こんにちは!広報の川出です。今月から、子育てをしながら自分の夢を追い続けるママさんに、MiLの女性社員が中心となって直撃インタビューする『ママさん対談』をお届けします!
「子育てと仕事を両立させたい」「復職したいけど子育てと両立できるか不安」「新しいことに挑戦したいけど(家庭もあるし)一歩踏み出せない」。そんなママさんを中心に(もちろん、男性の方にも是非読んでいただきたい!)、記事を通して、家庭と仕事のバランスを取るためにはどのようなことが大切なのか、どうやったら実現できるのか、ということを日本・世界で活躍されているママさんたちの体験談やメッセージをもとに発信していきたいと考えています。
記念すべき第一回目は、母であり、陸上選手として世界で活躍されている寺田 明日香さんにインタビュー。今回は寺田さんだけでなく夫の佐藤峻一さんにもご同席いただき、どのようにお二人がパートナーシップを育み、家庭と仕事のバランスをとる努力をされてきたのかを伺ってきました!
対談:
寺田 明日香さん【寺】、佐藤 峻一さん【佐】
杉岡 侑也【杉】、紀 千草【紀】
ライティング:
川出 朱夏
“職員と選手”の関係から3年間の遠距離を経て”夫婦”に。
【杉】本日はよろしくお願いいたします!陸上ということもあって、我が社の株主である為末さんはじめ、寺田さんとはすごくお知り合いの繋がりがあるんですよね。
【寺】そうですね、びっくりしました!
【杉】早速ですが、おふたりのことを少しお伺いしてもよろしいでしょうか?
【寺】出会いは、私が陸上競技のイベントに参加していたときに彼(佐藤さん)が日本陸上競技連盟の職員として働いていて、その後何度か顔を合わせていました。年齢は離れているんですけど、私が当時まだ10代だったので彼がよくお世話をしてくれていたのが始まりです。付き合ってからはずっと遠距離で、私が北海道に住んでいたんですけど、毎月欠かさず通ってくれていましたね。
【佐】3年弱ですかね。彼女が東京に来るときはもちろん、東京で会うこともありましたけど。
【杉】それはすごい・・・!はじめにアプローチしたのはどちらなんですか?
【佐】僕、ですかね・・・でも最初は、職員として選手と付き合うのはあまり良くみられないだろうな、と思っていたんです。北海道に住んでいましたし、付き合うってことまでは考えてなくて。でも彼女の先輩(=パラ陸上女子走幅跳世界選手権金メダリストの中西麻耶選手)に「ハッキリしろ」って言われて。
【寺】お互い背中を押された感じはありますね(笑)
“続ける”ことは簡単だけど、”やめる”ことは意外と難しい
【紀】インタビューの動画とかも拝見させて頂いてんですけど、寺田さんのようにご自身の意思をハッキリ表に出せる女性って素晴らしいな、と思ったんです。私もそうなんですけど、思っていてもなかなか口に出せなくてモヤモヤしている人って、特に女性は多い気がしていて。周りからどう思われているかが気になってしまって、押し殺してしまうというか・・・。だから動画を見たときに「すごい!かっこいい!」って思いました。昔からそうだったんですか?
【佐】そうですね。引退もほぼ自分で決断していて、先ほど3年間月一は会っていたといいましたが、唯一、引退を決める直前の1ヶ月だけは会ってないんですよ。なんとなく空気感で「今はそっとしておいた方がいいだろうな」という気がして。彼女は6歳年下ですが、引退を聞いたときに尊敬したのが、「陸上は日本選手権に出るレベルであれば続けられる。続ける方が楽だけど、次に進みたい。だからこそ”やめる”決断をした」と言っていたことです。ビジネスをされていてもそうだと思うんですけど、スポーツ選手の中にもズルズルと続けてしまう人って多いと思うんです。それが本人にとってどうなのかな、って思うこともありますけど、彼女は潔く決断したので素晴らしいなと思いました。
【杉】日本選手権に出られる時点でレベルが違いすぎて十分すごいですけど、確かにおっしゃる通りですね。それは性格的なところが大きいのでしょうか?
【寺】私も10代の頃は、人にどう見られているんだろう、周りからなんて言われるんだろう、とか考えましたし、怖かったです。ただ、アスリートって社会的にも守られていると思っていて。例えば、記録が出ないからといってすぐにクビになるわけじゃなかったですし、実業団選手として、仕事のタスクもそんなに多いわけではなかったので、競技を続けることって実は逆に楽なんですよね。でも「その先に何があるんだっけ」って考えたときに、多分何もないだろうな、って思ったんです。だから、高校を卒業して実業団に入ったときから「(陸上を)やめたら大学に行こう」と決めていたので、23歳のときに大学に入学したんですけど、そうすることで早く社会に適応できるんじゃないかって思いました。完全に競技から離れて新しい自分をつくるためには、引退する方が潔いなと考えたんです。
【杉】そんな早い段階で先のことまで考えていたんですか!競技者としてのピークって大体30歳前後だといわれますけど、それを迎える前からその先どうしようかという考えを持っていらっしゃったと。
【寺】そうですね。陸上だけで生きていく、というのはもともと考えていなかったです。
【紀】それって何か周りからの影響があったのでしょうか?
【寺】確かにいろんな方に出会ってお話を伺ったのもありますが、一番は家庭環境だと思っています。実は私が小学校のときに両親が離婚していて。それまでは母は専業主婦だったのですが、いきなり働かないといけなくなってしまい、すごく苦労していたのをみていたんです。妹も当時2歳とかですごく歳が離れていて、まだ小さい子ども二人を育てながら働くのってすごく大変そうだったのをみて「何か手に職を持っていないとダメだ!」って小さいながら思うようになりました。だから、勉強しないといけない、走れるだけじゃいけない、いろんなことを知っていなきゃいけない、という考えが、自分の中でつくられていったんだと思います。
【紀】なるほど・・・それを言語化できているのがすごいです。私も見習わないとな、って思います。
【寺】選手なので我が強い方だとは思います(笑)「どうみられてるんだろう」って思ってしまうのは、ママ友との間でもよくあることなんじゃないでしょうか。それこそ、周りのサポートが大事になってくるんじゃないでしょうか。
大事なのは情報や固定概念にとらわれず、周りにも心をひらくこと
【杉】お二人の中で何か、心掛けていることってあるんですか?
【佐】私は基本的に”口を出さない”ことですかね。彼女は大学で幼児体育を専攻していたので僕よりも育児の知識はありましたし、もちろん私も主体的に関わりますけど、判断は任せていました。育児に関しては”サポート”という言葉は私は嫌いです。彼女の競技生活はサポートしていますけど、育児は私も主体的に行っていますから、決して“手助け”しているわけではないので。
【杉】弊社の株主の長友佑都さんもおっしゃってたんですが、”イクメン”ということばが存在すること自体がおかしいんだ、と。家事育児はどちらかがやるものではなく、ふたりでやるものだということですよね。それは、夫婦関係においても同じことなんですね。
【佐】そうですね。夫としてもマネージャーとしても「彼女だからできる」「彼女が突出した能力を持っているから特別なんだ」という風に思ってほしくないんです。もっとたくさんの人に「自分にもできる」と思って欲しい。
【紀】周りからみられている、と思う中で、幼少期の体験以外で自分の考えを口にすることに抵抗がないのって何か秘訣はありますか?自分も含め、自信がない人ってたくさんいると思うんです。「これでいけるんだ」って思えることがないから、いつまでも悩んでしまう。
【寺】例えば、私たち二人とも本がすごく大好きなんですけど、本って読む人によって内容の捉え方が違うと思うんです。彼と意見交換してみると、「こういう違った見方があるんだな」という気づきになって、それを咀嚼した上で、「でもやっぱり自分はこう思う!」というのを説得力を持って発信するようにしています。たまに絶対自分の意見は曲げない!ってなる時もあるんですけど。逆に彼の意見が正しいな、と思うときはそれとなく認めてます(笑)自分の意見をガツガツ言う一方で、周りの意見もみながら肉付けしたりはしていますね。今はネットでいろんな情報を得ることができますが、それだけに頼ってしまうと不安になることもあるけど、違うところから情報をとってくると新しい気づきにもなる。自分からどう情報をとりにいくか、ということは大きいんじゃないでしょうか。
【佐】周りに”頼る”こともあるんじゃないですかね。妻は北海道で陸上競技をしていたときは閉鎖的な空間にいたけど、復帰後の今はいろんな人と会って話を聞くことで、自分の頭の中で落とし込んでいるというのもある種、人に頼っていることになるんじゃないでしょうか。
【紀】それは何かきっかけがあったんでしょうか?
【寺】ラグビーですね。頼ることがもともと嫌いだったし、自分の弱みを見せるのが嫌だったんですけど、ラグビーをはじめたとき、私が苦手な部分は周りがカバーしてくれて、周りが苦手なことは私が頑張る、みたいな持ちつ持たれつの競技だったので。「寺田明日香を活かすのは私たちの仕事だから」って周りが言ってくれて「そっか!じゃあ私は絶対トライとってこよう」って。それって日常生活でもあるな、って気づいて、自分ができないことは周りを頼りつつ、吸収するようになりました。
【佐】子育ても似ていて、人間って動物の中でも独り立ちが遅く、子育てをみんなでやる珍しい生き物なんですよね。この間はじめて、子どもを1日まるまる知り合いにみてもらってたんですけど、「これからも言ってくれればみてあげるから」って言われたときに、すごく気持ちが楽になった気がしました。子どもも、預かってくれたご家庭の子と楽しく遊んでたみたいで。
【杉】それって、大人が「こうなんじゃないか」って決めつけていることが多いからなんですかね。「親とはこうあるべきだ」という変な概念やプライドにとらわれている気がします。
【寺】そうなんです。保育園に預け始めるときも、預ける前は「自分たちがこうあるべきだ」って、預けることに罪悪感を覚えていたんですけど、いざ預けてみて1週間くらい経つと「ありがたい!!」って思えるようになりました。子どもも、他の子たちと遊べるし、活動するバリエーションも広がるし、親が楽になるだけじゃなかったんだなって。
【佐】思ってるほど僕らは子育てできないよね、って思いますね。
【寺】そう!「何に対して自分は責任を感じちゃってるんだろう」って。子どもは小さいので実はあんまりわかってなくて。預けるときは泣くんですけど、ちょっとしたら元気に遊びまわってることなんて普通にあるんですよね。結局は自分自身に責任を感じちゃってるし、「母親として自分はちゃんとできていないんだ」と勝手に思い込んでいるんだと思うんです。なので、意外と手から離れると子どもは大丈夫で、自分の方が寂しくなっちゃったり・・・。
【佐】あと、うちの子は保育園に通い始めたのが3歳になってすぐだったんですけど、その前からなんとなく理解してたんだと思います。妻がラグビーを始めて、初めて合宿に行く前の夜、妻が娘の前で「明日からしばらく果緒ちゃん(※娘の名前)に会えないんだ」って泣きながら伝えると、2歳半だった娘が「ママ泣かないで、大丈夫だから」って妻の涙を拭きながら言ってくれたんです。あれには本当に感動しましたし、勇気づけられました。
【寺】子どもは結構わかってくれているものだと思います。親の方がいろんな情報が入ってきちゃって、勝手に「こうあるべきだ」って思い込んでしまうんじゃないでしょうか。大人がどれだけ柔軟に考えられるか、が大事なんだと思います。
【佐】「母親はこうあるべきだ」という考えもまだまだあると思うんですけど、僕としては父親が育児にもっと積極的に参加することも大事だと思いますし、そういう世の中にしていきたいという思いはあります。
【杉】この数年でだいぶ変わってきてはいるかな、という感じはしますよね。子育てに限らず、男女が共創していく社会は僕たちも目指していきたいところです。ママアスリートとして活躍される方もだいぶ増えてきている印象があります。中でも寺田さんのように、復帰される方はまだまだ少ないですよね。
【寺】どうしても陸上はタイムで競うものなので、そこの既成概念を取れるといいな、と思っています。競技に限らず、復帰しても前の自分を超えていけるんだ、って。
自分の想いを発信することで、周りも全力でサポートしてくれる
【杉】復帰前と後で変わったことはありましたか?
【寺】変わりましたね。結果を出したい、という思いはもちろんありますが、「これだけやって出なかったらしょうがない」と思えるようになったのもありますし、子育てをしていてイレギュラーなことなんて日常茶飯事なので、自分のことは自分でどうにかできる!って考えられるようになったし、気持ちも楽になったんですよね。自分が今、うまくいっていなくても、「何かを変えればきっとうまく行くようになるんだろうな」という、メンタルの部分で大きく変わることができたというのがあります。人に頼れるようになったのがやっぱり大きいのかな。あとは、「子どもがいて30歳になったらもう世界で戦うのは無理だろう」って周りには思われていただろうなと思うんですけど、それを超えたときに、どれくらいの人が味方になってくれるんだろう、と想像したときに面白いなって。
私自身もスタッフの負担をなるべく減らしたいという思いながらずっとやってきているので、スタッフの中には同年代で最近子どもが生まれた人たちもいて、なるべく家族との時間を大事にして欲しいと伝えています。スタッフの働き方改革は率先的に取り組んでいているところです。「今は子どもをつくれるタイミングじゃない」といった考えを持たせてしまうのは悲しいことだと思うので、個々の考えはもちろんあると思うんですけど、スポーツに関わる人たちの負担を少しでも減らして、周りが支える体制を作っていきたいなと思っています。
【杉】意外と周りがサポートしてくれることってあったりするんでしょうね。ご自身もそういう経験をされているから伝えていけるんでしょうか。
【佐】色々な方々から「どうやって今の状況をつくってきたんですか?」と聞かれることがあるんですけど、それは私たちが掴んできたもので、与えられてきたものじゃないと思っていて、自分たちが信念を持ってやっている、という感じでしょうか。
【寺】私自身も「こうしたいです」という自分の意思はコーチにも伝えにいきましたし、そのために何が必要なのかを考えて、いろんな人に声をかけたりもしました。あとは、結果が伴わなかったときに「でも寺田明日香についてきてよかった」って思ってもらえるようにしないといけないな、というのは自分の中にあって、「自分についてきてもらえることでその人たちに何を与えられるか」というのは常に考えるようにしています。
【佐】彼女の場合は、発言するだけじゃなくて、結果も含め、きちんと行動することで周りに示しているのがすごいと思っています。子どもにもその姿はしっかり見せています。
【紀】それってすごい事だと思います。一見、誰でもできそうに見えることではあるんですけど、簡単じゃないですよね。家庭に入っているママさんは、どうしても「これじゃダメだ」って、固定概念から入っちゃうんですかね。
【寺】そうですね。無理しちゃうのかもしれません。しかも、無理していることに最初はなかなか気づかないんです。あとになって「あ、無理してるな」って。でも、その前の段階の「なんか疲れたな」っていうのがちょっとずつ増えてきたときに、何かしらのアクションをすることが大事だと思います。同じように悩むママさんコミュニティに入るとか。
【杉】最近は”ママの孤独”ともいわれるように、コミュニティに入るのを躊躇う人も多いって聞きます。
【寺】そうなんです!私も児童館に行くのにすっごく勇気がいりました!いろんなお母さんがいて、子ども同士も仲良くなれるので、いいんだろうな、とは思っていたんですけど・・・すでにグループができていたりもするので。どうしたらいいんだろう、って。
【杉】でもきっとその場にいる人みんな同じなんでしょうね。
【寺】それこそ、「ありのままの寺田明日香を好きになってもらおう」って気持ちを切り替えるようにしています。
【杉】SNSが普及してから、常に自分がみられていて、逆に身近な人が怖くなってくる、という人が増えたんじゃないでしょうか。本音を話せる人が少なくなってきちゃったんじゃないかな、って。特にベビーフードの事業をはじめてから感じるようになりました。なので僕がサービスを展開する上でテーマにしているのは、「愛してくれる他人になること」なんです。あまりに近すぎると言いにくいことでも、逆に他人だからなんでも相談できる、そんな存在になりたいなと思っています。
【佐】特に今は、こういう時期(コロナによる外出自粛・制限など)だからこそ、そういう存在が周りにあるって大事ですよね。先日はじめて子どもを預けたときも、自分だけじゃなくて子どものためにもなるんだなって思いました。普段家族だけで過ごす時間とはまた、違った時間も持てたなって。
家族ができて、自分自身も自然と変わった
【杉】僕は”結婚”を機にすごく変わったな、と思っていて。「”自分じゃない何か”を守らないといけない」「自分の意思と同じくらい妻の意思も大事だな」って思うようになったし、視野が広がったなという感覚があります。でも、なかなか変われない男性って世の中にたくさんいるんじゃないかな、と思うんです。
【佐】なるほど。俺も変わったんじゃないかな?
【寺】いや、私の変化率に比べると(笑)
【佐】確かにそうだね(笑)圧倒的に彼女の方が変わったと思います。特に、気が強くなった(笑)
【杉】男性って「変わりたい」っていう気持ちはすごくあると思うんです。僕は妻と創業したので、当初周りからはすごくいわれました。彼女はずっと訪問介護を8年間やってましたし、起業するようなタイプとは真逆だったので。でも、特に年下の男性からは「すごい!」「かっこいい!」っていってもらえることが多いんです。つまり、大人になるとある程度キャリアも積んで経験もあって、新しいことに挑戦することってなかなか難しくなるんですけど、若い男性ってまだまだ経験も浅くて「変わりたい」という意志が強いんじゃないかなと思ってます。なので、お二人のように世間からみても”いいパートナー”でいられることって、僕たちからしても憧れです。今は、女性の働き方だったり、女性にフォーカスされることが多くなってきていますが、僕はもっと男性が変わっていくべきなんじゃないかな、と思います。
【寺】そうですね。これはディスりじゃないんですけど、彼は最初できないことがすごく多かったんです。結婚するまでずっと実家暮らして、ご飯の準備はもちろん、洗濯や掃除もそんなに自分でしたことがなかったんだと思います。でも結婚して、家事とかはやってくれるようになりました。特に最初はお願いしないとやってくれなかったことも、今はいわなくてもやってくれてるようになったんですよね。当たり前の事だと思うんですけど、今までやらなかった・できなかったことができるようになったのは大きな変化じゃないかな、と思います。
【佐】彼女が選手として復帰してからは、僕も子どものご飯をつくらないといけないですしね。でも最近はアフタースクールが夕食まで出してくれるのですごく助かっています。
【紀】お互いが「こうしてほしい」と強制するのではなく、自分たちの考え方やライフスタイルは無理に変える必要はないということでしょうか?
【佐】自然に変わるんだと思います。特に娘ができてからは自分がやらないとって思うようになりました。「家族がいるから、娘がいるから満足に競技ができなかった」と妻本人や周りに思われたくないのもあります。意地、ですかね。
【寺】あとは、自分の意見を(佐藤さんが)すごくいうようになったな、と思います。お互いが意見をいうようになったんじゃないでしょうか。
【佐】結婚するまで喧嘩したことなかったですね。
【杉】それって佐藤さんが気を遣って言いたいことを言わなかったからですか?
【佐】そういうわけではないですけどね。まあ、月一回くらいしか会えなかったからということもありましたけど。
【杉】僕と一緒ですね。
【紀】え、気遣ってたの?!
女性にとって大事なのは「変化を恐れないこと」
【紀】女性として、夢を追い続ける、キャリアを築いていく上で、寺田さんから何かアドバイスはありますか?
【寺】そうですね。女性だと特にライフスタイルの変化があるので、もともとそれを見据えている人も、突然やってくる人もいると思います。そのときに「仕事をとるか、家庭をとるか」と悩む人が多いと思うんですけど、実は自分が重く考えてしまっているところもすごくあって、意外と簡単にクリアできることもあることに気付いていないんです。少しずつ周りに話していく、相談することがすごく大事だな、と私も経験して思いましたし、周りも「あ、今そういう風に考えているんだな」と感じ取ってくれるので、その時が来ても全力でサポートできるんだと思います。来年のオリンピックに向けて、スポーツ界でもはじめて女性の選手数が50%超えるかもといわれるぐらい、女性の活躍率が上がってきているので、もっと自信を持っていいんじゃないかな、と思っています。日本だとまだまだ、男性がキャリアを進めるイメージがあるんですけど、女性も自分の力で上がっていける世の中にはなってきていると思うので、諦めずに頑張って欲しいです。
【佐】変化することに対して、彼女は恐怖心を持っていないので、そういうところがいいんだろうな、とそばにいて思いますね。
【寺】変化をすることを楽しんでほしいです。女性は特に守りに入りがちで、それって「変化したくない」という思いからきているんだと思うんです。その気持ちもすごくわかるんですけど、「自分は果たしてそれでいいのだろか?」とふと思うときがきます。なので、少しずつの小さな変化でも良いので変えていくことで自信につながると思っていて、私は斬新に変化しようとしています!
【佐】彼女が自由にしているから、僕も自由にできていることがたくさんあります。僕は彼女に好きなことをして欲しいし、それを全力で応援しています。
【紀】「旦那のために」となると、そこから”理想の妻像”が生まれてしまうんだと思います。そして、それが超えられないと自信をなくしてしまって負のループにハマっちゃうんでしょうね。私も、きちんと周りに発信していきながら、変化を恐れずにちょっとずつ挑戦していきたいです!
Fin.
【編集後記】
女性の社会進出が進み、「子育てとキャリア」、どちらもうまく両立させている方が増えてきている一方で、まだまだ自分の意見を言いづらいと感じる職場で働く方もたくさんいると思います。特に今、コロナの影響で、保育園や学校に預けられないにも関わらず、働かなければ収入が減って(なくなって)しまうと悩む方や、中には退職を余儀なくされてしまったママさんのニュースをテレビでもよく見かけます。
ただ今回、寺田さんにインタビューさせていただいて感じたのが、「自分の想いや考えを表に出さなければ、何も始まらないんだ」ということ。寺田さんもおっしゃったように、少しずつでも周りに発信していくことで、サポートしてくれる人も増えるのではないのでしょうか。特に、パートナーは一番身近な存在であるからこそ、自分の意思を伝えていくことが大事なんだと思います。
女性が子育てもキャリアも、自分の夢を諦めずに実現していける社会を目指して、ひとりひとりが変化を恐れず挑戦する勇気を持ち、それを周りもサポートしてあげることが大事なんですね。
By. 川出 朱夏
▼ 本日のゲスト
寺田 明日香(てらだ あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道札幌市出身。
日本選手権3連覇・世界陸上出場など実力の持ち主だったが、相次ぐケガや摂食障害などで2013年、23歳の時に陸上競技を引退。結婚・大学進学・一般企業での契約社員・出産を経て、2016年には7人制ラグビーに転向する形で競技復帰。2019年からは再び陸上競技に復帰し、19年ぶりの日本新記録を樹立、10年ぶりに世界陸上にも出場した。
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佐藤 峻一(さとう しゅんいち)
1983年6月12日生まれ。東京都中央区出身・在住。
開成高校→早稲田大学第一文学部→早稲田大学大学院スポーツ科学研究科。卒業後は日本陸上競技連盟・新日本有限責任監査法人を経て、2017年に㈱Sports SNACKSを設立。(一社)スポーツ能力発見協会理事。2012年には大谷翔平選手への北海道日本ハムファイターズによる入団交渉資料「夢への道しるべ」作成にも関わった。