東京大学在学中、海外インターンを運営するサークルの副代表としてウガンダでのインターンやソーシャルビジネスコンテストで優勝などを経験し、新卒で経営コンサルティングファームの株式会社 経営共創基盤(IGPI)に入社。製造業企業の再生フェーズの案件など担当したのち、圧倒的に規模の大きな社会課題の解決を目指すキャディに出会い、ジョインを決意。
2019年8月に入社し半年経過した下郡佑(しもごおりたすく)さんに大学時代や前職でのご経験から現在の仕事、そのやりがいについてなどをお聞きしました!
ウガンダでの挫折。ビジネスの仕組みを知るためにコンサルへ
ーー今日はよろしくお願いします!下郡さんはどんな大学生活を送っていたんですか?
高校までは完全に部活漬けで、周りにいる友人も大体似たような高校生活だったのですが、大学に入ると周りに起業する人もいればひたすら飲み歩いてる人、すごく勉強ができて特定分野の知見をとことん深めている人など、人によって時間の使い方にかなり違いがあることに気がついて。当たり前なんですが、その分人生の可能性にも幅があることを、強く感じたんです。卒業した後に官僚になる、大企業でトップを目指す、とにかく稼ぐ・・いろんな方向性があるなかで、自分はどうしたいんだろう?と考えたとき、「世の中に貢献したい、社会課題にコミットしたい」という気持ちが大きいことに気づきました。ただ、「何に」という対象が見つかってなかったので、それを探すために、自分として共感できる課題が大きそうな途上国に行ってみようと思い立ち、2年生の時にウガンダへ発ちました。
ーーウガンダへ!それだけでかなりアドベンチャラスな匂いがしますね・・どんな経験をされたんですか?
NPOの活動に参加したんですが、ウガンダの首都でインターンすると聞いてたのに、結局車で5時間以上揺られて、着いてみたらエイズの発祥地でもある超ローカルな町に到着していました(笑)。翌日いきなり地域の統治者と挨拶の場をセッティングされていて、突貫で覚えた現地の言葉で挨拶したり、電気も水道もない環境で暮らしたり、なかなか最初から刺激的でしたね。現地では農村地域のコミュニティエンパワーメントに取り組みました。具体的には女性のリーダーシップのレクチャーを主導したり、政府への助成金申請のサポートを行ったりしました。
そのNPOは現地の人々の生活に寄り添いながら10年近く活動を続けており、本当に意義深い活動をしていると感じました。しかしフルタイムの従業員は1人で、運営も国からの助成金に依存しているので、何らかの理由でそれが獲得できなかったり、従業員が病気などで働けなくなったりすれば、NPOの活動は止まってしまいます。そういった意味で、活動の持続性や拡張性で大きな課題があると感じ、経済的に自立していることが重要であると思いました。そのような思いから、ビジネスで現地の課題解決をしたいと志し、2年後に再びウガンダに向かい、事業立ち上げに挑戦しました。
6ヶ月滞在し、ニーズを探る中で小売店向けのアプリ版ポスレジの導入に取り組んだんですが、結論から言うと滞在中に彼らの生活を劇的に変えることはできませんでした。誰かが本当に困っていることを解決するプロダクトをつくること、そして売上とコストが合い、経済的に回る状態にすること。それらを同時に両立させる仕組みをつくることがいかに難しいかを肌身で知れた、初めての経験でした。
ーーその経験が戦略コンサルティングファームのIGPIをファーストキャリアとして選んだことと関係していますか?
はい、ゆくゆくは事業を回していける事業家になりたいという思いでコンサルを選択しました。当時まだ本当にコミットしたい課題は見つかっていなかったし、様々な企業を異なるフェーズ、サイズ、業種という幅広いバリエーションで、それぞれがビジネスとしてどう成立しているのかという仕組みを知れることが魅力でした。
在籍1年強の中で特に印象的だったことは、1,000人以上の大きな製造業企業の再生フェーズの案件で、人件費削減をミッションとして持ったことです。どのように削減するのかというHowから考えなければならなかったのですが、新卒1年目で課長や部長の面談を何人も実施し業務効率化施策を提案していくのはなかなかタフでしたね。コンサルというと、月に1,2度訪問して打ち合わせするというイメージがあるかも知れないですが、この案件では3カ月間、殆ど毎日その会社に入り浸ってコミットしていました。
その中で学んだのは、IGPIの言葉でもあるんですが、「合理と情理」の重要性です。どれだけ論理的な提案をしても、感情の面で先方が納得できなければ実行されることはなく、全て机上の空論で終わってしまいます。先方の重役には、自分みたいな新参者の若造にとやかく言われることを快く思わない人もいた中で、「こいつは本当に真剣に、圧倒的に、考えてるな」と思ってもらうことが入り口でした。表面的なことを聞いて終わりではなく、相手が本当に何に困ってるのか内情まで深掘る。他部署からヒアリングした情報を統合しつつ、本人に驚かれるくらいその人の業務にめちゃくちゃ詳しくなる。わからないことをそのままにしないで遠慮せずグイグイ突っ込む。派手なことは一つもないですが、そうやって地道に信頼を勝ち取っていくことが近道でした。
課題が圧倒的に根深くて、複雑で、解決困難。
ーー人間は感情の生き物で、合理的かどうかで動くとは限らないですもんね。結局は信頼も足で稼ぐしかない、というのは激しく同意です。では次に、IGPIを1年強で辞めてキャディに転職した経緯を教えてください。
人生のうちの長い時間を使ってでも解決したいと思える課題に挑んでるチャレンジングな会社があればそこにいきたい、という思いは学生時代からずっとありました。根深い社会の不条理に対して大きなゲームチェンジを起こすには、長期的に腰を据えて取り組まねばならず、コンサルというアドバイザリー的な立場では限界があるのも認識していました。
きっかけは、キャディの柿澤さんのツイッターでキャディのイベントが開催されることを知って、足を運んだことでした。IGPIの仕事は非常に楽しく満足していたので4,5年はいようと思っていたんですが、正直「キャディみたいな会社は、日本にはもうしばらく出ないだろうな」と思ったんです。その理由は、課題が圧倒的に根深くて複雑であり、解決困難であること。そして、それに対してのソリューションを提示しうる人材が、テクノロジーサイドにもビジネサイドにも揃っている点です。
キャディが目指す世界は多品種少量の製品がシームレスに受発注できる世界。そのためには製造に必要な情報が統一規格で全て精緻に収集できること、それに基づき適正な価格を算出できること、適切な加工会社の選定ができること等、様々な要素が揃わないといけませんが、それら全てを満たす仕組み・企業はまだ世の中に存在しません。ゆえにキャディと全く同じビジネスモデルで成功している会社もないため、私たちは「競合に勝つ」という意識ではなく、業界にある課題をどう解決するかに純粋に向き合っていると感じています。
ーー市場の大きさとその複雑さは群を抜いていますよね。でもその課題の大きさと複雑さをポジティブに捉えていることがいいですね。入社まだ半年くらいですが、下郡さんは今新カテゴリの立ち上げプロジェクトに携わっているとか?
はい。調達担当者さんにとって、いかに手離れよくキャディに案件をまるっと任せられるかは非常に重要ですが、その状態に近づけるために重要な新カテゴリを担当しています。例えば、お客さんが100の製品を発注したい時に、一社のサプライヤーに100発注できるのと80と20に分けて発注するのでは管理工数が大きく変わります。キャディが今まで提供できなかった20の製品を埋めるのがこのプロジェクトの大きな目的です。
これは少量多品種の金属加工全般において言えることですが、設計図面には表記されていない“よしなに”の領域が大量にあります。特に私が担当しているカテゴリにおいてその傾向は顕著です。そこを言語化・見える化し、どのパートナー(提携加工会社)でも安定して品質どおりの製品を納品できる体制を作らなければいけません。それがとてもチャレンジングで面白いところです。
高負荷の環境の中、あるべき創造的な世界を目指して
ーーそれが実現されると、どんないいことがありますか?
世の中には無数の加工がある中で、得意領域は加工会社によって大きく異なり、製品の特徴も全て一品一様。品質のいい製品を低価格で納期に合うように納品するためには、QCD(クオリティ、コスト、デリバリー)において最適な加工会社に発注する必要があります。それが実現されれば、今まで購買担当が何日もかけて捌いていた何千枚もの図面をまとめてキャディに任せていただけるので、空いた時間で価格を下げる設計改善をしたり、前倒しで次の設計に着手したり、より創造的な他の業務に時間を割くことができます。
また、キャディに案件が集まり最適な案件のマッチングデータが蓄積されてくると、パートナー自身では獲得できなかったであろう異業界からの案件や自社が得意とする加工品に絞った案件量を安定的に受注できるようになるので、パートナーの収益の健全化と成長に大きく貢献できるでしょう。今までだと多重下請構造によって業界ごとの景気の波に左右され案件ボリュームの凸凹が読みづらく、設備投資や人の採用にもなかなか踏み切ることが難しかった問題も、キャディが全体の調整機能となり業界を横断して案件を再分配しその波をならすことで解決できるかもしれません。
ーー業界が異なっても、ある部品の特徴が他の業界の何かとも実は共通点があるんですよね。
仕事をする中で、どんなところにやりがいを感じますか?
世の中に無数に存在する様々な種類の図面をどのように分類するのか、何を押さえれば安定的に求める品質・価格を実現できるのか、パートナーの得意領域は何か。クリアしていかなければいけない要素は山積している中、それらをどの順序でクリアすれば最短でこのプロジェクトを達成できるかを考えることが難しく、またやりがいを感じているところです。複雑な課題に対して要素分解して整理し、解決可能なサイズに砕いてアプローチする頭の使い方は、コンサル時代のスキルがいきていると思います。
逆にコンサル時代と違うと感じるのは、意思決定のスピードです。不確実性が極めて高い中で、お客様・パートナーさん双方に貢献するため、キャディは圧倒的なスピードでの成長を目指しています。問いに対する確度が5割しかなくてもGOする攻めの判断も時には必要で、そうしないと目指すところにはいつまでたっても到達できない。そういった戦略をとる上での意思決定がめちゃくちゃ速いですね。やらないとわからないことが多い中、圧倒的に高い成果が求められるのでヒリっとするプレッシャーもある環境ですが、ビジョンに近づけていると感じられる瞬間はとてもワクワクしますね。
ーー最後に、どんな人と一緒に働きたいですか??
キャディの描く世界観に向けてワクワクできて、それを信じて突破していける人ですね。キャディ自体がいつもムーンショットを目指してるからこそ、普通に考えたら「無理でしょ」となりそうなことも常識的ではない発想で成果を出せる人が向いていると思います。自分はそれが苦手だからこそ、憧れるところでもありますが(笑)
Photo by Yu Ueki