栗田優輔
2008年に大手ゲーム開発会社に入社。某有名恋愛ADVゲーム、某有名サッカーゲームシリーズの開発にプログラマーとして携わる。
2015年にGameBank株式会社に入社。『強くてNEW GAME』ではメインプログラマーとしてゲームシステム全般を担当。
2017年に株式会社ネストピを立ち上げ、CTOに。
【CEO生田と前職で出会い、ゲームクリエイターの「あるべき姿」を実現させるために起業へ】
ーー本日はよろしくお願いいたします。栗田さんはこれまでのキャリアはゲーム業界一筋だと伺いました。
そうですね。幼い頃から家庭用ゲーム機で遊んで育ってきたので、小学校の卒業文集にも「ゲーム業界に入る!」と書くくらいに、ずっとゲーム業界を目指していました。新卒で入社した大手ゲーム開発会社も、当時は家庭用ゲーム機メインで、私もそこにこだわっていたので、いわゆるソーシャルゲームが流行った時は乗り遅れたと感じていました。
のちにソーシャルゲームバブルが終焉を迎え、スマホのネイティブアプリゲームが出現し、ひとつの面白さに特化したものが生まれ始めた転換期だと思いましたね。プリミティブな遊びといいますか、「幼い頃にプレイしてたスーパーファミコンの時代に戻ってきたのかもしれない!」と感じたんです。そして、私もその世界で勝負したいと思い、転職を決意しました。
ーーなるほど。それは当時在籍していた大手ゲーム開発会社でもできないことだったのですね。
大きな会社にいるとチームも100人くらいの規模で、大きな作品を作ることに魅力はありましたが、やはりワンアイディアで勝負したかったんです。そうして当時、あるインターネット大手企業がモバイルオンラインゲーム専門の子会社を作るとのことで、その立ち上げメンバーとして入社することになりました。
その会社は2年くらいで解散してしまいましたが、最後まで残った数人のメンバーの中に、のちにネストピCEOとなる生田がいたんですね。生田とは夜な夜なゲームを作りながら、ゲームクリエイターの待遇や未来について「こんなことができたら面白いよね!」と夢を語り合っていて。「それを実現する会社を創ろう!」とネストピを立ち上げることになりましたね。
ーーその当時から「ゲーム業界はこうなったらいいよね!」と語られていたとのことですが、具体的にはどういった課題感があったのでしょうか?
一番課題感を感じていたのは報酬設計ですね。我々がゲームを作ってお金を得るまでの流れを企画として考えると、一般的な会社では自分の上司に喜ばれると給与が上がるゲーム設計になっていることが多くて。
一方で我々クリエイターはユーザー様を喜ばせてナンボの商売ですので、直接的にユーザー様を喜ばせたものがダイレクトに給与に反映されるようなゲーム設計にしたいと話していました。それがネストピの『歩合制度』に結びついています。
我々の特徴としては人事評価制度を持っていないため、いくら上司にごまをすっても1円も給与は上がらないんですね。だからイイもの作って、ユーザー様に評価されることによって給与に反映される仕組みというのが、元々業界に対して感じてきた課題をネストピ流に解決しているという形になっています。
ーーイイものを作ることで成果として反映されるのは、クリエイターとしても本質的ですよね。報酬設計の他にも何か課題感はありましたか?
もうひとつの課題としては、当時、クリエイターの囲い込みのようなものが多く起きていたんですね。それを避けるために他社クリエイター間の交流をなくしたり、スタッフロールに名前を載せないといった動きがゲーム業界内にありました。
けれども、ネストピは「クリエイターはどんどん前に出て発信していくべきものだ!」と考えているので、そういった今の業界の掟破りといいますか、真逆の考え方をどんどん発信していきたいと思っています。
そうして2~30年後に業界を見渡した時に、「一線で活躍しているクリエイターはネストピ出身が多いね!」となっているのが最高な状態だと思っているので、業界全体を変えたいと思っていますね。
【手を挙げてチャレンジできる、自分のなりたい「ゲームプログラマー」になれる環境】
ーー栗田さん自身が、大企業と少人数精鋭とでゲーム開発を経験されてきましたが、直近のエンジニア動向に何か感じることはありますか?
やはりここ数年、いわゆるゲームプログラマーと呼ばれる方が少なくなった印象があって。というのも、ゲームがどんどん大きくなってしまうと、プログラムの領域・エンジニアリングの領域も専門分野になっていくんですね。ひとくくりにゲームを作っているプログラマーといってもサウンド制御、物理制御、画面の演出やUI……というようにすごく細分化されてしまいます。そのためすべてを触ることのできるプログラマーというのは本当に減ってしまいました。
私が夢見ていたゲームクリエイターというのは、自分の技術で新しいゲームの世界観を作ってしまうようなゲームプログラマーだったんです。例えば、バーチャファイターで言えば3Dが世の中に浸透していない時代に「技術だけでこんな格闘ゲームが作れるのか!」と感動しましたし、不思議のダンジョンシリーズで言えばトライするたびにマップが変わるような仕組みが生まれていて。プログラマーにしか解決できないような遊びの要素で、ゲームが成り立っていたのです。
ーーゲームプログラマーに憧れを持っていたからこその視点ですね。業務が細分化されると、新人はより配属先によって専門性への影響を受けそうです。
まさにそうですね。一番最初は新人プログラマーでも触りやすいところを触りながらゲーム開発を学び、次のプロジェクトでどこを任されていくかによって、専門分野が絞られることは多いですね。自分ではなかなか選べないですし、気づいたらそこの専門家になっていたという感覚です。
人によってはゲーム作りのバックアップする役割として、ツールを作る側のプログラマーになることもありますし、専門性の幅が広いからこそ運の要素もあると思いますし、必ずしも自分の希望通りにいくとは限らないですよね。
ーー栗田さんは主にどの分野を専門とされていたのですか?
新人の頃は恋愛シミュレーションゲームの開発に携わっていて、UIで表示される部分の2D全般を任せていただいていました。そこからサッカーゲームの開発チームに配属されて、そこでは新しいエンジンに乗せ換えるエンジン開発チームでサウンドを担当することになり、具体的には実況の制御プログラムやシステムの部分を担いました。
私も運が良くて、恋愛シミュレーションゲームもサッカーゲームも、やりたいことに手を挙げればアサインしてくれる環境だったんだな、と今になって思いますね。新規開発ということもあり皆さん優秀な方々でしたし、企画も頓挫せずにタイトルも世に出すことができて。
「新人だからここをやりなさい」ではなく任せてくれるチームにも恵まれていて、新人でも大きくて責任のある仕事を任せてもらえました。
ーー手を挙げれば現場に任せてもらえる環境を経験していたからこそ、今ネストピでもエンジニアが手を動かしてモノづくりに励める環境作りをされていると感じました。
そうですね。この原体験が、ネストピの社風にも表れていると思います。
まず、ネストピは細分化のスペシャリストではなく、ゲームプログラマーになれる環境だと感じています。少人数ならではの、一部分ではなく全体を作る、関わることができる体制になっていますね。
具体的に言うと、どういった技術を使うかという技術選定においても、現場のプログラマーの裁量に任せていますね。新しい機械学習を取り入れたい、新しい通信の技術にチャレンジしたいと思えばやりやすい環境だと思います。
また、基本的には挙手制なので、やりたいと言った人にお任せしたいと考えていますね。最後の最後の神様が宿る部分にやる気や熱量が反映されるものだと思っているからこそ、その意思は大切にしています。過去に私自身も、新人でありながらチャンスを与えられた、打席に立たせてもらったという経験から、新人メンバーや手を挙げた人に任せる文化になっていますね。
【モノづくりに同じ熱量でコミットする仲間がいることは、ネストピの大きな魅力】
ーーチームでの取り組み方に関して、ネストピのエンジニアならではというポイントはありますか?
ネストピではプログラムだけやれば良いのではなくて、毎週みんなで実際にゲームを触って「こういうものを実装できるけどどうかな?」とエンジニアならではの視点で企画へのアプローチができること、そこがモノづくりにおけるキモになっていますね。
4月に入社した新卒プログラマーは、いきなり自社開発のゲームを任されているのですが、能動的に提案してはどんどん仕様にも採用されていますね。ゲームに関する議論をして、良いアイディアがあれば採用する、その環境が嘘偽りなく確実にあると思っています。
こうしたゲームを作っていくうえでできることを考えて行動し、ゲームをどんどん良くしていくスタイルですので、それは一番のゲーム制作の面白さだと考えています。ひとりではなくてチームで作っている意味もそこにあると思いますね。
ーーそれはとても魅力的な環境ですね。チームでモノづくりをするうえで、何か意識していることはありますか?
特に熱量が大事だと思っていて、モノづくりに熱いメンバーが集まっているので、自分の発したことを同じ熱量でレスポンスしてくれる仲間がいることはネストピの価値ですし、チームでも意識しています。
というのも、面白いアイディアを思いついたプランナーが目をキラキラさせて提案してきても、受け入れずにハナからNOと言ったり、スケジュールや工数の観点でバッサリ切る環境は往々にありますから。
逆に、それを技術によって解決する方法を提示できるのはゲームプログラマーしかいなくて、それが役割だと思っています。提示することでプロダクトが良くなったり、良いアイディアを生み出せると嬉しいなと思いますね。
ネストピにはこうした姿勢の方が多いですし、この環境で仕事ができて気持ちいいなと感じています。だからこそ、自分でどんどんやることを見つけていけるようなタイプの方は、ネストピの環境がすごくハマると思います。
ーーできない理由を考えるより、プロダクトとユーザー様のことを考え尽くす環境なのだと感じました。
そうですね。とはいえ実現性も考慮しなければいけないので、その点、我々は作り方のフェーズを大きく2つに分けています。
まずプロトタイプの段階では、風呂敷を広げるためにアジャイルライクな手法をとっています。週単位でイテレーションをすぐに回して、面白さを検証していく、ゲームの核となる部分を作っていきます。このタイミングではプログラマーであれ、役職関係なくゲームに関する議論を重ねていますね。
そして、ゲームを作るために風呂敷を畳む段階がくるので、そのタイミングからはRedmine(プロジェクト管理ソフト)などのツールを使い、工数を管理しながら実装を進めていきます。こういったバランスで、開発のフェーズごとに比率を変えながら進めているのはネストピの開発の特徴ですね。
だからこそこれまで、モノづくりをしていてスケジュールが破綻して作り切れず、プロダクトを世に出せなかったというケースは起きていないです。風呂敷を広げるフェーズと畳むフェーズを、みんなで意識しながら開発できていると思います。
【チーム開発のインディーズだからこそ、「このゲームは自分が作った!」と胸を張って言える】
ーーゲーム業界においてもネストピはとてもチャレンジングな会社だと思いますが、改めてクリエイターが手触り感を持ってモノづくりに励める環境なのだと感じました。
そうですね。これは生田の考えている『チーム開発のインディーズ』にも通じるところで共感しているのですが、私も大規模開発を長らく続けていて、自分の作ったものがあくまで作品の一部分であることに寂しさを感じていて。一方で少人数開発となると、沢山手を出さなければいけないため、だからこそ「このゲームは自分が作った!」と胸を張って言えるんですね。
特に前職の最後、数名でゲームを作っていた時には、熱量の高いメンバーと短期間で濃密なゲーム作りをできて、作っていること自体がとても楽しくて。それは自分のやりたいゲーム作りともリンクしていたんです。
大きなチームで大きな作品を作るよりも、少人数精鋭ですごく尖ったゲームの面白さに特化させる。そういった作品を沢山作っていくというスタイルが、今の市場にも受け入れられるようにネストピから発信していきたいと思っています。
ーー栗田さんはCTOとして、今後どういった点に注力したいですか?
これは今後の課題でもあるのですが、今は個人の知の方が強くて、チームや会社としての知見が弱いと思うんです。過去の技術や経験に裏打ちされたメンバー個々人が担うことにより品質が担保されている部分もあるので、それをネストピ全体の知として吸い上げていきたい。そういった時期に差し掛かっているところですね。
だからこそ、今後はゲーム作りに集中する部隊を下支えするためのR&D部署を同時に拡充していこうと考えています。
ネストピにおけるR&Dとは、各スタジオが作ったものの技術の吸い上げと全スタジオへの共有化を推進する部分と、技術開発など新しい技術を追いかけていって面白いものをスタジオに使ってもらう部分のことを指しています。個人のスキルに依存しないためにも、これらは今後伸ばしていきたいですね。
ーーそれでは、最後にメッセージをお願いします。
そもそもエンジニアは青い炎タイプと言いますか、内にある熱量を外に出していない、我慢強い方が多い印象もあります。本当は熱くモノづくりをしたいけれど、熱量は人それぞれですから。自分だけが燃えていても空回りしてしまいますし、今働いている会社で歯車がかみ合わなかった、上手くいかなかったと感じている方々の受け皿になりたいと思っていますね。
生田もメンバーに対して「ネストピはクリエイターの会社だ!」とずっと伝えているのですが、クリエイティブというモノづくりへの熱量から生まれてくる自分のやりたいことや、やるべきことを行動に移せる方を求めています。
このネストピという環境で作られたものは絶対に面白くなると信じているので、興味のある方にはぜひ応募していただきたいですし、そういった方とお話ししたいですね。
【CEO生田へのインタビューはこちら】