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※本投稿は4月17日公開のnoteより内容を転載しております。
いつも大変お世話になっております。スマートラウンド代表の砂川です。
長らく周囲の皆さんから、スマートラウンドは未上場株式のセカンダリーをやらないの?と聞かれ続けてきました。そのたびに、少しはぐらかして「やるかもねー」くらいの感じでお話ししてきました。
もちろん本当はスマートラウンドでも、以前からセカンダリーを意識して事業開発を進めてきました。ただ法的な整理、アンメットニーズの確認、市場の成長性などを慎重に検討していたため、表立って「セカンダリーやります」とは言ってきませんでした。拙速に「やる!」と宣言しておいて、やらなかったら恥ずかしいじゃないですか、ねぇ。だから慎重を期してきたわけですよ。でも今日は言います!言い切ります!
スマートラウンドは未上場株式のセカンダリー・プラットフォームを作ります!
ということで、今日は未上場株式のセカンダリーとはなんなのか、どうしてプラットフォームが必要なのか、なぜスマートラウンドがやるのか、などをお話ししたいと思います。
5年以内には生成AIが進化して無価値になるだろう「英語が使える」という時限アドバンテージ(笑)を生かして、アメリカのセカンダリー関係者からいろいろ聞いて(来週も早朝アポが、、、)検討してきたので、多少なりともインサイトがあるのではないかと思います。
もしこれを読んで「私も立ち上げメンバーとして加わりたい!」と思ってくださる方がいらしたら、ぜひご連絡ください。めっちゃ採用してます。またセカンダリーについてもっと詳しく聞きたい、というスタートアップ経営者の方も、ぜひ(内緒で)ご連絡ください。どんなプロ・コンがあるのか、検討すべきポイントはなにかなど、知ってることを「全部」お伝えします。もちろん協業パートナーも常に探しています!
目次
- 未上場株式のセカンダリーとは何か
- 上場株式と未上場株式の違いは
- セカンダリーのニーズは急速に拡大している
- 日本にはセカンダリー・プラットフォームはない
- 弊社がセカンダリー・プラットフォームを作るわけ
未上場株式のセカンダリーとは何か
まず最初に本noteで触れる範囲の確認と、用語の解説をしていきたいと思います。本稿では、スタートアップが発行する株式のセカンダリーについてのみ解説をし、それ以外の、例えばファンド持分のセカンダリーなどについては触れません(スマートラウンドではその事業も同時に検討していますが、それについては時がきたら別noteでお話しします)。
またここでは、上場前のスタートアップが発行した株式を「未上場株式(一部を除いて未公開株式と同じ意味で使います)」としてお話しします。さらに本稿では発行体をスタートアップに限定しており、上場する予定のない中小企業の発行する株式については議論の対象としていません。悪しからずご了承ください。
次にプライマリーとセカンダリーについてご説明します。プライマリー(プライマリー取引)とは、スタートアップが「新株」を発行して投資家に割り当て資金調達をするための取引を指します。一方、セカンダリー(セカンダリー取引)とは「発行済みの株式」を保有する既存株主が、その保有する株式を他の投資家に譲渡する取引のことを指します。したがってセカンダリーでは、既存株主は対価を受け取りますが、スタートアップには資金は入ってきません。
「株取引」と聞いて、皆さんが最初に思い浮かべるのは投資家が相場を見ながら株式を売り買いしているイメージではないでしょうか。それはすなわち「上場株式のセカンダリー」ということになります。世の中の全ての株取引のうち、大部分は上場株式のセカンダリーですので、そうしたイメージを持たれることは不思議ではありません。
未上場株式の場合は反対に、公表されている取引のほとんどがプライマリーとなります。現在でも未上場株式のセカンダリーは存在するものの、ほとんどが水面下で相対で行われているので、一般の人の目に止まることはほとんどありませんし、その規模もよくわかりません。
なおM&Aも広義のセカンダリーと言えなくはありません。捉え方によりますが、発行済みの株式が売買される、という側面だけをみれば、M&Aもセカンダリーも大差はなく、その比率がM&Aは100%に近いのに対し、セカンダリーは数%にとどまることが最大の違いとなります。
いずれにしても現状としては、上場株式のセカンダリーが年間1000兆円であるのに対し、未上場株式のセカンダリーはその0.1%(1兆円)にも満たない規模であることは間違いありません。
上場株式と未上場株式の違いは
ではなぜ上場株式と未上場株式でこれほどまでにセカンダリーの取引額が違うのでしょうか。
それは未上場株式に「流動性」がないからです。
流動性がないとは、自由に売買できないということであり、言い換えれば株主がいつでも保有株を売って現金化することができるわけではない、とも言えます。この点が未上場株式のセカンダリーを議論する上で最も重要なポイントになります。
未上場株式に流動性がないのは主に以下の4つの理由によります。以下にひとつずつ説明していきます。
1. 証券取引所で取引されていないため
2. 未上場株式の売買には特定の規制がかけられているため
3. 譲渡制限があり譲渡するためにはスタートアップの承認が必要になるため
4. 株主間契約書等にいろいろな条件が規定されていることが多いため
1. 証券取引所で取引されていないため
未上場株式というくらいですから、証券取引所に上場していないことは自明です。日本の場合、ほとんどのスタートアップが最短最速で上場を目指しますので(株主間契約書にも経営者は上場努力義務を課されていることが多い)、未上場であるというのは、特別な事情がない限り「上場審査に通るほど成熟していない」ということになります。
これはざっくり言えば、一般投資家(特定の条件を満たす投資家ではない普通の人)が売買するのにふさわしい株式ではないということです。この「取引に参加できる投資家の区分」は、とても重要なポイントで、世の中の投資家のほとんどは一般投資家なので、こうした人たちが売買できないと、当たり前ですが取引額は激減します。
2. 未上場株式の売買には特定の規制がかけられているため
では証券取引所に上場していないと株式の売買はできないのかといえば、そんなことはありません。もうそうであれば、スタートアップはベンチャーキャピタルから資金調達できませんし、創業者があとから参加してくれた取締役に自分の株式を譲渡することもできなくなってしまいます。
ただし、1970年代後半に証券会社による店頭取引の投資勧誘が原則禁止されたため、一部の例外的な方法を除き、第三者が未上場株式の売買を仲介することはできません。もちろん、上記の例のように当事者が相手を自分で見つけ、相対で取引することはできます(それにも制限がありますが)。
問題は、相対取引では「他の潜在的取引希望者」を考慮に入れることができず市場メカニズムが働かないため、取引価格(株価)が最適化されないという点です。情報や交渉力の非対称性により取引価格が歪められうる状況のままでは、取引額は限定的にならざるを得ません。
3. 譲渡制限があり譲渡するためにはスタートアップの承認が必要になるため
また、日本ではスタートアップの発行する株式には通常、定款上で「譲渡制限」がかかっています。これはすなわち、株主が保有する株式を第三者に売却するときにはスタートアップ(取締役会や株主総会)の承認を必要とする、ということを意味します。ちなみに会社法では、この株式譲渡制限を設けていない会社のことを「公開会社」といいます。なので厳密には上場企業=公開企業ではありません(ややこしい)。
ではなぜスタートアップは譲渡制限を定款で定めるのでしょうか。創業時に使ったテンプレート通りという人も多いとは思いますが(笑)、本質的には望まない第三者が株主になるのを防ぐため、という理由が最も大きいと思います。
譲渡制限がかかっているということは、株主は保有する株式を売買するのに承認申請しなければならず、スタートアップは株式の売買を阻むことができる、ということですから、その煩雑さや実行可能性を考えれば、取引が減るのも当然といえます。
4. 株主間契約書等にいろいろな条件が規定されていることが多いため
最後に株主間契約書に規定される諸条件も未上場株式の売買を阻害する要因となっています。具体的には先買権や共同売却請求権がそれにあたります。
先買権とは、ある株主がその保有する株式を第三者に譲渡しようとした場合、他の株主が優先的にその株式を買い取れることを規定するもので、前述の譲渡制限を補完し「望まない第三者が株主になるのを防ぐ」という意味があります。また有望なスタートアップである場合は、既存株主は機会があれば追加で株式を取得したいと考えるのが自然であり、それを実現する方法という側面もあります。
共同売却請求権(タグアロングともいう)とは、ある株主がその保有する株式を第三者に譲渡しようとした場合、他の株主も一緒に売却できることを規定する条項です。これは株式の売却機会が生じた時、それを株主間で平等に享受するために定められた規定です。いわば、抜け駆け防止条項とも言えます。
セカンダリーのニーズは急速に拡大している
そうした中、近年、日本でも未上場株式のセカンダリーの必要性が再認識されるようになってきました。政府が2022年11月に発表した「スタートアップ育成5か年計画」の中にも以下の通りその実現がコミットされています。
出典: スタートアップ育成5か年計画
これは未上場株式の保有者にも流動性がなければ、イノベーションや経済成長の担い手であるスタートアップが大きく育たない、という背景があります。もちろん、セカンダリーさえあれば、イノベーションや経済成長が実現するというほど単純なものではありません。ただし、セカンダリーの実現は、その必要不可欠な要素といっても過言ではありません。その理由をアメリカを例に説明したいと思います。
経済を牽引するユニコーンが爆増しているアメリカ
スタートアップ先進国であるアメリカでは、以下の図が示すとおり上場市場の時価総額の伸びはおもにビッグテックによってもたらされています。こうしたビッグテック(以前はGAFAM、最近ではマグニフィセント・セブンとも呼ばれている)は、スタートアップとして誕生しベンチャーキャピタルから巨額の資金を得ながら急成長して上場した会社です。
出典:経済産業省
こうした企業の多くはまた、未上場時に$1B以上の時価評価をつけるいわゆる「ユニコーン」であった過去があり、逆に言えばユニコーンでなければ次世代のリーディングカンパニーにはなれない、とすら考えられています。
なおユニコーンとは「幻の生物」という意味であり、以前はそれくらいレアな存在、という意味だったはずだったのですが、現在では約1200社ものユニコーンがいるため、レア感は全くなくなってしまいました。ユニコーンであることは、もはや次世代のリーディングカンパニーになるための十分条件ではなく必要条件になってしまっているのかもしれません。
近年アメリカでこうしたユニコーンが急増したのには、主に以下の4つの要因によると言えます。
- 上場のデメリットである、費用の増加、開示義務の拡大、経営権の分散、短期利益の重視などにより、できるだけ未上場のまま成長した方がいいという考え方がもともとアメリカでは一般的であった
- 以前は500人以上の株主がいる場合は上場企業と同等の開示義務を課されることになっていたが、JOBS Actによりこれが2000人までに緩和された(Facebookは緩和前に500人以上の株主がいたため、やむなく上場した)
- 未上場グロース市場に巨額の資金が集まるようになり、上場しなくても資金調達できるようになった
- セカンダリー・プラットフォームが急速に発達して、未上場株式に一定程度の流動性が提供されるようになり、既存株主からのエグジットを求めるプレッシャーが緩和された
これらの条件が全て整ったことで、創業からIPOまでの期間が伸びてユニコーンが増えたというのは、関係者が口を揃えて言っているので、まず間違いないでしょう。その結果、未上場のスタートアップの時価総額の合計は足元で$3.5T(500兆円以上!)と、とんでもない規模にまで拡大しています。
出典: Hustle Fund
上記の各要因は、それぞれ個別の解説が必要な重要なテーマなのですが、それを話しだすと収拾がつかなくなるため、ここでは1から3は割愛し4のセカンダリーが発達した理由についてのみ、その背景や状況を説明したいと思います。
セカンダリー・プラットフォームの急成長
関係者はみな「アメリカでも10年前までは『Wild West(無法地帯)』だった」と言っています。今ではセカンダリー・プラットフォームの最大手となったNasdaq Private Market(NPM)、その前身であるSecondMarketでさえも、当時は単純なブローカーとして、未上場株式の保有者と投資家にそれぞれ適当に営業しまくって、それを繋いで手数料を取る、という法的にギリギリアウト(笑)なビジネスをやっていたそうです。
ところが2012年前後に、FacebookやTwitterなど有名スタートアップによるセカンダリーが注目され、またJOBS Actの施行などを契機として、プラットフォーム化や仕組み化が進んでいったらしく、現在ではNPM、Forge Global、EquityZen、Hiive、Zanbatoなど数多くの企業がいわゆるセカンダリー・プラットフォームを提供し、どれも急成長しています。市場規模は、2023年に全体で$130B、ダイレクトセカンダリーだけでも$85Bにまで拡大していて、引き続き急拡大していくことが予想されています。
出典:Industry Ventures
なおセカンダリー・プラットフォーム自体がまだ創成期であるためか、ビジネスモデルはバラバラで、大まかに分類するとテンダーオファーを主軸にサービスを展開している事業者と、ブロックセールをメインにやっている事業者がいます。テンダーオファーとは20日間以上の期間内にある一定の条件下で参加者を募集する形の取引で、それなりの規制がかかります。一方、ブロックセールとは、ごく少数の売り手がごく少数の買い手と相対に近い形で取引をすることを指し、この場合は規制が多少緩やかになります。
ちなみに、こうしたセカンダリー・プラットフォームが必ずしもセカンダリーの「市場」と呼ばれないのは、売り手と買い手だけで売買が実行できるわけではなく、各関係者に対するいろいろな付随サービスが必要だからのようです。NPMによれば、特に(売り手でも買い手でもない)スタートアップは手数料をもらう相手ではないにもかかわらず専門のチームがあり、むしろスタートアップに対するサービスを最重視しているとのことでした。
また未上場株式の買い手も急増しているとのことでした。特に興味深かったのがベンチャー・キャピタルの本格参入です。ZanbatoのCEO曰く
10年前はIndustry VenturesやSaints Capitalくらいしか「セカンダリーファンド」はいなかった。ところがそれらが非常に高いリターンを出していたので、Sequoia、NEA、a16zといったトップVCが率先してセカンダリーに参入してきた。リターンを最大化するという唯一の目的に照らせば、これは当然の結果であり、魅力的な投資機会であればプライマリーだろうがセカンダリーだろうが分け隔てなく投資することが合理的な戦略となる。今では、全てのプライマリー投資家、すなわちエンジェル、VC、PE、ソブリン、ヘッジファンドに至るまでが、セカンダリーにも参加している。
独自インタビューより
とのことで、買い手「属性」の拡大が急増の背景にあるようです。2021年後半からのテック市場の暴落やSVBの破綻により、セカンダリーの取引額も低迷していたようですが、この四半期はだいぶ持ち直し、ビッドアスクのスプレッド(売り買いの希望価格差)も15%くらいに戻ってきたので、改めてセカンダリーの需要は急拡大していくとの見方が大半を占めていました。
なぜ株は売りに出されるのか
セカンダリー・プラットフォームには、過去には、Facebook、Twitter、Zinga、Palantir、Robinhood、Instacart、現在でもSpaceX、Epic Gamesなど超有名スタートアップの株式が掲載され売りに出されています。こうした有望なスタートアップの株式はどうして売りに出されるのでしょうか。株主は保有し続けた方がいいのではないでしょうか。
全てを保有し続けることができる人は、確かにそうした方がいいかもしれません。ただそうもいかない事情を抱えた人たちも大勢いて、その人たちが保有株式の一部を売りに出しているのです。それは以下のような人たちとなります。
1. スタートアップの創業者
2. ストックオプションを行使したスタートアップの従業員
3. 早い段階で投資をしたベンチャーキャピタル
1. スタートアップの創業者
スタートアップの創業者の多くは自社株式を大量に保有しており、会社が急成長した結果その潜在的な価値が数十万ドルを超えているにも関わらず現金はなく、家や車のローンの返済にすら困っている、ということが珍しくありません。こうした場合、投資家も創業者がセカンダリーで保有株式の一部を売ることを許容し「ブリージング・エアー(呼吸するための空気)」を提供することで、共にさらなる急成長を目指すことができるようにするそうです。こうしたケースでは保有株式の5%程度を売るのが相場ということでした。
2. ストックオプションを行使したスタートアップの従業員
スタートアップの従業員も、同様にもしくは創業者以上に流動性を求める傾向があるそうです。アメリカの場合は特に、人口の約14%が学生ローンを抱えていて、スタートアップに入社しても、その返済に苦労するという人が後を断たないといいます。スタートアップの創業からIPOまでの期間が13-14年程度とどんどん長くなっているため、極端な話、23歳で入社して37歳までずっと借金に苦しむ可能性もあるのです。
そうした状況を一気に解決するため、ストックオプションを一部行使して株式を売却するのです。ストックオプションは行使されると課税対象になりますので、早く売却しないとキャッシュショートするというリスクが生まれます。したがって多少なりともディスカウントがかかっても現金化を急ぐという事情もあると聞きます。
最近のスタートアップの採用面談ではストックオプションがあることはもはや当然で、それ以上にスタートアップ側が応募者から「会社主導でセカンダリーをやるつもりがあるか」という質問をされることが多くなったそうです。ビッグテックにいけば流動性のあるRSUがもらえるため、スタートアップが流動性のないストックオプションを提供するだけではお話にならない、ということなんでしょう。
3. 早い段階で投資をしたベンチャーキャピタル
シードVCも同様に流動性が特に必要な株主となります。シードVCはその名のとおり、スタートアップのシード期に投資をします。ところが、投資した会社が上場するまでに平均13-14年もかかってしまうとどうなるでしょう。基本的にVCのファンド期間は10年、延長しても12-13年ですから、ファンドを解散してLPに分配するために、どうしても投資先の上場前に保有株式を現金化する必要がでてきてしまいます。もちろん継続ファンドを立ち上げるなど他の方法もありますが、一番わかりやすく公平なのがセカンダリーによる資産売却となります。
ちなみに譲渡制限や先買権はアメリカにも存在するので、プラットフォーム上で売り手と買い手が合意した全ての取引が、そのまま実行されるわけではありません。Hiiveでは2023年に合意された取引のうち、54%が実行され、16%が先買権により(会社を含む)第三者に購入され、30%が会社により拒否されたとのこと。生々しいデータです。
日本にはセカンダリー・プラットフォームはない
日本では残念ながらこうしたセカンダリー・プラットフォームを提供している会社はまだありません。それどころか、大昔の店頭取引にかかるスキャンダルの悪いイメージがいまだに染み付いており、未上場株式のセカンダリーを忌避している感すらあります。
日本でも米国同様にセカンダリーのニーズが顕在化しているため、J-Ships(特定投資家向け銘柄制度)や株主コミュニティといった特例を活用してセカンダリーを実現しようとする方々もいます。ただ本質的な問題は「果たしてその仕組みが本当に関係者に活用してもらえるのか」だと弊社は考えています。
本来であれば、既存の第一種金融商品取引業者、つまり証券会社などがスタートアップ、株主、投資家をつなぎ、各当事者がみな満足するような最適なセカンダリーを実現できればいいのですが、実現してきませんでした。その理由は「採算性が悪い」という一点に集約されるのではないかと弊社では考えています。
上場株式よりも取扱額が総じて小さい上に、売り手と買い手以外にもスタートアップの面倒も見なければならず、種類株式がいくつも発行されているため株価算定が難しく、譲渡制限や先買権のクリアランスもしなければならない。常識的に考えて、同じリソースを割くのであれば上場株式の取引を優先させた方がいいに決まっています。
とはいえ未上場のまま急成長を実現し続け、ユニコーンになってから上場する、という成長戦略をとるスタートアップは、日本でも今後増えていきますし、増えていかないといけないと考えています。弊社は、いわゆる「スモールIPO」そのものが問題だとは考えていません。ただマイクロ・キャップのまま上場し、成長戦略が描けずに袋小路に陥ってしまうスタートアップが多すぎることは大問題だと考えています。
それを改善しより多くのユニコーンを生み出すためには(アメリカのケースで列挙したように)レイトステージ投資家を増やすとともにセカンダリー・プラットフォームを創設することが非常に重要です。逆に言えば、これらをすぐに実現することでアメリカとの差を多少なりとも挽回することができるかもしれません。
弊社がセカンダリー・プラットフォームを作るわけ
弊社は創業当時から「スタートアップが可能性を最大限に発揮できる世界を作る」ことをミッションに掲げ、スタートアップと投資家を構造化されたデータでつなぐビジネスを展開してきました。お陰様でsmartroundは、スタートアップは5,000社以上、投資家は70社以上と多くのユーザーにご愛顧いただけるようになりました。
ユーザー・アカウントとネットワーク、蓄積された証券と財務のデータ、資本政策やストックオプションの管理ツール、事前承諾・取締役会・株主総会といった一連の機関決定を円滑に行う機能、とアメリカのセカンダリー関係者が必要だと指摘する要素を、弊社は既に持っています。もちろん、だからといってすぐにセカンダリー・プラットフォームとして完成度の高いサービスが提供できるほど、甘いものだとは考えていません。
それでも協業パートナーとなっていただける皆様と協力しながら「スタートアップや関係者に利用されるプラットフォーム」を謙虚に作っていきたいと考えています。それは、そうすることが我々のミッションに合致し、日本のスタートアップ・エコシステムの進化に寄与できると信じているからです。
具体的にどのようなサービスになるのかは、ぜひお問合せください。弊社としてもユーザーのみなさんのフィードバックをよく聞き、まだコンセプト段階ではありますが、改善していきたいと考えております。