私たちMusubi Labは今年で5周年を迎えようとしています。
産地を訪れ、作り手の方々と会話をし、深みのあるストーリーに触れ、ものを作り、世界に発信していくということを繰り返してきた結果、特に英語圏向けの和食器輸出においてはそれなりのマーケットシェアを持つに至りました。これも私たちと協働してくださる産地の方々や、私たちに共感し、支援してくださっている根強いブランドファンの方々のおかげであり、心から感謝しています。
これからも目先の利益ではなく、私たちがやっていることは「持続可能な工芸の未来」や「人々が心豊かに暮らす未来」に繋がっているかを軸に考え、進んでいくための組織・事業づくりを続けてまいります。
さて、本日は私たちが今後向かう先について、少しお話ししたいと思います。
これまで私たちは「持続可能な伝統工芸の未来をつくる」というパーパスの下で、あえて「伝統xダイニング」を主要な事業ドメインとして進んできました。
その背景としては、私たちの理念やパーパスに照らし合わせた時に、表面的で曖昧さの残る情報発信や、本質的な価値を理解しないままでの物の販売はするべきではないという考え方から、あえてドメインを限定し、その道のプロとして進んでいくことが長期的な産地・顧客との関係性を考えた時に望ましいだろうということ。そして基盤も資本も無い私たちが、いきなり大風呂敷を広げても、ステークホルダーの方々にとって私たちが何の価値を提供できる組織・ブランドなのかが分かりにくいだろうという考え方からでした。
結果としては、お客様からは累計4000件に迫る高評価レビューを頂き、海外のハイブランドや一流ホテル・レストラングループとのお取引が始まるなど、それなりの信頼を得ることができたかなと感じています。また、その道のりのなかで、仲間の数が増えたり、ナレッジが整理されるにしたがって、出来ることが少しずつ増えてきたなと思うと同時に、ダイニングから広がりを見せていくタイミングが来たように感じています。
具体的には、「ダイニング」から「暮らし」へのシフトです。これまで私たちは暮らしを構成する衣食住のうち食にフォーカスした展開をしてきました。実際のところ、商品については食に軸足を置いてきましたが、オンラインメディアにおいては昨年あたりから「日本文化」や「ライフスタイル」に関する発信が多くなっており、そのようなライフスタイルや空間づくりをお客様が体現できるような商品を紹介したいとうずうずしていました。同時に、産地を訪れると素敵なインテリアやファッション関連の工芸アイテムを目にすることも多く、(そういうものを個人的に買ったりしつつ)いつかこういうものを紹介できるようになりたいなと思ったりもしていました。
そこで今後は、これまで培ってきた「ダイニング」分野での経験や知見を活かしながら、より幅広い「暮らし」を提案できるブランドへと進化していきたいと考えています。たとえば、産地を訪れればそこには日常空間を彩る工芸家具やインテリア、ファッションの小物などが数多く存在し、それらは私たちが大切にしてきた「職人技の先にある物語」や「人を豊かにするデザインの本質」をあらためて感じさせてくれるものでもあります。私たちが長年かけて構築してきた産地や作り手との信頼関係は、ダイニングの域を超えた新しい製品・サービスを生み出すための大きな原動力になると確信しています。
「伝統工芸」というと、つい“特別なもの”や“敷居の高いもの”というイメージを抱きがちです。しかし実際は、工芸の背景にある職人のこだわりや技術は、人々の暮らしとともに何百年、何千年と歩んできたごく身近なものであり、まさに今の生活にこそ必要とされるエッセンスが詰まっています。例えば、日々の着こなしにワンポイント加える手仕事のアクセサリーや、部屋に置くだけで空間が引き締まる匠のインテリアなど、私たちが目指すのは「伝統工芸=美術品」の枠を超えた、多様なライフスタイルへと自然に溶け込む形での提案です。
こうした取り組みを通じて「工芸を楽しむ暮らし」の可能性をさらに広げていくことは、私たちの理念である「持続可能な伝統工芸の未来」そのものにつながっていくと考えています。どんなに美しいものでも、使われなくなってしまえばいつかは廃れてしまいます。逆に、人々の日常の中でこそ活かされる工芸は、長く愛され、次の世代へと自然につながっていくことができるでしょう。ダイニングから始まった私たちの歩みを、暮らしというフィールドへと広げることで、多様な価値観を持つお客様一人ひとりの人生に、より深く寄り添える存在になっていきたいと願っています。
これから先も、産地や作り手の方々とともに作り上げてきた物語性や専門性を大切にしながら、オンラインメディアやリアルの場を通じて新しい暮らしの楽しみ方や工芸の魅力をお届けしていきます。私たちはまだまだ小さな組織ではありますが、熱意と想いを持って挑戦し続ければ、その先に必ず「持続可能な工芸の未来」と「心豊かな暮らし」があると信じています。これからのMusubi Labの挑戦にも、どうぞご期待ください。
そして、私たちの活動がより多くの人々の日常に喜びと発見をもたらすものとなるよう、引き続きあたたかいご支援を賜れれば幸いです。