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人とクルマを五感デザインでつなげる_時代を先取る新領域への挑戦

 こんにちは。マツダ株式会社のデザイン本部プロダクションデザインスタジオ インターフェースデザイングループ(以降Gr.)でマネージャーを務める久田晴士と申します。

1992年に入社しエクステリアデザインを経て、インテリアデザイナーとして2・3代目ロードスターやアテンザ、プレマシーの内装を担当し、アドバンスデザインGr.では初期のブランド価値創造にも取り組んできました。そして、インターフェースデザインGr.を立ち上げ、マツダ3、CX-30、MX-30のHMI(ヒューマンマシンインターフェース)開発の全般に携わってきました。

インターフェースデザインGr.は、インテリアパーツデザイナーとUI デザイナーによるハイブリッドな組織で多職種のスタッフによる組織構成となっています。

現在はUI デザイナーの業務の幅が急激に広がっており、どのようなユーザーにどういった体験や価値を提供するのかといったUXデザインやアプリ開発にもトライしています。

確かな手応えがモチベーションに

UI デザインの仕事の面白さは、最先端技術を駆使した機能を世に送り出すことはもちろん、自分が取り組んだ仕事の反響をダイレクトに得られることです。

新車が発表された際に全国各地販売ディーラーで販売スタッフ向けの説明会を行います。その会場にUI デザイナーも出向き、自らプレゼンテーションします。例えば、車両自体が透けて周りが確認できる「シースルービュー」や、ドライバーの居眠りや体調急変を起こした際の運転支援システム「CO-PILOT 1.0」など新機能は理解し易いように、動画で解説をします。ディーラーの営業スタッフが真剣に見て、たくさんの質問を受けると、リアクションを生で感じられ、メンバーのモチベーションUPになります。そのため、出来るだけメンバーが自身の地元で開催されるイベントに出席できるよう配慮しています。自分が手がけた仕事を地元で発表できる喜びは大きいようで、想像していた以上に、みな嬉しそうに出張から帰って来ます(笑)。

また、プレゼンテーションに使用した動画を「営業ツールとして使いたいから提供してほしい」とご依頼いただくことが多いこともうれしい反響です。全て自分たちで作っている動画のため、アピールポイントが伝わりやすいと感じていただけるのは、とても光栄なことです。

現在はWEBやSNSにイチ早く情報が上がるため、オンタイムで反響を感じることができるのも良い点です。ポジティブなことが書いてあれば皆で喜び、反省すべき点があれば次の仕事に生かすことができます。街中で自身がデザインに携わったクルマを見かけたときは、家族や子どもに「これは自分がデザインしたんだよ」と話せることも私たちデザイナーが誇らしく感じられる点です。自分が携わった仕事に大きな手応えを感じられることは、大きな魅力だと思います。

自らのアイディアでクルマに生命感を

UI デザインの特徴的なポイントは、動きをデザインするという点です。ユーザーが操作をしたとき、どういう反応をしたら、直感的に認知、判断、操作を導けるだろうということを考慮してデザインをします。それを説明的に表すのではなく、出来るだけ非言語による“対話”によって、まるで車が生きているかのように表現をします。これも、マツダのデザイン哲学「魂動(こどう)-SOUL of MOTION」の表現のひとつです。時間や季節などによって表示の背景の色や動きを変えて生命感を表現したり、ドアを開けて乗ったときやスタートスイッチを押したときには、クルマが目覚めていくような…脈動や発光によって生命感を感じられる演出を、光の動きなどで表現しています。

実はこのデザインは、インターフェースデザインGr.のメンバーの自主提案で、効果や必要性などをすべてまとめ、商品企画やエンジニアなど関りのある部門を回って説得し実現させました。派手さはないかもしれませんが、志を持って自分で企画するという点はダイナミックであり、クルマと人との“対話”という形がないものをデザインするというワクワク感もあります。大変な面はありますが、すごく面白みを感じられると思います。

試行錯誤して築き上げた新組織

これまで様々な仕事をしてきましたが、特に印象に残っているのが、初めて本格的なコネクティビティ(車載通信)である「マツダコネクト」の開発と、インターフェースデザインGr.の組織立ち上げの2つです。マツダコネクトの開発が始まったのは2010年頃で、これからはHMI(ヒューマンマシンインターフェース)が重要になってくるという予兆がある時代にそのプロジェクトに任命されました。

そしていざ始めようとしたとき、当然ですが、UIデザインに関する知見やノウハウを持つ者は社内に不足しており、コネクティビティが進んでいる海外の企業と共同開発することになったのです。現代のようにリモート打ち合わせが浸透しているわけではなかったため、現地に役員と二人で直接出向き、初めて会う外国人達に囲まれながら「やりたいことが伝わっているのかな?」と不安を抱きつつ、苦闘した日々が昨日のことのように思い出されます。あの2年間は忘れられませんね。多くの失敗を重ね、一つひとつの問題を解決しながら邁進してきたことは、自分にとって大切な経験となりました。それが血となり肉となり、今に活きていると感じています。

組織や人のために動くことで自己成長

組織を作るにあたって特に注力したのが、UIデザインが新しい分野だったため、社内で存在価値を認めてもらうためのさまざまな工夫を凝らした点です。

仕事の内容が伝わるように、ただ完成したものを見せるだけではなくUIデザイナー独特の作業工程をあえて見せることで、違いや能力を知ってもらいUI デザイナーへの理解や地位を、時間をかけて確立させてきました。

同様にリーダー格の部下には、自分の部下が成果をプレゼンするときには、専門用語を出来るだけ使わず “相手に伝わる“ことを常に意識して説明するよう指導をお願いしていて、これは現在でも大切にしていることです。

今思えば30代までは自分のキャリアや成果のことばかりを意識していた気がしますが、上記の組織創りにおけるさまざまな人との出会いを経て、価値観は大きく変わったと感じています。異なるバックボーンを持つメンバー間でどのようにチームワークを築いていくか考えたとき、人によって成長速度や理解度も違うことを実感し、多様性を理解することが必要であると気付きました。私はこのような機会を与えられたおかげで視野を広げ、自らも成長する体験を得たと思っています。

未来を見据えて挑戦を続ける

多忙な日々を送ってきましたが、休日には私はSF好きなので映画を観たり息子と一緒にアニメ観るなど、リラックスして過ごしています。職場のメンバーは多趣味の方が多く、ラジコンやサバイバルゲーム、ソロキャンプ、自転車など、みな余暇を充実させているようです。

UIデザインはまだまだ発展途上です。インターフェースデザインGr.もようやく軌道に乗り始めたという段階で、これからは音や振動といった五感を使った新しい”対話”に取り組んでいきたいと考えています。また、大変革期を迎えた自動車業界が今後どのように新しい価値を築いていくか問われている中で、インターフェースデザインGr.は、先陣を切ってチャレンジしていくべき部門だと感じています。例えば車作りだけでなく、車をハブとしてサブスクリプション等の新たなビジネスを創造するなど、魅力的な会社であり続けるために常に挑戦を続けていきたいと思っています。

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