1
/
5

クルージングヨット教室物語100

Photo by vlog tottiy on Unsplash

「え、卒業式って千葉まで行って、そこでやるの?」

香織は、隆から話を聞いて驚いた。

「クルージングヨット教室って、もう来月が卒業式なんだ」

麻美子は、ちょっと寂しそうに答えた。

「卒業式って、千葉のどこでやるの?」

「千葉の保田って漁港。観音崎の向かい側ぐらいのところにある港」

「観音崎の向かい側って、この間行ったとき本船航路を渡ったところ?」

「そう、だから館山よりはぜんぜん近いよ」

隆は、陽子に答えた。

「私たちは、ラッコで行くから良いんだけど、電車で卒業式に行く人って大変だね」

「電車で卒業式に参加する人なんていないだろう」

「皆、どこか自分の配属になったヨットに乗って、千葉まで行くさ」

「そうか、香織ちゃんもアクエリアスで乗っていくものね」

香織が、陽子に頷いた。

「私、卒業したくないな」

皆が、来月の卒業式の話をずっとしていたので、香代は心配になって麻美子に言った。

「あら、どうして?香代ちゃん、ラッコの艇長できるし優秀じゃないの」

「だって、卒業したらもうラッコに乗れなくなちゃうんでしょう」

「あら、そうなの?」

麻美子は、隆に質問した。

「え?いや、そんなことないよ。卒業したって、ラッコに乗りに来たって良いんだよ」

隆は、麻美子と香代に答えた。

「うん、大丈夫よ。例え、隆がだめって言っても、私が香代ちゃんのことヨットに誘うから」

麻美子は、香代のことを背後から抱きかかえながら答えた。

「俺、一言も香代に乗ったらだめなんて言ってないけどね」

「例えよ、例えって言っているでしょう」

麻美子は、香代のことを背後から抱きかかえながら、隆に言った。

「今日って、私もラッコに乗っても良いんだよね?」

「ああ、もちろん。だって、中村さんは用事があって、マリーナには来ないし、アクエリアスは出さないんだからラッコに乗るしかないだろう」

「だよね!」

香織は、嬉しそうに隆へ返事した。

「それじゃ、俺らは、ポンツーンでラッコが降りてくるのを待っているから、香織は麻美子や香代と出航の準備をして、クレーンで下ろしてもらって、ポンツーンまで回してもらえるか」

「わかった」

「ポンツーンに来たら、舫いロープは受け取ってあげるから」

香織、麻美子と香代は、出航準備するためにラッコへ行った。


作家プロフィール

主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など


美奈 とマリさんにいいねを伝えよう
美奈 とマリさんや会社があなたに興味を持つかも