ITエンジニア=時代・技術の変化に沿って、学び続ける職業
検索エンジンで「ITエンジニア」と入力すると、検索候補には「ITエンジニア 勉強方法」や「ITエンジニア 勉強時間」というキーワードが並んでいます。
この職種で成長し続けるには、勉強が不可欠だと物語っているようにも思えます。実際には、日本国内のエンジニアにおける1週間の学習時間は、平均で2.7時間という統計*が発表されています。
*https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/001_s01_00.pdf
一方で、業界のトレンドや世の中のニーズに応えるためには、週に5〜10時間の勉強量を担保する必要があると考えられます。。単純換算すると、30分〜1.5時間/日の勉強時間を確保しなくてはならないということです。さらに駆け出しのエンジニアや、未経験からエンジニアを目指す方々にとっては、より多くの時間が必要だと推測できます。
一方で、働くエンジニアにそれほどの勉強時間確保は可能なのか…
ここで経済産業省のデータ*を見てみます。ここでは「会社の教育・研修制度や自己研磨支援制度に対する満足度」という問いに対して、日本のIT人材の満足度は最も低いという結果に至っています。
*https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/daiyoji_sangyo_skill/pdf/001_s03_00.pdf
日々の業務に影響を与えず、毎日決まった時間を確保し、自身のプライベート時間も捻出したい…忙しい現代人にとって、巧みなタイムスケジュール管理スキルが備わっていないとこうしたバランスを保つのは難しいように思えます。
限られた時間で有益な情報をインプットするためには、勉強にも”タイパ(タイムパフォーマンス)”を求める必要があるでしょう。つまり「学習内容の質」が問われます。
「良質」といえる学習内容とは?
質に重点を置くと、まず「自身の学びたい分野を選定し、集中的に勉強する」という手法が最適だと思われるでしょう。内容を絞ってに学習することで、「勉強時間削減できて学習量は増加する」という、夢のような反比例を叶えようと理想を描く一方で、あまり現実的ではないと我に返ることになりそうです。
そもそも、どんな学習内容が”良質”で、目の前の教材が”本当に自身に必要な勉強なのか”、自己判断するのは難しいことでしょう。学習環境が所属会社・団体といった外的に備わっていることは、学習内容の質を客観的に判断できるというメリットもあります。
「その学習はあなたにとって最適だ」「いま求められている技術だ」と”何か”が太鼓判を押してくれないと、自信が持てないという声が大半なのではないでしょうか。
例えば…
・名誉教授○○監修!今学ぶべき3大技術
・10年のデータから読み解く、エンジニアの技術戦略 などなど、
安心感を覚えられるキーワードを、無意識に探しているのかもしれません。
全てはエンジニアの学習機会のために
ここまでのお話をまとめると、
・働きながら学習できる環境が整備されていれば、エンジニアの学習習慣は維持できる
・自信を持って学習できるコンテンツがあれば、不安なく自己学習ができる
これらを叶えることによりエンジニアのスキルアップが見込めるのであれば、企業にとってはまっさきに取り組むべき成長戦略とも言えます。
我々AGESTは、最先端のテストに対応できるテストエンジニアの育成に向けて、2021年10月*より取り組みを開始しました。
*当社の前身である、株式会社デジタルハーツ エンタープライズ事業において取り組みを開始し、2022年4月に株式会社AGEST設立以降も継続して行っている
「DX-デジタルトランスフォーメーション-」により、色んな物事の変化スピードが加速しています。特にIT業界に携わる方々は、この変化を肌で感じているかもしれません。
新たな価値創出のため、あらゆる企業がソフトウェアを利用したビジネスモデルを展開していくことが重要視され、そのソフトウェアやビジネスプロセスの安全性を担保するテスト活動・人材の重要性もますます高まってくると考えています。
AGESTでは、変化が速い技術に追従できるよう、エンジニアたちが最先端の技術を学び、これまでのの知識をアップデートできることを目指してきました。
世界トップレベルのQAエンジニア組織『AGEST Academy』
そうした目的を果たすべく、ソフトウェアテストのトレーニング及びコンサルティングサービスを提供する米国企業Rex Black Consulting Services, Inc.(RBCS)と業務提携を行い、世界トップレベルのエンジニアたちとタッグを組んだ「AGEST Acsdemy」が誕生しました。
上記両名のほか豊富な知識と経験を持つ「ソフトウェア品質の専門家たち」によって、最新の状況をアップデートしています。、また当社のR&D機関である「AGEST Testing Lab.」における各領域の先端研究結果や手法をAGEST Academyのカリキュラムにも汎用し、エンジニア知見やノウハウのボトムアップに常時注力しています。
講師による定期研修の実施はもちろん、独自のe-learningシステムを開発・導入し、AGEST社員が自身の好きなタイミングで学びたいカリキュラムを受講することができます。
AGEST Academyの強み
この仕組みの構築により、開発経験のあるエンジニアが、品質知識・スキルを兼ね備えた「次世代QAエンジニア」の育成にもつながってきました。加えて、AGESTは未経験からエンジニアへ成長する入社事例も数多く生んできました。もちろん、QA経験者においては先端QA技術を学ぶことで、更なる高みを目指すことができます。
経験、スキル、学習分野…枠に捉われず、「時代のニーズに沿ってQAエンジニアを世に輩出する」ことに重きをおくことにより、
・働きながら学ぶ時間を捻出する
・自信を持って学習できる良質なカリキュラムが存在する
・学ぶことを習慣化する環境を整備する など
これらの要素が揃ったことで、「日本のIT人材における学習に関する懸念を軽減できるのではないか」と自負しており、対外的にもノウハウを発信していきたいと考えております。
「AGEST Academy」の目指すエンジニア教育
AGEST Academyでは、4つのビジョンを掲げています。
- 学びの場を創出
企業・組織内における実践的な学びの場を提供していきます。eラーニング、オンライン講義、実践演習、ハンズオンなど多様な形で学べる環境を構築します。 - 自己の成長促進
自己と向き合う事が想像力の源泉となります。自らのキャリアパスや成長を考え自己成長できる個人を育てていきます。 - 先端技術の追求
先端技術に対応したQAエンジニアの育成。ソフトウェア品質技術だけでなく産学連携によるテスト手法研究やアジャイル開発に適したテスト技法の確立など先端技術を追求していきます。 - 企業カルチャーの醸成
・課題を見極め解決に技術を活用する文化
・インプット(学習)とアウトプットを楽しむ文化
・チーム成果を第一に考える文化
・変化へ柔軟に対応する文化を学びから醸成していきます。
AGEST Academy主催「オンボーディング研修」に密着
これらのビジョンを具現化した「オンボーディング研修」というAGEST社内の取り組みがあります。
AGEST Academy講師陣が中途入社社員向けに、各自のレベルに合わせて最短2週間でソフトウェアテストの基礎〜応用をレクチャーする研修プログラムです。今回は約2週間の研修に密着し、実際の様子もお届けします。
まずはAcademy講師陣と新入社員の顔合わせ。全員カメラONでGoogle meetに集合します。参加する新入社員たちは前日に入社オリエンテーションで面識がありますが、講師陣とここで初対面となります。
相互理解のためのLT(ライトニング・トーク)
初日は5分程度のLT(ライトニング・トーク)と題して、講師陣2名が自己紹介を行います。翌日以降、このLTを新入社員が数名ずつ実施し、お互いの人物像を理解し合う時間を設けています。
それは、このLTではお互いを理解し合うことはもちろん、”プレゼン慣れ”してもらうことも重要視しているからです。
研修参加者は、20代前半の駆け出しエンジニアから、50代半ばのベテランエンジニアまで様々。プレゼンテーションの経験がほとんどない人にとっては、ある種の練習の場となります。また、プレゼン慣れしていても「スキルの差がある人たちに対して、平等に理解が及ぶこと」を改めて意識する機会となります。
2週目には、フリーテーマでLTを実施。仕事論でも趣味話でも、何でも良し。各々自信のあるジャンルを選定して資料を作成し、プレゼンを実施します。
■実際のプレゼンテーマ
研修の約2週間の期間を一緒に頑張っていくメンバーのことを知る機会を設けることは、切磋琢磨しやすい環境づくりの一環とも言えます。
研修期間ならではのコミュニケーション方法
このオンボーディング研修は、全てオンラインで実施されます。居住地も配属拠点も異なるメンバーがより親密に、かつ簡単にコミュニケーションを取る方法として、MetaLife*というツールを導入しています。
*…MetaLifeは、オフィスやイベントスペース、教室として利用できる新しいコミュニケーションツール
■ツール画面の様子
・「オンライン会議ツールだと、わざわざ招集をかけなくてはいけないし…」
・「どうしても直接質問をしたいけど、電話をするのは大袈裟かな…」など、
コミュニケーションを取るための時間を削減することにもつながっています。
新しい環境に、たくさんのインプット量という状況のなか、少しでも快適な環境を作るという点も工夫の1つです。
座学と演習をローテーションする「テスト設計スキルの習得」
大きく分けると、研修は「座学」と「演習」に分かれており、まずは計3日間の座学から研修が始まります。
中でも「基礎」「設計」「ドキュメント理解」と三段階でフェーズが分かれています。「基礎」と「ドキュメント理解」では「動画視聴」にて学習進めていきます。
講師陣も待機しており、動画の中で不明な点があれば、各人がタイムリーに講師陣に質問し、回答をもらいます。あえて”周囲に合わせない”スタイルが、本人にとって気負いなく学習でき、基礎を構築できる空間になっているかと思います。
「設計」においては、リアルタイムで講義を行います。「講義で技法について説明」→「練習問題に取り組んでもらい実際の使い方を身に付ける」をセットで進めることで、経験の違いやスキルの有無問わず、講師陣が各人に適したフォローができる点がこのパートでの特色です。
この「座学」パートがひと段落すると、ここからは「演習」に移行します。計6日間の期間を設け、「座学」で学んだ知識を活かして手を動かしていきます。
この演習では、「とあるクライアントが開発しているシステムに対し、テスト設計仕様書を提出する」という課題に取り組みます。
この演習では、最終日のプレゼンテーションまでに、以下の成果物が求められます。
- テスト設計仕様書
- 機能一覧
- 観点一覧
- テストマップ
- 機能動作一覧
- テストケース
経験によって、タイトなスケジュールに感じる社員もいますが、完成させるために全員が自身のスキルを振り絞って集中します。
変わらずメンバーとはコミュニケーション可能ですが、ドキュメントを見せあったり、課題の答えを導くようなやりとりはNG!”研修”の意味を考え、自身の力で最後までやり遂げます。
成果物を携えて、プレゼンテーションへ
プレゼンテーションもオンラインで実施しますが、当日は配属先の上長もオブザーバーとして参加します。
実際にクライアントに提案すると仮定して、自身の成果物を発表します。講師陣はクライアントに模して質問を投げかけるため、ただ作るだけでなく、わかりやすく説明ができるかもポイントとなります。説明する自分自身が路頭に迷わないよう、演習中に仕様を隈なく把握し、観点の漏れがないように準備が必要です。
終了後、上長や講師それぞれからフィードバックをもらい、自身のプレゼンテーションを振り返ります。「KPT(ケプト)」*を利用して振り返る時間も研修の一環として含まれており、最後まで抜かりなく自身の良かった点・改善点を洗い出して2週間の研修は幕を閉じます。
*…「KPT(ケプト)」とは現在の業務を振り返り、ブラッシュアップするためのフレームワークです。 「Keep(できたこと/継続すること)」「Problem(改善するべき問題点)」「Try(挑戦したいこと)」の3つの要素を洗い出し、仕事やプロジェクトの改善につながる具体的な施策・アクションを導く手法
部門に配属されて実際の案件に入ってからも、この期間を無駄にしないようにすることも、オンボーディング研修における、Academy講師陣の大きな役割でもあります。
そんな研修を担う講師陣を取材し、研修企画の裏側をお聞きしました。次回の記事でお届けします。