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教育は難しくない。目の前の子ども達に、大人が楽しんで生きる姿を見せ続ける―後編―

とにかく熱い、熱い情熱を燃やし、目の前の子ども達のためにと学校内外で挑戦を続ける北フェロー。不動産会社、人材会社を経て教育、Teach for Japanに興味を持ったキッカケとは。また、赴任1年目から人の何倍も行動し続けてきた中で手にした、成果とは。赴任した小学校、地域、市、県とどんどん人を巻き込み、人脈を拡大させながらも、日々、丁寧に子ども達と向き合う姿を追いました。

前編記事は、こちらからご覧ください。

学校外、地域外にも積極的に飛び出して広く学び、学校内に取り入れることで、児童たちに還元する

前編で、頼れる仲間たちのおかげで厳しい環境でも頑張れたと聞きました。身近な同志の存在は心強いですよね。また2年目には、田川市を飛び出して島根県にも行かれたと聞きました。

2年目の8月、島根県の隠岐島前高校を視察に訪れました。

この高校では、地元企業とのインターンシップを授業の一環で行うなど、独自の教育カリキュラムを実施しており、県外からも生徒を集めていました。ついには、廃校まで防いだというのだから驚きです。

この視察には、田川市の市長、福岡県の県議会議員がいらっしゃっていて、私は同じ地域に赴任していたTFJメンバーと共に参加しました。ここでの出会いをきっかけに市長、県議会ともつながりができました。

2年目も1年目に引き続き、学校外の活動も積極的に行われていますね。

田川では、田川飛翔塾という田川地域の中学2年生を対象にした合宿型のサマースクールにも参画しました。

これは、地元の企業経営者や大学の先生、著名人による講義を聞き、子ども達が自ら地域活性化や、自分自身について考えるプログラムです。これからの地域の担い手として期待される生徒たちが、各学校からの推薦を受けて合計40人ほど集まります。私が参加した時には、地域活性化よりも自分自身について深く考える時間の方が長かったですね。

この合宿には、サポーターとして大学生が入るのですが、私はコーディネーターとして、大学生のマネジメントのみならず、中学生の学びの最大化、カリキュラムの運営などについて行いました。実は、大学生の成長もこの合宿のテーマの一つでした。

筑豊地域では、地元から今以上に夢を持つ子ども達を増やしたいという強い思いがあり、その一環として田川飛翔塾を実施しています。この田川地域の課題は、まさに私の関心事でもあり、とても学びや気付きが多かったです。また、このプログラムを通じて、さらに政界の方々と意見交換する機会を頂けました。

本当に熱心に地域活動にも打ち込まれていますね。学校においては、この頃、Slackを導入したと聞きました。

学校運営の効率化、教員間のコミュニケーション促進を狙って導入しました。

民間で働いていた人なら違和感を覚えると思うのですが、学校では未だに紙が多用されています。職員間の連絡は全て紙、業者との連絡は大半がFAXです。

そこで校長先生に相談し、Slackを導入していただくことにしました。最初はあまり抵抗感のない若手の先生から使い始めてもらい、その良さを実感してもらうことにしました。

そうこうしていたら、新型コロナウイルスが流行したのです。

そこで3月の休校中にSlack研修会を実施し、100%の先生が使えるようにしました。今では60代の先生たちも活用できており、コロナ禍においてもスムーズなコミュニケーションが実現できました。

このように、学校内でのIT活用を進める中で、学校のInstagramも開設しました。

なぜなら、学校のHPは、いくら更新しても訪問してくれないと情報が伝わりません。それでは、情報をこまめに発信したところで、効果は限定的だと考えたからです。

そこで、こちらから積極的に情報を伝えていく手段として、Instagramの活用を始めました。定期的に更新することで、徐々にフォロワー数も増やせ、届けたい情報を地域に届けられるようになっていると感じています。

学級運営としては、学級通信と総合学習に力を入れているそうですね。

学級通信は1年目から、ほぼ毎週発行しています。

作成時に気を付けているのは、写真ではなく、文章で思いを伝えることです。ここでは、児童ではなく保護者の皆さんに向けて書いています。通信内にはQRコードを埋め込み、自作の動画が見られるようにすることで、写真の少なさを補う工夫もしています。

学級通信の目的は、とにかく学級の状況を開示し、保護者の皆さんに安心してもらうこと、私のことを信頼してもらえるようにすることです。この学級通信をキッカケに保護者の皆さんとの会話も増えるなど、手ごたえを感じています。

総合学習では、2年目に担当した5年生に向けて、『なりたい自分を考える』をテーマに働く大人に会う機会を設けました。

いつもお呼びしている地域の農家さんほか、この年からは、廃校を利用したコミュニティスペースを運営している方にも来ていただきました。また、総合学習以外でも「夢授業」というキャリア教育を推進している団体と連携をして、地域の働く大人を集めて仕事の話を聞く会も実施しました。

子ども達が自分のやりたいこと、なりたい姿を自分で見つけ、それに向けて自分で行動できるように、今後も後押ししていきたいと思っています。

今年の総合学習では何をテーマになさっていますか?

3年目の今年は、6年生を担当したのですが、そこでは『誰もが住みやすい街』をテーマに、①田川の魅力と課題②多様性③自分自身にできることの3つの小テーマで学びを深めました。

例えば、②多様性の中では、外国人、高齢者、障害のある人、LGBTQの人たちの困りごとを聞く機会を設けています。私は、この4つの対象者の中でも、特にLGBTQへの理解を深めてもらうことに力を入れています。

このように教員として働く中、フェローになった当初のビジョンから、新しいビジョンへと変化していきました。

世の中に多様なロールモデルを。子ども達が、なりたい!と思える魅力的な大人を増やしていきたい

フェロー期間も、残すところ半年を切りました。残りの時間で何か挑戦したいことはありますか?

学校内では、何かを新たに挑戦したいという気持ちはありません。なぜなら、常に挑戦してきたし、今も挑戦しているからです。

今は、目の前の子ども達が、私がいなくなった後でも、自分の頭で考えて行動していけるように導きたいと思っています。でっかいことをやってやろうと言う気持ちはありません。目の前の子ども達に出来ることを、全力でしたいという気持ちだけです。

学校外では、参画しているキャリア教育推進事業に注力したいと思っています。

同センターでは、福岡未来創造プラットフォームという新しい場ができ、福岡の大学や福岡市、福岡の商工会議所や中小企業経営者協会が参加しています。福岡の未来を担う人材の育成、若者の地元就職や定着などを掲げており、自分に出来ることで協力したいと思っています。

具体的には、キャリア教育について考えていく部会に所属しながら、小、中、高、大との連携を模索しています。残りの教員生活も含め、今後も取り組んでいきたい活動の一つですね。

田川市、福岡県への愛を感じます。千葉県のご出身ですが、今後の拠点についてはどのように考えていますか?

今のところ、地元に帰ることは考えていません。これからも田川を中心に、私がつながってきた人脈を、私を介して更に他の人へとつなげていきたいと思っています。

昨年は、先生たちと会社員を集めて異業種交流会を開催しました。現在はコロナ禍で、リアルイベントの開催は難しいですが、周りの個性豊かな人たちにZoomを使ってインタビューし、それを編集した動画をYoutubeで公開しています。

私は、この活動を『田川大人魅力化プロジェクト』と名付けて行っています。

子ども達は、周りの大人たちによって大きく変わります。だからこそ、子ども達がなりたい!と思える魅力的な大人たちを増やす、紹介することで、自分のやりたいことが分かり、見つけたやりたいことに向かって行動できる子ども達を増やしていけると信じています。

教育は難しくありません。大人たちが、自分達が楽しんで生きている姿を見せることが、何よりも良い教えになると思っています。

最後に、今後の展望や野望を教えてください。

大前提として、今後も様々なことに挑戦をしていきたいと思っています。そう考えると、いろいろな選択肢が思い浮かぶので、楽しい未来しかないと思っています。

例えば、いつか屋久島に住めたらいいなと思っています。アウトドアが好きなので、海があって、山があって、川がある自然豊かな屋久島に憧れています。社会人1年目くらいから、ぼんやりと考えていることですね。

また、ザックリとですが、ゲストハウスを運営して、いろんな人たちに泊まりに来てもらい、その泊まりに来てくれた人たちが地元の子ども達と交流する中で、子ども達にとっての人生の講師となる仕組みを作れたらいいのかな、なんて思っています。

算数や国語、英語を教える塾ではなく、生き方を教えるような塾を作れたらいいですよね。小学校の教科で言うと、道徳や委員会活動、総合学習などに当たる分野の学びを提供できるのではないかと思います。子ども達が幸せに生きていくための力を身に付けられる、そんな塾って、あったらすごくいいと思うんですよね。

ここまでお話しした屋久島、ゲストハウス、塾の話は構想段階で、例え話なのですが、こんな事ができれば良いなとわくわくしていることでもあります。

これからも描く未来を目指して、教育、キャリア、地域、コミュニティ、自由などをキーワードに働いていきたいと思います。そして、フェローをする中で生まれた新たなビジョン『世の中に多様なロールモデルを』を軸に、挑戦し続けます!

(編集後記)

赴任1年目から、目の前の課題に真摯に向き合ってこられた北フェロー。そんな彼の姿を間近で見てきた児童、保護者、教員からは信頼を集め、それは地域にも広がっています。学校内外、時には地域外、県外にまで足を運び、貪欲に教育について考え抜く。そんな姿は、ご本人が想像している以上に、周囲に良い影響をもたらしていることでしょう。これからフェローを終え、また新たな挑戦を始める北フェローの今後の活躍が楽しみでなりません。

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