はじめまして。株式会社 ORIGO JAPANの代表の尾上(おがみ)と申します。
最初のストーリー、何を書いたらいいか悩みましたが創業の想いについて書かせていただきます。
『観光業をもっとも魅力的な産業に』
観光業が、今以上に経済的にも働きがい的にも魅力溢れる産業になり、魅力的な人材がもっと集まる産業になれば、日本が抱えるさまざまな社会課題はきっと解決できると信じています。
これが弊社のパーパス(存在意義)です。なぜ私がこのパーパスに至ったのかを語るには多少お話が長くなりますがどうかお付き合いいただけますと幸いです。
"すべての始まりはインターンシップから"
私は学生時代、カンボジアをメインに活動するNPOの日本拠点で長期インターンをしていました。インターンを始めたきっかけは、就職活動で完全に打ちのめされたからです。就活を始める前の当時の私の夢は、ただ漠然とお金持ちになることでした。その為、外資系のコンサルティングファーム・金融機関を中心に就職活動をスタートしました。結果は全敗。一度は就職留年も考えましたが、運よく日系の金融機関に内定を頂き、そこで就職活動をやめました。そして、行動に移しました。「学生生活、自分はまだ何もやっていない。今しかできないことをやろう」と。
バンクーバーへの短期留学、カンボジアへのボランティアツアー、友人を募ってフットサル大会への参加、資格の取得、など色んなことに手を出すようにしました。その中の1つが長期インターンシップへの参加でした。とあるインターンシップ斡旋サービスに登録し、いくつかのインターン先を見ていたのですが、1つの求人に目が止まりました。「カンボジア×女性×NPO×IT」という自分がそれまで全く興味がなかった領域です。だからこそ強く惹かれました。この時に、私のキャリア選択の軸である『真逆』が生まれました。
この時の経験を語るには紙面が足らない為、結果だけお伝えします。私がこのインターンシップで得た最大の気づきは、『自分の在りたい姿』でした。それは、『誰かの想いを実現できる存在』です。そのNPOは、代表の女性の"想い"だけから生まれ発展していきました。彼女のその想いに、優秀な2名の共同創業者が共感し、その"力"が加わることで、その想いを結実することができました(現在進行形ですが)。自分は、そのお二方や、このインターンシップ中に出逢ったすべての優秀なビジネスパーソンに憧れました。自分もそういう存在になりたいと。私のストーリーは、すべてこの『在りたい姿』から始まりました。
"流れに身を任した10年間"
その後、私は「証券会社」⇒「急拡大中のスタートアップ」⇒「スタートアップの創業メンバー」というキャリアを歩むことになります。私は「リバー型」の人間です。対をなすのは「ゴール型」の人間です。後者は、目的を持ち、目的から逆算してキャリアを設計するタイプの人間です。一方で、リバー型は文字通り川の流れに身を任せてキャリアを歩むタイプです。私は常に流れに身を委ねてきました。ただ、"どの分岐に進むか"については『真逆』を選んできました。
例えば、新卒で入社した証券会社は日本屈指の営業会社であり、スマートな仕事ではなく、泥臭く、熱苦しく、義理と人情に溢れた体育会系の会社です。一方で学生時代の私は、接客をするのが嫌で居酒屋のキッチンでバイトしたり、休み時間は一人で読書をしていたかったりするような、どちらかと言えば無口で物静かなタイプの人間でした。だから内定先を友人や親に伝えた際にはとても心配されました。そして、その心配は見事に的中しました。入社後1年半ほどはまったく成果が出せず、完全なお荷物社員でした。運よく2年目の秋口にとても良いお客様に恵まれ、多少は上向いたもののそれでも中の下くらいの成績でした。その後も苦労の連続で、最終的には体を壊したことや様々なタイミングが重なって転職をすることになりました。正直まったく順風満帆という感じではなかったのですが、それでも良かったんです。
NPOでインターンした際も、まったく興味がないフィールドに飛び込み、多くの糧を得ることができました。証券会社に入り苦労しかしませんでしたが、苦労することは最初から分かっていたので自分としては想定内でした(企業側からするといい迷惑ですが)。でもそれ以上に多くの糧を得ることができました。魅力的な先輩や上司や同期とのご縁、営業力、金融や経済・政治の知識、ビジネスマナー、幹事力、(それなりに給料は良かったので)お金を使う経験、経営者の方と話す機会、大企業の制度や組織・文化、などなど。
その後のキャリアにおいても、まったく興味ない業界業種や、自分と真逆のタイプ人間が居る場所、など自分にないもの、持っていないもの、必要ないと決めつけていたものなどに触れ続けた10年間だったと思います。キャリアチェンジをするたびに、「給料泥棒」「新卒以下」「子どもみたいなことを言うな」など散々な言われようの状態からの再スタートにはなりましたが(笑)
でもすべては今繋がっていると感じています。つまり、"Connecting the dots(点と点は繋がる)"ということです。まさにそう思います。「未来を見て点をつなぐことはできない。できるのは過去を見てつなぐことだけだ」と。だから、今を一生懸命生きる。それがいずれどこかに繋がると信じて。
"生涯を賭すに足る場所を見つける"
そして漸く辿り着きました。
前職で創業メンバーを務めさせていただいた会社が、実は元々ホテル業を行っていました。しかし、創業直後に世界的な新型コロナウイルス感染症の蔓延という超絶な逆風に見舞われてしまいました。何とか2年ほどは耐えてきたのですが、その会社は外部の投資家の方々からご出資いただいており、いつまでもジリ貧のビジネスをしているわけにもいかず、事業転換を図ることになりました。そこで私が弊社を創業し、運営していたホテルの一部を引き継ぐことにしたのです。だから、『ORIGO JAPAN』という名前は、まず先に『HOTEL ORIGO』という自社ブランドのホテルがあり、あとから付けた社名となっています。社名に"JAPAN"を付けたのには2つ理由があります。1つ目は、ゆくゆくはグローバルカンパニーにしたいという想い。2つ目は、"日本発"・"日本を盛り上げる"という意味を込めました。ちなみに元々"ORIGO"というブランド名は、ギリシャ語で「原点」「起源」「中心」「オリジナル」を意味し、旅行者の方にとっての"出発点であり目的地"で在りたいという意味や、自社ブランドの中の"1号ブランド"という意味で名づけられました。
前職の会社について行くという選択肢もありましたが、私はスピンアウトをすることを選びました。理由は様々ありますが、1番の理由は、"観光業は課題と可能性に溢れている"と思ったからです。実際に従事してみるまでそんな風に思ったことは一度もありませんでした。何なら正直、旅行とか全然興味はありませんでした。そういう刹那的なお金の使い方よりも、形に残るものの方が好きでした。しかし、思い起こせば、カンボジアへのボランティアツアーだったり、バンクーバーへの留学だったり、そういう時の経験や出逢った友人たちは、自分にとってかけがえのないものとなっていることに気づかされました。"創造性は移動距離に比例する"、"多くの行動・選択をした者の方が幸福感を得やすい"、など色んな方のお言葉がありますが、まさにその通りだと今は思っています。
今、日本の観光業は多くの課題を抱えていると思っています。高度経済成長期に作られたビジネスモデルへの依存と限界、低賃金・過酷な労働環境と人材の流出、外部環境への耐性の低さ・脆弱な財務基盤、後継者問題、観光公害、諸外国に比べた観光で稼ぐ力の低さ、アナログな業界構造など。一方で、可能性にも満ちていると思っています。世界国際フォーラムが発表した2021年版観光魅力度ランキングで日本は初めて1位を獲得しました(このランキングにどれだけ意味があるかは置いておきます)。それくらい、日本には観光資源である食・文化・自然が充実しているのです。国の観光資源をコンテンツと捉えた時、日本のコンテンツのポテンシャルは計り知れません。ただ、それを活かしきれていないのが最大の課題です。同時に、この課題を解決することが低迷する日本経済、日本社会の突破口になると信じています。観光業は、日本の全産業の中で成長産業、稼ぎ頭の産業になる力を秘めています。そして、観光業が盛り上がり、地方都市への人の往来が活発になり、地方に眠る魅力や課題に旅人が触れた時、日本が抱える様々な課題は解決に向けて動き出すと考えています。
「無知の無知」という言葉があります。"何を知らないのかを知らない"という状態です。まずは、"自分が何を知らないのか"を知ることが重要であると思います。その意味において、旅は絶好の機会です。ある方は言いました。「人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える」と。物理的な"移動"は否が応でも、知らないことを知る、自分を変えることに繋がると思っています。少なくともそのきっかけにはなり得ると。「やりたいことがない、見つからない、わからない」という声をこれまでたくさん聞いてきました。そんな子たちに今伝えているのは、まずは行動すること、旅をすること、知ること、です。私もここに辿り着くのには、行動し続けて、嫌なこと、興味がないこと、真逆なことに挑戦し続けて10年かかりました。一人一人が行動し、旅をし、多くのことを目にし、実際に触れ、やりたいことを見つけた時、私が大好きなこの日本という国はきっと今よりもっともっと素晴らしい国になるんじゃないでしょうか。
話がだいぶ脱線しましたが、私の『在りたい姿』は『誰かの想いを実現できる存在』です。観光業というこの業界には"想い"を持った方々がたくさん居ます。私はそんな方々の"想い"を実現していきたい。そう思っています。その為に、その結果として、「観光業をもっとも魅力的な産業に」していきたいと思っています。私一人が成功する必要もないしそんな能力もないです。観光業がもっと魅力的な産業になり、優秀な人材が集まり、その一人一人が"想いを持った人"を助け、その"想い"が結実することが、より良いホテルを生み、より良い旅行体験に繋がり、ひいては日本を盛り上げることに繋がると信じています。そして、いつの日か「え、お前まだ外資系コンサルとか目指してんの?超草だな。今一番稼げてクリエイティブで熱くて面白いのは日本の観光業だよ?」と就活生や転職者や外国人の方が口にする世界にしていきたいと思っています。
そんな世界を一緒に創っていってくれる仲間を求めています。