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トップ対談!茨城ロボッツ 代表 山谷×オーナー 堀(グロービス経営大学院 学長)最強タッグが見据える未来

※こちらの内容は、2018−19シーズンのファンブックに掲載された情報を抜粋した内容になります※
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“率先垂範”の言葉通り、自ら先頭に立って茨城ロボッツを盛り上げるクラブオーナー・堀義人。不屈の精神とリーダーシップで牽引するクラブ代表・山谷拓志。2人の出会いは奇跡的なものであった。2016年ロボッツが本拠地を置いていたつくば市の体育館建設が住民投票でよもや否決となり、B.LEAGUE参入が危ぶまれる逼迫した状況の中、手を差し伸べてくれたのが、堀の故郷である水戸市だったのだ。

建設予定の体育館を5,000人規模へと変更し、ホームアリーナとしての使用をサポートすることを即決した水戸市の英断により、滑り込みでB.LEAGUE参入が決まった山谷率いるロボッツは、水戸市および茨城県全域に活動拠点を広げることとなった。一方“水戸ど真ん中再生プロジェクト”を始動していた堀は、当時、川淵三郎キャプテンからの話を受け、“B.LEAGUEは必ず成功する”と確信してプロバスケットボール業界に興味を抱き始めていた。そんな矢先、水戸に本拠地を移した茨城ロボッツ代表の山谷と出会った堀が行動を起こすのに時間は要さなかった。僅か2ヶ月後の、2016年4月、株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメントの取締役兼オーナーに就任したのである。

以降ロボッツは、それまで以上に加速度を得て成長を続けてきた。”これからロボッツはどんな物語を見せてくれるのだろう”そう多くの者を惹きつけてやまないクラブへと急速に進化を続けているのだ。そんな茨城ロボッツを導くオーナーと代表、それぞれの立場から未来へ向けた熱い想いを語ってもらった。

オーナーとの対話から生まれる現場の課題解決策

―まずはお互いからどんな存在であるか紹介をお願いします。

山谷「堀さんは、気づきを与えてくれる存在。ファンの事、スポンサーの事をピュアに考えてくれるんです。経営をやっていると、自分たちで“ファンの為に”と考えていることが、実は内々のオペレーションや事情が優先になってしまっていることが時々あると自覚しています。堀さんはそういうところを、それは何の為にやるのか、 本当にファンの人に喜ばれる事なのかとズバっとついてくれる。日々の仕事をしている中で、本質的な部分にはっと気づかされるような示唆を頂けています。2年前に初めてお会いする前からグロービスを立ち上げてあそこまでやられてきているあの堀さんだというのも知っていましたし、そんな方の下で仕事できることは、本当にありがたいことです。指摘やそして時にはプレッシャー(笑)も与えてくださる頼もしいオーナーであり、頼もしい先輩です。」

堀「山谷さんは…ストイックな体育会の人(笑)。下から慶應だったって感じらしからぬ雰囲気の方ですね(笑)」

一同(笑)

堀「自分にも厳しく、目標に向かって確実に一歩一歩進めていこうという意欲のある方で、質問したらすぐに返答がくるので、自分もすぐに意見が返せる、すごくやり易いですよ。社長として安心して組織全体を任せられる方です。」

―オーナーという立場からは、どのような事に対して指示や要求をされるのでしょうか?

堀「僕は経営的観点では、すべてのことを言います。細かいこと含めて疑問に思ったこと、例えばアリーナの構造であったり、顧客対応、Twitterでの発言に対してちゃんと答えていないことなど細かいこと全部です。ただし、チームのことは任せている。これは川淵さんに相談した際おっしゃっていたことで、“戦術と選手起用に関しては関与すべきでない”ということだったんです。監督コーチの選定、選手の獲得、これだけが経営側ができることで、戦術や起用法については関与してはいけない。ただし、疑問に思っていることは直接聞きたいので、シーズン前、途中、終了後の年に3回だけコーチ陣と話す場を設けて、質問に対しての回答をもらうようにしています。それがフェアな方法論だと思っています。」

山谷「オーナーとしてチームにどこまで関与するか、世の中のスポーツチームではアメリカなどではガンガン介入するオーナーもいますし、逆に全く何も言わない人もいる。堀さんは適度にチームに対しての疑問を持たれる。当然の話。オーナーからの質問には、執行責任の立場として自分に説明責任があります。その質問によって、何となく次頑張ろう、ではなく、なぜ負けたのか、なぜこの戦術なのか、ちゃんと分析してオーナーにも説明できるようにする。堀さんとの会話の中で、『なぜなのか』、必ずその思考を通るんですよね。現場からすれば、うるさいなと思うこともあるかもしれませんが、聞かれることで気づくことがあるはず。何か良くないことが起きた時の課題解決策はそういうやり取りの中で生まれていっている部分があるんです。経営全体をみて指摘をもらう、僕が執行責任者として、それをもとに課題解決を考えて噛み砕いて現場に落とすという良いサイクルができています。」

リーダーたるもの率先垂範という姿勢

―堀さんといえばコートサイドでユニフォームを着て熱く応援している姿が印象的ですがどのような想いがあるのでしょうか。

堀「僕はリーダーとして重要なのは率先垂範だと思っているんです。例えばシーズンチケットを売りたいなら僕が持っていなければいけない、スポンサーやってよと人に言うなら自分もやってなければいけない。試合に熱く燃えようというならそれも同じこと。単純に自分がやりたいこと、面白いことを、こんなに楽しいことがあるよって伝えているんです。その熱量が全体に伝播していくんですよ。ロボッツの応援の空気感、声の出し方についてなんかは山谷さんが仕掛けてきた部分でもありますが、熱量は他のチームにないものがありますよね。僕としては、なるべく多くの人に触れる機会をつくりたいし、名前と顔も一致させたい。望んでくれる人には全員とハイタッチしています。リーダーとしてあるべき姿、つまり自分で示していくという姿勢なんです。」

―今お話にも出ましたが、ロボッツの応援の熱量は、昨シーズンさらに高まったように感じました。

山谷「やはり試合の内容や結果の積み重ねです。栃木ブレックス時代も3年目で日本一になった時、劇的な負けがあって、劇的な勝利があって決勝で奇跡のようなことが起こる。まるでドラマをみているような。昨シーズンのロボッツも、終盤にあの連勝があって最後の最後に一歩届かず負けて、まるで劇場で何かの物語をみているよう。これは意図してつくれるものではありません。こういうストーリーに感化され、もっと応援したくなる、悔しい、悲しい、楽しい、あらゆる感情が増幅される。このコートの中の物語が第一なんです。ただ、そのコートの中の物語を、どう演出するか、コンテンツをどう増幅させるかは事業サイドの役割です。戦況に応じた煽り方やキャッチコピーを考えて広報が発信したり、選手の想いを表現するようなビジュアルでプロモーションをしたり、堀さんのツイッターでのつぶやきもそうですし、試合会場での音響の使い方一つとってもそう。そういう一つひとつのものが合わさって、より前のめりになって、もっと応援したというドライブがかかる。コート上の物語という偶然の産物をいかに料理して、もっともっと応援したい、支援したいと思わせられるかなんですね。細かい仕掛けや取り組みは大切にやってきています。」

「いわきの悲劇」をどう捉えるか

―そんな昨シーズンは、最終戦の劇的な敗戦で幕を下ろしました。あのような状況においては、リーダーとして、どのような考えを組織のメンバーたちには伝えられたのでしょうか。

堀「僕は哲学者の森信三さんが説かれる『最善観』という考え方を伝えました。最善観とは、人生で起こったことは、全て良いことであると捉える考え方、つまり、起こったことは肯定的に捉えるしかないということです。仮に、この劇的な敗戦を良いことと考えるのならば、何のためにそれが起こったのか、何をもたらしたのか。それは、このシーズンのストーリーを通して感じたあれほどの感動やあれほどの悔しさ、それが組織全体の共有体験となったこと。チーム、スタッフ、ブースター、スポンサー全ての想いが一体化したことで、来季へ向け倍増した力・エネルギーが生まれていることです。そしてあの敗戦を、サッカーW杯予選の『ドーハの悲劇』にならって『いわきの悲劇』と呼んでいます。組織が共通体験したことを『いわきの悲劇』というキーワードとすることで、その悔しさを忘れることなく、バネにして次に繋げていくためです。そして、チームも、経営的、財政的なこともそうですが、足りなかったことを認識して、来季に向けて一つずつ力をつけていきましょうと伝えました。」

山谷「悔しい想いは勿論ありますが、僕の中では“また壁がやって来たか”という感じです。これまでも結果を出す前には、必ずと言っていいほど悔しい負けがあった。またここで試練がきたかと。堀さんがおっしゃる最善観という考え方と一緒で、起きたことは必ず次に向けてプラスになる。起きたことは変えられないので、次に生かすという部分にエネルギーを使うしかない。そして次の飛躍に繋がるという確信はあります。」

堀「山谷さんとも話していますが、B1に上がってもすぐにB2に落ちるチームもあります。生半可な気持ちでB1に上がっても、同じようになってしまうかもしれない。もっと力をつけてから来年やり直せ、というメッセージだったのかな、と受け止めています。」

山谷「そうですね。もう1年B2でやれ、そこでもっと力を蓄えろ、というメッセージですよね。過去にB1に上がって1シーズンで降格してしまったチームの経営分析をしてみると、やはりかなりの額の赤字を出して無理をしてB1に行っていたことがうかがえます。結局B1でも収益性を高められず、戦績もままならず降格。詳しい内情は分かりませんが、それを教訓とするならば、昇格する際にどれだけ蓄えて、組織の体制強化、財政力を上げた状態に持っていけているかどうか。今シーズンB2で売上4.6億円という目標に達したならば、2シーズン前にB.LEAGUEが出しているクラブ決算の数字と照らし合わせると、B1の中堅どころにいけるポテンシャルがあるということになります。そして、そのままB1に行けば、6億円くらいの規模になり、もう一つ上のクラスに行ける。今上がっていたら、B1の下位だったかもしれないですし、そう考えると良いステップだったと捉えるようにしています。」

―今年もB1ライセンスは順調に取得されましたね。

山谷「まず一つは3年連続赤字となるとクラブライセンス自体が下りない可能性があるのですが、昨年度の6月決算では黒字を出せる見込みです。もう一つの懸念であった債務超過という部分は、この7月にグロービス傘下に入り、増資並びに減資という方法でこれまでの累積損失を払拭し、債務超過になることを回避することができました。その前年もB1ライセンス取得は出来ていましたが、今回はライセンスが取れたということ以上に中身が大きく変化できたことが大事だと思っています。3年前は赤字だらけで散々だったチーム、言うならば輸血だらけで命を繋ぎ止めていた体がここまで健康体になれた。株主やスポンサーをはじめ多くの方に感謝しています。」

ロボッツから派生する街づくり

―そして、今こうしてM-SPO(まちなか・スポーツ・にぎわい広場)も完成しました。

堀「2年前に水戸でロボッツを知っているかとヒヤリングをした時に、ほとんど誰も知らなかったんですが、今聞いてみると殆どみんな知っていますよね。大きな要因のひとつにこのM-SPOがあると思います。水戸のど真ん中、空き地だったところに建物ができてテントが建ち始めた、何ができるんだろうと、みんな関心を持ってくれた。バスケットボールの練習場らしいよ、ロボッツっていうんだって、と広がった。リアルな体験、触れ合いの場が常に街のど真ん中にあることは大きい。水戸の場合は強い地方メディアがないので、メッセージを伝える手段としてもM-SPOの存在は重要です。Jリーグでもクラブハウスを持っているチームはありますが、街のど真ん中ではありませんよね。そして、株式会社茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメントとは別に、M-SPOを運営する株式会社いばらきスポーツタウン・マネジメントを設立しました。ここでは、普通のプロスポーツチームが持っている機能だけでなく、地域事業開発、地方創生事業などを行っていきます。コワーキングスペースやカフェ、そしてゲストハウスの構想があったりと、これまでのスポーツマネジメントの枠を完璧に超えていきます。ロボッツは、水戸そして茨城全体を盛り上げるツールとして、これからすごく面白いことができると思っています。」

山谷「こうやってスポーツに限らず水戸を盛り上げるというプロジェクトがあって、我々はその中でスポーツチームという立ち位置で、ロボッツそしてM-SPOを運営しています。ロボッツはバスケットボール事業をしているので強いチームをつくってお客さんを増やしていく、株式会社いばらきスポーツタウン・マネジメントはロボッツというコンテンツをうまく活かしながら、もしくはロボッツというコンテンツを他の要素とコラボレーションさせながら、街づくりのコンテンツを生成していく会社という位置づけ。僕自身の想いとしては、栃木ではバスケットボールのクラブとしては素晴らしい作品をつくることができた、ただやり残したことは、それをもっともっと街づくりに生かしていく事や、アリーナを建てる事。茨城では強いチームをつくると共にこれまでできなかったことにチャレンジしていきたいです。」

―B.LEAGUEで日本一を目指す上で、現在のB1チームを追い抜くための策もそういった中にあるのでしょうか?

山谷「そうですね。例えば、栃木をつくり上げた当時とは状況が違いますので同じやり方をしていては立ち行きません。あの頃はプロチームもまだ他になく、田臥勇太選手を獲得して抜きんでていましたが、今はBリーグができて、栃木だけでなく千葉ジェッツなど有力なプロチームが増えて、事業の成長度合いが加速しています。千葉ジェッツが約14億、栃木ブレックスが約11億という売上規模で、我々が3年後に日本一になろうとして10億規模になった時に、彼らは20億になっているかもしれない。そうすると追いつけない。サラリーキャップもドラフト制度もない中で、追い越す方法を考えたとき、自分たちの事業以外にも稼ぎ頭を作らないと、バスケットボールを強くしようと思ってもなかなかそこに投資が回らないのではないかという危機感があるんです。本来、事業というのは本業が大きくなってから多角化するのがセオリーなんですが、本業が大きくなっていく中で同時に多角化していかなければならない。こういう大きな構想や資金を持たれている堀さんという存在があって恵まれた環境にいるので、様々な事業を伸ばして得た利益をロボッツにも還元できるようグループとして20億円くらいの規模に成長すれば、バスケットボール事業に14億使えるかもしれない。新しい発想で、街づくり事業も本業以上に盛り上がれば、投資ができるという事。将来的には大きな話になりますが、バスケだけではないコンテンツや事業をつくり出せる存在になりたいです。海外で言えば規模は全然違いますが、レッドソックス(MLBボストン・レッドソックス)のように、球団事業、広告代理店事業、不動産事業など、球団事業で鍛えた筋肉を他に転用していこうという考え方。茨城でコンテンツをつくる、コンテンツをマネタイズしていける会社となれれば面白いですよね。」

ロボッツは本気でスポーツを軸に地方創生を実現します!

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