当事務所では、スタートアップ・ベンチャー企業の経営者の方から新規事業のご相談や顧問弁護のご依頼を数多くいただいております。
その中で感じることは、とにかくみなさん非常に考えられているということです。
最初は思いつきとか単なるアイディアかもしれないけど、思いついたそのアイディアをビジネスモデルと呼べるものまで昇華させるまでが大変です。
「このサービス・プロダクトは本当にユーザーが必要としているものなのか」
「既存のビジネスで代替できるのではないか」
「いくらならユーザーは使ってくれるのか」
「採算は合うのか」
「ユーザーを満足させるにはもっと良い方法があるのではないか」
「技術的には可能なのか」
「どこからどうやって始めよう」
「メンバーはどうやって集めよう」
「メンバー間の株式比率をどうしよう」
「資金はどこからどうやって集めよう」
「ローンチ後のマーケティングはどうしよう」
etc……
起業家はこのように、一つのアイディアを実現させるために様々なことを考えなければなりません。
そうやってあれこれ考えているうちに、必ずと言って良いほど以下の疑問にぶち当たります。
「あれ、今やろうとしているビジネスって法律的にOKなのかな??」
やろうとしているビジネスが革新的であればあるほど、この疑問は大きく重くのしかかってきます。
なぜなら、前例がないからです。
例えば、コーヒーショップ(コーヒーを作ってサーブするいわゆる「カフェ」のような事業)をやるのであれば、スターバックスやタリーズをはじめすでに世の中にたくさんあるので、カフェの概念を打ち破るような全く新しいスタイルのものでない限り、それほど法律的に問題になるということはありません。
未経験者がこれから新しく始めるとしても、「まあなんかよくわかんないけど所定の手続を踏めば開業までこぎつけるんだろうな」という予測可能性があります。
しかし、スタートアップ・ベンチャービジネスの多くにはこれがない。
結果、起業家が不安に駆られるのです。
私のところに相談に来られる起業家の方も、「これって法律的に大丈夫なんでしょうか?」、「どうやってら規制を回避できますか?」という質問をよくされます。
また、「ある弁護士に相談したらダメだと言われた」という話もよく聞きます。
その時の私のスタンスは、
「とにかくやってみなはれ」
です。
もちろん明らかに違法なものも存在します。その場合はハッキリとそのことを告げなければいけません。
しかし、法律をもってしてもハッキリと白黒つけられないケースが多くあります。
法律といっても完璧にすべての物事を規定しているわけではなく、「答えがない」ケースが多いのです。
「そのビジネスは、違法かもしれないし、合法かもしれない」
そういうケースが多々あります。
例えば、CREW(https://crewcrew.jp/)というサービスがあります。
これは、自分の車に他人を乗せるためのプラットフォームを提供するマッチングサービスです。
ご存知かもしれませんが、Uberをはじめとするライドシェアサービス(アマチュアドライバーによる運送サービス)は、日本では原則として禁止されています。道路運送法という法律が「有償」による運送行為を原則禁止としているからです。
CREWは、これを運賃の支払いを任意(払う払わない、その金額も自由)とすることによってクリアしています。
しかしながらこれは、お金の受渡しがある以上、捉え方次第で「有償」と言うこともできます。
つまりこれは、「違法かもしれないし、合法かもしれない」ものです。
私はCREWが違法の可能性があるからダメだと言っているのではありません。
法律の解釈に答えがないことの一例を示したかったのです。
法律に答えがないのケースがあるとして、自分のビジネスがそれに突き当たった場合、起業家が一番考えなければならないことは何でしょうか。
答えは明確です。
「そのサービス・プロダクトをユーザーが欲しているかどうか」
それに尽きます。
明らかに違法であるケース場合や、間違った方向に進もうとしている場合には、時に「NO」と言わなければいけません。
しかし、「NO」というだけがプロの法律家の仕事であるとしたら、私は法律家でいたいと思いません。
法律家であることはもちろんですが、何よりも起業家の方々がビジョンを実現するためのパートナーでありたいと思っています。
私は、「『東京スタートアップ法律事務所』というスタートアップ・ベンチャー企業を起業した」という気概で事務所を運営しています。
そこで求められることはまさに起業家マインドであり、チャレンジ精神とも言い換えられるものです。また、スタートアップらしく事務所の急成長も至上命題として掲げています。
私自身がそのマインドを持ってこそ、起業家の方々の思いに応えられるものであると考えています。
東京スタートアップ法律事務所
代表弁護士 中川浩秀