EdTechサービス「Clear」を展開するClearnote。当社は、一人ひとりに最適化された学習スタイルを提供できる世の中を目指して、複数の学習サービスを提供しています。チームは、エンジニアが中心となってプロダクトを開発していますが、その裏には「教育」の軸で活躍する数名のメンバーがいます。
その一人が、当社の教材開発担当の石黒です。
石黒は小学校の教師として勤務してきた過去を持ちながら、そのキャリアを変えて、スタートアップに挑戦をしています。「教育を変えたい」という強い思いで働く彼の原動力、アルクテラスにかける心情、そして描く教育の未来をインタビューしました。
【アイキャッチ画像、左:新井 豪一郎(Clearnote元CEO)/右:石黒 友巳 】
優れたものが、悪用されない世界を目指して教育者に。
ーまず、教育に関わることになった、きっかけを教えてください。
幼いころから物を作ることが好きで、中学卒業後は高専・大学で工学を学びました。学生時代は、航空宇宙産業に興味があり、アメリカが打ち上げた火星探査車を載せたロケットの、はるか遠くまで探査車を運ぶ技術や、そこから届けられる火星表面の鮮明な画像にとても感動していました。
しかし、もし「ロケットに探査車ではなく兵器を載せたら?」「送信する内容が、火星表面の情報ではなく他国の情報だったとしたら?」「どんなに優れた物を作ったとしても、使用する人次第でそれが人を傷付ける物にもなり得るのではないか?」そんなことを考えるようになり、その頃から、教育に関心を抱き始めました。
ー人を傷つけない思考ができる人が増えるように、教師になろうと思ったんですね。
そうです。小学校の初等段階で、自分はどう思うのか、相手はどう感じるのか、という倫理観が自然と身についていきます。なるべく、初等や早期段階の子ども達と共に学び考えていくことで、多くの人たちが幸せと感じる世界を作ることができるのではないか、と考えるようになりました。
ーそして、大学卒業後に教育者を志した。
はい。大学院では教育学を専攻し、修了後は教師になりました。一人でも多くの子に「わかった!」と喜びを感じながら勉強してもらいたいと考え、一人ひとりの学びたいという声に応えることに注力して教壇に立ち続けました。
そして、今学んでいることが、それぞれの子の興味や将来の夢にどのように関係してくるのか、どうすれば世の中や周りの人達のためになるのかを伝えようとしてきました。
しかし、私の力不足が原因ですが、日々の学校の授業の中では、一人ひとり異なる感じ方やペース、考え方に合わせて教えていくことが難しく、全員の声を拾ってあげられないことにもどかしさを感じていました。
個性・才能を伸ばして、学習者の可能性を拓く学習スタイル
ーそこで、Clearnoteへ転職することになったんですね。
「個性を活かした教育サービスを提供することで学習者の可能性を拓きたい」というアルクテラスの理念に共感し、自分が教職の中で追求してきたことをさらに高められると考え、アルクテラスに入社しました。
アルクテラスにいたメンバーがたまたま私の知り合いで、当時の悩みを話していたときに、アルクテラスの存在を教えてもらいました。
その後、代表の新井をはじめ、メンバーからこれからの時代に求められる教育の仕方を聞き、ITを使うことで30複数人の子ども達に一斉に指導するのとは違うスタイルで教育を実現できそうだと感じ、新しい挑戦を決意しました。
ー当時は従業員も数名、その中での覚悟がすごいですね。現在はアルクテラスで、どのような業務を担当しているのですか。
学習者の理解の仕方に合わせた認知理論とAdaptive Learningの理論の機能を背景に持ったクラウド型の教育サービス「カイズ」のコンテンツ作成に携わっています。学習者が最も理解しやすい学習スタイルを分析・把握し、その学習スタイルに合わせた教材や指導ツールを提供します。
ー個々人にあった学習を提供するという考え方ですね。
そうです。理解の仕方は一人ひとり異なるはずです。例えば、分数のかけ算でも、面積図などを用いて視覚な情報で動的に考えた方がわかりやすい子もいれば、式のプロセスをステップで継次的に考えた方がわかりやすい子もいるはずです。以前に習った式と同じパターンに結びつけて考えることで、すっと頭の中に入ってくる、そんな子がいてもおかしくありません。また、目的を先に示してほしい子もいれば、最後にまとめてほしい子もいます。このようなそれぞれの生徒の異なる理解の仕方に合わたコンテンツを、チームで検討しながら作成しています。
世界的企業が日本からも生まれる環境をつくる、EdTechカンパニーを目指して
ーありがとうございます。アルクテラスについても教えていただけますか?
EdTech教育のベンチャー企業として、子どもから大人まで、すべての学習者の学習体験や可能性を拓いていきたいと考えている会社です。
なので、仕事のかたわら、日頃感じている学習することの意義や課題などについて議論し合うようなこともよくあります。
先日も、メンバーが鑑賞してきた「これからの学校教育の在り方を問う」内容の映画を、みんなにも観て考えてもらいたいということで、仕事後に、社内会議室で上映会が開かれました。その後は、それぞれ感じたことを熱く語り合いました。メンバーそれぞれが、教育やサービスに対する自分の考えをもち、意見をぶつけ合える信頼と、相手の考えや気持ちを尊重し助け合える優しさをもっています。
ーありがとうございます。最後に今後の目標などを教えてください。
ITを使い「世界中の人が生まれた国や地域に関係なく、教えてもらいたい人から、自分に合った方法で、いつでも学ぶことができる」そんな技術やコンテンツを開発し、世界中に「わかった!」の喜びを広げていきたいと考えています。
一人の先生がクラス全員の生徒に、同じ時間で同じ内容を教えていくという、現代の教育スタイルの良さは、みんなが同じことを知れて、同じペースで進む。だから同じレベルで議論できる環境が整うというところです。
ですが、時代的には才能を伸ばすことが尊重されている中で、個々人の能力を昇華させることが難しいというのが現状の教育スタイルの問題点ではないかと考えています。
ー一斉学習のスタイルですね。
現状の教育スタイルの良さは活かしつつ、子ども達が学びたいと思った内容を選択でき、とことん追求していくことができる学習機会が増えていくと、学びの多様化にも応えられ、さらに個々人の能力が高められていくのではないかと思います。
そして、そのような学び方が当たり前になってくることで、日本からは生まれにくいと言われている世界的な企業が生まれ、革新的なサービスが発信されるようになるのだと思います。アルクテラスの信じる認知理論とAdaptive Learningの理論を用いたコンテンツ、サービス開発ができれば、そういう未来はくると信じています。
ー本日はありがとうございました。
[編集・聞き手:大沢俊介]