「また横断する時って本船航路を渡るのよね」
「渡らないよ。本船航路っていうのは、横須賀の辺りから東京の有明とか幕張の手前ぐらいまでの区間をを本船航路と呼んでいる場所だからね」
隆は、麻美子に答えた。
「それじゃ、本船航路は通らないから安心なのね」
「いや、本船航路は横断しないけど、本船航路に入るための本線は、いっぱい走っているからね。それらの本船にぶつからないようには、ウォッチしないとだめだよ」
「それならば、私は、こちらの右側をウォッチしておくね」
麻美子は、隆に伝えた。
「香代、左の方向、あそこを見てごらん」
隆は、ラットを握っている香代に、左方向を指差しながら言った。
「え、何があるの?」
香代は、隆の指差した方向を眺めた。
「何あれ?」
「クジラがいっぱい、群れで泳いでいるんだよ」
隆は、香代に答えた。
波がざわついていて、そこをクジラの群れがたくさん泳いでいた。
「本船でもいるのかと思ってたら、クジラさん、かわいい!」
香代は、ラットを操船しながら、クジラたちを眺めていた。
「本当だ。すごい数のクジラが泳いでいる」
他の皆も、隆が指差した方向を眺めていた。
「アクエリアスからも、クジラの群れを見えたのかな」
陽子は、隆に聞いた。
「あの方向だと、アクエリアスからはクジラを見ていないかな」
隆は、陽子に答えた。
「香織ちゃんに、クジラを見たこと言ったらすごく羨ましがるだろうな」
「じゃ、内緒にしておこうか」
隆は、陽子に答えた。
「かわいそうだから、その方が良いかもね」
「でも、あのクジラたちってちょっと小さくない?」
「パイロットホエールって小さいサイズのクジラだからね」
隆は、陽子に答えた。
「大きいクジラはいないのかな?」
「大きいのは、東京湾にはあまりいないかな。いたら、本船とぶつかってしまうよ」
隆は、香代に答えた。
「たまに、東京湾にも大きいの迷い込むこともあるみたいだけどね」
麻美子が言った。
「大きいのは、小笠原とか行けば会えるよ」
「来年の夏のクルージングは、小笠原に行こう!」
香代が、隆に言った。
「来年の夏、小笠原諸島にヨットで行くのか、大変だぞ」
「ちょっと小笠原は遠くない」
麻美子が、香代に言った。
「八丈ぐらいまでにしておいて、運が良ければ八丈でもクジラに会えるよ」
隆が、香代に言うと、八丈で良いと隆に頷く香代だった。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など