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量子コンピュータって売れますか?どうやって事業化しますか?〜Sigma-i Lab #11 文字起こし!

量子技術の社会実装を手掛ける、東北大学発のスタートアップ「シグマアイ」。量子技術を活用した事業開発と、会社としての組織開発について、CEOと事業・組織開発のエキスパート2名が語り合いました。新技術で新しい市場を切りひらくために、必要なものは一体何なのか。本音トークで語りました。4月26日に開催された、オンラインミートアップ「Sigma-i Lab #11」のレポートをお送りいたします。

<登壇者>

大関 真之(おおぜき・まさゆき)シグマアイ代表取締役CEO。東北大学大学院情報科学研究科情報基礎科学専攻・教授

髙砂 優(たかすな・ゆう)シグマアイ 事業開発・組織開発担当

小林 孝広(こばやし・たかひろ)シグマアイ 事業開発・組織開発担当

大関研究室の横のカフェスペースで、学生が菓子を食べながら順番待ちをしている

○大関:はい、というわけで、どうなることかと思いましたが、こんばんはでございます。株式会社シグマアイの大関でございます。

さあ、そしてお二方。

○小林:同じく、株式会社シグマアイ事業開発の小林です。

○髙砂:同じく、髙砂です。

○大関:緊張してるでしょう、2回目ですよ。2回なんで、そう神妙な面持ちじゃなくて良いんですけれども、ただ、たぶん直前までは緊張しましたよね。

○小林:はい。

○髙砂:はい。

○大関:始められるかどうかっていう。

○小林:そうですね。

○大関:今、もう7時で回って、始まっているんですけれども、たぶん7時直前まで、PCの前でどたばたしていまして、何が悪いって、HDMIケーブルが悪いと。HDMIケーブルって皆さんご存じでした? 向きがあるんですよ。

○小林:これ、でも、向きがあるやつとないやつ。あるやつに初めて出くわしました。

○大関:そうそう、そうそう。テレビ側端子というのがあるんですよ。パソコンなのでディスプレーに差して、テレビ側端子っぽいことしていたんですけれども、それでやっとつながるということを確認して、いわゆるディスプレーの電源が、ready、goみたいになるじゃないですか。それで、あ、つながったと思ったら、何が起こったかって言ったら、PCの画面は結局映らない。

なので、抜いて、取ってきてって言って。こういうときは、学生さんがいると助かりますね。

○小林:助かりました。

○髙砂:助かりました。

○大関:本当にもう、二人ほどに駆けずり回っていただいて、2本到着するという。ほぼ同着だったんでね、もうしょうがないって言って、片方を使わせていただきましたけれども、皆さん、いかがお過ごしでしょうか、シグマアイのチャンネルでございます。

だって、直前までさ、皆さんが来てても対応できなかったですか。

一応、ここね、大学の研究室をお借りしてやっておりますので、直前まで大学教員の大関でございましたけれども、重ね合わせの状態でなんとか過ごしてます。

○小林:でも、すごいですよね。普通ならちょっと準備があるから、もう後でいい、みたいになるのに、必ず最後まで話を聞き切るみたいな。

○髙砂:そうなんですよ。

○小林:そういうスタンスをちょっとね。

○髙砂:ここはね、強く訴えたいところですね。

○大関:ありがとうございます。

○髙砂:本業は何かということを絶対忘れないというのが、いいところ。

○大関:だから、そうですよね、僕の大学教員ぶりというのも、ある意味、初めて見たんじゃないかなと思うんですよ。

○髙砂:そうなんですよ。

○大関:仙台に来ると、だいたい学生さんが、進捗だったりとか、お悩みですよね。だいたいお悩みなんですけれども、お悩み相談を持ってきて、ここのテーブルに、僕はここで作業しているんですけども、そしたら、先生がいるって聞きつけた、うわさが広がってみんなやって来るんですよ。それで、そこのカフェスペースのところで、みんな、菓子でも食いながら待ちくたびれるという。「次の方」って言って。

○髙砂:そういう感じなんですね。

○大関:ほかの人の質疑であったり、相談事を聞いていた、励まされる部分とか、同じ悩みを抱えているんだね、みたいなのもあるし、だいたい計算だったりプログラムだったりの悩みって似ているところもありますからね、だから、そういうのを共有できていいかなと思いましたけども。

というわけで、ようやく落ち着いてきました。はい。本当にね、本当に生きているって感じですね。

○髙砂:ここで、言おうとしていた一つのねたを、初っぱなから使っちゃいました。

○大関:はい。

○髙砂:ちゃんとそういうこともしているんだぞというのを、これは言おうって言ったのに。

○大関:それを開始分ぐらいでもう言っちゃいましたからね。というわけで、ネタがないです。ネタがないというよりも、タイトルには、量子技術を私たちも扱っていながら、でも、会社としてはちゃんと成長していかなきゃいけないので、その屋台骨となる事業開発、あと、何だっけ。事業開発と組織開発。今、まさにその組織開発がぐんぐん進んでいて、事業開発については、日々議論を進めているところで、シグマアイでその担当をされている髙砂さんと小林さんによる2回目の話でございますけれど。

「事業開発」の定義は、その会社の定義になる

○大関:前回は、コアメッセージであるとか、評価制度であるとか、そんな話をしてしまいまして。してしまいましてというのはなぜかと言うと、彼らが来たときに何を言っていたかと言うと、一番重要な部分を1回目で言っちゃったから、2回目は何を言ったらいいんだろうと言って、緊張の面持ちであるということでございますけれども、会社にとっては重要な組織開発、事業開発の話でございますけれども。

うちのシグマアイには、それこそ学生さんも社員・アルバイトで入っていらっしゃいますけれども、そもそも事業開発と組織開発って、学校の教科書に書いていないじゃないですか。

○小林:まあ、書いていないですね。

○大関:組織開発は、何となくイメージがつくんですよ。会社の組織をこれこれこういうふうにすると、例えば、組織ですから、上司がいて、部下がいてとか、ピラミッド構造にするのかとか、フラットなかたちにするのかとか、評価制度もそうじゃないですか。どういうふうに情報伝達させたらいいんですか、ということでイメージはつくんですけど、事業開発って何ですか。社長が聞く、です。

○髙砂:すごい質問ですね(笑)。

○大関:ええ。本当に教科書に書いていないから、言うたら誰も知らないまま大学とかを卒業されて、企業で就職して、何かしらの経験を積んでいる中で、これぞ事業開発だというふうになるわけですよね。だから、そもそも事業開発は何であって、どういうふうに皆さんは教育されてきたかとか、訓練してきたかという話を聞きたいかなというのが、まず素人として思うんですけど。

○髙砂:私は、事業開発なんて、確かに学校で習わないですね。

○大関:習わないし、大学ではやらないですよ。

○髙砂:大学で、経営学部とかではないんですか。

○大関:経営学部じゃないので分からないですけど、事業開発ってね、少なくとも僕ら理系はやらないんですよ。

○髙砂:文系もやらないですよね。

○大関:やらないですね。うん、そう。だから、やらないからこそ、みんな手探りで、現場ひゃっぺんでやっているんじゃないかなと思うんですよね。だからこそ、みんな知りたいと思って。

○小林:それこそ、優ちゃんとかは、キャリア的、グロービスとかを経験している中で、そういうのめっちゃ教えているところじゃないですか。

○大関:ああ、なるほど。

○髙砂:教えていないですね。

○小林:優ちゃんは教えていないにしても、そういった、いわゆる社会人向けのMBAとか、そういうところでは、事業開発を教えていたりするんですか。

○髙砂:教えているんじゃないですか。その方法論みたいな。たぶん。そういう本もありますし、何らかの事業開発たるや、こういうものの構成要素でできています、みたいなものを、再現性を持ったかたちで表現しているようなものというのは、たぶん世の中にあると思いますけど。どうなんですね。

結局、事業開発というものを、こういうものだというふうに言っちゃう。何かしら定義は必要かもしれないですけど、そこでどう定義するかによって、その会社が全然変わってくると思うし。

○大関:はいはい。

○髙砂:僕は商社にいて、商社はやっぱり仕組み作りみたいなこと言われるんですね。もうけの仕組み作りですよね。だから、そんなことでもうけるの? みたいなこととか、いろいろあるんですけれど、でも、どこか輸入して日本に売る、みたいな話もあれば、それだけじゃないんですよね。いろいろな、ちょっと言いづらいこともありますけど、投資してリターンを得るみたいな話であって。

どうなんでしょうね、それ自体がその会社の事業というか、新しいビジネスの収益源であれば、それは事業開発として新しく何か作った話かもしれないですし、ものの本によっては、当事者がいて、その対価は何? 金銭の収益は何だ、みたいな。その仕組みを考えることはビジネスモデル構築であって、これ体現するのが事業開発だと。

それって、分からないですけど、人それぞれ、ばらばらなんだと思うんですよね。

○大関:なるほどね。だから、そう思うと、シグマアイ的には、僕がいるとか、共同代表の観山がいるとか、学生さんも、理系の人が多いということを考えると、理系的に事業開発を考えたくなるんですよ。

○髙砂:ああ、なるほど。

○大関:だから、事業開発ってそもそも何だって聞いたのは、目的もそうだし、どんなパーツがあって、それらをどう組み合わせて考えていくんですかというのが知りたかったんですね。

まず、そもそもキーワードとしては事業ですよね。ビジネス。だから、もうけるための仕組みって言ってくれたけれども、もうけなきゃいけないからもうけるが目標ですと。しかも、既存のもうけ方もあれば、これぞ新しいもうけ方があって、ほかにはまねできないものもあるかもしれないと。

うちならではのものがあるかもしれないから、それを開発しようってことになるわけですよね。それの議論をするのが事業開発部ということですよね。

事業開発には、人が関わっている。だから、組織開発にもつながる

○髙砂:そうですね。本当にそのとおりで、シグマアイは、当然お金もうけの会社なので、するんだけれども、その先にある何でしょう、社会的にどういうインパクトを与えたいんだとか、丸っとした言い方ですけど、とはいえ、もうちょっと、例えば停滞した組織の中で、人をこんなふうに抱えていて、組織にいろんな人がいると思うんですけど、頑張りたい人を頑張れるようにする、みたいな話とか、何となく蔓延してしまった停滞感を、ある種、風穴を開けるような、そんな雰囲気を醸成したいという話でもいいと思うんですけど。

何かしらのそういう目的があって、そのために、さっき言ったようないろいろな構成要素があって、どうもうけていくの、みたいな話だとか、もうけるプロセスを経て、これまで言えなかったことが言えるようになったとか、全然視点が変わって、こんなことやってみようと思うようになったとか、そういう営みを通じて、そこの人が新しい成功体験した、みたいなことが結果的にその会社の新しい文化を作るみたいな話とかもあると思うので。

抽象的になりますけれど、そういうことを意図したい、というところがあります。

○大関:だから、利益以外にも、会社の中にため込む人材であったり、経験値としてのかたちもそうだし、後々売れるかもしれないとか、後々ねたになるかもしれないから、取りあえず吸収ベースで、何か、資材を確保するみたいなものも含めてということですよね。

○髙砂:そうですね。

○大関:関連して、だから人が関わっていることだから、組織開発にもつながるとか、連関して、考えるところも出てくるという。

○髙砂:そうなんですよ。だから、事業開発で、今みたいな、人をどうしたいとか、社会をどうしたい、みたいなものをなしに事業開発ということを捉えることもできるちゃできることができて、それは単純にお金を多く稼ぎたいみたいな話で閉じる話かもしれないし。

もうちょっと広く事業開発というものを捉えようとしたときには、もっと視野が広がるし、視点も広がるし、視座も高いところが見られる。全体が見られるという話もあるので、本当にそれをどうする定義するかというのは、会社の強みそのものに、大きく影響を与えるのかなとは思います。

○大関:研究開発側として発言すると、どうしても材料を用意する側なんですよね。売れます、これ? みたいな。だから、売れるねたを作ると、研究開発は思っているわけですよね。だから、ある意味ボトムなんですかね。

それを売ってくださいよって、たぶん事業部という人たちにはお伝えするんだと思うんですけど、事業部の人たちは、そういう意味では、もっと柱というか、縦長のことを考えているというイメージなんですかね。

○髙砂:何でしょうね、僕も両輪だと思っていて、抽象的な話だけだと、当然、話も聞いてくれないところもあるし、全然、人に説得力もないときに、具体的にこういうものを持っていますというのは、すごく武器になるわけで、われわれだったら、量子という言葉が出てきたときに、それをフックと言ったら変ですけれど、それを使ってこんなことができる世の中にできるかもしれません、みたいなことを言うと、盛り上がってくる話かもしれないですし。

量子コンピュータって売れますか?

○大関:よし、今日は機嫌がいいから、ちょっとぶっ込むか。

量子コンピュータって売れますか? 事業開発という観点において。

量子コンピュータそのものだけじゃないじゃないですか。例えばシグマアイの場合は、その物を作るわけではなくて、例えば量子コンピュータとか、量子アニーリングマシンを使うスキルがあります。どこで使ったらいいかの視点があります、ということが出発点だったわけですよね。

それを、まず売れるのか。売れないなら、どう売るのかという話を、世界で初めてしたいと思います(笑)。それをちゃんと言っている人って、いないんですよ。

○小林:そうですね。

○大関:僕が参加している国際会議だとか、そういうセッションでは、量子ビジネスみたいな話は当然あって、量子コンピュータと、量子アニーリングとか、そういう新しい量子先端技術はビジネスチャンスですと。矢野経済研究所が、事業事業規模はこれぐらいありますと言うじゃないですか。よく分からない算数で(笑)。

この算数はどうやったかは分からないけれども、ただ、直近、僕らがやることは、お仕事として、売るものは、ある意味裸一貫それしかないので、それだけじゃ駄目だよねということで、例えば大学であったり研究所は、研究しても、ある意味、それでどうするんだみたいなジレンマというか、何というかになっているわけですよね。

だけど、それを何とかしましょうということで企業の出番が出てきて、そういう意味では、事業開発というのができるところが、量子コンピューティングという技術と結び付くことによって、ある意味狭い視野だった、量子コンピュータがあればいいんですよという、ある種の絵空事のように聞こえるものから、現実に引き付けていくというのが事業開発なんだと思うんですよ。

じゃあ、ぶっちゃけ今の時点で売れると思うか。売れると思うなら、それはそれで面白いし、売れないとしたら、どうすればいいかというのを、この1時間の間で語りたいんですよ。

○小林:できるかな。あと40分か(笑)。

○大関:でも、そこについて真面目にもそうだし、短かかろうが何だろうが本気で考えるという人たちを見たことが、あんまりないんですよ。もちろん、それぞれの中ではやっているかもしれないけど、外向けにというか、オープンで言った人っていないと思うんですよね。

○髙砂:シグマアイならではなんですね。

○小林:そうですね。

○大関:もう言っちゃうんだ、みたいな。手の内を見せちゃうんだ、みたいな話ですけれども、やれるもんならやってみろって言って。

どうなんですか。量子コンピュータにどんな気持ち、どんなイメージを持っていらしたんでしたっけ。

○小林:入社したときって、量子コンピュータが、何か未来のスーパーマシンみたいな感じですよね。

○大関:そんな感じなんですか。

○小林:そんな感じですよね。何だかよく分からないけど、取りあえずめっちゃ速いという情報はあったし、ただ、それが、入社した段階では、いわゆる、それぞれの、今ある古典コンピュータみたいに、みんな1人1台持つような、そういうものになるかのか、いや、そうじゃないのかみたいなイメージは全然なくて、何かしら、取りあえずすげえ技術と物ができ始めている。これを社会の世の中に出していくことに関われるなら、めっちゃ面白そうじゃん、ぐらいのイメージしかなかったんですよね。

○大関:すごい勇気ですよね。

○小林:はい、そうですね。

○大関:優ちゃんは。

○髙砂:僕も、コンピュータなので、あらゆるものに通う血みたいなものだから、これはもう、この規模感たるや、もう地球規模というふうに思ったということで、それはもう、ひっくり返すという、山っ気みたいなものがありますよね、それは。

ただ、社会実装って言葉が、シグマアイに来たときにあったので、当然、それは結び付けるということがないと、それそのものでは生きないなというのが、何となくあって、それぐらいですね。すごいな、計算の速さってところに、どうしても最初は行っちゃいましたし、入ってからですよ、このトレードオフが分かりはじめたのは(笑)。

○大関:そんな夢物語じゃねえよって言って。

○髙砂:そういうことは入ってからですけれど、入る前はそんな感じで捉えていましたね。

誰も売ったことのないものだから、俺が売る!

○大関:入って、夢物語じゃねえんだよと。夢物語じゃないんだよというかね、現実的になったからすげえって話なんですけれども、そういうお花畑じゃないんだよって言われて、どうです? 今、しんどくないですか(笑)。

○小林:ううん、しんどさは、正直、しんどさは、僕はなくて。むしろ楽しさというか、わくわくのほうがあって、ある意味、もう少し、いわゆる技術的に、量子コンピュータがある意味もう少し広く、みんなが簡単に使えるものに、ここ1、2年でなっていくのかなぐらいのイメージで思っていたんですけど、いやいや、全然そうじゃないよと。
 結局、コンピュータそのものが売れるとか、そうじゃなくて、ソリューションと一緒にとか、ソリューションの後ろで使われているものみたいなイメージというのが分かってきたので、そういう意味では、事業開発をやっている人間としては、やりがいがあるなというのはありますよね。

○大関:そうか。誰も、ある意味、売ったことのないものだから、俺が売れるようにしてやる。

○小林:そうそう。

○大関:優ちゃんは。

○髙砂:量子コンピュータそのものというのが、入ってきて、私自身もどんなものかなって、いろいろ話をしていて思ったんですけど、いわゆる重ね合わせみたいなことを言うじゃないですか。でも、重ね合わせるというものというのが、自分の個人的な関心事もそうなんですけれど、白黒はっきり付けないというところに対して、確率論的に答えを出すような説明がされていますけど、あれって、これからの人にとって大事な考えで、すごい思うんですね。

何らかのかたちで線引きして、人を無理やり当て込むような考え方を今までしてきたじゃないですか。君はこの線引きよりこっちだと。だからいいとか、悪いとか、それは、例えば性別とか、いろんな思考とかも全部、こういう線引き。例えば男、女、みたいな感じですけど、でも、男も、女も、例えば、真ん中みたいな人ももちろんあるし、どっち、比較的こっち寄りみたいな。例えば、そういうものがあったりとかもあるし、それは性格だってそうだし、物事の価値観は全部そうですよね。

すげえいい大学へ行ったら勝ち、みたいな話もあれば、全然そんなんじゃない。べつに、人間ってそもそも、その線引きの下に生まれてきたわけじゃないので、いろんな多様性がある、いろんな要素、特性を持っているときに、量子コンピュータというのが、そこを捉えるものだって言ったときに、人の生き方と、多様な中での何らかの最適点を見いだすみたいな。多様性を無視しないで、大事にしながら、人を幸せにしていくみたいな。

要するに、多分に抽象的なんですけど、でも、思想自体は、すごくそう、へえと思って、最近、すごく、そういうことを考えていることと、このコンピュータの特性を見て、今、いろんな事業開発をやっていると、新しい価値観というところに刺さる、新しい親和性がある思っていて。

これは、人にも説明するのは難しいから、僕自身は、でも、そういうところに納得感があるんですよね。普通、量子みたいなことを言うと、だいたい核融合となって、エクストリームみたいになって、エクストリームスポーツをやっているんでしょう、みたいなことを言われるんですけれど。

そうかもしれないけれど、何か自分の中には納得感があって、あんまり、ここまで、こういうもの取り扱うと、ほかの何かを扱う気にもならないというか。それぐらい、ひっくり返るかもしれないけど、どうなるか分からないみたいなところで何かやっている自分は、ほかには目を向けられないというか、そんなちょっとおかしな感覚です。

クライアントの中の「人」を変えていかないと、量子コンピュータは売れない

○小林:根がギャンブラーなんですかね、僕らは。

○髙砂:どうなんでしょうね。

○小林:でも、お互い、キャリア的にはいろいろなことを経験してきた中で、一番スリルがある部分にいることが面白いと思っちゃっているんでしょうね。

○髙砂:みんな、意外にやらないなと思ったんだけど、意外という考え自体がおかしいんだろうね。意外じゃなくて、こっちが意外なあれなんですよ。

○大関:ああ、そういうこと。意外なんじゃないんですか。

だから、最近、シグマアイの連中とおしゃべりをしていても、俺らが変わっていることに気付いていないという。自覚ないでしょ、みんな。

○小林:うん、そうかもしれないですね。

○大関:だから、早くこっち側に来ちゃいなよ、みんな、という部分もあるんですよね。

○髙砂:ただ、あるとき、いろんな友達とかと話してみたときに、思ったよりみんな、こういうことに興味ないんだとか、しないんだみたいなことをふと思った。もっと、みんな、興味あったり、こういうところに行きたいと言うと思ったんですね、正直。

○大関:はいはい。新しいことだからね。

○髙砂:そうそう。そうしたら、思ったより、みんなそうしないので、あれ? 何で?と思って。

○大関:やっぱり、リモートワークにしたって、何だって、新しい考え方もそうだし、新しいスタイルというのも、意外とそんなに浸透しないのは、そういう新しいことに挑戦なのか何なのか分かんないですけど、適応かな、というのは、多くの人はなかなか難しいんだと思うんですよね。

技術だってしっかりじゃないですか。それこそよく分からないんですよね。

そこをぶち破るために、売らなきゃいけない。

○小林:なるほど、そうですね。

○大関:うん。

○髙砂:これは、だから、お客さんとお話をしに行ったときにも、そういうものは、むしろ、若干押し付けじゃないですけど、え? こんなすごいんだからやるでしょみたいな感じで言うと、向こうは、え?ってなって。いやいや、そんなん全然ですよと言って。

目の前のことがあるし、そんな先のことはいいですわっていう感じの人もいて、だって、ビジネスで勝つんだったら、10年先に今から出し抜くことをしましょうよみたいな感じで、こっちは普通に言うんだけども、そんなの、いやいや、いや、というところに、若干、勝手な思い込みじゃないけれど、ちょっとそういうのはあるかもしれないですね。

○小林:そうですね。だから、たぶん、シグマアイのメンバーは、いわゆるコンフォートゾーンがバグっているんですよ、たぶん。

世の中的には、さっき言ったリモートワークが意外と、最終的には浸透しないとか、というところも含めて、コンフォートゾーンから出ることに対する、パワーとか、ストレスみたいなところというものに、無意識的に敏感だから、結局コンフォートゾーンから出られない人が大半。社会的にたぶんそうなんだと思うんですよ、人というのは。

その中で、お客さんも、やりたいこととか課題感みたいのはあるんだけど、あくまで、それってコンフォートゾーンの中だと思うんです。僕らが言うのは、その外側のことを言っているから、お客さんからすると、そこに乗ってくるような人じゃないと一緒にできないよね。

それが、シグマアイメイト(メイト=仲間)みたいなところだと思うんですけど、そこを突き破るような提案だったり、人を変えるだとか、というところですよね。そこをやっていかないと、量子コンピュータは売れないというか。

○大関:それは、人を変えなきゃというのは、だいたい、内輪を変えなきゃって言いますよね。外の人たちも変えちゃうというレベルで考えるんですね。

○小林:そうですね。外の人たちも、1回、量子コンピュータを浸透させていくには、そういう考えを持った人を何とか見つけて、その人を起点に、その会社だったり、その周りの人を一緒にちょっとずつ変えていくみたいなところが、必要なんだとは思いますね。

○髙砂:そこはちょっと難しいところで、変えたいと思うし、変わればいいなと思うけど、自分が受けるときって、そんな簡単に変わる? だって、自分は反対に、なんでそんなエクストリームな世界に?と思うこともある。嫌ですよと言うわけだから、同じなわけですよ。

○大関:はいはい、はいはい。

○髙砂:そうなったときに、そうはうまくいかないかもしれないなって、いろいろ現実を突き付けられるわけですね、正直言って。はあ? みたいな感じで。終わった後、俺、やってやったぜ、みたいな感じだけど、周りがしいんとしているとかも、あるし。

でも、中には、そういう、ちょっといるんだと思うんですよね。そういう人をくすぐって、そういう人を、100人のうち1人でもいたら、その人を刺激して、何かして、周りに影響を与えていくみたいな、そんな感じなところもちょっとあるので、どうやればシステマチックにうまくいくのかが分からない。分からないんですけどね。

課題を解決するだけではなく、課題をつくる

○大関:事業開発の普段の事業部の中で営みだったり、社内の議論だったりするときには、手順みたいなものを考えたりとかするんですか。

○髙砂:顧客攻略の、みたいなことですか。

○大関:そうそう。

○髙砂:いや、そういうふうにしたいなと思ったことも何度もありますけど、正直、なかなかそうは行かせてくれないところもあるし、それで果たしてうまくいくのかな、みたいな。

○大関:それは、お客さんの数とか、種類というか、多様性がありすぎて、全部カバーしきれる一本筋の道があるわけではないから、というセンスで言っています?

○髙砂:そうですね。僕らが今、持っているものは、何かしらのものがあって、これを売りますみたいな話であれば、当然、これが刺さる層がいて、そこに対してはこういうふうにして。

○大関:集中的にね。

○髙砂:そうであれば、オーソドックスな営業戦略みたいなかたちで行けるかもしれないですけれど、そもそも、カスタムメイドで課題を見つけてみたいな。

○大関:そうですよね。

○髙砂:その課題も、テーマとしてはいろいろあって、難しいところですよね。例えば戦略なら戦略みたいなところにいきなり行けるかって言ったら、そういうわけでもないし、そういうブランディングでうちはやっているわけでもじゃないですか。人材というわけでもないし、かと言ってシステムでもないと言ったときに、唯一、量子という言葉がありますけど、でも、そこだけだったら、じゃあ、それって何に使うのという話になって、やっぱり、標的が定めづらいところに対しては、攻め方も、なかなか、効率よく行くみたいなことって難しいところなので。だから、効率的にやっていくみたいな。

○大関:ありますよね。

○髙砂:ありますけど。

○大関:ほかの企業さんとか、過去の例で、こんなことをやっている人たちっているんですか。

○小林:ある程度は、マニュアルはあると思いますよ。

○大関:あますよね。だから、作るべきだという考えとか意見もあり得るんだけれども、今、そこまではしていない。むしろ、みんな遊撃剣士のように、ゲリラのように攻めているじゃないですか。

○小林:そうですね。ある意味、今はこういう組織の規模というのもあるし、量子コンピュータの、いわゆる社会的な黎明期というか、そういう状態だから、マニュアルがなくても動ける人たちが取りあえず集まってやっているところもあると思うんですけど、これから組織規模が大きくなっていったりすると、当然必要になってくるところだと思うんですけど。

やっぱり、お客さんも十人十色だし、経営層から始まる話もあれば、担当者から始まる話もあれば、そこは千差万別なので、今のところマニュアルにできるような要素はどこなんだ、というのがまだ見つかっていないんですよ。

○大関:まさに黎明期ですね。

○小林:うん、本当に。

○大関:この前、シグマアイのことを知っている人にお会いして、改めて、事業内容であるとか、僕らがやっていることをお話ししたら、ちょっとこれはなるほどって思った表現があって、要するにお医者さんですねって言われたんですよ。

しかも企業のとか、何かしらの業界のと言うべきなんですかね。例えば物流で最適化問題を解きますというのは、物流業界の、ある種の難しくなっているところですよね。どん詰まっているところをほぐしましょう、直しましょうということだから、病気で例えるなら、どこかしらの悪性腫瘍がありましたので、それが積み重なってしまっていてこの業界が悪循環に陥っているというのを課題として見つけて、それを直すと。

直すにしても、直す方法は、医学の場合だったら、直し方は分かるんですよね。確かに。最適化問題でこういう定式化をしましょうとか、その上でこういうシステムを作りましょうということは提案できるので、直し方を知っているんだなって思うと、お医者さんじゃないですかと言われて、ほうって思ったことがあるんですよ。

量子コンピュータを使って、お医者さんを企業向けにやっているんだねって言われたんですよ。それをどうやって表現したらいいんだろうというのはあるんですよ。量子のお医者さんと言ったら意味が違うし、みたいな。企業の診断をしますって言ったら、上から偉そうにって感じだし、とか。でも、言っていることは分からんでもないぞというのは思ったんですよね。

○髙砂:お医者さん論って結構あるんですけど、時としてネガティブに捉えられる表現であって、やっぱり医者は課題を作らないと思うんですよ。起きた病気に対しては、もちろん直しますけど、お医者さんのことをどうこう言っているのじゃなくて、基本的に、出た病気に対してのあれだと思うのですけれど。

○大関:そうか、見たことのない病気だって。

○髙砂:見たこともない話じゃないと思うので。

○大関:しかも、病気だというわけじゃないんだけど、これを、ここをもっとこうしたらもっと良くなりまっせという、ドクターストレッチ的な部分もありますよね。トレーニングというか。

○小林:コーチングに近いんですかね。

○大関:ああ。

○髙砂:それこそ、コアメッセージを作るときにも議論したんですけれど、ドラえもんみたいな話をしていて、ドラえもんは課題を作るの?と。そういう話を。

○大関:ドラえもんが課題を作ったらいいね。のび太くん、君はここが駄目だから直せとか、宿題をやれとか。

○髙砂:そうですね。

○大関:余計なお世話だよて。でも、そうだね。

○髙砂:そうなんですよ。よく言うのが、もちろんやりたいことがあって手段が来るという話もあるのだけれど。僕は個人的に、そういう考えでずっといたんだけれども、今思うのは、こういう技術から初めて生まれる発想があったり、こんな世の中って今まで描けなかったけど、できるんじゃないか、みたいなときに、新しい課題という言い方があれか、課題と言いますけど、そういうものが技術によって初めてできたときに、これは医者以上のことをクリエイトするというんですかね、創造するようなことがあると見たときには、ちょっとドクターということだけでは表現しきれないシグマアイの良さ、みたいなものが何かあるのかなという。

シグマアイのメンバーは、「表現者」

○大関:この前、インタビューをやって、台本とかもちろん用意せずに、普通にその場で受け答えしていましたけれど、シグマアイの社員はどういうメンバーかと言ったときに、技術者でもないであるとか、事業家でもないという話は当然ですけど、表現者って言ったことがあるんですよね。

○小林:ほお。

○大関:たぶん、だから、そこに見えているものを、なんかこれをこうしたいとか、表現するわけじゃないですか。そのときに、人を引き上げるとか、チームを引き上げるために、今おっしゃったような、こういう世界が待っているとか、こういうことを僕らができるから一緒にやりませんかと、最初に表現しないと伝わらないわけじゃないですか。

そのファーストアクションがインプレッシブじゃなかったら全然駄目だし。しかも、誰も見たことのないものだから、どう言葉を尽くして、どう絵を使ってとか、プレゼンテーションを頑張ってということを考えると、まず表現者ありきなんだろうなというのを、その場で思ってね、そんなことを答えたことを今、思い出しましたね。

○髙砂:表現というところで、さっきの話に戻っちゃうのだけれど、表現としてばんと行くべきなのか、ちょっと小出しにしながら、表現者ということを言っていくべきなのか、みたいな話が常にあって、はあ、分かりましたって言われちゃうところも、なんかあったりもするし、だんだん入っていって、あ、そんな未来も描けるんですね、みたいなこともある。

○大関:確かにね、自分は講演をいろいろ外でやっていますけれども、たいがい、お客さんがある意味引くんですよね、圧倒されてね。例えば質問のある方って、あるじゃないですか。まあ、まずできませんよね、みたいな感じで。

だけど、それで悪いのかと思ったら、終わった後とかの名刺交換のときとかに、強烈なリアクションをしてくる方がいて、それでお客さんになったであるとか、お客さん候補になったりはするので、僕個人的には、ばあんのばあんで、もっとすごい、もっとインプレッシブに引きつけるものを用意して、引き上げていくというのがいいのかなとは思いますよね。

その後に、すっと現れるとか、実務を担当されている方とお付き合いするという流れが、結構あるかなと思うんですよね。

○髙砂:そうですね。

○大関:株式会社高速さんとの出会いだって、最初は量子コンピュータでばんとお伝えして、うちの会社は何の会社か分かっています?って怒られましたからね。いや、分かっていますよ、みたいな。ばんの後に、すっとね、実際の倉庫のお話をちゃんと聞いて、ちゃんとして、意外に量子コンピュータを使うとこっちのお話ができますよというふうにつながったというのはありますからね。

だから、そう考えると、事業開発というのは大変ですね。上から、下から、横から、もう。

○髙砂:何でもありですよね。

○大関:ね。

○小林:本当、そうですね。

○大関:しかも、スタートアップならではで、しかも量子コンピュータならではで、新しいことずくめだから余計ね。

○髙砂:そうなんですよね。治療のし直しみたいな。

○大関:そうですよね。いろいろぶっ壊された感があるんですよね。

○髙砂:そうですね。いい意味で、よく分からない技術なるものを世の中に出していく、みたいな話は、こういうプロセスを経るのだろうし、それこそ再現性のあるやり方で行けるんだったら、もっとみんな楽勝だと思うんですけど、だからこそ開拓する楽しみ、喜びも、それこそ。

○大関:開拓者マインドみたいな。

でも、そうですよね。新しいことだから、お金だけじゃなくて、自分がそれを発見したぞとか、世に広めたぞとか、そういうことも含め、少なくとも違った景色が見られるという意味ではね。

最適な組織は何か。答えは全く出ていない

そういう意味では、開拓初だらけのやばいやつらが集まっている組織なわけだけど、そんな中で、組織開発ですよ。普通にピラミッド型で、CEOがばんといて、CTOがばんといて、COOがいて、上位から解脱するようなピラミッド構造じゃ無理なんじゃないですか。

○小林:うん、本当にそうですよね。

たぶん組織開発って、本当に今始まったというか、これからだと思うんですよね。今はまだ、本当に、そういった意味ではマニュアルがなくても動けるようなメンバーが集まってやっているから、組織として体を成してないくても回っているフェーズだと思っていて、ただ、評価制度なんかも入れながら、それぞれ等級というか、表評価制度からの職責があったりとか、みたいなものをいろいろ定義して、やっとスタート地点に立ったので。

これから、等級間ごとのコミュニケーションだったり、レポートラインをどうするんだというところに関しては、本当にこれから始まるところで、こればっかりは、正直まだ僕の中でも答えが全く出ていなくて、たぶんトライアンドエラーの繰り返しだと思うんですけど、当然、縦串と横串があって、それがどう混じり合うのかとか、いやいや斜めもあるよねとか、それがいつもくるくる回っているじゃんとか、そんなことがシグマアイでも起き始めると思うんですよね。

そういった意味では、今、世の中であるようなクリエーティブな会社の組織はこうです、みたいなこともお手本にしたとて、たぶんうまくいかないと思っていて。

そこは、ちょっとこれから楽しみな部分がありますよね。

○大関:組織開発をするぞという考えられたきっかけというのは、人数なんですか。それとも何かしらのインシデントがあったとか、エピソードがあるんですか。

○小林:いや、それは、僕の過去の経験の中でも、それぞれスタートアップって濃いメンバーが集まるんですね。

○大関:すみません(笑)。

○小林:創業メンバーもしかり、第2フェーズで入ってきているスタートアップ時の10人ぐらいのメンバーとか、濃いメンバーがいると、僕らもそうなんですけど、それぞれ思惑だったり、価値観が違うので、うまく機能しなくなるとすぐ壊れちゃうんですよ。

僕はそういう経験もしてきているので、それはもったいない気がするのです。そういう意味では、頑張った人が評価される評価制度だったり、クリエーティビティーを壊さないために評価されない評価制度にしたりとか、というところで、何かしら一つのルールじゃないけれども、そういうものが明確にないと、崩壊しちゃう経験を僕はしているので、そうしたくないなというのがきっかけですよね。

○大関:そうなると、なるほどね。確かに表面化はしないけれども、代表として、従業員の方々にヒアリングじゃないけど、ランチしたりとかして、いろいろな話とか、いろんな考えとかが出てきて、まあ、みんな強いんだ。主張も強ければ、あくも強くて、全部みんな正しいんですよね。思いを持ってやっているから余計ね。

それを、どう折り合いつけていこうかなというのももちろんそうだし、そのパワーを減じないように、損なわないようにするためにはどうしたらいいのかなというのは、悪戦苦闘していますけどね。

今時点で、シグマアイの組織として、どんな体制がいいんだろうって、仮説があったりはするんですか。

○小林:いや、全くないです(笑)。

○大関:ないですか。

○小林:こればかりは。

○大関:そのぐらいぶっ飛んでいるんですか。

○小林:ぶっ飛んでいますね。まず一つあるのは、決まった仕事がないんですね。

○大関:そうなの。毎日、みんなは何をしているんだろうって思うぐらいに、毎日やることが変わるし、次への布石も、○だったり、△だったり、□だったりするじゃないですか。そうですよね。

○小林:一つ案件化されちゃえば、ある程度、その中でのやらなきゃいけないTodoが決まってくるから、それぞれに役割を与えて、みたいなこともできるんですけど、そうじゃない状態のときというのは、全く決まった仕事がないから、常にこれをやっておいてみたいな指示を出せるようなこともないし、みたいなところがあるんで、そこは、ちょっと、どういう組織にしたらいいかとか、どういうレポートラインを組むと一番効率がいいのかというのは、全く今、思いついていないという。

これは、マネジャー陣と話はしているんですけど、全然答えが出てこないですね。

○大関:かと言って、勉強しとけというのは違うんですね。かと言って、お客さん行脚しておけというのも、また違うわけですよね。

○小林:違います。

○大関:なるほどね。だからこそ、事業開発して何か定まればねいいはいいんですけどね、逆に言うと、今、ある意味時間があるというか、悩める時間だから、どこに発散してもいいという意味でもあるんですね。

○小林:そうですね。

○大関:なるほど。

一人ひとりのメンバーの興味が違う。だから、案件の業種もバラバラ(笑)

○髙砂:さっき言った、何らかの型にはまった感じで攻勢をかけられる状態であれば、もちろんそういう人をたくさん採って、決めたことをやってくださいというふうな話にはなると思うんですけれど、われわれが何を届けようかというところが、こういうものを、がちっと今届けるような話になっていない以上、われわれ自身がやることが何なのか。自分で考えているんですけど。

みんながそういうことをやっていて、そのうちまとまってくると、あの人はこっち、あの人はこっち、みたいな、折り合いついて、ということが可能になるんですけど。

○大関:どっかでうまくいくだろうもそうだし、どっかで世の中に響く、大切にされるところが分かるだろうということはありますよね。

○髙砂:そうですね。

○大関:ちょうどあれですよ、質問でも出てきていますけれど、案件が毎回全然違う仕事になるということですかって。全然違うよね。これがなぞですね(笑)。

○小林:業界も全く違うし。

○大関:最適化問題を解きますって最初は言っていたから、それはもちろん今の方法としてはそうしているんですけど。最適化問題自体、カバー範囲が広いのはあるんですけど、でも有効範囲というか、一番そのメリットがあるところはここだよね、みたいなものは何かしらあるわけですよね。

例えば簡単に言えば、物流業界が困っているから、物流で一つうまくいきそうなものがあったら普通は、物流物流物流で攻めていくじゃないですか。

○小林:はいはい。

○大関:だけど、違うじゃない。物流以外もやっていますよね。倉庫の話もそうだし、イノシシの話もそうだし、仙台市の「whis+」もそうだし、なんでこうなるんですか。従業員の方は大変じゃないですか。代表が言うのもなんですけれど。

○小林:でも、それって、たぶんシグマアイのカルチャーの一つだと思うんですけど、興味のあることをやりましょうよというのが前提にあるから、興味が、みんなそれぞれ違うメンバーが集まってきているから、というのがまず大きな要因だと思うんですよ。

だから、量子コンピュータが物流にめっちゃ役に立つから物流を攻めましょうよってなったとしても、僕は全然物流に興味ないから、違うことをやりたいです。はい、分かります。それがオッケーですよと通じる会社だから、だと思うんですよね。

○大関:というわけで、全然毎回違うそうです(笑)。

主役は自分たちだけではない。他のプレイヤーと組めばいい

○髙砂:いろいろなところでいろいろなケースができたら、それに倣って、その周辺の人が、量子コンピューティング技術を使って、新しいことをやってみようというふうなかたちになっていったらいいなと、僕は思っていて。これは最近みんなで話している話ですけど、全部自分たちでできるかと言ったら、そういうことではないと思うんですよ。

いろいろな人たちがいて、中には異常に量子コンピューティング技術に興味を持った猛者みたいなやつが、日本全国にいるかもしれない。世界中にいるかもしれないといったときに、そういう人はそういう人でそういうことを起こしてほしいし、それは、僕らが担うことではないかもしれない。どんどん波紋が広がっていって、目指す世界が出来上がっていくと言ったときに。

○大関:そうか。

○髙砂:主役は必ずしも自分たちだけではないはずだと、僕は個人的には強く持っているので、みんなが主役になればいいんで。そのために、開拓をするならすればいいじゃんと。

○大関:それを経て、各お客さま企業の中でちょっととがっている人が、今は少数しかいないんだけど、それこそ100人に1人かもしれないけど、100人に10人に、100人に20人ぐらいになってとか、というのもつながっていくということではありますよね。

○髙砂:そうですね。

○大関:だからね、僕が量子アニーリングから量子コンピューティング技術に始めたのが2016年なんですね。東北大学に来てから、応用をする、利用する側になったんですよ。だから、かれこれ7年ぐらいなんですよね。

そのときの風景と比べてどうですかって考えると、まあ、興味を持つ人は増えたし、実例、事例も、僕らだけじゃないプレーヤーたちがたくさんいるというのは、実際にそうで、だから、そういう意味では、最初は自分が頑張らなきゃもそうだし、自分がある意味全取りしようというかね、頑張ろうと思っていたんですよ。

だけど、世の中広いじゃないですか、というのと、興味が違うんですよね。ある意味、例えば簡単な例では、Aという事業で、例えば物流で何かできるよって言われたら、僕の考えは、やられているならいいわと言って別のところに行っちゃう。それでも物流が好きだからやるという考えもあるし、そうすると、結局、てんでばらばらなんですよね。

それで4、5年ぐらいやっていったら、いろんなプレーヤーが出てきて、最初は、やられたって思ったんですよ。この分野できると思ったけど、手が足りないからやられた、みたいなね。

だけど、でも、自分の仕事は減らないんですよ。やるはこといっぱい。興味もそうだし、学生さんもたくさんいろんなことをやってくれたから、これは無限大だなと思ったときに、きりがないってなったので、そういう意味では、自分たち以外がもっと盛んになってくれて、楽しくなってくれて、それを支えることもできるし、融合する、合流するというのはあるかなと思って。

そのときのためには、興味多くいろんなプレーヤーが活動しているというのは健全なのかなというのは、7年たって余計に思いますね。

彩りのある世の中を、体現できる組織にしたい

○髙砂:すごくスタートアップ論が、シリコンバレー的にというか、短期間で一気にスケールしろみたいなことを言うじゃないですか。

○大関:はいはい。

○髙砂:何となくみんな、起業ってそうならなきゃいけないんじゃないかみたいな。

○大関:すげえ悩みました。

○髙砂:そうそう、そういう感じでなっていくんだけど、じゃあ、そうなるために結構、起業ってすごいクリエーティビティーにあふれるもののはずなのに、起業のノウハウみたいなものがあって。こういうフェーズではこういうことやらなきゃいけない、みたいな感じで、VCがばちばちたたいて、うおおって言って、いつまでこんな成長しろみたいなかたちで、これまた、急に形式化し始めているし、みたいな話になって、特定の課題に対してひたすら深掘ってやってって、一気に一点突破でスケールしようと。

でも、結局、勝ち残るやつが最後に勝つ。得意なやつが勝つのが一番いいんだみたいな。得意なことをやった方が効率的だ、みんながやるのは非効率だみたいな話があるんですけど、支配的な気がするんだけど、日本初か分からないですけれど、何か新しいスタートアップのかたちというか。

僕は、みんな一気に特定の人が成長して勝つということじゃなくて、もっと、みんなが方々で、こういう自発的な動きを、そこらへんで始めて、どこに就職するとかじゃなくて、自分で始めよう、みたいなのが、ぼこぼこ、ぼこぼこいっぱいできてくるということが面白いと思います。

そうするとみんな、自分で生活に、もちろんお金がないと生きていけないけど、主体性を持って何かができると思っていて、それは家庭を大事にするとか、趣味とか、仕事をしたいときは仕事をするとかという話だろうし、何らかの組織体が自分の人生を支配するところからの脱却みたいなものがあるんじゃないかと思っていて、その形態をシグマアイが体現するってなったときに、きっと組織もそうなるかもしれないし、シグマアイなりの成長みたいなものもあるかなと思っていたり。

さっき言った量子の話も、みんながその技術でこんなことやりたい。量子技術を使って、何かを解決してもいいし、そういうところが起きてくる社会になれば、もうちょっと全体的に変わっていくというか、彩りが出てくる世の中になるはずだと。殺伐とした、結局、大企業なのか、スタートアップなのか、箱が違うだけで結局こういう成長しなきゃいけないという感じなので、そうじゃない成長の仕方というのは、あったりするのかなと思うんですよ。

野良の天才が集まってきた

○大関:最初に、だからシグマアイの設立したきっかけ。経緯じゃなくてきっかけが面白くて。最初は、何かスケールするべき、一点突破する武器であったり、ネタがあって、それが大学発だったりするかもしれないし、誰かの天才のアイデアかもしれない。それを見つけた投資家がだいたい投資するというのがストーリーじゃないですか。

うちは、スパークスさんが投資して始まったわけですけれども、その中にいる阿部修平社長という方が、べつに僕は何のねたも持っていないんですよ。量子アニーリングでその世の中を最適化しまっせとか、そういうお話は当然しているんですけれども、だけど、そこはそこで頑張ってねって話なんですけど、だけど投資をするって決めたのは、大関さんだからと言われたんですよ。

いやあ、ありがたいことで。だから、そのスケールする何もないんですよね。だから、何もないところから始めなさいという意味でもあると思ったんですよ。これだけ、例えばお金であったり、体力を渡すから、暴れなさいとか、いろいろ思考錯誤しなさい。その中で、いろいろ種を、たぶんこいつは植えるだろうなという期待をしていただいたんだと思うんですよね。

やっぱり、そのときに、条件というわけじゃないですけれども、投資するにあたっていろいろやりとりがあるじゃないですか。そのときに、君が動いたら、どんなやつが集まるとか、何人集まると、人の話をしたんですよ。きっと大関さんの周りには、って、「天才」って彼は言ってくれましたけれども、天才の才は才能の才じゃないと思うんですけど、災いのほうの気がするんですけども、変わったやつであったりとか、それぞれの分野でとがったやつらが集まるんだろという意味で言っているんだと思うんですけども、が集まるだろうからと言って投じてくれたんですよね。

それを今、思い出してみると、今やっていることは、大変なところはあるけれども、間違っていないんだなと。そういうふうにして生み出されたんだから、心置きなくもがいてみようかなとは思いますけどね。

でも、おやじさん的な側面もあって、投資したんだから、ちゃんと黒字にしろよと。もうけろよって言うところはあるんですよね。だけど、何でもうけろというのは限定しないでくれたから、それは助かって、ありがたいことに、昨年度黒字を達成したわけで。

そういうふうにもうけも出しつつ、いろいろプレイグラウンドすることもできるという意味では、面白い会社になっているんだろうなと思いますね。

だけど、ぶっ壊れないようにしなきゃいけないし。

○小林:そうなんですよ。

○大関:着実にもうけるものも作らなきゃいけないし、ということで、技術は技術で、一発当てたろうとか、すごい技術を作ったろうと思っていて、みんな野心にあふれているという、とんでもない会社ですね(笑)。毎回毎回、自分事でもあるし、他人のふりをして社長が聞くスタイルでやってみても、頭がおかしい感じだなと思いますけどね。

はい、質問の中にも、シグマアイ、楽しそうって言ってくれている方もいます。量子コンピュータに画像診断させてみたい、答えが複数出てくるほうがありがたい。

確かに、デジタルでこうですよって、今は言われがちだし、信頼度も高いかもしれないけど、やっぱり最終的にはお医者さんが診断するにあたって、自分の納得もしたいから、少なくともいくつか、絞ってはほしいけど、複数の候補を出してほしいというわけですね。

はい、最適化問題は同じだけども、最適化するためにやるべきことが分野でばらんばらんなんですね、たぶん、というね、本当に案件がそれぞれ毎回違うのはそうですね。しかも、どこまでシステムでやるとか、どこまでを人の手に委ねさせるとかね、キャラクターによっても違うなというのもありますしね。

はい、最適化する分野の技術リテラシーをシグマアイ内でも高めるですか。そうですね。技術リテラシーはかなり高まったんじゃないですか。最適化そのものもそうだし、量子コンピュータそのものもそうだけど、それぞれのわけの分からない展開で、事業のイノシシの話とかも出たりして、そういう意味では、技術だけじゃなくて事業リテラシーも非常に高くなっているのかなと思っていますね。

はい。運営のほうから、8時終了でしたけれども、盛り上がっているので少し延長しますと。すみません、8時越えましたね。

はい、ロビンソンさんから。天才集団だって。あきさんから、企画に参加してみたいって。みんな興味を持つ。

○小林:いいですね。うれしいですね。

○大関:だから、表現あれなのかもしれないですけど、野良の天才たちがいますから。

○小林:そうですね。

○髙砂:野良天才がいるんだと思うんですよ。

○大関:それが集まるような企業でありたいし、それが入っても、突然入ったとしても、普通に合奏ができるような、アンサンブルできるようなチームが見たいですよね。でも、わりとうちはそうですよね。新入社員だろうが、アルバイトで入ってこようが、いきなりトッププロみたいな感じで、そんなん知らんがなって、ひと言も言えないみたいな。

いや、不安もあるだろうとは思うんですけど、みんな貪欲に新しいことを学んでくれるから、そういう意味でも、非常に楽しいなと思うんですけどね。

はい、じゃあ、二人、言い残したことはありますか。

○髙砂:いや、結構。

○大関:結構しゃべれたね。

○小林:けど、まだまだ言いたいことはあるけれども。

○大関:何ですか。

○小林:いったん今日はここで。

○大関:なるほど、3回目があるということだね。このおじさん3人組は、始める前までは何て言ったと思いますか。始まる前は、今日話すことないとか言っていましたからね。そしたら、話し始めたらこのざまですよ。話し足りないって。

○小林:年取ると話が長くなるんですかね。

○大関:そう。あれですよ。うちの共同代表の観山と昨日、食事していたら言われましたよ。おやじが集まると話なげえんだよなって(笑)。おめえもおやじだろうって話なんですけども、しょうがないですよね。いろいろと、すねやら、肘やら、いろんなところに傷がありますから、それも踏まえて良くしたいと、このように良くしたいと思っているからこそ、言いたいことがあるわけですけどね。

はい、本日もご参加いただき、ありがとうございました。概要欄にアンケートがございますので、次回この企画に生かします。ぜひともアンケートに答えていただけると、今後どうするかというのは、皆さんの答え次第で決まりますので、そういう意味でも、今ちょろっとした間に、概要欄にぽちっと押していただければと思います。

次回も、だいたいひと月ごとにやっておりますので、また懲りずに、おじさんスリーオンズ。

○小林:ちょっと若返る。

○大関:若返るかもしれないですね。さっき、そのへんにぞろぞろ、若いのがいましたらからね。僕が配信の準備をするので不機嫌だったら、すごすごと帰っちゃいましたけれど。すみませんっていう感じですけど。

○髙砂:うちのBTSもね。黒ずくめですから。

○大関:黒ずくめですね。みんな黒いのね。なぜかおじさんたちは白っぽいというか、明るい。この前にいる人も黒いですよね。

○髙砂:そうですね。

○大関:はい。というわけで、宴もたけなわでございますが、そろそろお開きの時間としたいと思います。

本当に、夜7時から皆さんの時間をお邪魔させていただきましたけれども、楽しんでいただければ、これ幸いと。野良の天才方が、面白いなって思っていただいたら、シグマアイのウェブページ経由で、ぜひとも採用担当のほうにつないでいただいて、ちょっとのぞき見ていただければと思います。

面白い案件がたくさんありますので、皆さんが入ったら入ったなりに、また別の案件が増えると思いますので、それも期待しておりますので、ぜひともシグマアイに興味を持った方がお越しいただければと思います。

また、次回、Sigma-i Labをどうぞよろしくお願いいたします。それでは、このへんでお別れしたいと思います。どうもありがとうございました。それでは。

○一同:ありがとうございました。


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株式会社シグマアイ| Sigma-i Meetup
東北大学教授・シグマアイ代表の大関 真之と、東北大学客員准教授・シグマアイ事業開発マネジャーの羽田 成宏が新プロダクトの事業化に向けたブレストを公開で行います。これまでのイベントでの議論を通じて開発された、新しいコミュニケーションアプリを、どのように事業化していくのか。参加者の皆様ともディスカッションしながら、社会へのリリースへと結ぶ付けるイベントです。
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