Save Medical採用担当者が、淺野社長に会社設立までの話・医療/ヘルスケア事業・DTxについてなどなど、色々と聞いてみました。後編では、今後の展望や採用についても聞いていきますので、前編後編と併せてお読み頂けたらと思います!
[CEOプロフィール] 淺野 正太郎 ㈱リクルートに新卒で入社後、海外事業開発に従事。シリコンバレー駐在ではVC拠点の立ち上げと国内外のデジタルヘルス投資/事業開発を担当。その後、㈱日本医療機器開発機構の事業開発ディレクターを経てSave Medicalを創業。疫学修士(MPH)。
当社を立ち上げるまでの経歴 ーーまずは淺野社長のこれまでの経歴を教えてください。 私はリクルートの時に、ベンチャーキャピタル部門(コーポレートベンチャーキャピタル、CVC)としてスタートアップ投資を行う部署にいて、アメリカのサンフランシスコに駐在していました。そこで起業家達と一日に4〜5件打ち合わせをしたり、投資検討をしたりという仕事をしていました。
様々な方にお会いする中で、自分の今後のキャリアを見据えたときに、スタートアップの方々の仕事の仕方がいいなと感じるようになりました。
一方で、なかなか簡単な気持ちで取り組めるものではないという実感もありました。自分がやるとしたら社会にどれだけ価値を提供できるかとか、自分に強く根ざしたものでなければ続かないだろうし、途中で辛くなるだろうなと。なのでこの時点では、何か行動をを起こすという事はありませんでした。
ーーたしかに多くの投資という仕事と実際に事業を行うというのは大きく違いますよね。 そこからご自身で事業を行うに至ったのは何かきっかけがあったのでしょうか。 立ち上げのきっかけ、経緯 当時私はブロックチェーンやデジタルヘルス、EdTechといった分野を担当していました。担当企業の中にUdacityというEdTechのスタートアップがあり、その経営陣と定期的に議論をする機会がありました。ある時「なぜこの仕事を選んだのか」と質問したことがあり、その回答として「自分の人生にとって意味のあることを選んだ (I chose what mattered to me )」と語られたことが心に残りました。自分もそういう風に思えるテーマでやりたいと考えるようになりました。
自分自身にとってすごく意味のあるテーマとは何か。突き詰め考えていったときに、私にとっては自分の家族、友人、自分自身の健康でした。そして、まさに当時担当していたデジタルヘルスに新しい可能性を感じたのです。
2015年から2016年当時は、アメリカの事業を日本に輸入するとか、アメリカの会社に投資して日本で何か一緒に事業開発するみたいな目線の話が大半でした。しかしながら、日本とアメリカではやはり医療システムや保険の構造が全然違うため、単純にアメリカの会社を日本に持ってくればいいという事ではありませんでした。
そこから日本のローカルプレイヤーがきちんと出てこなければいけない状況なのだと分かり、ならば自分でやってみたいと思うようになりました。
アメリカでいち早くWelldoc、Noom、Omada Healthといったデジタルヘルスの会社がでてきていて、そういう会社が医療機器承認を受けたり、保険償還の認可を得たりという実例を見ながら、こういう方法があるのかとすごく印象に残りました。そこから「医療機器として治療効果のあるソフトウェア」が気になり、しばらくは個人的に調べていました。
そろそろ自分で始めたいと思った頃に、ご縁あって(当社の主要株主である)日本医療機器開発機構(JOMDD)と出会いました。当時JOMDDでは、開発が一時ペンディングになっていた国内向け糖尿病アプリのプロジェクトがあり、それを再度事業化するという話がありました。その話を伺った時に、「私にやらせてもらえませんか」と手を挙げてスタートしたのが、Save Medicalのはじまりです。 一番最初は、投資家の方々にピッチして回るところからスタートしました。
日本とアメリカの医療、ヘルスケア事業の環境の違い ーー医療システムや保険の構造が違う、というのは具体的には何がどう違うのでしょうか。 ちょっと概念的な話になるのですが、アメリカの場合は資本主義の論理で医療が提供されているといえます。日本人からすると、お金のない人は医療が受けられないというのは感覚的には分からない気がしますが、アメリカではお金が払えない人は病院にすら行けないという感じです。反対に、際限なくお金を払えば最先端医療を受けられるという、民間のサービス業みたいな感じです。
アメリカの病院の医療機関のIT投資予算もサービス業の投資と近い部分があり、例えば電子カルテやそれに付随するITへの投資などをしっかり整えていて、サービスレベルを上げていこうとする病院は結構な割合で存在しています。
一方で、日本の場合、民間サービス業としての医療というよりは、行政サービスや社会インフラのように「公共のもの」としての医療という側面が強いです。そのためIT投資に対する予算が確保し辛いというのが現状です。統計や調査を見たことは無いのですが、医療機関のITに対する投資予算は、感覚的には日本はアメリカの1/10にも満たないぐらいですね。なのでIT投資が進みにくいし、結果としてITの普及の進み方が違います。あとは国民皆保険制度の有無というのは非常に大きいです。
アメリカの場合には、近年オバマケアという制度ができたものの、それでも病気になると家計が破綻する人が少なくないというのが実情です。救急車を呼ぶだけで200万円ぐらい請求されることもあるそうです。健康を守らないと家計に直結するのがアメリカで、自然と予防意識も高まります。日本の場合には、具合が悪ければすぐ病院に行けばよいっていうマインドが標準的ではないでしょうか。日本では予防医療を事業化するというのはなかなか難しいと感じます。
人の健康をテーマにした科学的な側面やデジタル化という意味では日本と海外で共通する部分もありますが、ビジネスモデルや商流の組み方については全く環境が異なります。
DTxとは、市場、先行事例 ーー「医療×IT」の分野でも特に当社が取り組む「DTx」という分野はどういう領域なのか、 淺野社長がどのように捉えているか教えてください。 DTx は Digital Therapeutics の略で日本語で言うと「デジタル治療」という意味です。治療用アプリとも呼ばれています。
一番参考にしてるのは、Digital Therapeutics Allianceというアメリカの事業者団体が掲げている定義で、「ソフトウェアであり、行政当局がきちんと効能・効果・安全性を認めたものであり、クオリティが高い介入的なソフトウェア」といったものです。
要するに、「サプリメントと医薬品」のような線引きを「ヘルスケアアプリと DTx」と置き換えてイメージしてもらうのが分かりやすいかと思います。
サプリメントも医薬品も、どちらも何か物質を体内に取り込んで化学的・生物学的な反応を得るという点では同じです。ただ、医薬品の方はそれが何かしらの病気に対して効果がありますが、サプリメントはそうとは言えない。医薬品は、効果や副作用の有無を確かめた上で、販売していいという許可を国が与えているものです。一方でサプリメントは、効果が確認のプロセスが無いから分かりません。 ヘルスケアアプリもそうで、良さそうなんだけれども、本当に効果があるかは確認されていないものが大半です。
それに対してDTx は、治療効果という部分をちゃんと科学的な有効性を用いて確認していて、患者さんへの提供価値があるという政府当局からのお墨付きを得るというプロセスを経ます。その点でも、既存のヘルスケアアプリとは一線を画すものと言えます。
ーーありがとうございます。 インタビュー後編では、そんなDTxの領域でどのような戦略で事業展開をしていくお考えかを聞いていきたいと思います。
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