「デジタルな世界で完結しない製造業というドメインでエンジニアリングする。これがキャディの面白さだと思うんです」
そう話すのは2021年4月に仲間入りした、元オプトのCTO・平岩二郎さん。エンジニアリングマネージャーとして、エンジニア組織をまとめるだけでなくビジネス領域にも踏み込んでいこうとしています。
今回は、平岩さんがなぜ上場企業グループを離れてスタートアップに飛び込んだのか、どういう部分にいまワクワクしているのかなどインタビューしました!
エンジニアリングしかできないのに2社で代表を経験
――平岩さんは、ずっとエンジニア畑を歩んできたんですよね?
大学時代、手に職をつけたい思いがありプログラミングには興味があって、内定をもらえたのが携帯電話のキャリア公式サイトやキャリア非公式のウェブサイト(勝手サイト)を受託開発する会社でした。
まだエンジニアという仕事をよく理解しておらず深い考えもなく選んだだけだったのですが、比較的自由に仕事ができ、エンジニアリングの初歩を学べました。
当時まだ新しかったRIAの管理画面開発にもチャレンジでき、しかもお客さんが「使えればいい」と任せてくれたので、設計から自分で考えられたんです。
けれど、しばらくして少しプログラミングがわかってくると「ベンチャー企業で武者修行したい」という想いが湧いてきて。もっと技術を身につけたいという気持ちが強かったです。
それで転職を決め、2社目ではWebシステムからスマートフォンネイティブアプリ、Facebookアプリなど様々な開発を手がけました。
――2社目では、入社数ヶ月後に代表取締役に就任したそうですね。
はい、前任から「ほかの会社を立ち上げるから、この会社はお前がやってくれないか」と言われて。「え?!」と驚きましたが、まあやってみるか、と。まだ若くて世間知らずだからできたのでしょうね。
とはいえ「社長」が何をするべきなのか全然わかっていなかったので、ひたすら開発をしていました。経理関係は前任がオーナーとして担ってくれていたので、私は案件をとってきて、ただひたすら開発をしていただけ、という。
そんな社長というのもおこがましい状態だったのですが、私もまだ血の気が多かったんですね。些細なことで役員同士で衝突して、私が辞めることになりました。
退職後、フリーランスのエンジニアとして仕事をし始めたのですが、前職の前任が当時流行り始めていたDSP(Demand Side Platform)をインストール型で納入するモデルを思いつき、会社を立ち上げることになりました。
それがDemand Side Scienceという会社です。共同代表という形で、設立時より代表取締役社長に就任しました。けれどこれがうまくいかず。最終的に喧嘩別れしてしまいました。
――その原因は何だったのでしょう?
私の目線から言うと、期待しすぎてしまっていたんですね。
その結果、互いに精一杯頑張っているのに衝突してしまうというということをくり返して、どんどん消耗してしまったんです。
でもこのときの経験があったから、自分はプレイヤーとしての意識が強すぎたんだなとやっと気づけました。トップという立場でありながら、マネジメントを全くしていなかったんですよ。
社員に対して「マネジメントしなくてもやってよ」とどこかで期待していたし、そのくせ「自分がやった方が早い」とつい手を動かしてしまう。もっと対話するべきだったし、役員も同じ方向を向いてチームを作っていく仲間としてもっと頼ればよかった。
当時の私にとって、マネジメントをして長い目で成果を出すかよりも足元どれだけ成果が出せるかの方がプライオリティが高く、仕事というのはそれが全てだと思っていたんです。
自ら成果を上げていくことしか頭になく、人を通して成果を上げるという発想がありませんでした。
このことに気づくのに、長いことかかってしまいました。
足りないのはサーバントリーダーシップだった
――前職のオプトは、Demand Side Scienceの社員を引き連れる形での入社だったそうですね。
「内製化のためにエンジニア組織をつくりたい」という依頼を受けて入社しました。ここで前職までの気づきを活かして、ようやくマネジメントをしようという意識になったんです。
これまで私に足りていなかったのはサーバントリーダーシップ。つまり支配型ではなく、奉仕型のリーダーシップですね。
サーバントリーダーシップ協会の勉強会にも行きましたが、学べば学ぶほど、自分に欠けている概念だと痛感したので、意識的に取り入れるようになりました。
そこでまず始めたのが1on1。とにかく社員の話に耳を傾けるほか、評価制度をつくるなどエンジニア組織を成長させるための施策をいくつも実行しました。
特に意識していたのは、一人ひとりが前に出られるよう取り計らうようなマネジメントをすること。これまでのように自分ばかりが前に出てしまったらエンジニア組織は成長しないので、誰にどういう風にやってもらうかを常に考えていました。
そうしてコツコツ続けた結果、最初30名以下だった組織が最終的には80名規模に。
途中で中間マネージャーが配置されたので、ある程度彼らにまかせて私は遠くから見守り、困っていたら現れるやり方にシフトし、並行して入社して1年後にはオプトのCTOに就任しました。
――オプトから転職しようと思った理由は何ですか?
エンジニア組織としてはファーストフェーズを終え、自分からも手離れしていた感覚がありました。なので、私個人としては次は何にチャレンジするのか考えるタイミングだったんですね。
「次は何をやろう」と考えたときに「そうだ、スタートアップにいこう」と。発展途上な環境でインパクトを出したいと思ったんです。
特に第2次産業的なものに関わりたいと思ったので、物流や建築、製造あたりのスタートアップを中心に見ていました。
――なぜ第2次産業に興味を持ったのでしょうか?
ITバブル以降、情報技術がアプローチできていた領域は、ほとんどが第3次産業でした。
情報技術が直接アプローチしやすいのは人材や広告など第3次産業です。ただ、ここ数年で建築や製造など実物のある産業に取り組もうとするスタートアップが増えてきている気がしていて、そういったものに関わりたいと思ったんです。
そうして企業を探すうちに見つけたのがキャディでした。
クレイジーな会社で、泥臭く何でもやりたい
――キャディに入社を決めた理由を教えてください。
キャディは巨大な課題を根本から解決していこうとしているんですね。まずそこに面白さを感じました。選考が進むうちに、ものすごいキャリアを持った人たちがめちゃめちゃ泥臭いことを本気でやっていることがわかって。これは常軌を逸しているクレイジーな会社だぞとワクワクしました。
どうせ転職するならクレイジーなスタートアップに行きたいと思っていたので、とても惹かれましたね。
また、経営陣の加藤さんと小橋さんの組み合わせも魅力的。話せば話すほど本気度が伝わり、熱量や真っ直ぐさに「一緒に働きたい」という思いが強くなりました。
また私の得意分野である開発組織のマネジメントに多くの課題を持っているように見えたので、お手伝いできることが何かあるのではないかとも思い入社を決めたんです。
――この4月からエンジニアリングマネージャーとして入社されましたが、どのような役割を務めていく予定ですか?
まずはCTOの小橋さんや少し前に入社されたCTO室長の佐藤さんなどエンジニアリングマネジメントを担うメンバーと連携し、事業成長に必要な開発組織に近づくように強化していきたいと思っています。
具体的には、人の育成や成長を支えるピープルマネジメントが個人に依存しない組織を目指したいと思っていて、今ある人事評価制度等ももっと良くしていきたいと思っています。
結果として、小橋さんがCTOとしてもっと暴れられるような組織づくりを目指していければと考えています。
また、目下一番注力しようとしているのはエンジニア採用。キャディのエンジニアは皆さんとても優秀で技術力が高いのですが、解決しようとしている課題が非常に大きいうえに種類が多く、難易度も高いので、優秀なエンジニアがもっと必要です。
けれどキャディのようにBtoBサービスを提供している会社は、エンジニアにとって何をしているのかわかりづらいこともあると思います。いま何に取り組んでいるのか、どこを目指しているのかをもっと明確に伝え、共感してくれるエンジニアを増やしていきたいですね。
特に私が面白いと感じている、デジタルな世界で完結しない製造業というドメインについてわかりやすく発信していきたいと思っています。
――前職までの経験は活かせそうですか?
前職でも求人票を自ら書き起こすくらい、エンジニア採用には取り組んでいました。なのでその経験を活かして、PDCAサイクルのスピードをもっと上げつつ、事業成長を実現するための仲間づくりを推進していきたいです。
また前職ではCTOというポジションでしたが、実務内容的には開発に関わる人や組織のマネジメントを通して事業貢献を目指すVPoEに近かったので、ある意味では今と同じです。なので、その点でもバリューを発揮したいと思っています。
とはいえ急成長のスタートアップなので、これまでの経験を総動員して泥臭く何でもやっていくつもりですよ。
目まぐるしい変化のなかで、未解決の山をみんなで登りたい
――今後取り組んでいこうと考えていることはありますか?
キャディは事業・組織ともに急成長中なので、そろそろ成長痛みたいなものが顕在化してくると思います。
例えば、すごい勢いで変わっていく組織のカタチに違和感を感じる人が現れるかもしれません。そういう人にも向き合いつつ「キャディで働いていてよかった」と思える組織づくりをしていきたいと思っています。
一方で、企業にとって”痛み”も時には必要です。マネジメントする立場として「キャディが本当にやりたいことは何か」をブラさないために、一人ひとりの意思決定を支援していけたらとも思っています。
―― 一人の新入社員として、ワクワクしているポイントがあったら教えてください。
すでに全社では100名以上規模の組織になりつつありますが、それでもまだまだカオスな部分があることにワクワクしています。ビジネスと開発のどちらにも未解決の領域が山ほどある状態です。
それでいて組織そのものが、ものすごい勢いで変わり続けているので1ヶ月後すら予想できなくて面白いですね。だからこそ開発側だけでなく、ビジネス側にも食い込んで、オーナーシップを持って取り組んでいきたいという思いがあります。
キャディの製品・サービスはまだまだ未完成なので、自分ができることを常に模索し動き続ければ、当分ワクワクし続けられそうです。
――最後に、今後キャディでどのような人と一緒に働きたいですか?
巨大産業を変えることに燃える人と働きたいですね。
もちろん製造業そのものに理解や熱意のある方も歓迎ですが、キャディは深いペインのある課題に対して大きなインパクトを出すことにこだわっている会社。人生の有限な時間を使って、どうせなら大きな目標を目指したいと思える人だと嬉しいです。
一人では難しくても、みんなで協力し合えばできることはたくさんあります。会社はそのために存在するものだと思いますし「キャディがあったから〇〇ができたね」と言える未来を一緒に目指したいですね。
あとは自分とは全く異なるプロトコルで動いている人が入社してくれたら面白そう。考え方や価値観がバラバラな人たちが、同じ目標に向かって頑張れるのが会社というものの利点です。ぜひ一緒に、その利点を精一杯活かしましょう!
Photo by Taiga Yamazaki