高速で進化するIT業界、幹部レベルでもその速度を楽しみ、乗りこなしている人がいます。
「ずっとエンジニアだけでやっているほうが、技術的に保守的になってしまうリスクがある」
そう語るのは、IT業界で35年にわたるキャリアを持つ金融サービス本部統括本部長の徳和雄さん。常に最新の情報に敏感で、社会や顧客のニーズの変化に応じて、自分を変え続ける柔軟さも持ち合わせ、その精神と肉体の若さにはいつも驚かされます。
本部長としてのミッションやリーダーシップ、アバナードの文化、そして自分自身の変化対応力を引き出す秘訣についても伺いました。
徳 和雄(とく かずお)/金融サービス本部 統括本部長
大学を卒業後、1990年に外資系SIerに入社。ITエンジニアとして5年、営業に転じて、約20年の経験を積む。2013年に外資系の大手データ分析ソフトの会社に転職後、2015年にアバナードに入社。現在はアバナードの金融部門を統括しており、営業だけではなく、デリバリーにも責任を持って取り組んでいる。
金融畑一筋。エンジニアから営業職への転換で仕事に深みが増した
──徳さんは、IT業界でのキャリアがもう35年だそうですね。まずは、エンジニアとしてキャリアをスタートしてから、営業のポジションに至るまで、どのような変化があったのかお聞かせください
これまでのキャリアでは、一貫して金融領域に携わっています。メガバンク、地銀、証券、生損保、クレジットカードまで、金融業界の様々な業種のシステムを経験してきました。金融システム自体も、それを開発する環境も、急速な技術変化がありました。
例えば、システムが稼働する環境もメインフレームと呼ばれる大型汎用機からUNIXワークステーション、PC、スマホへと変遷し、今ではパブリッククラウド環境で開発ができるようになりました。IT業界でのキャリアは35年近くになりますが、私はこうした技術革新の波にもまれながら、共に生きてきました。
エンジニアだった当初はずっとエンジニアでやっていると、技術的に保守的になってしまうリスクがあると思っていました。当時の金融システムは、一度構築したら頻繁に変わるものではなく、保守・メンテナンスの方が主業務になってしまう。レガシーな技術に縛られてしまうことがあったためです。
一方で、技術は進化するし、お客様も社会も変化する。そこで常に最先端の場にいるためには、営業という職種がいいのではないか、面白いのではないかと考えていました。
営業の面白さは、お客様に対して深くしっかり提案し続けるのみならず、複数のお客様に対して新しい提案もできるところです。お客様も、新しい技術や新しいサービスを導入することで、新しい価値を得たいと望んでいます。
世の中の変化を捉え、そして自分自身も変わりながら、時代の変化に合致した金融サービスの在り方をお客様と共に議論できる。そういったポジションが楽しくて、現在も続けている次第です。
金融業界のDXを推進する経験豊かなエンジニアが必要
──アナバードの金融部門を統括する立場から、ご自分に課しているミッションは何でしょうか
まず、金融機関のお客様に対して、DX(デジタルトランスフォーメーション)を全面的に支援していくことです。金融機関が今抱えている問題は多岐にわたっています。
銀行には、経済を循環させる血液のような役割があります。日本経済全体が元気のない時には、どうしたら顧客企業や個人を支えられるか。銀行ならではの悩みを突破する鍵は、銀行自体のDX化が握っていると思っています。
例えば、営業とコールセンターが別々に顧客データを管理している状態を、クラウドで一元的に管理できる仕組みづくりもDXの一つです。現在は、データをクラウドに集めやすくなったことで、私たちも様々な提案ができるようになってきました。
銀行の窓口業務はコストカットの対象になりつつあり、支店の数も減っています。そこで余剰とされた行員のリスキリングも重要な課題です。これまでの業務ノウハウを管理システムに置き換え、効率化を図る必要があるからです。
金融企業の課題解決が、日本経済全体の課題解決、日本経済全体を活気づけることに繋がる。そのためにも、金融のDX化は必須だと考えています。
近年はローコード、ノーコードでシステムを開発できる環境が整いつつありますから、そうしたトレーニングを行い、一緒にアプリケーションを開発しています。
お客様に伴走しながらDX支援を進めるために、アバナードは新しい金融システムへのアプローチの提案をしてきました。これからは、金融業務に特化した技術力がこれまで以上に求められています。
──金融サービス本部の本部長として、ビジョンをメンバーにどう伝えてモチベーションを引き出そうとされているのでしょうか
リーダーとして大切なのは、今後の方向性と具体的な施策を明示することです。現在の会計年度だけではなく、3年後、5年後を見据えた計画を示します。
まず3年後のあるべき金融システムやそのときのアバナードの立ち位置を、バンキング、キャピタルマーケッツ、インシュランスという3つのセグメントに分け、お客様とどうコミュニケーションをとっていくのか、マーケットへのプロモーションをどう展開するかなど、ビジョンを描きます。
メンバーはそのビジョンに沿って、役割分担と目標設定を自身で担ってもらいます。本部長として私が示したビジョンを自分なりにアレンジし、一人ひとりに考えてもらうのです。組織目標を個人目標にまで分解し、ブレイクダウンする。「自分ごと」として受け止めてもらうことが、最大のモチベーションに繋がると考えています。
風通しの良さは、意思決定の速さでもある
──徳さんはアバナードの組織文化をどう感じていますか
特長としてまず挙げたいのは、風通しの良さですね。組織がピラミッド型ではないことは、アバナードの最大の特長。組織構造がとてもフラットですね。組織間、役職間に垣根がないので、経営トップも他の部署の人とも話しやすいカルチャーがあると思います。
さらに、それぞれの部署に属している人たちが、役職や年次に関係なく、自由に発言できる風土があります。会議では若手世代が積極的に発言し、上司は頷きながら話を聞き、アドバイスを返している。全員が一つのテーマについて、同じレイヤーで議論できる。これはアバナードならではの文化ではないでしょうか。
入社者に対して「あなたは何をやりたいのか」と問う文化もあります。アバナードはこういうことをやりたいが、あなた自身はどうしていきたいかと尋ねるのです。その背景にあるのが「一人ひとりの人間を尊重する」という思想です。アバナードに入社した人は、その日からもう同じ仲間だということなのです。
通常のレポートラインとは別に、社員一人ひとりのキャリアをどう伸ばしていくかを考えるキャリアアドバイザーがいるのも、アバナードならではかもしれません。
誰かが何かに困っていたら、私たちで何かできることはないか。そうした話が普段の会話でもよく出てきます。社員全体が他の社員に対して、サポーティブであると言えるのではないかと思います。
メンバーが斬新な提案をしてきたら、どう対応するか
──グローバルの動きをいち早く社内に採り入れることができるのもアバナードの強みの一つですね。もし今メンバーから、資金はかかるけれども、非常に斬新な提案があったら、本部長としてどう対応しますか
100%、いや120%で大歓迎です。メンバーには「新しい企画があれば、私がいつどこにいてもいいからどんどん持ってきてくれ」と、常に言っています。企画を提案する人は誰でも、自らのビジネスを作り出す能力を試せるのです。
新企画、はミニ事業提案みたいなものです。そのサービスがマーケットに受け入れられるかどうか、コストを回収して利益が出せるかどうかは、もちろん重要です。しかし、最初から絶対うまくいく企画などありません。たとえ失敗してもいいから、まずは提案してほしい。何より大事なのは、自分の企画でトライするというチャレンジ精神です。
人間は歩行しなければ退化する。変化を怖れず歩き続けよう
──自分を柔軟に変えていくために、日常的に心がけていることや習慣はありますか?
日常生活において、スポーツに親しむことはとても重要だと考えています。肉体と魂は切り離せないものですし、何より人間は歩行して生活するのが前提の動物。歩行を止めたとたんに退化し、肉体も衰え、脳や精神もヤワになってしまうというのが私の持論です。
コロナ禍でお客様のリモートワークが増えたので、私たちもリモートで仕事をすることが多くなりました。そこで、海に近いところに引っ越そうと思っています。趣味のサーフィンで波乗りしているときや、少林寺拳法で修練しているときも、その瞬間は自分の肉体の動きに没頭しています。
仕事のことを一瞬忘れられます(笑)。 仕事に執着することも大切だけれど、たまには自分の肉体に執着してみる。そのバランスが重要で、結果的に体も精神も変化に柔軟に対応できるようになっていくと思っています。人生は諸行無常。細胞は常に入れ替わるじゃないですか。人間は本来変化し続ける生き物なのです。
私が今一番大切にしていることは、一緒に仕事をしている社内・社外のメンバーやお客様たちと、にっこり笑えるような時間を持つことです。少なくとも一緒に仕事をしている限りは、相手にも楽しい時間を過ごしてもらいたいと考えています。
私と一緒に時間を費やしてくれる人たちを、ハッピーにしたい。なんだか芸人みたいですが(笑)、心からそう思っています。