シンギュレイトが大事にしているキーワードに「イノベーション」があります。社会からイノベーションが求められている反面、「ハードルが高い」と思われているのが実情ではないでしょうか。
今回はシンギュレイトが「イノベーションを起こしたい」と考える理由を代表の鹿内に聞きました。
鹿内は「イノベーションは単なる商品開発に限らず、新しいコトを起こさないと日本の未来はない」と語ります。シンギュレイトが、鹿内自身がなぜイノベーションを追求しているのか、根掘り葉掘り聞きました。
新しいコトがなければ日本の未来はない
ーーまず、「シンギュレイトはなぜイノベーションを求めているのか」について聞かせてください。
鹿内さん:
理由は2つあります。まず一つが、僕の「退屈が耐えられない」という性格です。
この性格が、事業にも色濃く反映されていると思っています。
もう一つは「新しいコトをやらないと日本の未来はない」と感じていることです。
「持続可能な経済を実現するには『新しいコト』をやらなければいけない」と思っているのです。
ーーなるほど。それぞれに深堀ってもよいでしょうか?
まずは「退屈を嫌う」という性格について。具体的に日常生活で退屈にまつわるエピソードはありますか?
鹿内さん:
例えば些細なことですが、靴下を左右違う色にしています(笑)。
ランチも近所にお蕎麦屋さんやインドカレー屋さんなど決まったお店はありますが、別の街に出かけた際に「美味しいもの食べよう」と思ったら、お店も探求したくなります。
ちょっとしたことですが、僕にとっては退屈を防ぐ方法ですね。
ーーそもそも日常的に「新しいコト」を求めているのですね。確かに、シンギュレイトの営業やマーケティング、開発において「新しいコトをする」というこだわりが随所に見られるように思います。
2つ目の「新しいコトをやらないと日本の未来はない」という点は、どのような経験からそう考えるようになったのでしょうか。
鹿内さん:
イノベーションは「非連続な成長」とも表現されます。とはいえ、多くの企業が、延長線上にある「新しいコト」すらしっかりできていないのが実情だと思います。
ですから、イノベーションを起こすべく躍起になって大きなテーマを見つけるのではなく。
まずは身の回りの小さなコトからでいいので新しいコトを行うのが必要なのではないでしょうか。
ーーイノベーションは「知と知のかけ合わせ」だと、経営学では言われます。
それができていないのはなぜだと思いますか。
鹿内さん:
既存の事業が忙しくて新しいコトをやる時間がなかったり、新しいアイデアを話すことで「無知や無能と思われたくない」という遠慮があったりもするでしょう。
専門性や技術を持っている人が画一的な業務を任される人材になっているのも一因かと思います。
例えばIT企業では、技術的な専門性を持っているのはWebエンジニアが中心ですから、専門性もバッティングするもの。イノベーションを起こすための組み合わせは既にかけ合わせられきっているのかもしれません。
「新しいコトを考えているだけでは社会には還元されなかった」——鹿内の過去
ーー鹿内さんのキャリアの出発点であり、強みの一つである脳神経科学の研究領域ではどのようなイノベーションが求められるのでしょうか。
鹿内さん:
研究ではわずかでもいいから「新しいコト」が求められますね。
世界で初めての発見、誰も試していない仮説をやってみて計測ができれば、論文が書けます。
僕は研究者時代は研究計画書(Research Proposal)を書いているとき、「こんな新しいコトができるだろうな」と構想を膨らませているときが一番楽しかったです。
ただ、新しいコトを考えているだけでは「社会実装」には至りません。
また、研究のなかでは常々持続可能性に疑問を抱えていました。
研究の予算は税金から投入されますから、理解が難しい新しい内容は予算がつきづらい。
そんなこともあって、僕自身は「新しいコトを成すため」にビジネスサイドにキャリアを転じました。
このキャリアチェンジそのものが、前述のような退屈を好まない性格を表していますね(笑)。
他の人がやっていないことをやりたい、というのが僕の根底にあり、その思いが事業にも反映されているのだと思います。
新しいコトを始めるには「地ならし」が必要
ーービジネスサイドに転じて、イノベーションを起こすために必要なことは何だと感じますか?
鹿内さん:
組織で「新しいコト」を行うためには、受け入れてもらうための「地ならし」が必要ですね。研究では、少人数でも一足飛びに成果を出せることがありますが、会社でイノベーションを起こすには同じことを複数回繰り返して共通認識を持たないと次のステップにいけません。
やり切る力——「グリッド」という言葉がここ数年流行っていますが、その必要性を実感しています。
ーーやり切るために大事だと思うポイントなどはありますか。
鹿内さん:
仕事の質を高めることだと思います。
例えば、クライアントとの日程調整もルーティンに思えるかもしれませんが工夫をすれば質を高めることができるはず。
質を高めるためには”こだわり”も大事です。ここでいう”こだわり”とは、内容そのものをガラッと変えるのではなく、Howであるアプローチを変えるという”こだわり”です。
例えば、日程調整ではいつもの会議室ではなく、コワーキングスペースの会議室を選んだり、候補日を先んじて相手に提示したり、NGの日程を伝えたり、キーマンの予定を先に押さえたりと試行錯誤ができるはず。これもイノベーションに繋がる”こだわり”だと思います。
イノベーションの種類は経済学者ヨーゼフ・シュンペーターによると下記に分類されると言われます。
- プロダクト・イノベーション(新しい生産物の創出)
- プロセス・イノベーション(新しい生産方法の導入)
- マーケット・イノベーション(新しい市場の開拓)
- サプライチェーン・イノベーション(新しい資源の獲得)
- オーガニゼーション・イノベーション(新しい組織の実現)
前述の「退屈」や「新しいコト」とは一見矛盾するかのように思われますが、その中身ではなく、「やり方」にこだわることで、見えてくる世界があると思います。
その意味ではコミュニケーションの仕方を変えてみることも大事にしていますね。
コミュニケーションのこだわりが「信頼」を生み、イノベーションにつながる
ーーコミュニケーション、伝え方をこだわる。どのように意図が伝わるかにこだわるということですね。
鹿内さん:
コミュニケーションにこだわるのは、シンギュレイトでは「信頼」を大切にしている前提があるからです。
信頼とは、「不安でも、他者に任せる」ことで、スキルなどの「能力」への信頼と、プロジェクトに参画し力を発揮しようとする「意図」への信頼の2種類があります。
「感謝」を伝えるのも、「ありがとうございました!」と「ありがとうございます!」では印象が違いますよね。前者は謝辞を伝えたら関係性がそこで切れる印象があるかもしれない。一方で後者は今後も関係性が持続する印象がありませんか。
突拍子もないアイデアが出てきたときでも、周囲から「それ、面白いね。やってみよう」と思ってもらえる状況や環境が大事です。その環境とはコミュニケーションが取れて双方が信頼し合っていること。
やっぱり「新しいコト」を実現するためには誰か個人が「主体性」を持ってアイデアを話し、周囲がエンカレッジしたうえで当人がリーダーシップを発揮して、成すものです。
そのためには人と人との関係性が大事。双方に「信頼」があれば、組織は「新しいコト」に取り組みやすくなるのです。「信頼」がある組織は、「新しい提案」に対して、明らかに柔軟に取り組む姿勢を持っています。
ーー「主体性」や「信頼」というキーワード。
シンギュレイトは人々の「主体性」を引き出して、成長を促すことの重要性から1on1サポートツールの『Ando-san』を提供していますし、組織の「信頼」を測る重要性から『イノベーション・サーベイ』を提供していますよね。
「主体性」と「信頼」、そして「イノベーション」。これらは密接に関係していることが、改めて分かりました。
鹿内さん:
『Ando-san』は、グループでのコミュニケーションを見たときに「創発性は発揮されるか」から発想を得ました。グループMTGはパフォーマンスマネジメントに関わるもので、1on1はピープルマネジメントです。
ですから、『Ando-san』は1on1に焦点を当て、どんな話し方・聴き方をしているのかを見るサービスにしました。1on1のやり取りにおいては「主体性が関わる」と気づいたことで、『Ando-san』というサービスが磨かれていきましたね。主体性を高めれば物事が進みやすくなるものです。
もう一つの「イノベーション・サーベイ」においては、クライアント企業が「エンゲージメントを高めたらイノベーションが起きる」という点にこだわっていました。
その点に関して当初僕は懐疑的だったのですが、サーベイを繰り返し実施するなかで、信頼で繋がる組織は、メンバーが主体性と裁量を持つと、働くことや会社に対するエンゲージメントが高まり、イノベーションが起こりやすくなるという事実も見えてきました。
新規事業での新しいことは、”その業界で”初めてだったり、なんなら”その会社で”初めてのことでもいいのです。「新しいコト」はほんの些細な小さなコトでもいい。
まずは主体性をもって恐れずに周囲にアイデアを話してみること。そして、共感して信頼してくれる人とそれを試してみること。そこからイノベーションは始まると思っています。
最後まで、お読みいただきありがとうございました。
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