「キャディのターニングポイントは、社員一人ひとりが仲間になってくれた瞬間」
そう話すのは、“人”を大事にしつつ事業課題をロジカルに解いていこうとする後藤 陸さん。顧客サイドとパートナー両サイドの営業を経験している、キャディでも稀有な存在です。
その経験を活かして、製造業の課題をどのように解決していこうとしているのか、後藤さんにインタビューしました!
「アイツがいて良かったと思われる社会的変革を起こしたい」という思い
――まず後藤さんの経歴を教えてください。
大学卒業後は三菱商事株式会社に入社しました。3年目、製造業に関連する新規事業を立ち上げるためタイへ。
最初の1年間はコンケン大学へ留学し、翌年から始まるタイ新規事業拡大に向けて語学や文化、宗教学を学んでいたのですが、「タイにいる外国人」として交渉の場に立つのは本望でないな、と。タイ人の95%が信仰している仏教の真髄を学んでタイ人に近づこうと考え、出家しました。
――大胆な選択ですね・・!
出家を通して改めて自分と向き合ってわかったことがあります。僕は経済面では恵まれた環境で育ててもらった一方で、いじめや友人の死など悲しいこともありそれまで感情的にはあまり恵まれませんでいた。
金銭的欲求はない代わりに、年々、後藤がいて良かったと思われる、そんな社会的変革を起こしたいという気持ちがどんどん強まっているように感じます。
思い返すと、大学時代に民泊業界で事業を立ち上げバイアウトしたときも「社会的に大きな価値を出したい」という強い想いがありました。三菱商事に入社を決めたのも、経営に携わりながらボーダーレスに社会課題解決に取り組みたいと思ったから。
出家の中で自分と向き合い進みたい方向が見えてきたため、三菱商事を離れようと決意。タイから帰国後、会社を立ち上げようと思っていたときに、キャディの代表・加藤と出会いました。
――そこでキャディの話を聞いて、入社を決めたのですね。
そうです。加藤の生い立ちや過去の不条理な環境経験などについて聞き、「環境や組織構造が理由で、恵まれない人を無くしたい」という価値観に強く共感しました。
自分も過去辛いことはありましたが、一方で、良い恩師や友人、家族に恵まれ、可能性を広げることが出来たと思っています。社会人になってからそういう人と出会えるのは貴重です。
かつ、自分の人生を捧げようと思えることなんてまずありません。それほど「この人とだったら、人や組織を裏切らず、社会を良い方向へ変えていける」と確信を持てました。
その当時のキャディはメンバーも3人しかいなくて、ほとんど何も無い状態でしたけれど「社会を変えたい」という強い想いと、人への愛情があるのを感じたから信じることができました。
三菱商事で工作機械を担当していた頃から興味があった製造業において、非常に大きく複雑な領域の課題を解こうとしていることに共感し、かつ私が掲げる志とも完全に一致しました。
――大企業とベンチャー企業のキャディ、どのような違いを感じていますか?
誤解を恐れずに言うと、志を成し遂げるための覚悟を持っているかいないかの違いがあると思います。大前提として大企業は、既存事業を守りながら負けない戦いをするのが基本であり、その性質にマッチした人材を採用したいんです。
一方ベンチャー企業は「こういう会社をつくりたい」など、 ミッション共感がありチャレンジ精神を強く持った人材を採用したい。
ベンチャーとは、言ってみればお金も名声もない状態でやるスポーツ。そこにあるのは共通の目的だけですよね。それでみんなが繋がっているのが、ベンチャーらしさなのだと思います。
社会をよくするために、社内のミッション・バリューも大事にする
――後藤さんが入社した2018年9月、まだまだメンバーも少なくゼロに近い状態からのスタートだったと思います。様々な変革を見てきたと思いますが、どのようなターニングポイントがありましたか?
社員一人ひとりが入ってきた瞬間、その全てがターニングポイントだと思います。もちろん対外的にはプロダクトリリースや資金調達、テレビ初出演などあるのかもしれませんが、キャディのようなベンチャー企業にとって大事なのは“人”です。
志が一致していて、何かに卓越した人材が入ってきてくれるたびに少しずつ変化し、キャディはいまの形になってきたのだと思います。
――とても後藤さんらしい考えですね!後藤さんは社内で「ICHIGAN委員会」というMisson,Value,Culture(MVC)の浸透を軸に組織の活性化を目指すプロジェクトの推進役にもなっていると思いますが、ミッション・バリューの浸透にそんなにも心血を注いでいるのは、なぜしょうか?
極端な言い方をすれば、企業理念や文化がないなら企業の存在価値がないとすら思っています。限られたリソースをどのように使い、何を達成するのか?それを考えるにあたって、基準となるのがミッションや文化だなと。ミッションが基準を決め、基準によって存在価値が磨かれていくわけです。
また意思決定の基準が共有されてくると、上長とか経営の判断を仰がずとも、個々人が自分自身で意思決定が出来るようになり、改革のスピードが早まります。個人のポテンシャルがどんどん発揮されていくようになるわけです。
ーーミッション実現と深く結びついているわけですね。
いまは「何をすればミッションを実現できるのか」という問いにおける“答えのしっぽ”をようやく掴み始めたところ。自分たちが強く付加価値を出せるところがわかってきたけれど、しっぽを掴んでみたら思いのほか巨大で、製造業ってやっぱり壮大だなと息を飲んでいます(笑)。
そこに挑んでいくためには、社員全員が一丸で課題に向き合い、会社も個人も圧倒的に成長していく必要があります。会社のポテンシャルも個人のポテンシャルも解放していくことが大事で、そのためにも、ミッション・バリューが必要なわけです。
そしてこれらは固定的なものではなく、会社のステージと共に常に改善し、全員で創っていくものだと思っています。
顧客もパートナーも大事にし、常にベストな組織構造を追求
――後藤さんはGTM(Go-to-Market,技術営業)とSCM(サプライチェーンマネジメント)の両方を経験している、社内でも稀有な存在ですよね。SCMからGTMへの異動の背景には、何があったのでしょうか?
前提として、キャディは顧客やパートナーのサクセスのために、必要があれば柔軟に組織体制も更新していく会社です。以前は、社内のオペレーション効率化を重要視し、顧客とパートナーのチームを分ける形で経営してました。
全員で同じことをやるよりも、機能別に分業したほうが、専門性と生産性が高められるなと。一方、短所として、一気通貫の視点を持ちづらく、全体最適になりづらい点があります。
次第に分業による弊害が大きくなり、歪が溜まった状態を解消する必要が生じたタイミングで、組織統合をすることにしました。その中でパートナー開拓側での知見を持っている私が、今度は顧客側の営業を見ることになったのです。
キャディの場合、顧客のニーズが複雑で見えづらい部分が多いのですが、今はとにかく1社1社のニーズを知ろう、個に迫ろうと尽力しています。
ーーどちらも経験されてみて、どのような違いがありますか?
正直、本質的には変わらないと思っています。
SCMもGTMも根本的に大事にしているのは「信頼」。信頼関係を築き、ステークホルダーの利益が最大化するよう仕組みを創り、ファンを増やしていくのが営業の役割です。
どちらか一方に傾倒せず、プラットフォームとして公明正大でなくてはならないと思っています。
信頼を獲得し、「キャディに任せたい」「キャディと一緒にやっていきたい」と思ってもらうことが第一歩。取引や売上などはその後についてくることです。
ーーGTMに従事し、どんな時に手応えを感じますか?
今キャディの中でも大きなお客さんを複数担当しており、3年、5年、10年先を見据えてどう事業を伸ばしていくかの議論を、定期的にさせてもらっています。
例えば、電気自動車の部品関連装置を作るお客様の例をあげると、世界的に電気自動車が流行しているなか、そこに使われている部品の日本におけるシェアはこの数年で90%から20%ほどに下がってしまっていて。
世界シェアを上げるために原価の低減や生産性を高めることが必要です。競合の海外メーカーとどう戦っていくのか?どうやったら生産性を圧倒的に高められるのか?経営同士で議論しながら、戦略を一緒に練り、事業成長を推進していっています。
一つの「部品加工委託先」から、将来を一緒に見据える「経営のパートナー」として歩みを進められつつあることには手応えを感じますね。
サプライチェーンの最適化を目指し、仲間集めに尽力
――最近は「パートナーにとっての経営パートナー」になりつつあると思いますが、中長期的に見ていまはどのようなフェーズなのでしょうか?
まだまだやりたいことの1%もできていない、という感覚ですね。会社規模としては100名を超え、ある意味外から見るとちゃんとしてる感も出てきたかもしれませんが、カオス度でいうと今の方が高いくらいで。
もちろん会社として成長しているんですが、解きたい課題や目指す像はそれ以上に大きくなっているので、目指す山の頂は高くなるばかりという。
前述のように、原価低減のための調達支援など経営にインパクトがある領域にも進出できるようになった一方、モノづくり業界全体をみたときにそこはまだほんの一部でしかない。キャディがやりたいのは一部の最適化ではなく、本質的な構造改革であり課題解決。
つまりは製造業全体でのサプライチェーンの最適化を目指していますが、その一歩として今「個に迫る」ことにフォーカスし、1社1社仲間を増やしているところです。
――壮大な計画ですね!では一緒に取り組んでくれる仲間としてどのような人を求めますか?
誠実で志が高い人と一緒に働きたいですね。
僕は事業自体の成長にも興味があるのですが、それと同じか、それ以上に、人の成長を重要視しています。ビジネスの成長にコミットし、難しい課題を本質的に解いていこうとすると、人はどんどん成長します。
ミッション・バリューに共感し、一緒に活発な議論ができる「圧倒的に志の高い人」を求めています!是非一緒に世界のポテンシャルを解放していきましょう!