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クルージングヨット教室物語104

Photo by zenigame photo on Unsplash

「こんにちは!」

ラッコの皆が、ちょうどお昼を食べ終わった頃、アンドサンクから上野さんたちクルーが何人かで、ラッコのキャビンへ遊びに来てくれた。

「もう、お昼は食べ終わりましたか?」

麻美子は、上野さんに聞いた。

「一応、パスタとサラダは、もう船で食べて来たんだよね」

「そうなんですね、もうあんまり残ってないけど、キッチュとか食べますか?」

麻美子は、テーブルにまだ少しだけ残っていた陽子のキッチュをお勧めした。

「キッチュってすごいな。ヨットで出てくるようなお料理じゃないですよ」

「ここのオーブンで焼かれたんですか」

「ああ、これはね。香織ちゃんがお家で作ってきてくれたのよね」

麻美子は、アンドサンクの皆に答えた。

「お飲み物は、ビールで宜しいですか」

「はい」

「ワインもありますけど・・」

「ワインが良いな」

麻美子は、棚からワイングラスを出すと、上野さんに注いであげた。

「上野さん、ヨット教室って卒業式で卒業できないこともあるって本当ですか?」

瑠璃子が、上野さんに質問した。

「そうね、あまりに覚えの悪い生徒は、卒業証書は出せないかもしれないよ」

「そうなんですか、卒業できないと留年とかあるんですか?」

「留年は無いけど、受講した記録の卒業証書がもらえなくなってしまうよ」

上野さんが、冗談とも本気とも取れるような口調で、瑠璃子に答えた。

「そうなんだ」

「配属になった船のオーナーが、この生徒は覚え悪かったって思ったら、そうマリーナに報告するから、そうすると、その生徒さんは、卒業証書をマリーナから発行してもらえなくなってしまう」

上野さんが、瑠璃子に答えた。

「配属してる船のオーナーが、卒業できるかどうか決めるの?」

「だって、一緒に普段乗っていたオーナーじゃなければ、できるようになったかどうかわからないだろう」

「そうか」

「うちの船から誰か留年になる人いるの?」

瑠璃子は、隆に聞いた。

「いや、わからない。いるかもしれないよ」

「瑠璃ちゃんは大丈夫よ。留年は私だろうから」

雪が、瑠璃子に言った。

「大丈夫よ。うちの子は皆、留年なんかしないで卒業できるから」

麻美子が、皆に答えた。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


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