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エンジニアリングマネージャー3人に聞いてみた10の質問

EMの重要性、今後の課題、開発者としての葛藤について

以前投稿した記事「エンジニアリングマネージャー(EM)体制の成功と、生成AIについて考える」では、当社のEM体制に至った経緯や途中経過の概要をお伝えしました。

今回ご紹介するのは、ココネのEM体制に関してさらに深堀りした話です。

事業部ごとに任命された3人のEMに、これまでの取り組みやEMの重要性、そして開発とマネジメントの間で揺れる葛藤などについて話を聞きました。

<ココネEMメンバー>

▲左から岡田、齋藤、川瀬。それぞれ数年単位で運営されるサービス(事業部)のEMに昨夏就任。齋藤はEMリーダーを兼任している。

開発者として葛藤もあったが、チームの力が伸びる楽しみややりがいを知っていた

ー ココネにおけるEMの役割は?

[齋藤]
ひと言で言うと、エンジニアという人たちと向き合う仕事かなと思います。ココネのEMはチームリーダーも兼ねていますが、先述したとおりメインの役割はピープルマネジメントです。

ー EMに任命されたときの感想

[岡田]
EM体制の話が持ちあがった際、当時は『ポケコロ』の開発リーダーをやっていたので、最初は別の方にEMを任せようと思っていました。一方で「チームの色を変えたい」という想いもあったので、悩んだ結果、最終的には自分がなろうと決めました。

正直なところ、開発者として技術面をもっと伸ばしていくべきではないかという葛藤はありましたけど、開発リーダーを務めてきたなかでチームの力が伸びる楽しみややりがいも知っていました。わりと前向きな気持ちにはなっていましたね。

[齋藤]
所属するプロジェクトのエンジニアチームは当時から15人程と規模が大きくて、多少の葛藤や不安はあったものの、私も自分にできることがあればという前向きな気持ちでEMになりました。

[川瀬]
僕はEMの話を聞いた時、わくわくしていました(笑)。これまでもクライアントのテックリード(以下、TL)をやっていて、そこですでにチームが働きやすかったり楽しんだりできる環境をつくるようなことをしていました。そういう経験があったので「人と向き合う新しい役職が増えますよ」と教えてもらったとき、これはぜひやりたいなと。

僕自身はコミュニケーションそのものが好きなわけでもなかったりするのですが、自分と関わった人の生き方や働き方は、自分の見える範囲だけでも良くなって欲しいと思っているので、EMはまさにそれにチャレンジできそうだなと。

1on1は、リスケはしてもスキップは絶対しない

ー EMに任命された後はどうですか?また、日々どのような工夫をされていますか?

[川瀬]
まず、ミーティングの数が増えましたね。メンバー全員の1on1や事業部の施策会議、事業部横断のエンジニア会議もありますし、採用に関するものも加わりました。会議は前と比べて1.5倍は増えたかなと。そうするとメンバーと接する時間が少なくなってしまうので、1on1の時間などは極力話しやすい雰囲気を作っておこうと思っています。

相談を受けることも多くなり、特に若手メンバーにはその方のキャリアや理想を考慮しながら、何か挑戦しやすい状況をつくっていくことも常に意識しています。

[岡田]
例えば案件に担当者をアサインするとき、そのメンバーの成長に繋がるかどうかも判断基準にしています。1on1で聴くことができたその方が目指すキャリアも考えて、あえてストレッチ目標としてハードルの高い仕事を任せてみることも。

その際、テックリード(TL)と情報連携しながらその方の進捗を常に気にかけています。ただ、タスクが遅延しているっぽい、苦戦しているっぽい、ということが把握できても、本人が頑張っている状況を打ち壊すことがないよう、見守りつつ伴走することを心がけています。

[川瀬]
若手の方で初めての案件だと、自分が遅れていることを理解できていないこともあります。その方自身でも気づけるように工数表を作成してもらうなど、仕組みづくりを意識しています。

[齋藤]
これは工夫というより信念かもしれませんが、人数が多いからこそ、1on1はリスケはしてもスキップは絶対しないことを守っています。また、そこで発生した確認・宿題事項は、次の1on1で必ず回答や進捗を報告するようにしていますね。

もうひとつは、エンジニアが参加する会議をとにかく減らすこと。エンジニアのいわゆるゾーン状態を作る為に、自分が出て何とかなる会議にはTLも入れないようにしています。地道な話ですが、TLになるほどのスキルの持ち主たちなので、彼らの開発の時間をつくっていくことが事業の力に変わっていきます。

ー 例えば、派手なアウトプットではない開発成果についても、齋藤さんはよくエンジニア以外の方にもスラックで告知されていますね

[齋藤]
「目に見えないだけで、必要かつ重要な仕事だったから担当された皆さんに拍手を」的なアナウンスをけっこうするように心がけています。

エンジニアは、他職種からみるとよく分からない怖い人たちになりがちじゃないですか(笑)。他の職種とお互いにリスペクトを増やしていくことはもちろん事業のためにもなりますし、開発陣の事業への貢献を嫌味にならない程度で認知してもらうこともEMのひとつの役割かなと思っています。

ー うまくいったことと今後の課題

[齋藤]
EM体制にチャレンジして、まずは大きなトラブルもなく半年を経過できたこと自体がなによりも良かったことですね。

[岡田]
先ほど齋藤が話していたとおり、会議を減らしたことでTLから「とても楽になった」と言ってもらえました。

一方で、ELとTLの役割をもっと明確化する必要があると実感しました。EMが開発リーダー的なポジションとして認知されてしまうと、人によっては負担が大きいと感じてしまう人もいるはずで、次のEMを育てていく際のネックになりそうだなと。一般的には事業への理解や技術力がある人がEMに起用されやすいと思いますが、そういう人じゃなくてもEMになれる土壌を育てることが今後の課題だと思っています。

[齋藤]
確かにそうですね。次の代のEMのことを考えるという点では、自分ももっとこの役割を楽しむべきかなと思っていたりします。EMの魅力や憧れを作るうえで、そういう心構えが大事なのかなと。

取り組み方によってEMのやりがいは幾らでも創りだせる

ー EMのやりがいについてどう思われますか?

[川瀬]
私は特に、若手メンバーが成長したと思えたときがいちばん嬉しいですね。1on1を通してメンバーとキャリアプランを話し込むこともあるので、そこが私のやりがいにつながっていると強く思います。

[齋藤]
明確に事業に貢献できていることはわかるんですが、「これがやりがいです」と明言することは難しいかもしれないですね。EMの成果はメンバー個々の成長だったり、いろいろな要素が重なっているものなので、逆にやりがいというものを幾らでもつくりだせると思っています。

[岡田]
確かにEMは責任のある立場な分、ある意味ではやりたい放題できる(笑)。技術的な面は当然TLに任せますけど、ある種の特権を持っていて、裁量をもって自分なりのチーム作りを行うこともできます。

ー EMに対する他職種からの評価や変化などは?

[齋藤]
開発リーダーではなくEMという役割として切り出されたことで、デザイナーや事業メンバーにとって圧倒的に話しかけやすくなったと思います。TLの場合は技術先行で話をしますしそうあるべきだと思うんですけど、EMはそうじゃなくて、技術の話をまずは一旦置いておくこともできます。

他の職種から「エンジニア組織の最初の窓口」「話ができるキーパーソン」みたいな認知を持ってもらえたと思います。そこがTLといった開発リーダーとEMの違いかもしれません。各職種とのブリッジのような役割が明確にできたので良かったなと思ってます。

[川瀬]
EM体制になり、各々が自分の仕事に専念できたり、コミュニケーションの機会が増えたことで、単純にエンジニアチームの雰囲気がさらに明るくなりました。そうなったことで他職種からも話しかけやすくなったと思いますし、実際、相談されるようなことも格段に増えました。

怖いのは、EMの仕事は手を抜いてもたぶん誰も気付かない

ー EMを務めることで生まれた葛藤

[齋藤]
近年、スタッフ(参謀)エンジニアという言葉が注目されていて、会社や経営にも関わるエンジニアということなんですが、EMはそういったエンジニア×ビジネスのような方向に行けるキャリアだと思うことがあります。

一方で、開発と比べるといろいろと分かりにくい。EMの仕事はエンジニアのような明確なアウトプットがないことが多いため、手を抜いた時にもすぐには検知されないことも怖いなと思っています。だからこそ手を抜かないというのもあるんですけど、常に周りから評価され続けている気持ちで臨むようにはしています。

[岡田]
開発と違ってマネジメントは何が正解かよく分からない。自分のマネジメント力もどれほどか分からなくて、できている気もするし、全然できていない気もする。その辺でけっこう葛藤していますね。ただ、開発と一緒で実際に経験していくことでしか培えないと思っています。

マネジメントだからといって控え目になるのではなく、チームの体制を積極的に変えてみたりとか、どんどん挑戦をやっていくしかないと思っています。

ー CTOが「エンジニアとしてのスキルはひとりで習得できるけど、EMのスキルは会社にいないと身につけられない。そういう点では独特なスキル」と話されていました。EMを経験することで広がるスキルがありますか?

[齋藤]
EMを経験することで社内の多方面で顔が売れるので、職種をまたいだボトムアップが確実にやりやすくなると思います。そこがEMを経験する魅力的なところだなと思います。

少し話が逸れますが、CTOになった後にIC(Individual Contributor)、つまりCTOを経験した後にコードを書くプロに戻る流れが世間で増えています。同じようにEMを経験したからこそ見えてくるものもある・・・みたいな流行が起こることを期待しています(笑)。

EMがいることで会社組織が安定する

ー EM、これからの重要性

[岡田]
AI技術などの発展で、エンジニアのタスクや存在価値が変化していくと思っています。おそらく10年後には使えなくなる技術も増えているでしょうし、エンジニアも新しい技術にどんどん対応していくことになります。それと同じく、幅広い領域でマネジメントの重要性も高まると思います。

EMは新しい技術を自分で覚えるというより、新しい技術をメンバーに習得してもらう環境を用意することもひとつの役割になってくるのかなと。変化の激しい時代のなかで、クッション役とも言えるEMはより重視されてほしいですね。

[齋藤]
大きな技術変革などの場面で、誰が旗振りをするのかといったら、まさにEMやマネジメントの領域ですよね。今後5年10年は、EMがいることで会社組織が安定するようなことも増えそうです。ココネも事業面でチャレンジを掲げているので、EMが存在することの良さがどんどん見えてくると思います。

例えば今、社内にSREを立ち上げる話もあがってます。これもEMがいたからこそ自然に取り組める形になったと、客観的に振り返ってみてそう思いました。

[川瀬]
これまでの職場でもTLはいましたが、EMのような役割を持つ人はあまりいませんでした。繰り返しますが、エンジニアにとってキャリアやスキルを気軽に相談できるような相手がいることは、結果的に会社にとって大きな好循環が生まれると思います。

エンジニア業界全体でも各社でEMが設置されて、メンバーに対して成長を促すような働きをすれば、日本のエンジニア業界が世界に置いていかれることなく成長し続けられるんじゃないかなと。そういう意味でもEMは重要かなと思っています。

最後に、今回のEM陣のインタビュー現場にはCTOの倉も同席していました。ここまでの話を聞いた上で「ココネにとってのEMの重要性」について、CTO視点の話も聞いてみました。

組織の“心理的な安全性”を担うEM

「ココネにおけるEMの重要性として、EMが組織の“心理的な安全性”を担っていると考えています。当社が目指すDAU1億サービスの創造のために、各領域のプロフェッショナルが忌憚なくぶつかり合って闊達に議論したり、キャリア・性別・年齢も一切関係なく意見を提案しあえたり、常に新しいことにチャレンジできたりする環境は、心理的な安全性が確立している中でしか成し得ません。暖かだけどぬるま湯ではない会社の土台を作っていくためにEMの必要性を改めて実感しています」

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