“システムのパフォーマンスに大きな問題がありました。2つのPLMを導入したため、システム間でデータの不整合が多発したのです”
Swarovskiのブランドオペレーション・マーケティング部門責任者Martin Buchbauer氏は、異なる事業部門で同時に使用していた2つの既存PLMプラットフォームについて次のように述べています。「半年違いで2つの異なるPLMシステムを導入していました。この2つのシステムを互いに連携させ、さらにERPとも統合しようとしましたが、非常に複雑なシステム連携でした。数年は何とか運用で持ちこたえていましたが、満足いくものではありませんでした」そしてついに、もう十分と判断し、一つのPLMソリューションへの移行を決定しました。同社はその決断まで、どのような道のりを歩み、その後にどのようなメリットを得たのでしょう。
1895年の設立当初から
1895 年にオーストリアで設立されたSwarovskiは、高級クリスタル、宝石、ジュエリー、アクセサリー、スワロフスキー・クリエイテッドダイヤモンド、ジルコニア、クリスタルオブジェ、ホームアクセサリーをデザイン、製造、販売しています。Swarovski Crystal Businessは約 140 カ国に展開し、18,000 人以上の従業員を擁します。Swarovskiは直販のほか、小売販売を展開するとともに、一部のハイエンドブランド向けには素材としてクリスタルを限定販売しています。
アップグレードかリプレースか?
2011年、2つの部門がPLMシステムのプロジェクトを抱えていました。Buchbauer氏は、マーケティング側のPLMシステムを担当しました。「導入段階で、ベンダーが当社要件の機能の殆どに対して、過剰に約束していたことに気づきました。当社には非常に強力なIT部署があるのですが、彼らは多くのカスタマイズを実施せざるを得ませんでした。結局、機能の約67%をカスタマイズしました」しかし数年後、Swarovski はソリューションをアップグレードする必要に迫られました。そして、高度にカスタマイズされた既存システムのアップグレードコストは、新しいソリューションを購入するのに匹敵するという結論に達しました。新たなアップグレードバージョンで再び機能を作りこむ時間とコストを考慮すると、カスタマイズ選択の価値はありませんでした。
論理的に、Swarovskiはまず、全社的な導入を目指し、もう一つの既存システムを活用することを検討するために、数回のセッションを開催しました。しかしBuchbaue氏は「もう一つのシステムも当社のニーズに対応できないということが判明しました」と話します。
偶然にも、ちょうどその頃、Centric Software®のセールスディレクターからBuchbauer氏へ連絡が入りました。Buchbauer氏は次のように述べています。「まさに完璧なタイミングでした。当社の状況を説明すると、数週間という非常に短い期間で、セントリックはいくつかのデモセッションとユースケース紹介を設定してくれました。セッションに参加したほとんどのユーザーは、Centric Softwareの提案に驚いていました」
シニアPLMマネージャー・ブランドオペレーション担当の Jose Perez氏は「我々は『プロセスが第一』というコンセプトで仕事をしています。システムは当社プロセスをサポートすべきであり、その逆ではありません。新しいアイデアから商品化までのプロセスを、構想通りに自動化できるソリューションが必要でした。Centric PLMにはそれが可能でした」 と話します。
流れに乗る
Perez氏は2020年のCentric PLM™ 導入当初にディスカッションを進めました。どのようなシステム導入でも言えることですが、途中にはいくつかの課題があり、Swarovskiが必要とした追加機能はまだありませんでした。セントリック関係者はSwarovskiの期待を把握し、その顧客中心を基としたアプローチで、特にイノベーションロードマップに関してSwarovskiと協業しながら満足のいく結果を出すことができました。Perez氏は次のように語っています。「セントリックは当社に対して常にとても明確でした。彼らは、『現在その機能はないが、貴社と一緒に作ることに非常に興味がある』と言います。その機能には、ワークフローを強化したコラボレーション、マイルストーンプロセスやタスクのサポート、追跡、レポート、マルチソーシング機能などが含まれていました。セントリックは、当社が評価したソフトウェアの中で、初めて本格的なマルチソーシング開発プラットフォームを作ったベンダーです」
導入プロジェクトは首尾良く整えられていました。Perez氏は「プロジェクトの成功は、綿密な計画のおかげです。セントリックはとても強力な人材を提供してくれました。まずディスカバリーセッションを行い、要件をマッピングし、どのように作業を進めていくかを決めました。Martin(Buchbauer氏)が言っていたように、当社には非常に強力なIT部門があります。プロジェクトをスムーズに進めるために、社内と社外の関係者間でタスクを分担しました」と説明します。
Swarovskiはさまざまな部門へ社内トレーニングを実施する予定でしたが、COVID-19感染症が発生しました。「その週末は飛行機が欠航しました」とPerez氏は振り返ります。同社はすぐにオンライントレーニングに切り替えました。Perez氏は続けます。「ここでこのツールの威力が発揮されました。すべてをリモートで実施しても、システムの導入は非常に迅速に進みました」Perez氏は世界中で300人以上のユーザーをトレーニングし、完全リモートでの稼動を実現しました。
関係者全員のメリット
現在、Centric PLMはマーケティング、商品開発、デザイン、品質管理、製造、調達、商品化計画、管理部門、オンライン部門など、あらゆる部署で活用されています。ERPや3Dプログラム、Adobe® Illustratorとも直接連携しています。Buchbauer氏は「本来、2つのシステムで作業するよりも、1つのシステムで作業した方が楽なのです。例えば、複雑なインターフェースがなくなり、メンテナンスは不要になりました。Centric PLM導入によって、データ精度は断然に高くなりました。以前直面した、2つのシステム間の不整合は、もう存在しません。そしてユーザーインターフェースがより直感的でモダンになったため、データ入力や更新の効率化に大いに役立っています。以前よりずっと速くなりました」 と述べています。
Perez氏は「導入当初とは組織が変わっています。体制も部署も違います。しかし、情報を必要とする時に、システムが会社の足を引っ張ることがなかったことは大きな気づきでした。Centric PLMは、私たちのビジネス変革と伴走してくれました。これは本当に重要なポイントです」 と語ります。I
Buchbauer氏は定量的な導入効果の例を挙げます。
”以前のPLMシステムでは、コレクションの全セグメントを完全にダウンロードするのに5分ほどかかりました。Centricでは数秒でダウンロードできます。しかも、これは最も頻繁に行われているダウンロードの一つです”
もう一つの例は、スプレッドシート数の削減です。年に2回、コレクションごとに300枚のスプレッドシートを作っていたのが、20枚へ削減されました。年間で600枚から40枚ですから、93%の削減に当たります。また、市場投入までの時間短縮は現在の目標ではありませんが、SwarovskiはCentric PLM活用によって、商品化リードタイムを3ヶ月短縮することができました。
Swarovskiは、SAPやRhino 3Dソフトウェア、Adobe Illustratorなどの様々なツールとの統合という目標を達成しました。Perez氏は「この柔軟性が、ユーザーがCentric PLMを中心的な作業ツールとして活用する決め手となりました。他にも、オペレーションコストと原材料コストの両方を考慮して、さまざまなコストシナリオをもとに意思決定できる複雑な原価計算も必要です」と話します。最後に、強力な原材料・素材表管理機能によって、さまざまなBOMオプションやバージョンを管理することが可能です。
Centric Visual Boards
組織が再編成され、新しいクリエイティブディレクターが着任するなど、クリエイティブデザインが再び重視されるようになり、スタッフはコレクションをさまざまな方法で視覚化するためのプレゼンテーションの準備に多くの時間を費やすようになりました。Perez氏は次のように話します。「非常に手作業に依存しており、プロダクトマーケティング部門の4割が一度に、コレクションのアイデアを示すプレゼンテーションの作成のみに専念していたのです。例えば、色別にコレクションを紹介するよう求められていました。プロダクトマーケティングは、画像をひとつひとつスライドに貼り付け、サイズを調整し、画質を調整していました」
この種の作業は非常に時間がかかり、付加価値はほとんどないため、自動化に向けたビジネスケースを構築することは論理的でした。
Buchbaue氏は「そのビジネスケースによって、次に進むためのCEOの承認を最終的に得ることができました」と結んでいます。
SwarovskiはCentric Visual Assortment Boardsに注目しました。 Centric Visual Assortment Boardsは、バイヤー、MD、デザイナー、プランナー、購買、セールス、リテール部門に、視覚的なピボットテーブルで品揃えの戦略的な視点を提供します。品揃えを色別、配送別、チャネル別など、さまざまな角度から見られる軸を提供し、小売での最適なパフォーマンスと、あらゆるチャネルやタイミングにおける一貫したブランドエクスペリエンスを実現するために、可能な限り強固なコレクションを構築することが可能となります。
重要なビジュアル化
Buchbauer氏は次のように説明します。「我々の部署の一部は、アイデアからコレクション開発、店舗に届けるまでの全プロセスを担当しています。もう1つのグループは、コミュニケーションを担当しており、商品を宣伝するためのアセットを開発、計画、作成します」このコミュニケーション担当グループは、商品の関連データに直接アクセスしてメッセージを考案しています。
Perez氏 「PLMと同様、ビジュアルボードは、最も重要なことに集中できるように時間を解放しました。社員が最も重要なことに取り組めるというのは、最上級のメリットです。また、クリエイティブとプロダクトマーケティング間のコミュニケーションが改善されたことも大きな成果です。視覚的なツールを駆使して、より包括的な方法で情報を提示することができます。ユーザーにとっては、実際に触たり見たりすることで、情報の準備や分類が容易になります」と語ります。
Buchbauer氏は 「データをクリエイティブチームに近づける唯一の方法はボードの上で構築するものだと言えます。それ以外に方法は見当たりません」とコメントします。
「結局のところ、クリエイティブチームをデータに引き合わせなければ、クリエイティブな情報をデジタル情報に変換する際に、常にギャップが生じることになります」とPerez氏は語ります。これがプロセスのボトルネックになりがちです、と続けます。「そのため、2つの世界の間の翻訳者が常に必要になりますが、それが人間であれば、情報は見落とされる可能性があります。まるでバベルの塔のように、クリエイティブな人たちは自分たちの言葉を話し、データオタクはデータだけを話す。そのような中で、Centric Visual Boardsは翻訳者の役割を担います」
たった1年で、Centric Visual Boardsはビジネスケースの約束を果たしました。Perez氏は次のように話しています。「プロダクトマーケティングは、最もよく使う特定のレポートを作るのに、1~1.5日を費やしていました。今は、ボタンをクリックするだけで、最大15分で作成できます」
▼関連リンク
https://www.centricsoftware.com/ja/success-stories/swarovski/
https://www.centricsoftware.com/ja/blogs/%e5%8f%a4%e3%81%84plm%e3%82%92centric-plm%e3%81%ab%e5%85%a5%e3%82%8c%e6%9b%bf%e3%81%88%e3%82%8b%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%a7%e6%9c%9f%e5%be%85%e3%81%a7%e3%81%8d%e3%82%8b4%e3%81%a4%e3%81%ae%e5%8a%b9/