前回に引き続き、以前に受けました対談インタビューの後半をご紹介いたします。
ご紹介するのは、株式会社RTプロジェクト代表取締役・城山朝春氏と取締役CVO・吉澤良亮氏のお二人だ。
彼らが手がけた新規事業である建築現場向けアプリ『GENCHO』は、建設現場で働く工務店の現場監督、職人、大工間でのコミュニケーションエラーを解消するために作られたものだ。このアプリについてはもちろん、創業のきっかけや想いなどにも迫っていきたい。
青柳(以下’A’)城山(以下’S’表記)吉澤(以下’Y’表記)
◆「スタンスの違いがあるからバランスよい関係が築けている」
A:それではお二人の関係について、さらに伺ってきたいと思います。お互いに経営者としてどのような存在だと感じていらっしゃいますか?
Y:感じているのは城山は秀才タイプだとなと。私は中学、高校、社会人時代と、様々な紆余曲折の中で苦い経験もしてきました。恐らく、城山も多くの経験をされていると思いますが、スマートな人間だと思います。城山は、客観的に事業を捉える目をもともと持ち合わせていた方のように感じます。情に流されず決断をし、船頭となれる人物です。
時に、経営者としてドライになって決断しなければならない時にも、公私混同せずに潔い決断ができます。パートナーによっては、自分の目的だけを優先してしまう経営者も多い中、彼はビジネスの本質であるwin-winの関係を常に年頭に置いている。このバランス感覚が素晴らしいと思っています。
S:こういうこともないとお互いの存在を改まった形で言うことはないので、有難いですね。
吉澤は、経験をロジカルに転換できる人だと思います。経歴を見ても、非常に面白い道を選択している。現場を多く踏みながら学び続けて知識に貪欲な姿勢は素晴らしい。理論をしっかりと持ち合わせながら、中身はパッションの塊のような人なんです。
A:一見、感情的な人間は理論的であるよりも感覚的でありそうなので、興味深いですね。吉澤さんは、なぜ様々な経験をロジカルに転換できるようになったとお考えですか?
Y:自分が到達したい場所まで辿り着くためには、必要な知識や武器がないと達成できないことを痛感したからでしょう。元来、私は感覚的なのですが、失敗から学び、目標を達成するためにあらゆる準備をするようになりました。例えば、私は高専に進学していたのですが、入ってみたら落ちこぼれでね。先生と生徒というよりも、教授と助手というような雰囲気で全く授業についていけなかったんですよ。大きな挫折を味わい普通の高校に進み直しました。早い時期からちょっと回り道するところがありまして、そうやって今の自分が形成されてきたわけです。
そうそう、知識を持つことがいかに大事かを痛感したエピソードとして今でも覚えているのは学生時代です。国際法について論文を書く機会があり、イラク戦争に対する持論をしっかりと認めてもらうために材料をしっかりと用意して論文を書いたら、非常にいい点数だったんです。この時に学びましたね。
目的を達成するためには、知識を少しでも増やしていくことの大切さを知ったのだと思います。周りの人から見たら突拍子もない目標を掲げていても、私はの中では目標を叶えるためには、しっかりと筋書きを作って動いていますし、達成するためならどこまでもしぶとくなれるんです(笑)
S:私も彼と多少経歴で似ているところがあって私も、学生時代は工学系の大学でした。大学院時代まで医療工学で遠隔医療ロボットついて研究し、その後、医療内視鏡のメーカーに就職しました。就職後1年くらいした時、リーマンショックもあった時期で、このまま大企業の一社員になるのもどうかな、と思っていました。それに、子供の頃から、いつか独立して会社の社長になりたいと言う未来を描いていたのです。だから結婚をして、義父の会社に入って見習い修行をする時も怯む事もありませんでした。
A:何か大義を果たす際に人は臆病になるものだと思うのですが、不安にはならなかったのでしょうか?
S:大変な方が楽しいと思うんですよね。私はマラソンが好きなのですが、ちょっとずつでも日々積み重ねて走っていくと、遠くまで走り切ることができるじゃないですか。気づいたら走りきっていた、という感覚が好きなんでしょうね。マラソンも事業も人生も同じだと思います。
私たちがいいバランスを築けているのは、それぞれが違う性質を持ち合わせながら、大義に対して怯まず走りきれるところが共通しているからかもしれません。今のフェーズを理解しながらお互いの役割を理解しているのでしょう。
◆「伴走者となって、必要なタイミングでジャッジして進めてあげたい」
A:今、フェーズと仰いましたが、ご自身が会社を育てていく上でどのようなリーダシップを取ろうと考えていらっしゃるのでしょうか?
S:事業に関わる人間やフェーズによって私たちの関係性も変わってくるとは思います。
これまでのことで言えば、僕は以前はグイグイなんでも決めて周りから頼られる存在でい続けることがリーダーシップだと思っていたと思います。それができるのが自分の強みであるとも思っていました。しかし、限界を感じたわけです。ある種、判断を委ねることも大事であると。いや、私の強みはそれではないなと。むしろ、伴走するようなスタンスの方が向いているのかもしれないと思うようになりました。
人はああでもないこうでもないと考えるあまり結論を出せない時があります。そういった時、一旦引き受けてあげられるのが自分ができるリーダーシップだと思っています。
Y:確かに、パートナーとして組んでいく中で最初は応援者のようなスタンスで、俯瞰していたところがあったかもしれませんが、今は城山にしかできない、ジャッジして共に事業を進めていくスタンスというのが出来上がっていると感じますね。人が入れ替わっていくであろうこの組織においても、おそらく彼の主軸となるスタンスは変わらないとも思います。
S:そうですね。この事業を進めながらフェーズも変わっていくと思いますが、この事業を目指すにいたった原点、何故この事業に魅力を感じているか、私たちの創業に当たっての歴史的背景、そこに至るまでの道のりは忘れずにいたいです。だからこそ、今回、お互い対談したものを残しておきたいとも思ったんですね。事業がどんなに成長したとしても、根本的な哲学は変えずに進化していきたいと思います。何故この事業に魅力を感じているか、私たちの創業に当たっての歴史的背景、そこに至るまでの道のりは忘れずにいたいですね。
◆ユニー・西川俊男先生が最後に遺してくださった言葉
A:お話を伺っていると、お二人がビジネスパートナーとしての夫婦_(めおと)コンビのように見えてきました。どちらかというと、男性的なのが城山さんで、女性的なのが吉澤さんというように感じてきました(笑)お互いがこの事業に向けてそれぞれの役割を果たしてらっしゃる関係性が絶妙です。お二人が出会ったからこそ為し得た事業だと感じました。
S:そうですか(笑)ありがとうございます。
Y:西川俊男氏(元名古屋商工会議所副会頭。元日本チェーンストア協会会長)が亡くなる15日前にお会いしているのですが、その時先生がおっしゃった言葉は今も私の中に残っています。声を録音させてもらって時々聞くこともあるんですよ。当時は行き詰っていて「こういうことをやりたいけれどやれないんだ。どうしたらいいでしょうか?」と伺ったんですね。すると一言「仲間が揃わないとダメだよ。仲間を頼れと。」仰られました。振り返ると、城山がいなかったら、ここまでやろうと思えなかったと思うんです。これは縁でしょうね。どんなに偉業を成し遂げた人も最後は「仲間」なんだと思いましたね。
A:お二人が出会ったきっかけとなった塾長の最期の言葉がまさに「仲間」だったんですね。感慨深いです。
それでは最後に、目指す事業の未来像についてお聞かせください。
S:目指す方向は上場です。今のサービスをさらに増やし、幅広く展開し、建設業界の人だけでなく、もっとたくさんの人を幸せにできるサービスを提供する会社にしていきたいですね。
これから迎える40代、50代になりたい姿ですか。事業を成功させて、子供達には自分が歩んでいる姿を見て何かしら感じてもらえたら。そして、自分の道を選択する時に、堂々と進んで歩んでもらいたいです。
A:素敵ですね。お子さんたちが自慢できるお父さんだと思います。ちなみに、お子さんの性別と人数を聞いてもいいですか?
Y:女子二2人です。城山のところはすごいですよ(笑)
S:4人男子で今もう1人間も無く出産予定です。5人の父になります。
A:(驚)凄いです!富士山上りきってエベレスト級!!
S:妻と結婚当初から目標5人と言っていたんですよね。これも、やれるかやれないかよりも、賑やかで楽しそう!と思えたから。だからこそ、叶えられたと思います。この子供たちに恥じない事業経営をし続けていきたいと思いますよ(笑)