今回お話を聞くのは、大手証券会社を経て、現在執行役員でありIS事業本部長を務める齋藤 智芳さんです。高校生のときに甲子園へ出場し、大学まで野球を続けていた彼の社会人ヒストリーに迫ります。
野球より厳しいものはあるのかという好奇心
ーー本日はよろしくお願いします。齋藤さんの今までの経歴を教えてください。
新卒で日系証券会社に入社しました。主に企業オーナーや個人のお客さまに対し、資産運用はもちろん、資産管理、資産・事業承継などお客さまが抱えている課題を解決に導くコンサルティング営業を行っていました。
とても華やかな仕事をしているように見られますが、1年目の業務は新規開拓で毎日テレコールと飛び込み営業をしていた記憶しかないです(笑)1日200件のテレコールや、100件の飛び込み営業は日常でした。
証券会社は、想像どおり結果が重視される世界でした。
私の上司は、私がやりたいようにやらせてくれる方だったので、会社のルールに縛られずに結果を出すためどうすべきかを考えて行動していました。朝礼に参加せずに新規開拓したり、移動時間をなくすために、支店長のみ利用できる運転手付の車を自由に使わせてほしいと支店長に進言したりしていましたね。
ーー新卒で証券会社へ入社したのはなぜですか?
営業力を身につけたかったからです。営業とはいっても有形サービスではなく、無形サービスの営業をしたいと思っていました。
極端な話なのですが、ビールが飲めないひとに対してビールの魅力を伝えても好きになってもらうことはほぼできないと思うんです。ただ、有形のものを扱わない営業であれば「自分の頑張り次第でどうにでもなる!」と考えていました。その中でも特に興味をもった業界が金融業界でした。
就職活動中は、周りの方から「証券会社は面接も就職後も厳しい」とよく言われていました。当時「大学まで取り組んでいた野球よりも厳しいものはないだろう」と思っていたので、どれだけ厳しいものなのかを経験してみたかったというのもありますね(笑)
ーー実際野球より厳しかったですか?
野球より厳しくはなかったです。テレコールも初めは嫌だなと思いながらやっていたのですが、続けてみるとゲーム感覚で楽しんでいました。テレコールはいろいろな人とつながれるので、知識もどんどん増えていき自分の成長を感じられました。
勉強はかなりしましたね。節税についてや取り扱っている株の企業についてはもちろんですが、お客様の住んでいる地域の歴史などもインプットしていました。お客様と話が広がりそうだと思ったことはすべて試してみて、次回会ったときにその話をしてました。
お客様の身を削って損をさせてしまったときは、勧めてよかったのかなと振り返ることもあり、厳しさを感じる場面もありました。でも、厳しさっていうとそれぐらいかなと思います。
お客様は本当にいい人たちばかりで、親のようなコーチのような存在でした。お客様は企業オーナーの方が多く、ビジネスにおける知見は私よりあるはずなのに、真剣に説明を聞いてくれました。私に投資をしてくれていて、ダメ出しもしてくれましたし、お金の重要性やお酒の飲み方などたくさんのことを教えてもらいましたね。お客様が私に時間を割いてくれているのはなんでなんだろうと思い、よく聞いていました。答えの多くは「過去に自分自身が同じことをしてもらっていたから」でした。だから投資してもらった分、私自身も成長したときには誰かに投資してあげないといけない、ということも教えてもらいました。
全く知見のないITという領域に挑戦
ーーキャリアチェンジしたいと思ったのはなぜですか?
数年前に「起業したい」と言っていた先輩たちが、4、5年働いているうちに子供ができたりして、野望を語らなくなったなと思っていました。
そういった先輩たちを見ていたら、証券会社の環境にいた場合の自分の成長曲線がイメージできてしまったんです。
その曲線を超えたいという気持ちはわかず、見えてしまったことにおもしろさを感じなくなってしまいました。
私自身、会社の看板で仕事をしているだけで、個人として何の価値もない人材だと思っていたこともあって、自己評価と周りからの評価のギャップを感じていたというのも一つの要因です。
自分の市場価値以上に対価をもらっていたなと今でも思います。
ーーキャリアチェンジする際に考えていたことはありましたか?
次にチャレンジしたい環境を思い浮かべたときに
・自分の市場価値以上のお金を貰わないこと
・東京のベンチャー企業で働きたい
・会社の仕組みや教育環境など整っていない企業で仕事がしたい
・自分は評価されないであろう世界で一から実力をつけていきたい
・苦手なITをやってみたい
・BtoBかつ成長企業マーケットでサービス展開している会社で働きたい
・ひとつの事業に集中している会社で働きたい
といろいろと考えていましたね。
ーー苦手なIT分野で仕事をしたいと思ったのはなぜですか?
今まで経験したことのない新しい分野にチャレンジできる環境を望んでおり、さらにその環境で成長したときにどんな景色を見ることができるのか、という非常に強い好奇心があります。そのため、金融系の知識や営業経験を活かせる得意領域ではなく、全く知見のないITという領域に挑戦することで新たな発見をしたかったからです。
ITは苦手というより、今まで避けてきたというか興味を持たなかった領域です。
当時、世の中の流れやお客様の事業を見ると、ITへの関わりが増していると思ったこともあり、そろそろ興味を持って取り組まないといけないと感じ始めていました。
新卒で就活をしていたときは、「金融で世の中を豊かに」というキャッチフレーズをよく見たように感じますが、証券のお客様と話しているなかで、お金よりもIT分野で困っている中小企業が多く、「ITで世の中を豊かにできる」ということに気づきました。
働くことで、世の中に何かしらのいい影響を与えたいという気持ちは変わらないです。
ーーUGに入社した決め手を教えてください
もともと須田さん(社長)と知り合いで、「証券会社を退職しようと思っている」と話をしました。
須田さんに話したのは、社長っぽくなくて相談しやすかったからですね。自分のイメージしていた「社長」は、自分で物事を決めて進めていく、というものでした。けれど須田さんは違ったんですよ。
須田さんと朝方まで飲んでいて、その場にいた他企業の社長からは「UGで働くのいいと思うよ」と言ってもらっていました。でも須田さんは違って、「知り合いの社長を紹介するからもっと他の企業も見た方がいいんじゃないの」って言ってくれていたんです。
そのときに本気で私のこと考えてくれていると感じましたし、須田さんは2社起業して成功している点でも信頼できて、一緒に仕事したいなと思ったので「雇ってください」とお願いしました。
須田さんからは「UGは社長の一存で決めれることはほぼないから今すぐ回答できないんだよね、ごめんね。次の日面談に来て。」と言われて、入社前に取締役の方々と面談しました。
面談の中で「そんな簡単な世界じゃないし、報酬もかなり下がると思うけどいいの?」と言われたのですが、まさにそんな世界を望んでいたため、UGで働きたいという気持ちが一層強くなりました。
コーポレートITとはなにか、具体的な仕事内容もほぼわからないまま入社を決めました。
ーーUGに入社してみて入社前のイメージとギャップはありましたか?
入社してすぐはベンチャー企業っぽくないと思いました。動物園みたいな組織と聞いていたけれど、みんなまじめで常識人だなって思いました。私のこれまでの生き方、考え方が独特なのでまともに見えたのかもしれないですけどね(笑)
動物園というよりは、コーポレートエンジニアの集団のため、困っている人(企業)を助けたいという共通の価値観があると思いました。事業を考えたら当たり前ですよね。
イメージとのギャップはありましたが、周りのメンバーに支えられてやりたいことに挑戦でき、私は運がいいと思いました。
入社前はコーポレートエンジニアとしてITの道を極めていくことを想像していましたが、実際はUGの中での役職や、AM(顧客責任者。契約に指揮命令者であり、現場メンバーとは別にお客様やメンバーの状態を把握し支援する)を多く経験することになり、今振り返るとギャップとなりました(笑)
人を巻き込んで動いていけば、自らの手で会社をつくっていける
ーー入社後から現在までどのような活動をしてきましたか?
入社して6年目になりました。振り返るとさまざまなことやってきましたね。
1、2年目:お客様先での稼働、内定者研修の企画運営
3年目:お客様先での稼働、マネジャー、AM、内定者研修の企画運営
4年目:上場にむけて予算必達という環境での事業部長、AM
5年目:IS事業部副本部長、ボンド運営、基幹システムの改修、セムコスタイル運営、AM、教育研修の改善
6年目:執行役員 IS事業本部長
ボンド=個人の成長にフォーカスした当社独自の学習グループ
セムコスタイル=セムコ社の経営手法をまとめた名著、「奇跡の経営」の著者であるリカルド・セムラー氏が提唱する「MAKE WORK AWESOME!!」な会社、組織、チームづくり
ーー苦労したことはありますか?
関係者へ情報をシェアして合意しながら進めていくことです。証券会社のときは必要最低限の関係者のなかで情報をシェアし、結果を出せばよかったので、プロセスを大事にするUGの仕事の進め方に慣れるまで時間はかかりました。
ですが、意識して進め方を変えると、「情報を全員に公開することは楽である」という気づきを得られました。
仕事を進めるうえでのスピード感は証券会社の方が速いのですが、UGで証券会社のようなスピード感を求められることは少ないということもわかりました。
証券会社のときは私の結果さえ出せればいいと考えて行動していたのに対し、今は約170人のメンバーで結果を出そうとしているので考える対象の規模も違います。約170人を対象としている今、プロセスをオープンにしながら進めていくことによって、よりよい結果になる実感もあります。
ーー現在の役割になり変わったことはありますか?
5年在籍するなかで、考慮する観点は増えたと思います。
意思決定をするうえで、情報をオープンにして進めるのか、限られた範囲のなかでスピード感をもって進めるのかは常に考えるようになりましたね。
また、さまざまな役割を担うなかで、人を巻き込んで動いていけば会社を自らの手でつくっていけるということに気づきました。
「一度決まったことは変えるべきではない」と以前は思っていましたが、決まったことでスタート地点に立てると思うようになりました。
約170人を見ているなかで「私の意思決定が1日遅れたら170日分遅れたことと同じ」と言われたことで、決めることにスピード感を持つことの重要性に気づかされました。
今はIS事業本部長という役割を担っていますが、いつでもこの役割を外れていいと思っています。役割はなくてもやっていけるという実感もありますし、また「シェアード社員」として働くのも楽しそうと思えます。
ただ役割から外れたタイミングは大きな転換点だと思っているので、今よりさらに努力しないといけませんね。
いつかは起業したいという考えもありますが、まだUGで得たいものを獲得しきれていないと思いますし、会社や関係するメンバーへの恩返しもしていきたいと思っています。
ーー齋藤さんにとって、UGはどんな存在ですか?
塾のような存在です。義務教育の学校ではなく、自発的に学ぶ塾のイメージですね。自分の好きなことをして、違うなと思うところは提案して改善していける。そのなかでまた課題がみえてきて、学びながら成長できる環境で自分のやりたいことに挑戦できる会社です。
UGのメンバーはUGという会社の色をつくっていると思います。それぞれ「原色」のように強い個性を持っていますが、なぜかきれいに混じり合っていて、汚くないんですよね。
ーー入社する方にアドバイスするとしたら?
UGは今年で17期目に突入しました。世間からみたら上場もし、立派な企業に見えるかもしれません。ただ、人間に例えるとまだ17歳です。まだまだ未熟でこれから数えきれないほどの困難や挫折を味わいながら成長していくんだと思います。その過程を一緒に楽しめるな!一緒に経験してみたいな!とワクワクしながら入社してきてほしいですね。