行川 健一(なめかわ けんいち)
新卒でシステム開発会社に就職。エンジニアとして経験を積んだ後、2010年より個人でiOSのアプリ開発を始める。個人及び受託企業でiOSアプリ開発を数社経験した後、2016年にクックパッド株式会社に入社。ロコガイドではトクバイアプリの公開時からiOSアプリ開発に携わる。現在は、アプリ開発のリーダーを務める。
これまでのキャリアについて教えてください。
大学では、情報学部に進学しました。必修の授業でプログラミングはありましたが、本当に簡単なもので、その頃はプログラミングに対して強い興味は持っていませんでした。
大学卒業後、システム開発会社に就職し、研修の時に本格的なプログラミングについて初めて学びました。その時に、「意外とできる」「意外と楽しい」という感覚を持ち、本格的に勉強を始め、エンジニアとしての道を進み始めました。
iPhone3Gが登場した2010年頃、初めてiOSアプリを自分で作って審査に通し、リリースしました。趣味で始めたアプリ開発でしたが、正直業務よりもどんどん楽しくなってしまい、それならばアプリ開発を仕事にしようと思い、アプリの受託開発会社へ転職しました。
それまでは独学で学んでいたアプリ開発でしたが、仕事にすることでより詳細なことを学ぶことができ、アプリ開発の楽しさにハマっていきました。
その後も2社ほど転職しながら経験を積みましたが、どちらも受託開発の会社だったので、「もっとこうしたらいいのに」と思っても、その思いを実現できない悔しさから、事業会社への転職を決め、2016年3月にクックパッド株式会社に入社しました。
クックパッドでは、トクバイを運営していた買物情報事業部に配属されたのですが、それがちょうどこれからトクバイのアプリを開発するタイミングでした。
入社2ヶ月でまさかの入院!必死に挽回しようと死に物狂いでトクバイアプリをリリース。
入社後すぐに「トクバイ」アプリリリースという重要なミッションを任せられたようですが、問題なくリリースすることができたのでしょうか。
当時のアプリ開発メンバーは、iOSが自分を含めて2名、Androidが2名でした。
2016年4月に開発をはじめ、7月にリリースというなかなかタイトなスケジュールでしたが、なんと5月に僕がバイクで事故にあってしまい1ヶ月入院することになってしまいました…。
この時は、入社したばかり、かつ重要なタイミングで大変申し訳ない気持ちになりました。iOSのもう一人のメンバーは、プロダクトマネージャーとしてアプリ開発全体のディレクションもしていたので、iOSの開発者は0.5人ぐらいの状況となってしまい、大幅に遅れてしまいました。退院後、なんとか遅れを挽回しようと思い、毎日必死に開発を進めました。
結果的にAndroid版リリースの1ヶ月後である8月に、なんとかリリースすることができましたが、この時が今までで一番辛かったかもしれません(笑)
トクバイの開発は、ある意味一種の「親孝行」なんです。
特に思い入れのある機能開発はありますか。
「買い物メモ機能」ですね。2018年に、デザイナーのメンバーと2人で発案し、開発しました。実は、トクバイのWeb版がリリースされた時に買い物メモ機能はあったのですが、あまりユーザーに利用されておらず、開発コストも高いため機能として外した経緯がありました。(※トクバイは2013年にweb版をリリース、2017年にアプリをリリース)
そもそも買い物に行く際、自分自身もメモをしてから行くことが多かったので、トクバイに必要な機能だとは思っていました。
改めてメモ機能を作ろうと思ったきっかけは、休暇で実家に帰省したときのことです。母親がチラシにペンで赤丸をつけている姿を見て、スマホ上でも実際の買い物体験に近いことがトクバイで実現できるのではないかと思いました。
母親はトクバイユーザーで、日頃から買い物の際に利用してくれています。しかし、トクバイを利用していても「チラシに赤丸をつけてメモをしたい」という気持ちから、実物のチラシに赤丸をしているのを見て、二度手間になっていると思ったんです。
手間を解消したいという気持ちと、これをトクバイ上で実現できたら、自分なりの「親孝行」ができると思いました。僕にとっては、一番身近なユーザーなので。
初期の頃にリリースされた買い物メモ機能よりも、視覚的に分かりやすく、実際に普段の生活で行なっていることを再現するようなエモーショナルな体験を今回のメモ機能では実現したいと思い、休み明けに早速プロトタイプを実装し、デザイナーに相談しながら進めました。
その後、社内のターゲット層に近い社員に利用してもらい、テスト公開したところ、利用率がとても高く、最終的には全体ユーザーの20%が利用する主要機能となりました。
買い物メモ機能は、リリースから3年経った今でも、日々改善しながら利用率を高める施策を考えています。
ターゲットユーザーの気持ちに完全になりきることはできない。でも、必ず自分自身や身近な人との「共通点」はある。
お母様の実体験から機能開発を思いついたこともそうですが、常に「自分がユーザーだったら」ということを、大切にされている気がします。これはどんな思いからでしょうか。
やはりユーザーが使ってどう感じるかということは、サービス開発において最も大切なことだと思うからです。ただ、自分自身が、例えば2人の子供がいる共働きの主婦になることはできないので、ターゲットユーザーと自分との共通点を常に探して考えるようにしています。
ユーザーの理解をするためには、いくつかやり方があります。
まずは、「自分自身」がサービスを徹底して使うこと。自分がリアルにユーザーとしてどう思うかということを大切にしています。自分自身はサービスのメインターゲットではないかもしれませんが、日頃買い物もしますし、料理もします。そんな自分が使った時にどう感じるか、ということも全くハズレではないと思うんですよね。必ず自分が感じることと、ターゲットユーザーには共通点があると思います。
その次に、買い物メモ機能で言えば母親でしたが、自分の身近な人が日々どんな生活をして、どんな体験をしているかを観察すること。その上で「サービスのあり方」を考えています。
まずは、自分と自分の身近な人の生活が便利になるためにはどんなことをしたらいいかを考えるようにすることで、具体的な利用シーンなどを思い浮かべながら機能開発することが一番リアリティがあるかなと思います。
ユーザーに価値ある情報を提供するためにも、クライアントのことを考えることは欠かせない。
ちなみに、ユーザーだけでなく、クライアントに対しての価値提供についてはどうお考えでしょうか。
当社は「ユーザーファースト」を最も大切にしてサービス開発をしていますが、ユーザーに価値ある情報を提供するためにも、クライアントのことを考えることは欠かせません。
僕は、ユーザーへの最大の情報価値は「情報網羅性」だと考えています。どんなに便利な機能があっても、ユーザーが日頃から行くお店や、お店からの情報発信がないとユーザーへの価値は生まれません。サービスの肝でもある、お店からの情報提供を増やしてもらうために、クライアントに寄り添って考えることもとても大切なことです。
しかし、クライアントに寄りすぎてしまうと、ユーザー体験が損なわれてしまうこともあるので、両者の一番欲しているところをマッチさせることこそが、サービスとして一番成長できることだと思います。
ただ、意識すべきことが色々あるからこそ迷う時もありますが、ユーザーファーストこそが一番大切なこと、というのは忘れないようにしています。
クライアントへの価値提供という意味では、来店効果測定についてご自身で機能開発の検討を進められて、社内で月間チャレンジ&スピード賞として表彰されていましたね。
はい、実際にトクバイをみて来店に繋がったかどうかの効果測定は、当社としても前々から大きな課題となっていました。クライアントにとっても、トクバイからの来店数が実際に分かると効果を実感できますし、ユーザーに対しても来店店舗が分かることでより精度の高い情報を提供することができるので、まさにwinwinな施策だと思いました。
ちょっとした雑談から思いつき、すぐにデモアプリを開発して、周りを巻き込みながら進めました。まだまだ課題はありますが、実現できるようにこれからも検討していきたいです。
仕事をしていて「楽しい」と思う瞬間を教えてください。
やはりユーザーの不便を解消する施策を考え、リリース後に定性・定量どちらか一方でも変化が出ると楽しいですね。
もちろん全てが成功するわけではなく、失敗することもあります。それでもその結果をみて、次はもっとこうしてみようと考えたり、自分が想像できなかったユーザーからのご意見や反応を見ることで、なるほど…!!と知見が増えていくのも楽しいです。数字もご意見も、どちらもとても参考になります。
業務の全てに対し、「使う人のことを考えられる人」と働きたい。
どんな人と働きたいですか。
「使う人のこと」を考えられる人です。
これは、サービス開発だけでなく、業務の全てに対してですね。
例えば、「開発環境をよくしたい」という課題があった時に、単純に流行っている新しい技術を触ってみたいという動機で動くのではなく、今のチームでどんな課題があって、新しい技術を取り入れることで、それがどう改善できるのかを考えた上で、最適解を出せるような人は素敵だと思います。
そうやって、サービスだけに限らず、全ての業務において「誰がどんな体験をできるといいか」ということを想像できる人とは、一緒に働いていても楽しいです。
ロコガイドはどんな環境だと思いますか。
ユーザーに対しどうすればもっと良い体験を提供できるかを常に考え、それを行動に移すことのできる環境だと思います。
エンジニアは特に、他の人より一歩先に実現に向けて動ける職種だと思います。「こんなことできたらいいな」と思ったら、すぐに手を動かして形にすることができる。結果、ユーザーに価値ある機能をスピード感を持って提供することができる。ぜひそのエンジニアの強みを生かし、ユーザーファーストに対して強い思いを持った人と働きたいです。