こちらは、日揮株式会社様による日経ヘルスケア連携記事です。
当院のカンボジア人スタッフ、副院長のビトウ、放射線技師のレケナ、施設管理のロマニー、看護師のチバに、それぞれ現在の業務の状況と将来の夢などを語ってもらいました。
よろしければ、是非ご一読下さい。
司会 最終回の今回は、4名のカンボジア人スタッフ、副院長のビトウさん、放射線技師のレケナさん、施設管理のロマニーさん、看護師のチバさんに現在の業務の状況と将来の夢などを語ってもらおうと思います。まずは、副院長のビトウさんから、現在のお仕事や将来の夢などを語ってもらえますか。よろしくお願いします。
ビトウ:(専門の放射線と様々な経験)
副院長 ビトウ氏
はい、私はサンライズ病院で副院長を務めており、専門は放射線です。しかし今は、消化器科と救急科の責任者をやっており、また感染予防のアドバイザーもやっています。
私はこの病院で働き始めてからずっと満足しています。ここで提供している医療やサービスのレベルはとても高く、また、知識や技術を絶えず私を含めた全てのスタッフに教えてくれています。さらにそれらの知識や技術を使って、医療の実践経験を積むことができ、専門家として成長させてもらっています。
新たな分野の仕事も経験しています。内視鏡や各種情報通信機器の利用、それにマネジメントスキルなど、今まで経験したことのない分野の知識を増やすことができています。さらに、日本の北原国際病院や聖路加国際病院でのインターンも私にとっては大変貴重な体験でした。
司会 なるほど。それでビトウ副院長の夢はなんでしょうか。
ビトウ氏(左)、レケナ氏(右)
ビトウ:(AI画像診断と低侵襲治療の導入)
私の夢は、医師としての知識を増やし技術を向上させ、ますます多くのカンボジア人の命を救い、長生きしてもらえるように貢献することです。特に、経済的に海外に医療を受けに行くことができないような人達の助けになればと思っています。そしてもう一つの夢は、次の世代を育てることです。この病院で得た全ての知識や経験を若手の医療スタッフに伝えなければならないと思っています。そうすることによって、サンライズ病院の医療レベルが上がり、カンボジア医療の向上にもつながるのではないでしょうか。
具体的な目標としては、医療スタッフを増やして心疾患やがんにも対応できるようにすることや、AIによる画像診断を導入して放射線医の負荷を軽減し診断ミスをなくすこと、さらにESD(内視鏡的粘膜下層はく離術)やERCP(胆膵内視鏡)、EUS(超音波内視鏡検査)などの導入です。特にESDは消化器系のがん治療で臓器を摘出することのない低侵襲医療で、早くカンボジアで実施できるようにしたいです。
司会 では、放射線科のレケナさんお願いします。
レケナ:(成長を実感)
レケナ技師
はい。私は現在救命救急科のサブチーフをしており、専門は放射線技師です。サンライズに入ったのはサンライズ病院の開院前の2015年に第一期生として入りました。その後日本での研修にも参加しています。私はここで働くことに大変喜びを感じています。日々専門知識や技術の向上の機会を与えられており、成長しているという実感もあります。
サンライズ病院がカンボジアにできて、カンボジア人はとてもハッピーだと思います。日本基準の医療をカンボジアで受けることができて、わざわざ費用と時間をかけてシンガポールやタイに医療を受けに行く必要がなくなりました。特にサンライズ病院は脳神経外科が得意であり、またアンギオグラフィ(血管撮影装置)も持っていることから血管内治療も行うことができます。
司会 レケナさんの夢はなんでしょうか。
レケナ:(いい医療をカンボジアの人たちに)
私の夢は、サンライズ病院を通じて、今後もさらにいい医療をカンボジアの人たちに提供し、命を守っていくことに貢献することです。サンライズ病院は開院して5年が経ちましたが、向上する努力を忘れてはいけないと思います。そのための取り組みの一つとして、ある病院評価基準のツールを使って、各部門や病院全体でさらなる改善余地があるのかを明らかにしようとしています。それを改善することで病院全体の最適化を図ることができるので、現在、関係部門と協力しながら進めているところです。
(ハートセンターとがんセンターの設立)
もう一つ夢があります。このサンライズ病院をさらに拡張して、ハートセンターとがんセンターを作ることです。
カンボジアでは心疾患が死因の上位にランクされていますが、海外基準の本格的な治療施設はまだありません。サンライズ病院には、アンギオグラフィ、超音波診断装置、心電計(ECG)などの機器が揃っています。心臓専門医を揃えるだけで、ハートセンターの開設が可能となります。サンライズ病院はその可能性を持っているのです。
また、がんセンターは、とてもお金がかかると思います。しかし、カンボジアでは肝臓がん、肺がん、大腸がんなど毎年約15,000人のがん患者が発生していますが、そのうち国内の病院で治療を受けられる人はたった500人です。また約1,500人が海外に治療を受けに行きます。ある予想によれば、2040年にはがん患者は30,000人を超えると予想されています。だから、多くのカンボジア人患者が国内で、リニアックなどの先端的な放射線治療器を備えた施設で、質の高い治療を受けられるようにすることが必要なのです。
今ある病院をさらに良くする、そして新たなセンターを作って、もっともっとカンボジア人の命を救うようにする、これが私の夢です。
司会 ありがとうございました。そういえば、レケナさんはサンライズ病院で毎年恒例のイベントである“Best Sunrise of the Year 2021”に輝いているのですね。
レケナ: はい、みなさんすばらしい方たちばかりですが、私が栄誉ある賞に選ばれて大変光栄ですし、今後もますます頑張らないといけないと身の引き締まる思いです。評価していただきありがとうございました。
(Best Sunrise of the Year 2021 鎌田圭也社長(左)、レケナ技師(右))
司会 では次に、施設管理課のロマニーさんお願いできますか。
ロマニー:(日本が発展した理由が分かった)
施設管理課 ロマニー氏
私はこのサンライズ病院で施設管理の仕事を始めておよそ5年半が過ぎました。病院が出来る前にはJICA(独立行政法人国際協力機構)の研修プログラムの一環で日本研修に参加しました。初めての日本訪問でしたが、北原国際病院で新しいことをたくさん学ぶことができました。その中で、なぜ日本人が国を発展させることができたのか、なぜ世界の中で技術先進国になれたのか分かった気がしました。
日本人は年を取っても若い人と同じように働いています。街中に仕事がなくぶらついているシニアはほとんど見かけませんでした。あらゆる世代が頑張った結果、日本はこんなにも発展することができたのではないかと思っています。
日本研修の中で最も記憶に残る経験はみんなで富士山に登ったことです。気温は5度くらいの中、夜通しのぼり続け、次の日の朝、7時頃やっとの思いで頂上にたどり着きました。途中朝4時半ごろ太陽が昇って来るのを見ましたが、経験したことのないようなとても不思議な感動をしたのを今でも覚えています。
司会 いまのお仕事はどんなことをされているのでしょうか。
ロマニー:(問題には素早く対応)
私は施設管理課の責任者をやっており、様々な問題や課題がありますがとてもチャレンジングです。いまや問題解決が私の趣味の一つになっているくらいです。数名のメンバーと協力しながらチームワークでいい仕事ができています。施設管理業務を通じてチームメンバーは専門家としての知識や経験を増やすことができていますし、難しい問題に直面しても、いい業務マニュアルを整備していることもあり、適切に処理できるようになっています。
また、問題解決を通していろんなことを学べるし、自分を成長させてくれる機会にもなっていると思っています。最も学んだことは、「問題にはすばやく対応する」ということです。対応が遅れれば遅れるほど事態が悪化するリスクがあるからです。
司会 それではロマニーさんの夢はなんでしょうか。
施設管理部 ロマニーさん(写真右)
ロマニー:(信頼の維持、それと・・)
“日本の病院”という言葉を聞くと、カンボジア人は間違いなく“信頼”と“高品質”を連想します。だから毎日毎日、たくさんのカンボジアの患者さんがそのサービスを受けるために病院に来てくれているのです。わたしのチームは、院内で感染症を広げないためにもこの施設の衛生状態を良好に維持していかなければなりません。「信頼され続ける病院を維持すること」、それが私の夢です。
もう一つ、別な夢があります。
現在、私は造園に興味を持っています。日本での研修の際に北原病院のシニアスタッフから学んだのがきっかけとなり、木々や花々をつかった魅力ある造園づくりを勉強し始めたところです。
私が50歳になるころ、私立学校の教育者となり造園を教えたいです。子供たちのために特別に魅力的なカリキュラムを作り、彼らが将来を考える上でのヒントにしてもらえればと思っています。カリキュラムの一つとして、ガーデニングデザインのコースを作って、植物の育て方や世話の仕方について教えるのが私のもう一つの夢です。その結果、彼らが豊かな想像力を育んでくれるのではないかと願っています。
司会 それでは最後に、看護部門のチバさん、お願いできますか。よろしくお願いします。
看護部 チバ氏
チバ:(開院初期から勤務、今は看護部門のチーフ)
こんにちは。私はサンライズ病院で2016年の病院の開院当初から働いていますが、この病院は質の高い医療を丁寧に患者さんに提供して来てると思います。また、カンボジア人スタッフに医療の知識やスキルを身に付けさせてもらうとともに、医療提供者としての基本も教えてもらっています。
サンライズ病院での勤務は6年目になりますが、オペナースとしてサブマネージャーからマネージャーになり、そして看護部門のサブチーフを経て今はチーフを任されています。また、現在、品質改善委員会、リスク管理委員会のリーダーになっていますが、管理職の一員としてこのような病院内の様々な委員会などの場を通じて、私の知識やスキルを他の医療提供者や事務スタッフに共有することも大事な役割と考えています。
看護部 チバ氏
司会 チバさんの夢はなんでしょうか。
チバ:(トップマネジメントとして活躍したい)
私の夢は、このままどんどん成長して近い将来、サンライズ病院でもっと高いマネジメントレベルで仕事ができるようになることです。そうなればこの病院の医療サービスや運営システム、さらにはカンボジアの国そのものをもっと良くするために、より多くのスタッフに知識やスキルを教えたり影響力を発揮できると思っています。
ここ数年私が重視しているのは、一所懸命に働くこと、高い責任感を持つこと、医療に限らず経営、ビジネス、社会、倫理など学び続けることです。そして、若手スタッフの能力を上げて強力なチームとするために課題を与えて教育していくことを計画しています。私だけでは仕事ができませんから、みんなを育てることが大事なのです。
サンライズ病院の戦略や事業展開とともに私の思いや計画を実行していけば、私の夢にもたどり着くと信じています。正直にいって5年以上の時間はかかるかもしれませが。(笑)
司会 みなさん、本日は貴重なお話、ありがとうございました。
(左から、ロマニー氏、レケナ氏、チバ氏、ビトウ氏)
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