「まちの合間に、いつもある、いつもの居場所」というコンセプトのホテル、『all day place shibuya』。渋谷の日常に溶け込んでいて、併設のコーヒースタンドやビールスタンドは地元の方にも利用されています。
自動チェックインの導入や、ホテリエ×ラジオパーソナリティなど、新しいホテル運営に挑戦。スタッフの伴奈里美(ばん なりみ)さんと山下悠大(やました ゆうだい)さんに、業界を変え得る取り組みについてお伺いしました。溢れ出る人柄の良さと、スタッフ同士の仲の良さが伝わるインタビューとなっています。ぜひ最後までお楽しみください。
渋谷のパブ
──東京にありながら、まちの雰囲気を感じられるホテルになっていますよね。
山下:渋谷の真ん中にあることで、街の方と繋がれたり、街を深く知れる場所になっていると思います。インバウンドの比率が8割ぐらいあって、業務も単なるチェックイン・チェックアウトよりかは、コミュニケーションを楽しみながら、ディープなスポットの紹介などをしています。
──ここ数ヶ月の稼働率が100%に近いとお伺いしました。すごい数字ですが、ゲストは地域との繋がりや居心地の良さみたいな部分に惹かれているのでしょうか?
山下:ホテルのコンセプトはパブリックハウス(パブの語源)なので、1階にバーや食事処があり、2階以上がホテルになっています。海外では馴染み深いスタイルということも、来てくれる理由の一つかもしれないです。テラスで飲んだり、東京マラソンの時はゲスト同士で仲良くなってハイタッチしてましたね。
──それだけではここまで人気にならないはず!他に何かありますか?
伴:SDGsの取り組みも好感を持っていただいてます。泊まるゲストが未来も旅行に行けるような取り組みをしていこうと、開業前から考えていました。竹の歯ブラシや、チューブではない紙の歯磨き粉。コースターも廃棄された洋服を再利用したものです。
季節の行事にもSDGsを絡めた取り組みをしています。クリスマスには、開業当初に使用していたティッシュケースを再利用して、アドベントカレンダーを作成。開けると日本の駄菓子が入っていて、海外の子供達はとても喜んでくれました。
──継続した取り組みがあるのはいいですね。
アルバイトスタッフが企画や手伝いをしてくれて、正月にはおみくじも作りました。誰でも企画ができる環境で、すぐに形にできます。
自動チェックインで生まれた時間は、ゲストとのコミュニケーションの時間に
──UDSのホテルは空間の魅力だけでなく、接客も含めてゲストから愛されている印象があります。
伴:ゲストを助けてあげたいとか、人のために時間を割くのが苦じゃない人が集まっていると思います。ディズニーチケットの購入方法がわからないというゲストと一緒にコンビニに行ったり、お財布を落としてしまったゲストの代わりに警察とやりとりすることも多々あります。
──そういった姿勢も選ばれている理由なんだと思います。
伴:この前、韓国から来た女の子がお財布を落としたというので、警察に電話したんですけど、見つかった時にはもう日本を出発しないといけなかった。できることがないか色々伺っていくうちに、日本に知り合いがいることがわかって、その方に繋げてあげました。言葉もわからない国で、そんなことが起きたら誰でも不安になる。特別なことをしているつもりはないけれど、とても感謝してくれて、やってあげてよかったなと思いました。
──ゲストとコミュニケーションの時間を多く取れるのは、自動チェックインの機械を導入しているからですか?
山下:それは大きいですね。その分生まれた時間を、ゲストとのコミュニケーションに使っています。
──効率化の方向性に好感を持てます。コミュニケーションが多くて業務も楽しいし、利益率も高くなっていく。業界を変えていける方向に進んでいる気がします。
山下:スタッフの名前がそれぞれ予約時のクーポンコードになっているので、仲良くなったゲストの方に名刺をお渡ししています。今後は、接客がリピートにつながった時に、それがスタッフに還元される仕組みを作れたらと考えています。
ホテリエ×ラジオパーソナリティ
──伴さんは、なぜUDSに入社されたんですか?
伴:私は、大学卒業後ビジネスホテルに入社しています。丸二年間勤めて、お客様はほぼサラリーマンだけ。毎日チェックインが150件くらいあって、ひたすらさばくだけの、本当に忙しい環境でした。個性を生かして仕事ができなかったり、ルールに縛られすぎている環境が窮屈で、UDSに転職を決めました。
UDSは雑誌等で見ていて、スタッフが楽しそうに働いている印象があったんです。入社してからは、HAMACHO HOTELで3年ほど働いたあと、このホテルの開業の話を聞いて異動しています。
──ホテリエ×ラジオパーソナリティという働き方をしていると伺いました。
伴:ラジオに関しては、開業前の打ち合わせで、SNS以外のツールでもホテルを発信していこうと決めていました。
写真は綺麗に切り取られたものばかりだけれど、音声メディアであれば裏表のない情報をお伝えできる。ラジオを聞いて宿泊に来てくださった方だけでなく、ラジオからホテルに興味を持ってくれて採用に至ったスタッフもいます。
──確かに、ラジオを聞いていれば、温度感やカルチャーがわかっているので離職しにくそうです。ラジオは海外ではポピュラーですし、英語で話したら新しい集客ツールになるかもしれないですね。
伴:面白そうですね、よくあるお問い合わせの内容をラジオで答えたりとか。
──ディズニーチケットの購入を手伝ってくれた話とかをしてくれたら、僕だったらすぐにファンになります(笑) ラジオをやっていく中での課題感と、今後の展望などありますか?
伴:課題としては時間の確保が難しいところですね。特に海外のお客さんが増え始めた時期から、通常業務の時間がどうしても増えてしまった。
それでも、ラジオ経由で採用が出来たのは嬉しかったですし、今後もしっかり続けていきたいです。どうしてもホテルの現場は大変な印象があるかと思いますが、そんなこともない。自由な環境なので、ホテルで働く魅力をもっと伝えていけたらと思います。
入社1年で企画もSNS運用もこなす、カルチャー担当
──山下さんは、ホテリエ以外にどんなことをしていますか?
山下:ざっくりホテルのカルチャーの部分を担当しています。イベントの企画やSNSの運用、インフルエンサーとのコラボもしています。
昨年は、DESIGNART TOKYOというアートイベントに参画して、アーティストの方にコンセプトのあるお部屋を4つ作っていただきました。ロビーでは参加型のアートも展開して、ゲストと一緒に1つのアート作品を作る体験ができて面白かったです。
──言語化できない部分だけど、ホテルに合う合わないがわかる人って大切ですよね。もともとカルチャーなものが好きだったんですか?
山下:2022年の4月にUDSに入社したんですけど、それまでは音楽が好きで渋谷にあるレコード販売の会社に勤めていました。海外のオークションでレコードを売って、メールでやり取りをする業務がメインだったので、もっとコミュニケーションを取りたいと思ってここにきました。
all day placeは、自分の好きなことを武器にしながら、未経験でも活躍できるということで、理想的な環境でした。
──転職してすぐにホテルが開業して、企画もしていくって大変ですよね。ご自身のスキルもあったと思いますが、どうやってすぐに成果を出せたんでしょうか。
山下:ホテルで働くのは初めてだったのでたくさん教えてもらいましたし、溶け込みやすかったです。
イベントの企画運営は、これまでやったことがなかったので見よう見まねでやっています。進め方やいろんな調整など難しい部分も多いですけど、勉強になっています。普通のホテルだと、現場スタッフがイベント運営にここまで入り込めない。今後は海外の方がたくさん来ると思うので、ゲストを巻き込みながら、all day placeらしいイベントをたくさん仕掛けていこうと思っています。
お互いの個性を尊重し、補い合う組織
──異業種の人がたくさん集まっている組織ですよね。
山下:それぞれの経験を活かして仕事ができています。みんないい意味で個性があるスタッフが多いので、何かやりたいことがあるんだったらまずやってみる。うまくいかなくても怒られることはないし、良い結果が出たら嬉しいし。
伴:お互いに個性を尊重し合っているから、まとまりがあるんだと思う。得意なところを伸ばしつつ、いろんな所で補填し合えてる。
──今後は、どんなホテリエ×○○にきてほしいですか?
伴:やりたいことや、好きな趣味があったらどんな方でも合うと思います。例えば、ヨガのインストラクターとかは海外の方にも親しみやすいですよね。朝みんなで公園に行ってヨガしてくるとかできたら楽しそう。やりたいことがなくても、何かに精通してたら面白い。
山下:ホテルって、その人がいなくても成立してしまうんですよね。要はどこのホテルもチェックインしてチェックアウトする同じ流れになっている。そこで何か一つでもアクションを起こせると、ゲストの記憶に残ると思います。
伴:個人的には、システムに詳しい人が来てくれたら嬉しいです。月次の売上管理でシステムとうまく連携できていない部分があります。ホテル内部の業務効率化に関しては、まだまだできることがあると思うので、外の視点から効率化してもらえたら助かります。
──逆にどんな人は合わないですか?
山下:英語のスキルは、ある程度必要だと思います。
伴:0からだと難しいけれど、多少わかれば頑張れるはず。職場は楽しいし、スピード感を持って習得できる環境だと思うので。
──離職率はどうでしょうか?
伴:離職者はまだ一人もいないんですよ。(2024年2月時点)これは本当にすごいことだと思っています。アルバイトのスタッフも、別の仕事は決まったけどall day placeが好きだから週1〜2で働きたいって言ってくれるんです。
──コミュニケーションが楽しいし、いい仲間が多いし、キャリアでもしっかり未来がある。確かに離職する要素があまりなさそうですね。
文章・編集:田中拓海
写真:田中拓海
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