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これからのWebディレクターに必要なもの【ディレクター横山】

※ この記事は https://magazine.unionnet.jp/special/interview/director01 からの転載となります

ユニオンネットの丸山です。

デザイナーとエンジニアの対談に引き続き、今回はクライアントワークの前線で戦うWebディレクターへのインタビューを実施しました。

この業界に興味を持ったキッカケやクライアントワークの中で大切にしていることなど、Web制作の上流工程に携わるディレクターならではの声をお届けしたいと思います。

横山:細やかな対応が強みの熱血キャラ。小物好きの収納上手。
丸山:広報(インタビュアー)

業界経験とこれまでのキャリア

丸山:
今回は横山くんですね。宜しくお願いします。

横山:
お願いします!

丸山:
じゃあ、まずはじめに業界経験についての質問。横山くんは確か、芸大出身よね?

横山:
はい、大阪芸術大学の映像学科です。実は始めは映画監督になりたくて・・・。ただ実際に入学してみると、天賦の才というか、個人としてのバックグラウンドというか。能力の初期値の差に圧倒されてしまい、すぐに心が折れてしまいました。その中で「この人達と戦うのは辞めよう」と思い、フィールドを変える選択を取りました。何ができるか?を自問自答をしていた時、自分の周りの「面白いけどくすぶっている人達」を世間にもっと知って貰えたら楽しいだろうな、と思うようになりました。

広告の業界に興味を持ち始めたのはそれからです。

丸山:
「裏方から支援していこう」って事ですね。

横山:
良く言えばそうなりますかね笑 広告でもCMや映像制作を目指していたので、就活でも苦労しました。「アシスタントディレクターは下積みが長い」「希望した部署に入れない」そんな話を聞けば聞くほど、迷走していました。
実はその頃カラコンの専門店でアルバイトをしていたのですが、そのお店が途中でECサイトを立ち上げました。商品管理や受発注の梱包作業をやっているうちに「インターネットで商品の魅力を伝えるって面白い。」と思い、卒業のタイミングも重なり、結果的にはその会社に就職しました。

丸山:
おぉ、インターネットにハマる人の典型。

横山:
そうですね。ただ当時の自分には”学べる環境”への理想が強く、入社半年足らずで制作会社に転職しました。自分としてはその2社目での経験が今の自分の礎になっているように思います。そこは代理店仕事が多かったのですが、自分は社長直下でディレクション業務をサポートしつつ、Web広告の運用や経理事務も任せてもらっていました。

丸山:
広告の運用と経理も?ってことは、お金の管理も一緒に???

横山:
実はそうなんです。広告の運用は多い時では20件ほどやっていて、請求書の発行や入金確認もやっていました。もちろん平行して提案書づくりや既存案件のディレクション業務も行っていたので、毎日がトライ&エラーの繰り返しでした。報連相や資料づくりなど仕事の所作には厳しい社長で、ほんと何度怒られたことか。。。ただ、その社長は作業のミスには一切怒らない社長で、どんなミスをしてもいつも代わりに謝罪に行ってくれて、何でも挑戦させてもらえる社長でした。

丸山:
それは、かっこいい。若い時に尊敬する上司と出会えると、割とその後のロールモデルになるよね。

横山:
それはありますね、ほんと。意識や審美眼にもこだわりが強く、今でも尊敬する人です。何も知らない・何もできない第二新卒の自分にあれだけの裁量を与えてくれたことには感謝しかないです。結果、そこでは3年ほど働きました。その後は自分の「なんでも屋」気質を脱却するために転職するのですが、実はその辺りからちょっと失敗続きで。。。職種に憧れて転職すると入社後にその職種が存在しなかったり、人に憧れて入社すると仕事内容でミスマッチが起こったり、自分の優柔不断さで会社を転々としてしまいました。

丸山:

ユニオンネット入社の背景、自身のビジョン

横山:
そんなこんなでユニオンネットに入社したわけですが、入社の背景は「世間に出せる実績が欲しかった」ことです。

丸山:
それは、代理店仕事や下請けではない「一次請けの仕事」がしたかった、てこと?

横山:
はい、そうです。担当者間でどれだけ良い内容になっても、その後のハンドリングができない事に憤りを感じていました。提案書までが自分の作品で、アウトプットした段階では自分の作品ではない感覚がずっとありました。
また“お客さんの顔が見えない”ことも理由に挙がると思います。やり取りの対象がクライアントではなく代理店になると、PR〆切までのスケジュール調整やタスク管理に目が行きがちだよな、と。お客さんは本当に満足してくれているのか、反響はどうだったのか。フィードバックはもらえないし、聞かないと教えてくれない。そういう気持ちが強くありました。もちろんこれには自分自身の未熟さも大きく関係すると思っていて「代理店仕事」を言い訳にしているところもあると思います。

丸山:
”〆切までのスケジュール調整やタスク管理を徹底する”のはビジネスとしてはド正論だけど、実際に働く側からすると“それだけ”だと気持ちは後ろ向きになるよね。率直な意見がもらえないと成長機会がないようにも感じやすいし。一次請けの仕事、世間に出せる実績として今後作りたいものはあるの?

横山:
ブランドやサービスの立ち上げをやってみたいです。自分たちは売るものは作れないので、PRするためのノウハウを考える役割を担いたいですね。「こういうお客さんに売りたい。」「じゃあ、どんな見せ方が良いだろう?」「提供後にはどんな体験をしてもらいたい?」など、企業・サービス・商品・ツール・書類・・・、エンドユーザーの手に渡る瞬間までのブランド作りをしたいと思っています。これは自分が色んな所で言ってることですが、メフィラスさんのFELISSIMOとかはかなり理想的です。

丸山:
あぁ〜、分かる。「企業の内部に入り込んで提案する」って口で言うほど簡単じゃないしね。ましてや最後まできちんと品質を担保してアウトプットするなんて、余程の信頼や自力がないと難しいと思う。

横山:
ほんとそう思います。もちろんそのためには「目的達成に向け、何をしなければならないのか」を常に考えていたいですね。それは自分たちがWeb制作会社であっても、目標達成の最適解が必ずしもWebでないのであれば、オフラインの提案も然るべきだと思いますし。立場としては「お客さんの広報部の1人」になることが理想じゃないですかね。

丸山:
横山くんは元々映画やCMに興味があった影響か、タッチポイントに対する意識が高いね。

横山:
世に放った瞬間のインパクトやユーザーの手に渡った時の印象など、「誰かの記憶に残るような仕事がしたい」のは大きいですかね。好きなCMや思い出に残っている映画って、誰でも1つはあると思うんです。自分も広告の仕事をしているなら、そんな「語り継がれる作品」を生み出してみたいなー、と思っています。

丸山:
“残る”で言えば、採用サイトでのタグラインとかは愛着を持ってずっと使ってくれたりすると嬉しいよね。ちなみに・・・その目標を達成するために、今自分が抱えてる課題とかは?

横山:
実は自分はずっと1人の部署が多くて、チームで仕事をした経験があまりありません。自分の仕事は自分で完結するのが当たり前で。今までは自分の考えや自分の心地良いスピード感で仕事を進めていたけど、チームでいくつかの目標を達成しようと思うと“それだけじゃダメだ”と思うようになりました。「早く行くなら1人で行け」ですが「遠くへ行くならみんなで行け」だと、改めて気付かされました。こういった共働することやチームをマネジメントすることは、これからのキャリアとしても求められる事なので楽しみながら挑戦していきたいと考えてます。

丸山:
ふと思ったけど「誰かにきちんと教えてもらったわけじゃなく、自己流でやってきた人」って、この業界には結構多い気がする。

横山:
自分もこの業界に入った時はどこの会社も環境にはあまり目を向けていない印象でしたし、自分もそこを重視していなかったのはあるのかも知れません。ただ、だからこそ自分のような“昭和の育ち方”ではなく、再現性のある教育環境も必要だと思っています。

これからのディレクター職ついて思うこと

丸山:
この流れで次の質問。
そんな横山くんが「これからのディレクター職について」に思っていること・感じていることを聞きたいです!

横山:
なかなかハードルの高い質問ですね笑 そうですねぇ…、先程の表現と似ているのですが、これからのディレクターには「できることを考える」のがより重要になると思っています。自分たちの仕事は広義的に言えば「広告」、自分たちはその中の「Web」領域に特化しているだけの話です。課題解決や目標達成の手口は無数にありますから。その領域の特化が普段クライアントワークをしているとリスクヘッジという都合の良い解釈で「できない」となってはダメだと思うのです。
与えられた状況の中から何ができるのか。最短・最速の施策を考える。” 今でもそうですが、これがより一層ディレクターには求められる役割だと思っています。

丸山:
オムニチャネル的な視点を持つ感覚ですかね。確かに自分たちの業界には素人革命や異業種参入も頻繁に起こるので、初動や初速は重要ですよね。

横山:
そうです、そうです。たとえば、動画の話って打ち合わせの場でよく盛り上がるじゃないですか。でも大半は予算の関係で実現しないことの方が多いですよね。もちろん「中途半端なものは出せない」見解から実現しない結果なのですが、これは「それなりの予算をかけないと品質を担保できない」固定概念とも言い換えられます。なのに、世間にはスマホ1台でも驚くような映像を撮っている若者がたくさんいます。きっとスマホネイティブ世代なら「自前のスマホでも品質を担保できる」考えになると思うのです。

丸山:
品質に固執して初速に足元をすくわれる、のは結構ありそうですね。

横山:
当然バランス感の問題ですが。流行を日常的に取捨選択して自分の手数を増やすことも必要だと思っています。反面、過去の歴史を学ぶことも重要だと考えています。「今の世の中で起きることのほとんどは、過去の歴史の中で起きている。」と言うじゃないですか。代理店の人達と仕事をしていた時にこの辺りの知識不足は痛感しました。興味の範囲が圧倒的に違うな、と。

丸山:
それはあるね。現代向けに改変された内容に触れるよりも「原理原則を知る」のは、経営者の中ではよく言われるよ。

横山:
あとは何と言っても実際の「経験」が一番ですよね。昔にバスツアーの提案を行った時、自分がバスツアーを経験したことが無くて利用者の気持ちが分からなかった時があります。窓から見える景色や窓に吹きかけた息が白く曇るなど、体験しないと分かり得ない状況は結構多いと思います。興味や関心って年齢と共に狭くなっていくと思うのですが、これはディレクターにとってはなかなか致命的だなと。

丸山:
なるほどね。確かにうちの場合は企画・提案もディレクターが担っている分、現場で戦う用の経験のアンテナはマストやね。

ユニオンネットの良いところ・悪いところ

丸山:
横山くんの経歴や持論を聞いたところで、うちの会社の事にも少し触れてもらうかな。横山くんから見て、今のユニオンネットの「良いところ」「悪いところ」。率直に聞いてみたいです。

横山:
良いところで言えば「風通しはかなり良い」ですね。良い意味で社長や役員の高さを感じないです。これまでの会社であった「言ってもどうせ聞いてもらえないから、言わないでおこう。」がないです笑この風通しが良いことで自分が意見を言えるメリットもあるのですが、それよりも自分とは経験値が圧倒的に違う人からの意見が貰えるのは何よりも新鮮ですね。やればやるだけ反応がある分、周りの成長も感じやすいです。仕事環境で見るとバイタリティのスイッチが点在している感覚で、それが面白かったりしますね。

悪いところは「距離が近すぎる」ところですかね。どっちやねん!な意見ですが、自分の意見をしっかり持っていないと要望と愚痴の垣根がかなり曖昧になってしまいます。距離が近い分、つい答えを求めてしまい自分の介在価値が無くなってしまう恐れもあります。

丸山:
報連相のルールやドキュメントの管理。マネジメント周りの環境づくりにはまだまだ問題山積みやなぁ。

横山:
そうですね。そういうところ含めて、自立する意思がないと「事なかれ主義」な働き方になってしまうなと感じています。

どんな人がディレクターに向いていると思う?

丸山:
組織課題・・・この辺りは頑張ります。自分の仕事なんでっ!
では、最後の質問。今横山くんがやっているディレクション業務について、横山くん自身はどんな人がディレクターに向いてると思いますか?また、どんな人と働きたいと思っていますか?

横山:
これはあくまで自分の考えで、これが全てではないのですが

  • 自分ごと化できる人
  • 報連相ができる人

この2点はマストだと考えています。どちらも当たり前過ぎるフレーズですし、ディレクターだけに限った話ではありませんが。ただ、任せられた仕事に対して「なぜ自分がこの作業を行うのか」「なぜ実現できたのか・できなかったのか」を考えることは、責任を持ってやり遂げられるかどうかに繋がると思っています。クライアントワークにはここが特に求められると思っていて、仕事の大小に関わらずお客さんの情報を預かることは「企業の信頼」を預かっている事と同義だと思うからです。相手の立場になって物事を考えるには、あらゆる事象に対して自分ごと化する必要があると思うのです。

とは言え、どんな頭でっかちなことを言っても「報連相」ができないと意味がないです。これもただ「報連相を徹底する」という手段にとらわれず、物事を俯瞰的に捉え・要点を理解し・的確に伝えることが重要だと考えています。日々現場業務に追われるお客さんに”今”売上には直結しないサイト制作の連絡をしても優先順位は低くなります。これは極論ですが、その状況下では「お客さんはメールを読まない。」と思っています。ただ、このマインドだと読まない前提なので、メールを作る際にも「読んでもらうメール」を作るようになると思うのです。この辺りの認識がズレ始めるとメールを送った/送っていないの押し問答になるな、と。

丸山:
伝わってない、理解してない、は「言ってない」と同じよね。

横山:
お客さんに責任転嫁するのは簡単ですからね。クライアントワークって周りから見ると面白そうに見えるのですが、実際は「面白さ1:雑務8:楽しさ1」だと思っています。初回の企画と提案が「面白さ1」。そこからお客さんの色んな部署に情報を聞き回り、社内でもデザイナーやエンジニアに確認を取り、集まった情報をまとめて双方にお知らせして・・・全ての仲介役としての「雑務8」。そして最後の公開時のワクワクを含めた「楽しさ1」。
始めに立てた企画を最後まで成立させるための苦労がほとんどで、その精度が疎かになると全てが崩れてしまいます。これには当然うちが最大限の努力をすることも重要ですが、同時にお客さんにも本気になってもらう必要があります。だからこそ、間の雑務での「報連相が大事」だと思うのです。

丸山:
本当そう。1つの案件を「完璧にやり切る」って難しいよね。

横山:
Webサイトは公開してからがスタートと言うように、ディレクターの仕事は契約してからがスタートですから。そのためには自分自身がもっと先が見える人にならないとな、と思います。どんな厳しい状況でも”笑っている人”いるじゃないですか?あ、良い意味の方ですよ。

丸山:
いるね笑

横山:
あれは次の一手が見えているから笑えると思ってます。五里霧中の状態では笑えないですよ、普通。ディレクターの仕事にマルチタスクは付きもので、手持ち案件が増えれば増えるほど忙殺されやすいのですが、そこも先が見通せていないとただ苦しいだけですよね。自分自身のパフォーマンスを向上させるためにも、常にリスクヘッジをすることや報連相の徹底は心掛けていたいですね。見方によっては華やかに見える職種かも知れないですが、実際はGメールとChatworkとスプレッドシートしか使ってないですからね笑

丸山:
確かに笑
地味なこと・当たり前なことこそ”きちんと”したいですよね。ありがとうございました!

まとめ

クライアントワークにおいて、お客さんとのやり取りが最も多いディレクターのポジションですが、その影では繊細な進行管理が求められます。コロナ禍になり商談の機会がオンラインへ移行し、ビジネスにおけるWeb戦略の活用も日々進化しています。

ディレクターには企画職の一面もありながら、営業職の一面もあります。様々な業務が入り乱れる職種だからこそ、様々な経歴を持ったディレクターがいます。

今回のスタッフインタビューがこれからWeb業界で働きたい方、ディレクターを目指したい方の参考となり、また業者選定を行う企業様にとってのキッカケとなることを願っています。

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