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「募集を見て1時間で応募しました。」ついに見つけた、「好き」から価値を生み出す仕事【DSチーム対談・前編】

当社のAiCANサービスを支える根幹と言っても過言ではない、DS(データサイエンス)チームの坂本さん・椎名さんに話を聞きました!統計解析担当の坂本さんと、機械学習担当の椎名さん、それぞれ得意分野の違う2人です。
データサイエンティストってどんなことをしているの?そもそもデータサイエンスって何?心ゆくまで語ってもらいました。

坂本 次郎/Jiro Sakamoto【写真左】
大学院では臨床心理学を学び、統計解析を用いた研究に取り組む。2020年より、サポートメンバーとして株式会社AiCANに所属、2022年4月より正規メンバーとしてジョイン。

おいしいものとおいしい顔が大好きで、休日は友人に手料理をふるまうこともあるとか。
同僚の影響で登山にハマり中。「登山用のレインウェアを買ってから、雨の日の出社が楽しみ」


椎名 拳太/Kenta Shiina【写真右】
理学博士。大学院での研究テーマは、物性物理学における深層学習を用いた計算手法の開発。
2022年4月より株式会社AiCANに所属。仕事のエネルギー源は糖分ではなくコーヒー。

大学の山岳部から登山をはじめて10年以上。休日は、釣りなどアウトドア全般を楽しみ、
最近は野菜作り、DIYにも手を出しているとか。モットーは「生活を手元に」

得意なことを、社会に役立てたい

ーー代表の髙岡さんはもともと、データを活用した社会課題解決をテーマに、子ども虐待の研究をしていました。2人は、その研究チームに参画していたんですよね?

坂本:はい。僕は大学院で臨床心理学を学んでいたので、カウンセリングの勉強をしていたのと、研究で統計解析も使っていました。「自分の得意なことを、最大限興味を持って追求することが、結果的に誰かのためになる」と考えていたので、自分の統計解析の知識や技術が、社会の役に立ったらいいなと。

社会がいい方向に変わるとしたら、それは必ず未来にある。だから、自分より未来をたくさん持っている子どものために何かしたいと思って、児童福祉の世界にやってきました。自分の想いや興味をつきつめた結果、好きなことや得意なことを発揮できる場所が見つかったというか。ちょっと真面目すぎたかな…ごめんなっしー(椎名)、この次答えにくいよね?(笑)

椎名:前置きすると、自分も真面目に話します(笑)。大学では物理をやっていて、博士課程後期の3年間で、物性物理の問題を解くために機械学習の技術を応用するという研究をしていました。博士課程が終わるときに、就職先を探す中で…「好きなことをやっていたい」とは思っていたけれど、「なにか社会的な価値を出したい」と思うと、なかなか物理でやれることが見つからなかった。

論文を書くとかではなくて、もっと社会的な価値を自分が近くで実感したいと思って、そういう仕事を一生懸命探していました。それでたまたま見つけたのが、髙岡さんの研究プロジェクト。この研究を見つけるまでは、公共事業のような、広く多くの人に価値を提供できる仕事も魅力的に感じていたけど、児童虐待のような…「より助けを必要としている人」に自分の技術を向けられるのっていいな、とすごく惹かれました。

もともと履歴書は用意していたので、募集を見つけて1時間経たないうちに応募しました。

坂本:ははは(笑)。なっしー、慎重に見えてランダムウォーク。自分の中にちゃんと決まっているものがあるから、刺激に触れたらガーッと…実は瞬発性があるよね。


ーー2人とも「社会の役に立ちたい」という気持ちがあったんですね。AiCANへ入社した決め手はあったんですか?

坂本:やっぱり、児童相談所で扱われているデータを解析して、役立つ意味をつくりあげていくというのは、なかなか他ではできない。新しい会社だから、自分の考えやつくった技術がサービスとして反映されやすいし、自分がこれからつくっていけることにも魅力を感じました。

椎名:自分にとっては、スタートアップであることも大きな要素でした。もしAiCANが大企業だったら、入社していなかったかもしれない。新しく小さな会社だから、自分で好きにつくれる可能性も高いし、「社会的な価値を出す」という点でも、自分の仕事の結果や価値が見えやすいと思って。

坂本:「児童福祉の現場にすごく近い」ことも、AiCANならではの魅力だと思います。自分たちが触っているデータがどういうところで生まれたのか…データ上で見えることと、実際に現場で起きていることにはギャップがあることが多い。データサイエンティストも、実際に児童相談所へ足を運ばせてもらえるので、データと現実のイメージがだんだん繋がってくるというか。

僕たちがやっている仕事は「データから知識や意味を見出す」こと。大切な知識や意味をデータ解析で抽出するということには、とても意義を感じています。


データサイエンティストとは

ーー「データから知識や意味を見出す」とのことでしたが、データサイエンティストとは、どんな仕事なのでしょう?

坂本:「データサイエンスとはこういう仕事だ」と決まったものはなくて…新しい仕事なので、まだ発展途上にある、という説明が正確でしょうか。データ分析をしているのは確かだけど、領域によっても目的が異なるし、明確な定義を与えるのは難しい。その中でも、僕たちが取り組んでいる「児童福祉領域におけるデータサイエンス」は、さらに未知の領域で、模索しながら仕事をしています。

子どもの福祉、そして子ども虐待対応にも共通する理念である「子どもの最善の利益の追求」に沿うような…それを実現するために、どんな技術を使えるか?という観点で、色々な開発をしたり、分析をしたり、アプリケーションに機械学習…いわゆるAI技術を実装したり。一見すると泥臭くも見える、基盤の整備もやっています。


ーーAiCAN社のサービスで言うと、DSチームはどんな部分を担当していますか?

坂本:AiCANアプリのAIをつくっている、ということになると思います。AIシミュレーションの裏側で動いている技術は、ほとんど機械学習がメインで、主に椎名さんが担当してくれています。

▼AiCANのAIシミュレーションについては、こちら▼

AIが子ども虐待対応をサポート!?その真意とは...【CEOインタビューVol.1:後編】 | 株式会社AiCAN
当社の主要事業・AiCANサービスでは、自治体の子ども虐待対応を支援するAI搭載システムの提供に加え、ユーザーへの研修や業務改善提案を行っています。では、「AiCAN」という名に込めた想いや、サービスの根幹となる「データ」の価値についてご紹介しました。 後編では、AiCANサービスの詳細に迫ります。システム開発に留まらない伴走型サービスや、AIでわかることについて、たっぷり語ってもらいました!
https://www.wantedly.com/companies/company_4137770/post_articles/415038


椎名:次郎さん(坂本)がやっている業務傾向分析も、AiCANサービスの要。アプリを使うことで蓄積されたデータから、虐待事例やその対応の全体的な傾向を分析して、フィードバックしている。ユーザーに「データをこうやって使うと、こんな解釈ができるよ」と示す、価値のある仕事だと思います。

坂本:機械学習は、個々の事例の情報に特化した予測が得意。例えば、AiCANでは、1つ1つの虐待事例にフォーカスして、将来予防したいことの発生確率を推定しています。一方で統計解析は、虐待事例全体に言える傾向を探っていく。同じデータサイエンスだけど、僕が統計解析・椎名さんが機械学習、それぞれ少し違う技術を使っています。


地道な作業の積み重ね

ーー今お話してもらったのは「データ分析の結果」ですよね。料理と同じで、そこに行くまでの「下ごしらえが大変」と聞きますが…

坂本:行と列のような形で、ものすごい数字の羅列があって、それをデータと呼んでいるんだけど。児童相談所の業務で扱われている情報の記録なので、分析には直接関わらない情報も多く含まれている。業務の中で蓄積してつくられた大元のデータベースから、分析に使用するデータを、エラーがないように丁寧に抽出する作業をしています。

椎名:自分は機械学習を担当しているので、そうやってきれいに整形したデータを、機械学習モデルに学習させています。よく「AIにデータを食べさせる」と言われたりするけど、「こういう入力をした場合は、こういう出力をしなさい」という出力パターンの正解を覚えさせる作業のこと。これを繰り返した結果できあがるのが、いわゆるAI。

坂本:よく「AIって一言で説明すると何?」と聞かれるけど、なかなか難しい。

椎名:例えば、写真を入力するとそれが「猫か/猫ではないか」を出力するAIをつくるとしたら、データとして、猫とか犬とか、猫と猫以外を含むたくさんの画像を用意します。猫の画像には「これは猫である」というラベルを貼って、猫以外の画像には「これは猫ではない」というラベルを貼っておく。
ラベルを見せずに画像だけを入力して、AIに「猫である」か「猫ではない」かを出力させて、その出力が正解かどうか=ラベルと一致しているかどうかを教えていくのが、AIの「学習」です。

最初のうちは、間違った出力をします。猫の画像を入力したのに「猫ではない」と出力したり、猫ではない画像に対して「猫である」と出力してしまう。「これは猫だよ」「猫ではないよ」と正解を教えてあげるのが、ラベルの役割。

坂本:そうそう、本当に人間の学習と同じ。

椎名:この学習を繰り返していくうちに、学習に使っていない、初めて見る画像を入力しても、正しい答えを出せるようになる。人間は命令(コード)を書いて、この学習は自動でやらせているんだけど…終わるまで時間がかかるから、その間にコーヒー飲む。

坂本:あの時間(解析などの処理が終わるまでの時間)、気になって他の作業できないよね。

椎名:え、自分は他の作業やります(笑)

坂本:頭の中が「どんな結果出るかな?」でいっぱいで…。勿論、あまりに時間がかかるときは他の作業するけど、数十分くらいならずっとモニター見てしまう。「どれくらい覚えたか」みたいな学習状況、出力の正解率(精度)がリアルタイムで表示されるので、つい気になってしまって。


AIは、何でもわかるスーパーロボットではない

ーー「データ」と聞くと「数字って冷たい感じがする」と反応する方もいますよね。データサイエンティストとして、何か思っていることはありますか?

坂本:対人援助というのは、「支援」という枠組みで、人と人が向き合って、相手をサポートしたり、一緒に何かを考えてゆく営みだと思います。そういう意味で、データ分析が役立つのはほんの一部分。データ利活用というのは、知識を得る・判断をするための情報を得る、ということに特化している。分析で得られた結果・データが対人援助の全てというわけではありません。本当に考えなきゃいけないことが、データの外にあることも多い。

データ分析に携わっていると、データでできることよりも「データでできないこと」を自覚できるようになる。すごく深刻な虐待事例でも、データで扱うと「1件」という数字になってしまう。側から見ると冷たい印象を帯びてしまうのは、データ分析の限界かもしれない。

一方、子ども虐待対応は、すごく人の感情を揺さぶる問題でもあって。対応する人たちは勿論、その問題を認識する社会の人たちもそう。感情の波に舵を取られて的確な判断ができなくなったり、認識がずれてしまう可能性もある。そういうときに、皆で冷静に議論できる素材として、データ分析は重要な役割を担っているのかなと思います。

椎名:「とりあえずAI」みたいな風潮があるけれど、AIは手段なので、導入するだけで問題が解決するわけではなくて。どのように導入するか、導入した後に効果が出ているか、より良い効果を出していくにはどうすれば良いかなどを継続的に考えていくことが必要です。

坂本:例えば、さっきの「猫の写真判定」は、猫かどうかを判定するような、人間の視覚機能だけに特化したもの。僕たちは、何でもわかるスーパーロボットをつくっているわけではなくて。ある特定の物事に使える情報を出すことに特化したAIをつくっています。 AIと言うと、人間そっくりのロボットをイメージされる傾向が強いけど、そういう色々なことを処理できる汎用的な人工知能は、まだこの世に存在していないと思う。

椎名:AIが注目されている時流に乗って、取り組みを広げていくのはありだけど…やっぱり、データ利活用で価値としての効果を出すこと、そのための枠組みと機能の開発を本気でやりたい。本当に価値が出ることを突き詰めて考えていきたいです。

インタビューは後編へ続きます。来週の更新をお楽しみに!

前編では、2人が「子ども虐待」という領域でデータサイエンスに取り組む理由や、機械学習の仕組みについてご紹介しました。インタビュー後編では、統計解析と機械学習の違いや、AiCANならではの働く環境に迫ります。「4月に入社して、5月には児童相談所の視察へ」「ゼロから自分たちで基盤をつくっている」などなど、気になる内容が盛りだくさんです。

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(取材・文/Akane Matsumura)


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