ここ数年、SDGsや環境・社会配慮型商品、エシカル消費、サスティナブル消費など、いわゆるサステナビリティに対する関心が、社会的に高まっていると感じます。それと同時に、WebサイトにおけるCSRやCSV、サステナビリティコンテンツをより重視する企業も増えてきているのではないでしょうか。
そこで、サステナビリティに関するコンテンツを新たに立ち上げたい、既存のサステナビリティコンテンツを刷新・強化したい場合に、どのようなサイトを参考にしたらよいのか、デザイナーの視点から、お勧めの事例をいくつかご紹介したいと思います。
具体的な事例をご紹介する前に、まずはチェックしておきたい外部評価、指標について
企業におけるサステナビリティ活動そのものに関しては、よく知られているいくつかの評価/指標があります。まずは参考までに目を通しておくのもよいかもしれません。
世界基準(グローバル)における評価/指標の例
- FORTUNE Change the World
米ビジネス誌フォーチュン誌が発表している、事業を通じて社会に変革をもたらしている企業ランキング。
- Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)
カナダの出版社Corporate Knights社による、「世界で最も持続可能性のある企業100社」のランキング。毎年ダボス会議で発表される。
日本国内における評価/指標の例
- 日経「SDGs 経営」調査 [日本経済新聞社、日経リサーチ]
- 企業版SDGs調査 [ブランド総合研究所]
- サステナビリティサイト・アワード [一般社団法人CSRコミュニケーション協会]
ただし、上記のほとんどは、「企業活動そのもの」に対しての評価/指標です。Webサイトに関する評価を行う機関が少ないのは、サイトコンテンツを制作する際に悩ましいところです。
次の段落では、これらの指標で評価されている企業のWebサイト(サステナビリティコンテンツ)に一通り目を通したうえで、参考にしたい事例をピックアップしました。
サステナビリティコンテンツの参考事例5選
各企業のサステナビリティコンテンツを詳細に見ていくと、その表現方法や情報量は実に多種多様で、それぞれの企業の思想や個性的な側面が垣間見えます。
また、自社の業界に特化した分野に厚みを持たせ、独自性を出しているケースもよく見られます(例えば飲料メーカーであれば水や自然環境、建設業界であれば働き方やライフスタイル、化粧品・美容系であればジェンダーギャップやジェンダーロール等)。
ここからは、独自性のある事例を5つご紹介します。
1. ユニリーバ ― 膨大な情報量を効果的に見せる優れた情報設計
https://www.unilever.com/sustainable-living/
2010年に「サステナブル・リビング・プラン」を発表し、継続的にその活動に取り組んできたユニリーバ。同社は、その10年にもおよぶ活動を網羅的にWebサイトに掲載しており、そのコンテンツ量は非常に膨大です。
企業はサステナビリティに、「持続的に」取り組む必要があります。それを訴求するコンテンツも、一朝一夕には成立しません。ユニリーバのサイトは、これまで継続してきた多岐にわたる活動とその思想を、いかにユーザーに伝えるのかという情報設計の視点で一見の価値ありです。
また、PDF形式のレポートはサマリーレベルの内容となっており、主だった情報がWebサイトをメインに展開されているのも同社の特徴のひとつと言えるでしょう。
2. 良品計画 ― 誰にでも分かりやすい言い回し
https://ryohin-keikaku.jp/csr/
コミットメントやマテリアリティ、コーポレートガバナンス…サステナビリティ関連の用語は難しそうなものが多く、ハードルが高いという印象をお持ちの方もいるかもしれません。
難解なコンテンツというイメージを一切感じさせないのが、良品計画のWebサイトです。
グローバルナビには“「感じ良いくらし」の実現”という文言を、具体的な取り組み事例には“100の良いこと”という言い回しを使っています。サステナビリティのコアとなる考え方はそのままに、カタカナやアルファベットの専門用語をほとんど使わず、誰にでも理解しやすい言葉に言い換えられています。それは同時に良品計画らしさを感じる表現で、一貫したブランドイメージの訴求にもつながっていると言えるでしょう。
3. サントリー ― 一般消費者にも親しみやすいグラフィカルな表現
https://www.suntory.co.jp/eco/
https://www.suntory.co.jp/culture-sports/
先ほどの良品計画とはまた違ったアプローチで、一般消費者に親しみやすい表現手法をとっているのが、サントリーの「環境活動」と「文化・社会・スポーツ」コンテンツです。
同社の企業情報の配下には、基本的なサステナビリティコンテンツが存在しており、それとは別にグラフィックに力を入れた個別コンテンツが用意されています。
写真をふんだんに使い、動きのある表現を取り入れたページデザインは、見ているだけで楽しく、同社の環境活動や社会活動が視覚から直感的に理解できる内容となっています。
4. 大和ハウスグループ ― Webメディアとしての情報発信
https://www.daiwahouse.com/sustainable/sustainable_journey/
基本的なサステナビリティコンテンツを備えたうえで、特設コンテンツとしてWebメディアを立ち上げ、情報発信しているのが大和ハウスグループです。
ここまで紹介してきた事例は、全て企業としての取り組みや情報を発信するものでしたが、大和ハウスグループのWebメディア「サステナブルジャーニー」は、自社の情報発信ではなく、世界中のサステナビリティに関する情報を発信するメディアとなっているところが大きな特徴と言えるでしょう。
各記事ページのデザインも見やすく読みやすく、サステナビリティに関する動向がキャッチアップできる内容となっています。
5. P&G ― シングルページのような表現でストーリー性のある見せ方
https://us.pg.com/environmental-sustainability/
P&Gのサステナビリティコンテンツは、テーマごとに縦長のシングルページのような構成になっているのが特徴です。
各セクションには写真やイラストが多用されており、SVGアニメーションによる動きでユーザーの視線を引き付ける仕掛けが施されています。
コンテンツのボリュームを抑えて、グラフィカルに表現したい場合に参考になるでしょう。
最後に
参考に挙げた5つの事例から、サステナビリティコンテンツには多種多様な表現方法やアプローチがあることが、お分かりいただけたと思います。
SDGsや持続可能性に対する世間の関心が高まっているなか、企業には、CSRやCSVコンテンツを強化し、サステナビリティに関する取り組みをさらに魅力的に発信することが求められるのではないでしょうか。