■ECショップとリアル店舗の違いは何か?
越境EC、オムニチャネル購入、スマートフォンへの最適化…ECショップは成熟し、すでに既存の店舗チャネルと同列に組み込まれたように見える。がしかし、実店舗での買い方を良く知っている人間からすると、まだまだ腑に落ちないとことが多い。端的にいってリアル店舗よりも便利だが、魅力的でない部分が多いのだ。そこが、ECショップで高額商品が売れない、客単価(一度に買う商品の数)が上がらない理由だ。それはどんなことなのだろうか?
ECショップがリアル店舗に追いついていないポイントは以下の6つである。
①品群(カセット)が見えてこない。
②平面的である。モノに対する遠近感が弱い。
③リアリティ特に素材感・質感の伝達力が弱い。
④売場と商品が自己アピールしてこない。
⑤自分の行動に付随する『光景変化』が弱い。
⑥組み合わせ=コーディネートの妙が見えない。
リアル店舗のMDやVMD、業態開発をしたことがない普通の消費者にはわかりにくいかもしれない。デジタル系の企画しかしたことがないECプランナー等も同様である。ECショップ=販売のしくみが全てと思い込んでいるからだ。デジタル系の人間は良くユーザーエクスペリエンスという言葉を使うが、リアルにおける『ユーザーエクスペリエンス』(売場体験)がどんなものであるか、実はわかっていない人が多い。
文章では伝えにくいのでビジュアル化して比較してみよう。
リアル店舗とECショップをそれぞれ訪れた時に、消費者の頭の中では何が起こっているのか?
ファッションストアの例で見てみよう。
このように結局のところ、リアル店舗で行われている『感覚に訴える』売場表現、顧客から見たら衝動買いを喚起する『売場体験』が、現行のECショップではほぼ欠落した状態と言えるのである。なので、ECショップでは、消費者は、『この商品は素敵!』と思うことはあっても、『この店舗、この売場が素敵!』と感じることは少ない。
その代わり、購入に際しての目的がある場合はそれを検索して単品を抽出することはたやすい。徹底的に左脳で商品を選んだ上で、最後に右脳に訴求する構造である。
再度確認しよう。
結果として、ECショップでは何が足りなくなるか?
商品ではなくて、売場全体として…
衝動買いさせる力
背中を押す力
関連買いさせる力
が不足しているのである。
だからECショップは、単価の高いファッション商品は売れず、セット率(一度に注文する商品点数)も少なくなりがちだ。
ではこの状態が、これからもずっと続くのか?そんなことはないはずである。技術の進歩はこの状態を打破することができるはずだ。
この続きは、第2回に譲ろう。
株式会社シンクエージェント
代表取締役 社長
樋口 進