予測精度0.21、Mクラスのフレアについては予測精度0.50でしたので、Xクラスのフレアについては約4倍、Mクラスのフレアについては、約1.8倍の精度向上になっています。

現在は、一日一回だけの太陽フレア予報が、NICT(宇宙天気情報センター)によって行われていますが、飛躍的な精度向上が実現された本論文での予測モデルを活用することで、リアルタイムな太陽フレア予報の実現が今後期待されます。

さいごに

スプートニク1号が打ちあがってから半世紀が過ぎた現代では、太陽観測データだけでなく、多くの人工衛星・探査機による観測データが膨大に蓄積されています。これらの解析に機械学習が応用されていくことで、新しい発見や現象が見つかるかもしれません。

※転載元の情報は上記執筆時点の情報です。
 上記執筆後に転載元の情報が修正されることがあります。


太陽表面爆発を機械学習で予測する
はじめまして、豆蔵の松永です。 機械学習やビッグデータ解析について学びながら、データ分析の業務を日々行っています。  私は、入社する前、宇宙地球環境研究所という研究機関に在籍し、理学系(火星大気)の研究を行っていました。 ...
https://www.mamezou.com/techinfo/ai_machinelearning_rpa/solarflare_machinelearning
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