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【メンバーインタビュー】EMARFメンバーのVUILDで働く原点と作りたい未来

テクノロジーの力で誰もが作り手になれる世界を実現する建築系スタートアップVUILDは、自社サービスEMARFをサービス企画の側面からコミットしてくれるメンバーの募集を行います。そこで一緒に働くことになる人たちがどんな人で、どんな思いで仕事をしているのかを紹介しようと、メンバーインタビューを行うことにしました。CEOの秋吉浩気による、EMARFメンバーの戸倉一(デザイナー)、中西朱理(カスタマーサクセス)、守矢拓海(VUILD CTO)へのインタビューです。(本記事はnoteより転載しています)

<写真左>
守矢拓海 Takumi Moriya/VUILD株式会社CTO
1994年東京都生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科にて3Dモデリングと機械学習に関する研究に従事、同じ研究室だった現CEOの秋吉浩気の研究の補助を行い、そのときにShopbotを使ったものづくりに初めて触れる。2018年に修士課程終了後、VUILDに入社。最近好きなことは、見知らぬ街を散策すること。社内での愛称はモッピー。

<写真中央>
戸倉一 Hajime Tokura/デザイナー
滋賀県立大学院卒業。学生時代は竹で空間をつくることに携わり、2018年末にVUILDにジョインしてからは木と向き合っている。素材と加工の限界を知るべく、日々プロダクトづくり・空間づくり。コンピュテーショナルなデザインと思考が得意。マイブームは、素材×「曲げ加工」。まだ発見されてないエクストリームなモノと空間を開拓していきたい。最近の趣味は音楽の打ち込み。

<写真右>
中西朱理 Akari Nakanishi/カスタマーサクセス、一級建築士
1992年大阪生まれ。京都工芸繊維大学、大学院で建築を学ぶ。2017年に設計事務所に入社し、4年間こども園や保育園の設計に携わる。その後、ポルトガルのポルトに滞在しながら、サステナビリティの観点から参加型デザインや建設手法を学び、エコファームで自給自足の暮らしを体験して2022年に帰国。帰国直前に募集をしていたVUILDに惹かれて入社。

EMARF事業部が今、求めるもの

戸倉 今日は秋吉さんから僕たちへのインタビューですが、その前になぜ今、EMARFの事業推進・事業開発のメンバーを募集するか、教えてもらっていいですか?

秋吉 そうですね。VUILDの創業前には、1000本ノック的に100人以上の方の家具づくりを支援してきました。1時間でその場でデザインして、その場でデータをつくって、その場で部品を削り出して完成させるといった職人芸をやってきたわけだけれど、それだと属人的なやり方すぎますよね。だからテクノロジーによって、誰でも同じことができるようにとEMARF事業を立ち上げました。特殊な知識や経験はないけれど作りたい人と機器の間を、テクノロジーを地道に開発すればつなげられると信じているし、やってきているし、この先もやっていきたいと思っています。


EMARFを使えばオーダーメード家具を安価に作れると、今の時点でもイノベーター層はおもしろがって使ってくれている感触があります。現状だと設計データを入稿できる人しか使えなかったり、手厚いサポートが必要だったりという課題もあるけれど、0→1のフェーズはできたと考えてもいい。これからは、キャズムを越えて多くの人に使ってもらう方法や、誰もが家具などを自分で作る世界を当たり前にするために、仕掛けを考えていくべきフェーズだなと思っていて。EMARFにChatGPTを活用するなど、試行錯誤しながら開発をしていますが、開発の方向性も、広げ方も、仮説検証を繰り返してきちんと考えていきたいから、新しく参画してくれる人が並走してくれるといいなと考えて、募集をすることにしました。

EMARF事業部3人の「今」

秋吉 それでは今日の本題に入ろうと思います。新しくEMARFにジョインする人に、どんなメンバーがいるチームなのかを知らせたいので、まずは今EMARFでやっていることを教えてください。

守矢 EMARFができるまでは例えばスツールを作りたいと思ったら、CAD上でモデリングして、それを2Dデータに書き出して、木材加工をするためにCAMを通して各種加工条件や工具交換などのコード、ツールパスを自分で計算して書いて、それをShopBotなどの加工機に読み込ませるという、多くのステップが必要でした。それをEMARFでは、モデリングしたデータを特別なファイルに書き出したりする必要もなく、ツールパスを出すところまで自動で計算でき、しかも見積もり金額も出せるようにしています。僕はEMARF事業部でそのEMARFのシステム開発を担当しています。

先日はChatGPTを使うことで、CADが使えない人でも自分で好みの家具を作れる機能をEMARFに追加しました。もともとEMARFは読み込んだデータを各種のパラメーターで調整できる機能がありますが、最初に入れる数値をChatGPTが自動生成して表示する機能です。「シュッとしたスツールがほしい」と書き込めば、ChatGPTが考えた「シュッとしたスツール」になるように座面の幅や各素材の丸み等や長さなどを調整して自動生成します。まだできることが限定的なので、これをもっと使いやすい形に変えていきたいと思っています。

中西 私の現在の仕事はカスタマーサクセスで、一番多いのはユーザーさんとやり取りするフロント業務です。ユーザーさんからオーダーが来た時にコミュニケーションをして、ShopBotの拠点さんに実際の木材加工を依頼するような受注管理の仕事をしたり、ユーザーさんにヒアリングしてEMARF体験をお聞きして、それをチームのみんなに共有したり、EMARFの開発に関係する指摘であれば守矢さんに伝えて改善相談をしたりしています。そのほか、戸倉さんとはオープンラボを開催して、ユーザーさんとの接点を作る仕事をしています。ユーザーさんが自分で作るのがもっと楽しく円滑にできるように支援するというユーザーサイドのことと、裏側で何をすればもっとうまくいくかを支援する開発サイドの繋ぎ役をする仕事です。

戸倉 僕の仕事は、以前は設計サポートがメインでしたが、今はEMARFの開発のほうに移ってきています。EMARFはデジタルデータからリアルな物を作るサービスですが、そのリアルの部分が担当で、主に実験をしています。EMARFにどういう素材を取り入れれば新しいユーザーさんが開拓できるか、どんなツールがあればよりShopBotが使いやすくなるか、建築や家具だけではなく、もっと幅広く使っていただけるようにするにはどんなテクスチャーの開発が必要かを、実際に手を動かして作ってみることで検証しています。そして中西さんとオープンラボを実施してユーザーさんの感触を聞いたり、リアルな物を見ていただくことでタッチポイントを作ったり、必要な機能をモッピーさん(守矢さん)に要望を出したりしています。

VUILDに入社することになった原点

秋吉 今はEMARF事業部で仕事をしてもらっているけれど、そもそもなぜVUILDに入社したのですか? この仕事をする原点は何かを教えてください。

中西 子どもの頃、自宅が祖父が経営する鉄工所の上にありました。祖父は何でも自分で作る人で、退職したときに家をリノベーションしたいと言っていたので、祖父と子ども部屋を作ったんです。それまでは妹と12畳くらいの部屋を二人で使っていたのですが、どうしても一人部屋がほしかったんですよね。部屋を2つに分けて、下に収納スペースのあるベッドとそこに上がる階段を作ったんです。その経験が印象的だったので、建築家を目指して大学に入りました。

大学では設計の勉強をしつつ、幼稚園の絵画教室や小学校のまちづくりイベントなどの手伝いをしていました。子どもと触れ合うことが多かったので、卒業後は保育所や子ども向け施設に特化した設計事務所に就職しました。設計事務所の仕事は楽しかったのですが、当然ながら利用する子どもと一緒に設計することは難しく、大学時代に子どもたちと一緒にものづくりをしていた時の生き生きした感覚は持てませんでした。もっとみんなが参加して場所や物を作っていくような方法はないのかなと思うようになって、ポルトガルに留学し、参加型のオープンスペース作りや、みんなが使いやすいマテリアルなどの勉強をしました。

ポルトガル留学が終わって帰国する頃には、子どもも大人もみんながフラットにものづくりや空間づくりに関われるようにするためにはどうしたらいいのだろうと考えるようになっていたのですが、ちょうどその頃VUILDの「建築の民主化」という発想に出会って、私がやりたかったことと一致していると感じ、応募しました。

秋吉 まさに個人の動機と会社のビジョンが一致しているね。戸倉はどう?

戸倉 僕は高3のときは大学でロボットの研究をしようと思っていたのですが、浪人中に自分が本当にしたいことは何かとじっくり考える機会があって、ロボットの研究をしたかったのは小さな頃からレゴを使ってロボットを作ったり、作ったロボットを演出するための舞台を作ったりするのが好きだったからだと気づきました。であれば、自分の興味の対象は建物や空間、素材の組み合わせだなと思って、近場のおもしろそうな大学を探し、滋賀県立大学に進学しました。

大学院で研究していた2018年に、京都で行われていたSDレビュー(Space Designレビュー)という展示会で、入選作としてVUILDの「まれびとの家」が展示されているのをみました。SDレビューは設計者が建築を通じてどのように問題解決を導き出すか、その思考の過程をドローイングと模型によって示す場です。

その時はVUILDがデジタルツールを作っていることまではよく知らず、単純にかっこいいものを、見たことのない形を、見たことのない方法で、木材で作っていることに惹かれました。滋賀県立大学は地元の素材を使うことに熱心で、その影響で物流や流通に興味があったのですが、理想論では物流や流通で生活課題を解決する話はいろいろ知っていても、実際にやっている人たちを知らなかったんです。だから京都で「まれびとの家」を見て「自分のやりたいことはこれだ」と思いました。

秋吉 戸倉は仕組みや流通にもともと興味があったんだね。モッピーは? 改めて教えてください。

守矢 僕はよく2Dでスケッチを描いていたのですが、それがそのまま3Dにしてみたらとてもおもしろいなと感じていました。それで機械学習などの技術を使って2Dから3Dモデルを作れるのではないかと思って、大学で3Dモデリングや機械学習を研究することにしました。

大学に進んだら、同じ研究室に修士1年生の秋吉さんがいました。その研究室では、学部生は先輩のプロジェクトをお手伝いすることで学ぶ仕組みがあって、僕は秋吉さんのプロジェクトに参加させてもらいました。そこで初めて自分でCADやイラストレーターを使って家具のモデリングを行ったり、ShopBotで加工を行ったりする経験をしました。その後も秋吉さんのプロジェクトを手伝ったり、3Dモデリングや機械学習の研究をしたりしながら修士に進むなかで、VUILDに参画しないかと誘ってもらいました。

研究室でやっていたことがそのまま仕事としてできるのはイメージがしやすかったですし、興味のあることを突き詰められるなと思って、ジョインを決めました。

秋吉 大学1年生からずっと一緒にやってくれてるよね。改めて頼もしい。

思い描く「理想の未来の社会」とVUILDとの重なり

秋吉 三人とも、個人的な「理想の未来の社会」と少なくとも一部は重なる部分があるから、今VUILDで仕事をしているのだろうと思うんだけど、どんな理想の社会を思い描いていますか? それとどんなところがVUILDは重なりますか?

中西 「建築の民主化」というVUILDの描く未来に共感しているので、理想の社会は私個人のものとVUILDの物は共通しています。EMARFのカスタマーサクセスの仕事でユーザーさんとやり取りし、それを受けてEMARFの開発をこうしたらもっと喜ばれるんじゃないかと守矢さんに相談したり、戸倉さんとワークショップをしたり、ユーザーさんのネットワークを広げていったりしていますが、こうすることで今は物を作ってほしいと依頼する人と、作る人という一方向しかない関係性が、設計者もお客さんももっと自由な環境、関係性で物が作れるようになるんじゃないかと考えています。

それから、これは個人的な夢としてやりたいこともあります。もともと設計をやっていて、今はカスタマーサクセスの仕事をしているのですが、両方を掛け合わせて、自分の家や庭をDIYで作り、そこをみんなに開放して、子どもなどにきてもらって工作教室をやりたいですね。]


秋吉 やったらいいと思うよ。むしろぜひやって。戸倉はどう?

戸倉 物を作る、作ってもらう双方がお互いを理解し合う、「物作りのリテラシー」がある未来が作れたらいいなと思います。
今EMARFの仕事の関連でワークショップを行ったり、設計サポートやEMARFの開発支援をしたりしていて思うのですが、自分で物を作る人が増えることで、実際にものづくりをしている職人さんなどに対するリスペクトが生まれるなと感じています。

物作りにはコストがかかるし、思わぬ失敗もありますが、すでにできた物を単に買うだけだと、コストや失敗に思いを馳せにくいですよね。EMARFは、完璧な完成品をつくるものではありません。EMARFで入力したデータを使ってShopBotという加工機が作動して木材を切るんですが、切り出された木はやはり切りっぱなしでケバがあり、自分で繊細な処理を行わなければ家具などにはならない。つまり、ユーザーは材料と製品の間のような状態に触れることができます。市販の組み立て家具のような完成品を期待されるとEMARFは希望に合わないけれど、その生の素材感を楽しむようなコミュニケーションができたり、コミュニティを作ったりすれば、社会のリテラシーを上げていけるなと感じています。

秋吉 COOの井上さんも、先日のインタビューで「物作りのリテラシー」に近い話をしてたね。ちなみにマジレスすると、受動的なリテラシー(知識)という言葉よりは、より能動的なコンピテンシー(経験)という言葉の方がしっくりくるかもね。モッピーはどうですか?

守矢 最初は大きなビジョンを掲げてEMARFを開発してきましたが、自分の想像・想定した人々のふるまいや希望と、実際の人々のふるまいや希望が乖離していると感じています。だから、まずは人々を理解したいし、社会のふるまいを理解したいという思いが強いです。その上で、僕は手計算でやると大変な手間と時間がかかるものが、プログラムを組めば一瞬で解決できるという点にプログラミングやコーディングのおもしろさを感じています。だから、今あるさまざまな課題をコンピューターの力を使ってどんどん解決できる未来になったらうれしいですね。EMARFはまさにその未来に繋がっています。

秋吉 ずっとEMARFの開発に関わってくれているからこその言葉だと思いました。3人の原点と思い描く未来、今やっていることがしっかりつながっているのがわかってうれしかったです。新しくジョインする人もまた別の形でVUILDとしっかりつながる人に来てほしいですね。

TEXT:フェリックス清香

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