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クルージングヨット教室物語12

Photo by Buddy Photo on Unsplash

今日のお昼ごはんは豪華だった。

「ただのパスタじゃないんだ、ラザニアまで付いているの」

隆は、ラッコのメインサロンのテーブルに並べられた料理を見て驚いていた。

「今日のお昼は、私が作ったんじゃないよ」

「麻美子の作った料理じゃないってことは、一目で見てわかった」

隆は、麻美子に言った。

お昼の時間、ラッコは、いつも貯木場に置かれている元横浜博覧会のイルカのプールに横付けしていた。ラッコがイルカのプールに横付けし終わると、キャビンの中では、パイロットハウスの一段下にあるキッチン、ギャレーに女性クルーたちが皆集まり、お昼ごはんを作り始めたのだった。

ちなみにラッコとは、隆が所有しているセーリングクルーザーの船名だ。

ラッコがイルカのプールに横付けしてから、しばらくすると同じ横浜のマリーナにヨットを保管している仲間のヨットたちも、次々とやって来てイルカのプールに横付けしていた。

ちなみにイルカのプールが置かれている貯木場は、横浜の金沢区にある周りを岸壁で囲まれた港内で、この場所が後に、横浜ベイサイドマリーナというアウトレットモールも併設された巨大なヨットハーバーに生まれ変わることとなった。

横浜ベイサイドマリーナに生まれ変わってからは、お昼を食べようと、マリーナ内のポンツーンにヨットやボートを停泊すると、マリーナ事務所に停泊料を払わなければならないが、横浜ベイサイドマリーナが完成する前の貯木場だった頃は、横浜のマリーナに停泊している隆たちのヨットが、お昼休憩で貯木場内に出入りして、そこに置かれているイルカのプールにヨットを停めようが、誰にも停泊料なんか支払う必要もまったく無かった。

隆たち横浜のマリーナに停泊しているヨットたちは、お昼の時間になると、よくここの貯木場にヨットを停泊して、皆でキャビンの中でお昼ごはんを料理して、船で飲んだり食べたりしていた。

「本当に、今日は豪華な料理だな」

隆は、改めてメインサロンのテーブルの上に並べられた料理に感嘆していた。これまでのラッコのお昼ごはんといえば、麻美子が自宅で作ってきたタッパーに入った料理をお皿に盛り付けて、テーブルに出して食べるだけだった。ラッコのキッチン、ギャレーには、せっかく立派な調理設備が一式揃った台所が完備しているというのに、それらは全く使われるということがなかった。

「ラザニアと一緒に、ミートパイも焼いたのよ」

中村陽子は、ラッコのギャレーに付いているガスオーブンを使ってパイを焼いていた。

「先週、ここのガスコンロの下にオーブンが付いているのを見つけて、焼いてみたくなったんだ」

陽子は、皆に自分が焼いたミートパイの味を褒められて、嬉しそうに話していた。

「オーブンって、こういう使い方するものなんだね。私も、ラッコにオーブンが付いているのは知ってたけど、どういう風にどんな料理を作ったら良いんだかわからなかった」

麻美子は、陽子に言った。

「海で魚とか釣れたら、魚を野菜と一緒にオーブンで焼くのも良いかも」

陽子が、麻美子に料理を提案した。

「夏になったら、1週間ぐらい使って伊豆七島にクルージングへ行くから、その時、海に釣竿を垂らして、魚を釣ろう。そしたら、その魚をオーブンで料理したら美味しいぞ」

隆は、陽子に話した。

「伊豆七島まで、このヨットで行けるの?」

「行けるさ。このヨットならば、行こうと思ったら、伊豆七島どころか世界中どこへだって行けるさ」

隆は、瑠璃子に答えた。

「それじゃ、今から夏休みに向けて会社の休暇を貯めておかなくちゃ」

「私、会社の有給休暇は使わずに、けっこう貯まっているから大丈夫」

年齢的にも、勤続年数の一番長い雪が、皆に行った。

「伊豆七島って、どこらへんまで行くの?」

「そうだな。まだはっきりとは決めていないけど、大島、新島、式根島ぐらいまでは行って来たいな」

隆は、陽子に答えた。

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