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SEKIGUCHI'S EYE Vol.01 「食堂が、これからのコミュニティの中心になる。」

こんにちは、THINK GREEN PRODUCE代表の関口です。この度、NEWoMan横浜に「しらす食堂 じゃこ屋 七代目 山利」をオープンしました。山利のしらすを食べた時の感動を、もっと多くの人と共有したい。2年前に抱いたその構想が現実のものになり、とても嬉しく思っています。今回このコラムでは、「じゃこ屋」を題材に、そもそもなぜ「しらす」なのか?なぜ「食堂」なのか?そしてその先にどんな事業を考えているのか、お伝えできればと思います。

日本の食文化への思い

私たちTHINK GREEN PRODUCEでは不動産や飲食など様々な事業を展開していますが、一貫して大切にしているのは「食を軸に街づくりを考える」ということです。その中で、近年改めて感じているのは、和食というコンテンツの強さです。海外のシェフやレストラン経営者たちと話し、意見交換をするたびに、世界から見ると自分たち(日本)の芝は青いんだなあと実感します。しかし同時に、日本で飲食業を営むものとして懸念しているのが、日本の食文化の継承です。日本の飲食業界、特に東京は世界中の最良の食コンテンツが集まっています。いい意味では最先端であり最高峰でありグローバルです。一方で日本人の日常に根差した食文化や年中行事、決して高級とは言われないかもしれないが長く地域に根差した名産品などが、少しずつ忘れられていっている気がします。そのためにも和食を軸としたコンテンツづくり、街づくりは前々から挑戦したいと思っていました。

生産者は地域に根付く食文化のクラフトマン

和歌山で160年続く老舗しらす専門店、山利の七代目当主木村さんとは2年前にサーフィン仲間を介して出会いました。海を通した仲間として知り合い、山利のしらすと彼の事業に対する情熱に感銘を受け、ぜひ一緒に何か形にしましょうと構想を練り始めました。

和食文化の継承、そのために有効なのはやはりビジネス(事業)化だと思っています。その際、「和食」や「〇〇料理」、もしくは「都道府県」という大枠のカテゴリーで捉えようとすると訴求ポイントが少しぼやけてしまいがちです。それよりも「誰が」「どこで」作っている「なに」というディテールにフォーカスした方が提案力が増しエッジが立つ。要するに、ヒト(=生産者)とモノ(=素材)に焦点をあて、その生産者ネットワークや素材をフル活用したお店を作りたかった。そんな時に、横浜にできる新しい施設でシーフード業態の飲食店を探している、とお話をいただき、「しらす食堂」を提案した、というのが「じゃこ屋」の経緯です。

オープンして1ヶ月が経ちますが、嬉しい反応としては3〜40代の働く女性を中心にお子様から年配のお客様まで、幅広い層から「こんなにしらすが美味しいなんて知らなかった」「通います」「実は和歌山出身なんです」などのコメントを頂いております。「じゃこ屋」の店頭では、山利のしらすが美味しい理由を説明したチラシも置いているのですが、予想を遥かに上回るスピードでなくなっています。食事だけでなくストーリーや背景まで消費いただけているのだと実感しています。

激変する生活者の「食」に対する意識

今回の「じゃこ屋」での手応え、そして激動の2020年という時代を鑑みると、「食堂」というコンテンツは今後、新たな食のコミュニティの場になりえると感じています。

まず大きく捉えると外食産業。日本国内で約25兆円とも言われている市場ですが、今回のコロナの影響もあり、「外食」だけでなく、家の中で素材を調理して食べる「内食」、惣菜やお弁当など調理を伴わない「中食」とのバランスが重要になってきています。もはや飲食店を増やし続けることが飲食ビジネスの成功法則ではなくなりました。さらに生活者の食に対する意識、およびその手段が劇的に変化しました。なんとなく食べる、ということがなくなり、目的性がない場合は家で、人と会うなど目的性がある場合に外食を選ぶようになりました。外食はよりプレミアムなものになり、これまでは時短や経済的な要因で中食、内食を選んでいたものが、通常になりました。

生活スタイルの変化に伴い、今後は飲食業界もデジタル化を余儀なくされています。特にEコマース。弊社としてもこだわりのある生産者と生活者をつなぐ手段としてのECプラットフォームの開発に着手しています。こちらに関してはまた次回お話ししますが、どちらにしても、ヒトやモノを軸とすることは変わりません。

また、ここ10〜20年で「カフェ」という業態は完全に日本に定着しました。誰かと一緒に過ごす空間としてのカフェ。そこにもう少し強く「食」の要素を入れたい。そこで「食堂」を思いつきました。今回オープンした「じゃこ屋」も内装は和を基調しながらも、デザインや居心地の良さ、オープンな雰囲気を意識しました。また、夜はちょっとした居酒屋使いをしてもらうためのメニュー構成にしてあります。ただし、居酒屋っぽい雰囲気にしすぎると、お酒がメインになりがちなので、あくまで食事をメインに1〜2杯、という「ちょうど良さ」が食堂にはあると感じます。

「ニッポン生産者食堂プロジェクト」はじめます

もう一点、今回の「じゃこ屋」で改めて再認識したのは、こだわりぬく生産者の周りには同じくこだわりぬいている生産者が集まり、コミュニティが形成されているということです。そして概ね生産者さんたちの悩みは共通していて、多くの場合がそのこだわりを伝え切れていない、価値化できていないということ。もちろん継承者やサプライチェーンの問題もありますが、生産者食堂というフレームを作り、生産者やその素材に光を当てることで、全国に点在する素晴らしい食文化を可視化していきたいと思っています。

弊社では今回の「しらす食堂 じゃこ屋 七代目 山利」を皮切りに、生産者や地域のストーリーを伝えていく「ニッポン生産者食堂」をプロジェクト化します。点と点を線に、線を面にすることで、都市生活者だけでなく日本全国、さらに世界中の方々に日本の食文化を紹介するプラットフォームを作り上げます。繰り返しになりますがベースとなるのは、あくまでヒト(=生産者)とモノ(=素材)。ディテールにフォーカスすることで、結果的に日本の食文化の継承および価値づくりに貢献できればと思います。

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