UDSでは、個性を活かし“自由に”働いているメンバーが多い。何がきっかけで自由を求め、どう自由を表現しているのか。
今回紹介するのは、ホテルマネジメント事業部 西木 奈央(にしき なお)。メディア企業の企画営業や個人経営のカフェを経てUDSへ入社。UDSでは、リラックスデザイン部で店長や新店舗の立ち上げを経験し、Uターン。産休・育休を経てホテルマネジメント部に異動と復職、現在はONSEN RYOKAN 由縁 札幌で働いています。運営・企画をする上で意識していること、UDSに根付いているカルチャーについて聞きました。
メディアやカフェを経てUDSへ
──これまでのご経歴を伺ってもいいですか。
大学時代にフリーペーパー作成に打ち込んでいたこともあり、新卒ではメディア系の会社に入社しました。職種は、広告・プロモーションの企画営業です。多業種の会社と関わり社会人としての基礎を学ぶことが出来ましたが、かねてより飲食業への思いがあり、3年ほどで転職しました。
学生時代から飲食のアルバイトや自分で調理をすることも好きだったので、思い切って栃木県へ移住し個人経営のお店で働き始めます。古民家をオーナー自ら改装した店舗で、朝から晩まで働くような日々でした。
そこでは接客だけでなく、店長業務、調理、イベント出店など、一通り経験しました。地元の人たちとお祭りを全力で楽しんだり、大きいイベントであれば、朝からスタッフみんなでハイエースに乗って、売って帰ってくることもありました。企画・イベントの進め方や形にするまでの力は、そこで身についたかなと思います。
給与は少なかったですけど、ストレスはなく楽しく過ごしていましたし、20代の一時を捧げていたのは今でも糧になっています。店長として多くを経験させてもらいましたが、今の夫になる人が仙台に転勤が決まって、私も仙台に行くことにしました。
──珍しい経歴ですね。そこでUDSに出会ったんですか。
そうです。仙台でUDSのリラックス食堂の求人が出ていたんです。いわゆる無味乾燥な食堂ではなく、かっこいい食堂を作ることを掲げていて応募しました。調理から、提供、企画まで全部やらせてもらい、そこでの運営を評価していただいて、神奈川のリラックス食堂湘南台の立ち上げも経験。そういったチャンスをくださったのは純粋に嬉しかったですね。
──札幌はどんな経緯で来ることになったんですか。
実は、私も夫も札幌が地元なんです。夫が先に札幌に転職を決めて、私もちょうど妊娠したタイミングで札幌に引越しています。女性が多い部署なので、理解を示してくれて早めにお休みをいただきました。その時は札幌にUDSの運営拠点はなかったのですが、ちょうど「ONSEN RYOKAN 由縁 札幌」が開業する話があり、出産後1年で復職しています。
スタッフの希望を素早く形にする
──「由縁 札幌」で働き始めたのは、立ち上げ後、運営が始まっていたタイミングですか。
そうですね。ホテルで働くことは初めてで最初は引け目を感じていたんですが、皆さんがフォローしてくれたり、私も貢献したい気持ちが強くて、気づいたらだんだん居心地が良くなっていきました。
おそらく、UDSが運営していないホテルだったら私は続いていないです。それくらい支配人の懐が深くて、未経験の私でも「今までの経験に重きを置いて一緒にやりましょう」と言ってくれたことが大きかった。
──今までの経験が具体的に活きている部分を伺いたいです。
運営では、マネジメント能力は生きているかなと思います。20代のスタッフが多い中で、チーム作りやマネジメントなど、各拠点で店長をしてきた経験が生きている。接客面では、スタッフの方が私以上にお客様と接していて、見習うところの方が多いです。
──マネジメントやチームを一つにしていく中で意識してることはなんですか。
フラットに風通しを良くして、相談しやすさを意識しています。小さな不満やトラブルの火をいかに早めに消せるか、さらには火が着かないように未然に防げるかが大切だと考えています。例えば、キャリアで「どうしていきたいか」や、企画で「由縁 札幌でこんなことやりたい」といった希望に対して柔軟に対応して、いかにアウトプットまでもっていけるかが大切。働いてる上で不安にさせないように、並走して導いていくようにしています。
また、フロントとレストランが密にできているのは由縁 札幌の強みかなと思います。一般的なホテルだと、フロントとレストランって距離が空きがちになってしまう。札幌では、私が飲食の運営をしていた経験も活かしつつ、企画や日々のコミュニケーションで繋がるようにしています。
──逆に、飲食と宿泊ではどんな違いを感じましたか。
UDSでは接客の指針の一つとして、「FRIENDLY & POLITE」を掲げています。もちろん同じお客様であることは変わりないですが、飲食はFRIENDLYの比重が大きく、宿泊はPOLITE寄りで礼儀正しさを求められます。
食堂ではお母さんみたいな目線で対応していたのが、宿泊では長く滞在されるお客様やリピートのお客様に対して、いかに居心地よくストレスなく過ごしていただけるか考えるようになりました。突発的な対応力や気遣いの力は身についたんじゃないかなと思います。
自分の好きと企画が繋がる
──企画では、どんなことを意識していますか。
「由縁 札幌」では、情報量の多い派手な打ち出し方はしていないです。素材そのもの、ありのままの良さをコンセプトに掲げていて、私たちが考える旅館らしい魅力を企画やイベントに織り込んでいるかどうかを大切にしていますし、そのためブランドのトーンに合ってるかどうかはとても意識しています。UDSの特徴として、ホテルの企画・設計段階でブランドを綿密に構築している。ブランドを壊さずに、運営や企画でどうアップデートしていくかを日々考えています。
スタッフがやりたいと言っていたことが形になることは嬉しいですし、外の会社さんと連携して新たな展開・企画をしていくのも楽しいですね。
──企画をやるにあたって、コンセプトに合うものをインプットしていくのか、仕事とプライベートが同じような感じで普段からコンセプトに合うものを見ているのかでいうと、どちらですか。
それでいうと後者かもしれない。地続きになっていて、あんまりオン・オフはつけてないです。以前食堂にいた時に比べ、取り入れようとする物が無意識に変わってきていて、あえて時間を作って集めるとかはやっていないです。何か物を見に行ったり新しい場所に行ってみる時も、自分の好きなことと繋がってるのかなと思います。
──好きが企画になるって良いですね。実際に好きなことが企画に移ったものはありますか。
個人的に眠りが大事だなと思っていたことと、「由縁 札幌」の温泉があり身体を整えるコンセプトを掛け合わせ、眠りの品を改善するプロダクトのお店にこちらからアプローチしました。昨年11月に養生をテーマにしたイベントを主催した際に、出店いただきました。今は、さらに大きな企画をしている最中です。
また、「お茶の土倉」という開業時よりお付き合いのあった札幌市のお茶の会社さんが新しくブランドを立ち上げており、由縁でマッチしそうと思いゲストへの提供から、常設で販売をしています。地域性も大切にしながら、小さな取り組みは日々行なっています。
──素敵です。ホテルって時間と共に価値が低減していく部分もあると思いますが、長く深く愛される理由って、そうしたアップデートが行われているからなのかなと思いました。
スタッフだけでなくアルバイトも各々やりたいことを自分で考えていて、ラフに意見をくれます。そういった素直さや動きの軽さは、働く上で居心地の良さにもつながっているかなと思います。
──施設の強みにブランドのアップデートがあるのは、日々の運営や会社のカルチャーとして発信しやすい土台があるからってことですよね。
企画の元は、「認知」「スタッフの挑戦」「地域性」
──企画の前段では、普段のインプットが大切になる。企画を考える上では、ブランドやコンセプトに沿っているかどうかを大切にしている。では、企画を形にする上では、どんなことを意識していますか?
費用の部分はもちろん見ますが、現状は収益をそこまで重要視していないです。まず多くの方に知ってもらうことであったり、各スタッフの成長やチャレンジにフォーカスしています。収益をあまりにも優先してしまうと、苦しくなってしまう。もちろん収益もついてくるのが理想なので、今後改善していきたい部分でもあります。
あと、地域性は大事にしてます。「北海道」も一つのブランドであるので、基本的に道産へのこだわりや北海道に由来があるものかどうかを意識して取り入れていますし、ゲストが手に取るものや目に入るものは選定や見せ方も気をつけています。
──大切にしてるのが「スタッフの挑戦」と「地域性」なのは、UDSらしいです。
その辺は昔から会社に根付いていて、変わらず残していきたいと思っています。
──スタッフの意見が形になった企画は何かありますか。
直近だとアニバーサリープランですね。デザインに凝ったメッセージカードや日持ちもする持ち運びしやすいフラワーボックスも導入してくれました。また、今は全国の由縁3施設を周遊する仕組みや、統一の物販を形にしたいと考えたりしてくれています。
──スタッフからアニバーサリーのプラン提案があるって、お客様のことを本気で考えてる感じがして嬉しいですね。
そうですね。最前線に立ってるとゲストのニーズがわかるだろうし、アンケートや口コミを見て大小さまざまなことを改善してくれています。
──まちにも、スタッフにも愛されている施設なのが伝わってきました。
嬉しい限りです。先日、私の友人が家族で泊まりに来てくれた際に、小学校低学年の娘さんがとても気に入ってくれて、「由縁 札幌」がホテルの基準になっていると言ってました。彼女の基準を満たした宿を探すのが大変だと、ありがたい苦情を頂いたことがあります笑。今後も多くの人に愛されるよう、日々アップデートしていけたらと思います。