少子高齢化や産業構造の変化などを背景に日本でも企業間のM&A(合併と買収)のニーズが急拡大しています。株式会社ストライクは、1997年に中堅・中小企業を対象としたM&Aの仲介業者として創業。これまで1,700件以上(2022年3月現在)のM&Aを成立させた東証プライム上場企業です。
今回紹介するのは、事業法人部マネージャーの依田勇生です。彼は会社の売り手と買い手の間に立つM&Aコンサルタントとして活躍する一方、先日、男性としては社内初となる育児休業を取得しました。プレーイングマネージャーとして日々忙しく働く依田に育児休業を取った経緯や、M&Aコンサルタントのやりがいなどについて聞きました。
依田勇生
株式会社ストライク
事業法人部長
公認会計士 税理士
あらた監査法人(現PwCあらた有限責任監査法人)、プライスウォーターハウスクーパース株式会社のディール部門(現PwCアドバイザリー合同会社)で、事業再生支援やM&A業務に従事後、FinTechベンチャーを経て、2017年1月にストライクに入社。コンサルタントとして、後継者不在に悩むオーナー企業や、事業再生型のM&Aに取り組む。公認会計士・税理士。長男誕生を機に2022年3月から1カ月間、育児休業を取得。
経済合理性だけで人の心は動かない。それはM&Aも同じです
——どんなお仕事をされているのですか?
後継者不在で事業承継を検討している企業や不採算事業からの撤退を考えている企業と、企業や事業を買収しさらなる成長機会を得たいと考えている企業を引き合わせ、M&Aの成立までに必要な実務をサポートする仕事です。私自身は、部長職としてマネジメントに従事しつつ、プレイヤーとしてもM&A案件を担当しています。お客様の顔ぶれはITや製造業などさまざまです。
——なぜストライクに転職を?
以前在籍していた大手アドバイザリーファームでは、売上高が数千億から数兆円規模の企業を対象にした、M&A案件や事業再生案件に携わっていました。非常にダイナミックな仕事でやりがいもあったのですが、プロジェクトの規模が大きいだけに、「この仕事は自分がやったんだ」と言えるだけの手応えを感じる機会は限られていました。ストライクに魅力を感じたのは、中堅・中小企業のオーナーと半年から1年をかけて膝詰めで向き合い、初回アプローチから調印式を迎えるその日まで、一気通貫で担当できるからです。大手企業相手では味わえない手触り感のある仕事がしたくてストライクに入りました。
——どんなときに仕事のやりがいを感じますか?
中堅・中小企業の企業間や大企業との架け橋になって、日本経済の発展に貢献できることでしょうね。M&Aにはさまざまな目的があります。たとえば、後継者不在のため事業存続の危機を別の会社に引き継いでもらうための事業承継型M&A、赤字会社を黒字転換するために実施する再生型M&Aや、気鋭のスタートアップが更なる拡大を目指す成長型M&Aなどがあります。M&Aコンサルタントは、案件ごとに最適と考えるスキームやプロセスをご提案しながら、双方が納得いくまで話し合っていただけるよう環境を整え、交渉成立を後押しする立場。契約完了ともなれば売り手、買い手の双方から喜んでいただけますし、従業員の雇用を守り、歴史あるブランドや技術を次の世代に継承する意味でも、M&A仲介が果たす役割は大きいと自負しています。
家庭も仕事も大事にしたい。だから迷わず取得しました
——育児休業を取った経緯について聞かせてください
そもそも子育てが好きだったので取得には前向きだったのですが、やむにやまれない事情もありました。長男が生まれたのがコロナ禍の真っ只中だった2022年3月です。3年前、長女が生まれたときは妻の実家にサポートをお願いできたのですが今回はそれも難しい。妻の入院期間や長男のケアに加えて、長女の保育園の送り迎えや食事の世話もありますから、家族を守るためには仕事にばかりかまけているわけにはいきません。そんな事情もあって育児休業を取得しました。
——とはいえ社内では男性初の取得です。迷いがあったのでは?
私が取得を申し出るまで育児休業を申請した男性はおらず、しかもチームリーダーとしての立場もあります。正直に言えば、周囲の反応が少し気になったのは確かです。でも上司に話したら「いいね、オレも取ろうかな」でおしまい(笑)。部下も同僚も取得を前向きに捉えてくれたので、ネガティブな反応はまったくありませんでした。
——休業中、担当していた業務はどのような形で進められたのでしょう?
チームの協力を得て対応してもらいました。幸いチームには優秀なメンバーが揃っています。安心して仕事を任せることができました。そもそも当社が取り組むM&Aは半年から1年はかかる案件が多く、ある程度は自分でスケジュールを管理しやすい仕事でもあります。おかげで休業中は、家族との時間を存分に楽しめました。
——育児休業を取った感想は?
妻からの評価が少し上がったかも知れません(笑)。1カ月だけですが、家族と真正面から向き合える時間をつくれたのは貴重な経験でした。もちろん育児休業が明けても子育ては続くので、家庭と仕事の両立は当面の課題です。もちろん、子育てを言い訳に仕事を疎かにしたり、年間目標の達成を逃したりするわけにはいきません。限られた時間で成果を出せるよう、子育ても仕事も全力で取り組みたいですね。
成果を出すまで自分を信じて粘れるか。真価が問われる仕事
——M&Aコンサルタントにキャリアチェンジを希望する人にアドバイスはありますか?
経営者層の視点に立ってサービスや商材を提案した経験があれば、事業の売り手や買い手を探してアプローチしM&Aを提案するプロセスに違和感を覚えることはないと思います。とはいえ、同じM&Aでも採るべき手段はその都度変わりますから専門性が問われます。人間相手のビジネスなので、想定通りに物事が運ばないことばかりです。そのため、主体的に動き、不測の事態に直面しても前向きに捉えられる受容性や、何があってもめげず根気強く取り組む意思の強さが求められます。向き不向きがある仕事かもしれません。
——どれくらいの期間で一人前になれますか?
先輩たちと一緒に1つ2つの案件を経験すれば、自分に求められている仕事の質や、取り組むべき仕事の内容は理解できるでしょう。でも、ファーストコンタクトから、M&A成立までに必要な実務をこなし、売り手、買い手の主張や考えに耳を傾けながら、交渉をまとめられるようになるまでには、何年かはかかると思います。ただ、その経験は、ビジネススキルとマインドの両面で大きな財産になるはずです。
——経営や金融の知識はどの程度問われますか?
転職する時点で知識が乏しくても問題ありません。社内には公認会計士や税理士、弁護士が所属しているので、不明点があってもすぐに助言を得られますし、専門知識は努力次第であとからいくらでも身に付けられますから。ただ、一人前になり成果を出すまでには時間が必要です。大事なのは自分を信じてどれだけ粘れるか。この世界にじっくり腰を据えてキャリアアップしたいと思える方にはお勧めします。
M&Aの仲介者は「レフリー」。さまざまな経験が役立ちます
——実際、どんな人が活躍していますか?
出身業界で言うと、銀行や証券のほか、同業他社から転職されてこられた方だけでなく、たとえば人材業界や広告業界など、金融とはかなり距離のある業界から来られた方も活躍しています。逆に言うと、新規開拓営業等経験があれば、それを土台に成長していける世界でもあるんです。
——依田さんにとってM&Aコンサルタントはどんな仕事ですか?
私が考えるM&Aコンサルタントは、売り手と買い手が臨む「試合」をさばく「レフリー」のようなイメージですね。当然ながら、どちらか一方に肩入れはできません。交渉のルールから外れそうになったら正し、双方が納得する落とし所に着地させるのが腕の見せ所です。「レフリー」として信用されるには、経営や法務、財務や税務に関する知識も必要ですし、主体性や誠実さ、個性的な経営者に信頼される人間力など、多岐にわたる素養が求められます。年上の経営者に対して自分の意見を述べたり、課題を指摘したりするのは勇気がいるものですが、それを乗り越えた先には得るものがたくさんあります。経営者にしか持ち得ない高い視座や鋭い着眼点にも触れられるからです。その上、成約すれば感謝もしていただける。ほかの仕事ではなかなか経験できるものではありません。
——M&Aコンサルタントに興味を持つ方にメッセージをお願いします。
M&Aを通じて誠実に仕事と向き合いたい、困っている経営者の力になりたい、社会に貢献したいという方がいらしたら大歓迎です。私たちが全力でサポートします。
ストライクでは、現在金融機関や事業会社などで開拓型の法人営業を経験した皆さんを広く募集しています。後継者不足に悩み事業売却を考えているオーナーと事業拡大を狙う伸び盛りの企業をつなぎ、新しい未来を紡ぎ出す仕事がここにあります。成長著しいM&A市場で新しいキャリアを築きませんか。ストライクはそんな皆さんの期待に応える仕事とやりがいを提供します。