クルージングヨット教室物語104
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「こんにちは!」
ラッコの皆が、ちょうどお昼を食べ終わった頃、アンドサンクから上野さんたちクルーが何人かで、ラッコのキャビンへ遊びに来てくれた。
「もう、お昼は食べ終わりましたか?」
麻美子は、上野さんに聞いた。
「一応、パスタとサラダは、もう船で食べて来たんだよね」
「そうなんですね、もうあんまり残ってないけど、キッチュとか食べますか?」
麻美子は、テーブルにまだ少しだけ残っていた陽子のキッチュをお勧めした。
「キッチュってすごいな。ヨットで出てくるようなお料理じゃないですよ」
「ここのオーブンで焼かれたんですか」
「ああ、これはね。香織ちゃんがお家で作ってきてくれたのよね」
麻美子は、アンドサンクの皆に答えた。
「お飲み物は、ビールで宜しいですか」
「はい」
「ワインもありますけど・・」
「ワインが良いな」
麻美子は、棚からワイングラスを出すと、上野さんに注いであげた。
「上野さん、ヨット教室って卒業式で卒業できないこともあるって本当ですか?」
瑠璃子が、上野さんに質問した。
「そうね、あまりに覚えの悪い生徒は、卒業証書は出せないかもしれないよ」
「そうなんですか、卒業できないと留年とかあるんですか?」
「留年は無いけど、受講した記録の卒業証書がもらえなくなってしまうよ」
上野さんが、冗談とも本気とも取れるような口調で、瑠璃子に答えた。
「そうなんだ」
「配属になった船のオーナーが、この生徒は覚え悪かったって思ったら、そうマリーナに報告するから、そうすると、その生徒さんは、卒業証書をマリーナから発行してもらえなくなってしまう」
上野さんが、瑠璃子に答えた。
「配属してる船のオーナーが、卒業できるかどうか決めるの?」
「だって、一緒に普段乗っていたオーナーじゃなければ、できるようになったかどうかわからないだろう」
「そうか」
「うちの船から誰か留年になる人いるの?」
瑠璃子は、隆に聞いた。
「いや、わからない。いるかもしれないよ」
「瑠璃ちゃんは大丈夫よ。留年は私だろうから」
雪が、瑠璃子に言った。
「大丈夫よ。うちの子は皆、留年なんかしないで卒業できるから」
麻美子が、皆に答えた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など