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【Why?GX】なぜいま、脱炭素、GXと言われ始めたのか?

今年から急に「脱炭素」「カーボンニュートラル」「GX」というワードをよく耳にするようになりました。GX担当省設置のニュースに始まり、「●●社は2025年までにカーボンニュートラル達成」といった企業広告でもよく目にするようになりましたが、なぜ今年から急激に増えたの?と思う方も少なくないでしょう。

今回はその背景について概要をおさらいしておきたいと思います。

カーボンニュートラルは全世界共通の課題

私たちは日々暮らしの中で、電気やガスをはじめ、工業製品の購入、交通機関の利用、工業製品の利用、ゴミの廃棄と、あらゆる活動においてGHG(CO2をはじめとした温室効果ガス)を排出しています。

人間が生きていく上でGHGの排出は避けられないものではありますが、全世界的に工業化が進んだ現在、地球は加速度的に温暖化が進んでおり、現在のペースでGHGを排出し続けると、21世紀末には3.3~5.7℃の上昇が予測され、海面上昇・異常気象・農作物への影響など、人間生活を脅かす様々な弊害が発生し、ひいては貧困問題の拡大や国際紛争の火種になる可能性もあり、国際的な対応が必要なアジェンダの一つです。



(出典)United Nations Framework Convention on Climate Change

2015年、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、パリ協定が採択されました。2020年以降の温室効果ガス排出削減等により、世界共通の長期目標として温暖化を2℃以内に抑える目標を設定し、1.5℃に抑える努力を追求することが求められることとなりました。


▽パリ協定の概要                                      
世界共通の長期目標として2℃目標の設定。1.5℃に抑える努力を追求すること。                              主要排出国を含む全ての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること。              全ての国が共通かつ柔軟な方法で実施状況を報告し、レビューを受けること。            適応の長期目標の設定、各国の適応計画プロセスや行動の実施、適応報告書の提出と定期的更新。     イノベーションの重要性の位置付け。                              5年ごとに世界全体としての実施状況を検討する仕組み(グローバル・ストックテイク)。                                    先進国による資金の提供。これに加えて、途上国も自主的に資金を提供すること。          二国間クレジット制度(JCM)も含めた市場メカニズムの活用。

結果、各国ではカーボン・ニュートラルの実現を目指し、政治・経済的な大転換が進み始めています。日本においても、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言され、社会・経済構造の転換がいよいよ進み始めています。


金融市場におけるカーボンニュートラルの影響

企業経営における環境に関連するアジェンダは、大量生産・大量消費前提の生産・販売モデルからの脱却だけでなく、企業活動による環境・気候変動影響のモニタリングや、脱炭素、脱プラスチック、資源ロス削減、再利用促進など、企業の経営戦略の根幹に非常に大きなインパクトを与える時代に突入しました。



グローバルの金融市場では、国連アナン事務総長の提唱による責任投資原則(PRI)を皮切りに、ESG(Environment、Social、Governance)投資の考え方がスタンダートとなり、逆にESGに配慮しない企業へのダイベストメント(投資撤退)が進むなど、ESG配慮が企業価値に影響を与える時代が到来しています。



▽欧米で加速するダイベストメント                               
石炭ダイベストメントの事例としては、2015年、ノルウェー政府年金基金(GPFG)が保有する石炭関連株式をすべて売却する方針を決めました。                            オランダの大手年金基金ABPも2021年10月に化石燃料に関連する企業への投資をやめると発表。売却は総額約2兆円を超す見込みで、温室効果ガスを多く出す企業からの包括的な「投資撤退」としては大規模になります。                                         米ボストン市でも2021年12月、2025年末までに、同市のファンドで化石燃料事業へのダイベストメントを義務付け、化石燃料事業収益で15%以上を稼ぐ企業へ公的資金を投じることを禁止。カナダのケベック州貯蓄投資公庫も化石燃料から投資撤退し、再生可能エネルギーなどへの投資を増やす方針を出しています。


国内においても、政府の掲げた「2050年の脱炭素社会の実現」という目標達成に向け、今年度より、上場企業は年次財務報告において、TCFD開示(気候関連情報開示)の一つとしてGHG排出量報告と、経年での削減に対する取り組みが実質的に義務化されることが決定しました。



▽日本におけるTCFD開示
2022年、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った、ESG開示をプライム市場上場企業に実質義務化、あわせて、大手機関投資家が開示しない企業の株式をダイベストメントすることを発表
主な開示内容                                        ガバナンス:「取締役会による監視体制」「経営者の役割」の説明                 戦略:気候関連シナリオ分析                                 指標と目標:GHG排出量の算定と開示、中長期的な目標の設定と目標に対する「実績」の開示    現時点ではプライム上場企業とその主要取引先が中心だが、GHG排出量の算出が求められる企業・商品は順次拡大していく見込み

カーボンニュートラルの事業への直接的な影響

カーボンニュートラルが事業活動そのものに影響するケースも急速に増えています。既存事業、輸出産業にはネガティブな影響が多い一方で、商機として商品開発・マーケティングに活かす事例も増えてきました。

▽デンマーク政府は2022年4月、すべての食品ラベルにカーボンフットプリントの情報を表記する新しいラベリングシステムの導入について発表
デンマーク政府は、カーボンフットプリントに関するラベリングシステム導入のため1.6億円を拠出しました。欧州委員会も2022年末に、EU全域での食品表示フレームワークに関する提案を行う予定であり、今回のデンマークの発表は、これに先駆けたものとなります。ヨーロッパ各国では国境炭素税(国境炭素調整措置)が整備・導入されはじめており、国外からの輸入食品は国内生産品よりも高額となり、各国の食品関連産業の保護につながる可能性が高まっています。


▽ヨーロッパ:2035年にハイブリッドカーを含むガソリン車の販売禁止
旧来は蓄電池技術の問題や儲からないために進まなかったEVシフトですが、ESG投資が後押しする形で欧州自動車メーカーは続々と2030年代のEV専業化の計画を発表。これを機として販売禁止を行政が打ち出し、日系自動車メーカーは対応を余儀なくされることとなりました。トヨタは販売禁止となった場合にイギリスからの生産拠点撤退、地元経済・雇用に対する影響をイギリス政府に対して警告するなど、政治・経済における国際競争の材料となり始めています。


▽環境負荷の低さを売りとした商品が続々登場
2022年9月、アシックスが、温室効果ガス排出量を抑えた、ゲルライトスリーシーエム1.95を発表しました。一足あたりの温室効果ガス排出量は1.95kgCO2eで、現時点で温室効果ガス排出量が公表されているスニーカーの中で最小となります。他にも、JTBからカーボンニュートラルな旅行パッケージが発売されるなど、サステナビリティに関心の高い消費者に向け、環境負荷の低さを付加価値とした商品開発・マーケティングが急増しています。

急変する国際政治・経済環境で日本企業が勝ち抜くために

各企業は今後急速な対応に迫られますが、コスト負担として企業経営を圧迫するだけでなく、事業のあり方に対しても大きな影響を与えはじめています。

私たちSustechは、テクノロジーの力で、企業と社会の効率的なGXを支援し、環境戦略を日本の国際競争力に転換していけるよう事業開発に取り組んでいきます。

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