ビデオエディターの河野です。
北海道・旭岳の風景を撮影した時のこと。
旭岳は2,291mと北海道で最も標高が高く、高緯度のため本州でいう3,000m級の気候条件になります。1,600m地点の「姿見駅」まで10分で登れるロープウェイが走っているので今回の移動手段はそちらです。
旭岳を含む大雪山系の山容はアイヌの表現で”カムイミンタラ”(神々またはヒグマの庭)と呼ばれるそうで、少し歩くだけでちょっと現実離れしたスケール感の世界が広がっています。
姿見駅周辺は広範囲にわたる散策路といくつかの展望台があり、風景の撮影はこのあたりで行いました。
(ここからさらに山頂へ向かうにはかなり本気の登山準備が必要です)
数ヶ所撮影しているうちに陽が傾き、下りの最終ロープウェイ発車時間が近づいてきますが、この時私にはAtmophの風景動画を撮影すること以外に星空を見るという個人的な目的があり、最終便に乗らず、翌朝の始発で下山することにしました。
朝までの約12時間、山中に滞在するという選択はそれなりにハードなので天候やコンディションによってはその日に降りてしまうことも選択肢にありましたが、この日は到着時から雲ひとつない快晴で、翌朝まで良さそうな予報。限られた日程の中で初日からこの好条件であれば降りるわけにはいきません。
最終便が去り、誰もいなくなった散策エリアで夕日も撮りました。
夜になると大幅に気温が降下し、昼間は20℃以上あったのが2℃まで下がりました。山の夜が寒いことは承知の上で、持てる限りの防寒具は用意していて(これが重い)なんとか耐えられるくらいです。少し酸素が薄いせいか、じわじわと体力を奪われる感覚がありました。
姿見駅が消灯して月も沈んでしまうとさすがに暗闇という感じで懐中電灯がないと何も見えませんが、よく見ると山頂の向こうにうっすら旭川市街の光が届いていて、低空に薄雲があるかも?
それでも純度の高い黒色の空に無数の星が広がり、はっきりとした散在流星がランダムに流れます。街明かりの落ち着く0時過ぎからゆっくり撮影を始めました。
ちなみにAtmophの風景にも星空の映像はありますが、今回のものは窓の風景素材にはなりません。
暗い夜空の撮影は明るい風景を撮る時とは全く違う工夫が必要です。(今回はタイムラプスを撮りました)
より自然な星空を一定の時間流れ続ける映像として、しかも高画質でお届けするには、もう少し研究を重ねる必要がありそうだと考えています。
幸い危険な野生動物に遭遇することもなく無事に夜明けを迎えました。
最後に朝の山並みを撮影して機材を片付けたところで始発のロープウェイが到着し、頂上を目指す登山客がたくさん入山してきたので、私はその便の下りに乗って下山しました。
初訪問だけに今回はかなり慎重に行動したので、体験できたのは山のほんの一部という所でしたが、必ず再訪してまた違う一面を見つけたいと思わされる魅力的な場所でした。
できれば今度は山頂で、より近い宇宙を眺める時間を過ごしてみたいと思います。