はじめまして!
杉浦養魚株式会社です。
時は遡り、昭和40年6月に養鰻事業が盛んだった豊橋から新規開拓の地として磐田へ渡りました。
その時に杉浦養魚株式会社として開業し、現在は3代目。養鰻の世界で、天竜川の恵みを一身に受けた特別なうなぎを育てています。
今回インタビューしたのは代表の杉浦。
鰻を食べて「美味しい!」と心から感動してくれる人がいることが、なんとも言えないやりがいだそう。
これまでの養殖事業を変えて、もっと美味しい鰻を作るために取り組んできた試行錯誤や、その原動力となっている真っ直ぐな想いを綴ります。
代表 杉浦について
本日はどうぞよろしくお願いします!まず初めに、この業界に入ったときのことを教えてください。
よろしくお願いします!
私たちの事業は祖父の頃からしているのですが、幼少期の頃から振り返ると、そのときに食べた鰻はあまり美味しくなかった記憶があります。泥臭く、川魚の味がしていた印象でしたね。
そこから、様々な経験を経て、就職活動をしていたあるとき、この業界に入ることに。
それまで漠然と感じていたのは、養鰻は経営が大変で差が激しい業界であること。
実際を何も知らない私がその当時、日本一の成績と規模を誇る鹿児島の企業養鰻に、2年ほど修行へ。(全く能天気な学生だった私を育ててくれた社長は師匠であり私の大恩師です。)鹿児島での養殖は施設が最新で大量の地下水を利用した養殖方法で、地の利を活かしたものでありその技術開発と実践力には驚嘆しました。
「美味しい鰻を作り、届けたい。」という想いと裏腹に、鰻業界に抱いた疑問
事業を進めていく中で、長らく歴史のあるこの業界のあり方に疑問を持ったとか。
そうですね..。あまり言葉を選ばずにいうと、一から学んでいく中で、「鰻の美味しさを追求する」ということに、鰻業界全体が研究に時間を割いていないというか、意識があまりないのだということを感じました。
ただ、業界のシステムとしてしょうがない部分もあります。生きてさえいれば、中身の質(美味しさ)ではなく、サイズや重さだけで質が決まるのです。
分かりやすい指標で判断されてしまうんですね..。
はい...美味しさで評価されることは難しいです。
でも、多くの人の口にしてもらう食に関わっていると同時に、鰻は昔から愛され、日本の食文化にも関わってきました。
私たちの仕事は美味しく食べてもらってなんぼ。なぜ、もっと大切にしてこなかったのだろう、大切にしていかなければならないと思いました。
何か変えたい!という思いで、まずは何に目をつけましたか?
まずは、餌に混ぜる資材を変えられるといいのではないかと、模索を始めました。
資材とは、簡単にいうと、鰻のサプリメントのようなもので、餌に混ぜる添加物です。そうすることで、不足している栄養素などを補います。
この資材は、鰻業界では、餌メーカーが考えるビタミン剤とかが一般的です。総合ビタミン類の内のアレコレ、健康食品的なハーブとか、にんにく、生姜等の野菜(刺激の強い野菜類)などもあります。
種類も限られているし、そもそも、どういった根拠で使われているの分からずにいました。
ブランディングなどの背景もありそうです。その餌だと良くないんでしょうか?
そんなことはないです。現在の基本となる餌は全ての養殖魚の中で最も高い魚粉量を有し、餌の完成度は高く、単価も高く、増肉係数も高いので内容的な問題はあまりありません。
ただ、鰻の餌関係各位からの情報のみで限られている中で、私自身も指導されるがままでした...。よくよく調べていくと、これまで活用してきた資材の目的や考え抜いたプロセスがあるわけではないと、私が思うところ、感じています。
資材の中でもビタミン類が中心なのですが、
なぜ使うのか?魚類に対応したものなのか?そもそも必要なものなのか?
と聞いても、明確に応えられる場所はなく、疑問符がいつもつき、理解出来ずにいました。
では、餌に入れる資材にこだわっているのですか?
優良菌群の活用はしていて、簡単にいうと、餌に生きた菌を混ぜることには取り組んでいるところです。
鰻の内臓の形、色艶に変化があり、病気のない健康的な鰻になります。病気にならないように薬を打つのではなく、そもそも健康な体を作っていくことを大切にしています。
でも、ここが一番大事というわけでもありません...。
今までの鰻の養殖業界にはないチャレンジ。食にこだわり抜く「農業」から得た、鰻を育む “環境” の大切さ。
一番大事なことを見つけ養殖業界をより良くしていくために、どんな活動から開始しましたか?
手当たり次第に、広く調べてみました。鰻以外の養殖事業・畜産・農業...という感じです。そこで、農作物に辿り着いたんです。
農業!鰻とは関係がなさそうですが。
一見そう思いますが、見習うべきことがたくさんありました。
「食」ということに力をかけている人が全国にたくさんいて、使っているものや考え方にも刺激を受けましたね。
ちなみに、農業からの情報については、基本的に愛知県豊橋市のスーパーの社長からいただいています。
長らく30年以上の付き合いで、自身のお店で売るものには本当に強いこだわりをお持ちです。安心・安全は当たり前で、「美味しい」と思えるものに出会うために、畑にも足を運ばれています。この恩師から、たくさんの知見をいただけるようになりました。
なにか活かせそうな知見はありましたか?
農業から、とにかく土が力を持ってないとダメだと言うのを聞いて、ハッとしました。「土作り」が一番大切だと。野菜は水を介して土が働くことで成長していく。野菜のために蒔いた栄養も、根から、葉から吸収されます。
ここから、池の環境を整えてあげることが大切だと気づきました。
以前から美味しい鰻を作りたいと思っていましたが、何か食べさせ続けることでのみ鰻自体の味に変化をもたらすと限定してしまっていました。
健康的な鰻を育てるとはなんなのか、基本理念に気づかされましたね。
鰻の環境で考えると、池である水ですね...?具体的になにをされているんですか?
そうですね、鰻は水の中に住んでいます。でも池底は土です。
そこで、年に1度は土を変えているのですが、その際に、炭も混ぜるようにしています。浄化作用があるので、魚特有の嫌な匂いを取り、美味しい鰻づくりの基本になってくれるんです。同じく浄化作用のある小石を敷くことで水の環境を整えるのに貢献してくれています。
また、汚水処理に関わることにも取り組んでいます。試験中なので具体的にはいえないですが、分解能力の高い資材を使った研究、地場菌を活性化して利用する研究をしています。
あとは、ナノバブル水の活用も。
水は、H2Oという水の分子の塊が幾つもの集合体になり水を形成しています。そこには水の分子が大きな塊がたくさんあり形成されています。こんなに数があると、体になかなか入り込めないのですが、例えばその水の分子のクラスターを細かくすることで魚の細胞に入りやすくなり、元気な体づくりに貢献します。
少し話は変わりますが、未来にはAIを活用した飼育管理にも挑戦したいです。
たくさん模索、実践中なんですね.....!
そして、餌だけでなく、鰻が生き生きと育つ環境づくりの大切さを実感しました。
最後に、こういった活動をされている中で、周りの反応はいかがですか?
「こんな鰻食べたことない!」「美味しい」と笑顔になってくれる人がたくさんいることが、大きなやりがいです。将来を担っていく子供たちにも自信を持って食べさせてあげられるものを作り届けていきたいです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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