急成長するAI賃料査定サービス「スマサテ」のセールスを続けるなかで「価値観が変化した」と話す高澤。スマサテの立ち上げ当初から参画し、現在は事業責任者としてスマサテのセールスとシェア拡大に取り組んでいます。スマサテの両輪であるセールスと開発チームとの関係、仕事をする上で大切にしている価値観、そして求める人材について語ってもらいました。
高澤 郁理
新卒で不動産ポータルサイトを運営している株式会社ネクスト(現 株式会社LIFULL)に営業として入社。その後、不動産管理会社向けに基幹システムを作っている会社に転職し、導入サポート業務に従事した。
2016年にターミナル(現 スマサテ)に入社。2018年6月から取締役として賃料査定システムの事業責任者を務める。
転職後に訪れたターニングポイント「ひとつの事業を作り上げる」という覚悟と選択
―なぜスマサテという会社を選んだのでしょうか?
少人数で自立した組織であるところに惹かれて入社しました。ただ、実はその後、前代表が辞めて山岸(現CEO)と新谷(現CTO)と私の役員3人のみになる、というタイミングがあったんです。そのときは、新しい事業を始めるか、それとも…という判断を迫られて正直悩みました。
辞めるという選択肢ももちろんあったんですが、「事業をひとつ作り上げたい」という気持ちが強かった。それから山岸自身の「顧客に喜んでもらえるものを提供したい」という強い思いを感じたこと。この2つが決め手となって会社に残ることにしました。
入社してからは、私は一貫してセールスを担当しています。もちろん取締役となった今も、セールスとしてAI賃料査定サービス「スマサテ」のシェア拡大に励んでいます。
―スマサテのセールス活動について教えてください
基本的には電話とZoomを使った営業をメインにしています。ただ、状況に応じて電話だけで済まさずに、訪問での対面営業をすることもあります。
セールス方法については、お問い合わせやご紹介が中心です。まずはトライアルとして無料で利用していただき、その間にヒアリングを重ねながら有料化に向けてクロージングしていくような流れです。
ただ、このプロセスで完成しているとは思っていません。インサイドセールスとフィールドセールスを分けてみたり、いわゆる「The Model型」の分業制にしてみたり…完全な分業制が合わない部分は、手法の一部を独自のフローにアレンジして取り入れるなど、現在もチャレンジと試行錯誤をしています。
また弊社の場合、ヒアリングをしながら顧客の解像度を上げていくことが非常に大切です。そのため現在は、セールスの流れを一つひとつ縦割りにするのではなく、横串で一連の流れを全部やる形にしています。もちろん今後事業が拡大したり、営業メンバーが増えたりしたら柔軟に変えていくつもりです。
―受注後はどのような取り組みをしていますか?
オンボーディングは、受注前のトライアルにさきがけて、またはトライアル期間中に、お電話や説明会形式で行なっています。
The Model型に例えると、まずインサイドセールスが対応し、次にカスタマーサクセスが対応、その後にフィールドセールス、最後にまたカスタマーサクセスに戻るというプロセス設計になっています。その最後のカスタマーサクセスに至るまでのプロセスで、逐次ヒアリングを重ねることにしています。だからその時点で顧客の問題はほぼ解消している状態で、導入後に頻繁に問い合わせが来ることは少ないですね。
また週2回、オンライン説明会を開催しています。スマサテはリリースの頻度が多いので、2ヶ月もするとまったく新しい機能が追加されていることも少なくありません。短いスパンで多くの機能が積み重なるため、顧客が理解しやすいようリアルタイムで説明会をしています。
スマサテはプロダクトの出来が良いので、そもそもの問い合わせが少ない。そのうえ定期説明会のような全体向けの施策を打っているので、顧客の満足度は担保できていると思います。
「より良いものを」だけではなくなった“急成長サービスを売るなかで生じた価値観の変化”
―セールスを進める上でどのような価値観を持って業務に取り組んでいますか?
正直言うと、今と昔で価値観はかなり変わってきています。
以前は「とにかく良いものを、たくさんの人に使っていただきたい」という気持ちが強かった。まずは良いものを提供して、顧客の困りごとを解決するということを重視していましたね。
―それがスマサテのイメージでしたが、今は違うのでしょうか?
もちろん今も「良いものを提供して顧客の課題を解決する」というテーマは変わっていません。でも、それだけではなくなった。同時に強く感じるようになったのが「責任」なんです。
近年、スマサテというプロダクトが国内の賃料査定市場において大きなシェアを取れるようになりました。それによって、会社として非常に大きな責任を感じ始めましたね。
賃料は、不動産価格の決定において非常に重要な指標です。賃料によって収益物件の価値は決まりますし、物件に投資しているオーナーは借り入れをする。そしてそれを返済しながら収益を上げるビジネスモデルですから、インカムゲインが非常に重要なファクターになります。
そのような中で、我々が中途半端なものを作ったり、何かデータに誤りがあると非常に大きな影響を及ぼすことになります。顧客に満足いただけるよう、常に高い品質を保つ必要がある。そう強く自覚してサービス提供しなければならない、という使命感を抱くようになったんです。
でも逆にいうと、このように社会的な責任が大きくなったのは、スマサテというプロダクトが良いものとして多くの顧客に受け入れられた結果です。そこにやりがいを感じながら、責任を果たしていければと思います。
「組織中心」ではなく「プロダクト中心」だからこそ生まれる連携と成果
―スマサテは高澤さんから見てどんな会社ですか?
スマサテには、大きく2つのカルチャーがあると思います。
1つ目は自主性を持ったメンバで構成されているという点です。
例えば営業担当は営業だけやっていれば良いということはなく、マーケティング的な動きも求められます。顧客にプロダクトに関わるヒアリングをしたり、意見を提供したり、さらに請求や備品発注したりすることも必要です。皆、プロダクトのために、そういったことを進んでやってくれます。
これはエンジニアも同様で、プログラミングだけではなく、時には展示会で顧客の接客をするようなケースもあります。プロダクトをよくするために顧客を知る必要があるからです。
会社全体として、自分たちの領域ではないところにも興味・関心を持ちながら、自主的に動いていくカルチャーがありますね。
2つ目はプロダクト中心であるという点です。
プロダクト中心の考え方をしていれば、仮に受注が取れなかったとしても、「なぜ採用されなかったのか」「どうすれば受注に繋がるのか」など、顧客から今後使っていただくきっかけとなりそうな機能をヒアリングできます。その積み重ねで、ひたすら顧客に喜んでいただけるものを作っていく。すると、より多くの顧客に評価をいただけるようになり、その結果売上が立つ仕組みができていくんです。だから、その起点となる「プロダクトを磨き込む」ということを非常に大事にしています。
セールスの立場でいうと、顧客との関係で、その最前線にいるのが営業です。その立ち位置を活かしてしっかりと聞き取りを行い、顧客のニーズを確実に拾ってくる。その拾ってきたものを社内に展開して、それをプロダクトマネージャーやエンジニアが仕様に起こして、みんなで最終的な形にする。セールスの仕事は、販売するといういわゆる営業活動だけでありません。顧客に一番近い立場にいるからこそ、プロダクトを磨き込むことに力を注ぐ必要があると考えています。
―そのカルチャーは具体的にどんな部分に表れていますか?
社内のコミュニケーションツールにSlackを使っているのですが、その中に「カスタマーフィードバック」というチャンネルを用意しています。
そもそもスマサテは無料から使える、いわゆるフリーミアム商品で、一定以上の活用をする場合は有料プランを使っていただく形を取っています。まずはトライアルをしていただき、その間に接触をしながらクロージングまで進めていくのが通常の流れです。
1件の顧客に対して営業が3〜5回接触する機会があるので、そこでヒアリングを重ねます。得た情報は随時カスタマーフィードバックチャンネルに書き込んでいきます。例えば「無料のまま使いたい」という意見があれば「なぜ無料で使い続けたいのか」「どんな機能があれば有料に切り替えてくれそうか」といったことを丁寧にヒアリングして、その情報をSlack上で共有しているんです。
カスタマーフィードバックにあがる内容はさまざまです。機能の側面だけではなく、例えば料金設定の話もありますし、極端な話をすると「経費精算システムを作って欲しい」といった査定システムとは直接関係のない話が上がってくることもあります。顧客の業務や困りごと、スマサテに対する要望などがすべてカスタマーフィードバック上で共有されているイメージです。
ヒアリングの際には、特に業務のことを細かくしつこく聞くようにしています。どういったフローなのか、何人でやっているのか、業務自体のペインがどれくらいあるかなどを詳しくヒアリングします。
大きな組織になると顧客の情報をCMSに登録するだけで、他のメンバーの目に触れる場所には情報を置かないことがほとんどだと思います。でもスマサテでは、全メンバーが閲覧できるチャンネルを使い、タイムリーに「顧客がこんなことを言っていた」「こういう要望があった」といった内容を蓄積・共有しています。また、気になることがあれば全員がコメントできるようになっています。
営業メンバーだけが顧客の意見を抱え込むわけではなく、社内全員で情報を共有し、そこからプロダクトに反映する。これはまさにスマサテのカルチャーを反映しているコンテンツだと思いますね。
メンバ間の壁も線引きもない組織が作り出す「プロダクトの成長」
―営業と開発チームとの連携について教えてください。
開発チームともSlackを使った情報共有をしています。カスタマーフィードバックの情報から、アイデアや要望をBacklogに蓄積する。それをもとに代表の山岸や私、プロダクトマネージャー、エンジニアを交えて優先順位付けをして、仕様を起こすという流れです。
また社内でもメンバー間の席が近いので「ここってどうなっているんですか」「何かバグが発生していませんか」と気軽に声をかけてコミュニケーションを取ることが当たり前に行われていますね。
―そのあたりも「自分の領域に固執せず柔軟に動く」というスマサテらしい部分ですね。
まさにそうですね。セールス側として、弊社のエンジニアを特に尊敬している部分があるんです。それは「営業が理解できるように話ができる」点です。技術的な話の場合、営業が話を聞いても理解できないケースは少なくありません。そこでチーム間に齟齬が生じる場合もあります。でも弊社のエンジニアは、専門的な話でも噛み砕いた上でビジネスサイドに説明してくれます。簡単なようにみえて実行するのはなかなか難しい、そしてチーム間の連携には想像以上に重要なことだと思います。
それから、エンジニアもカスタマーフィードバックをしっかりと読み込んでいるんですよね。開発技術だけでなく、業界知識やビジネス知識を貪欲に吸収しようという姿勢なので、営業としても非常に助かっています。
―最後に、どんな方と一緒に働きたいか教えてください。
3点あって、1点目は変化に柔軟に対応できる人です。急成長中という会社のフェーズとしてまだ固まっていない部分も多く、急な方針転換をするケースも少なくありません。そのときに頭でっかちになってしまったり、柔軟性がなかったりすると苦労すると思います。
弊社はベンチャーで人数が少ないので、縦割りで「これだけやっていれば良い」ということはないですし、新しいことにチャレンジする場面も多いです。自分で状況を見ながら判断し、変化する状況に柔軟に対応できる人だと働きやすいと思います。
2点目は諦めない人。やると決めたことは最大火力でやり切るしつこさ、諦めない姿勢を持った人を会社として求めています。
3点目は独立志向を持った人。言い換えるとプロジェクトを一人で回せる自信がある人です。もちろんメンバ同士で助け合ったりアドバイスをし合ったりしますが、小さなプロジェクト単位でオーナーが分かれていて、そこに対してエンジニアが一人ひとり付いている状態なので、積極的にリーダーシップを発揮して自分で推進できる人に入社いただけると嬉しいです。