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アジアから世界へ。PLUGのグローバル進出の可能性【Headline Asia Partner & Co-Founder・田中章雄氏 / Associate・西島伊佐武氏】第1回 特別対談企画

2024年11月20日に、弊社STRACTが発表した資金調達を機に、弊社株主との対談記事を複数回にわたって展開してまいります。

今回、Headline Asia Partner & Co-Founder 田中 章雄 氏とAssociate 西島 伊佐武 氏、弊社代表・伊藤と取締役大川との対談を行いました。

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目次

  • 田中氏のご経歴、エンジニアから投資に携わるまで

  • グローバルで成功しているプラットフォームの多くは創業者がエンジニア出身!?

  • グローバルで勝負を仕掛けていくには

  • グローバルで成功している類似サービス

  • IVSとの歩み、IVSの目指す世界観

  • Headline Asia5号ファンドの設立

  • シリーズAでリード出資をしていただいた理由

田中氏のご経歴、エンジニアから投資に携わるまで

田中氏(以下、田中):実は、僕も伊藤さんと同じく昔はエンジニアでした。90年代に北米で起業して、インターネット産業の初期の頃にスタートアップを立ち上げた経験があります。ミドルウェア系のソフトウェアを作っていて、1996年に創業して、約3年後にアメリカ・ボストンの会社に買収され、その後さらに複数回の買収を経て、今ではAdobeの一部になっています。

その頃は、起業家みたいな言葉すらあまり一般的ではありませんでした。インターネットが好きでモノを作っていた人たちが、気がついたら起業していた、そんな時代です。

僕がインターネットを始めたのは1988年です。当時はISP(インターネットサービスプロバイダー)なんて存在していませんでした。一般のユーザーがインターネットを使うことができなかった。インターネットを使えるのは北米や一部海外の大学の学生たちだけで、学生同士のコミュニティの中で使っていました。ネットオタクをずっとやってました。


投資を始めたのは、Adobeになる直前で、Macromediaという会社にいた時期です。当時Dreamweaverなどのウェブツールを作っていた会社です。もともとCTOとして北米からアジアに戻ってきたのですが、途中から投資担当になったんです。簡単に言うと、アメリカ国外のすべての投資を見るようなインターナショナル投資部門ができて、いきなり投資担当になったのが2004年末ぐらいですね。その後、Adobeと合併した後もAdobeの新興市場の投資ヘッドをやっていましたので、通算で4年ちょっとアメリカのコーポレートVCをやっていました。

伊藤:ベンチャー投資に携われてから、20年くらいになりますか?2000年代初頭にはまだそんなになかった頃でしたよね。

田中:アメリカにはその頃からベンチャーキャピタルがありました。ただ、日本ではまだそれほど多くはなかったですね。それに、アメリカと日本ではベンチャーキャピタルのカルチャーが違うと思います。当時僕は海外担当だったのですが、一部引き継ぎ等で国内案件にも触れることがありましたが、アメリカは金融系の人よりも、インターネット産業から出てきた人やテック系の投資家が非常に多かったです。それに対して日本を含むアジア全体、中国や東南アジアも含めてですが、テック産業から来た人よりも、投資から来ている投資家が多いという印象があり、これが大きなカルチャーの違いだと思います。

伊藤:金融マンの視点でベンチャーを見るのと、テクノロジーオタクの視点でベンチャーを見るのとでは、全く見方が違いますよね。

田中:一番わかりやすい例として、コーディング経験のある投資家と、そうでない投資家の違いで区切ると、その差が顕著だと思います。アメリカは技術に詳しい投資家が多いという印象がありますね。


グローバルで成功しているプラットフォームの多くは創業者がエンジニア出身!?

田中:Headlineの視点というよりも、個人的な持論ですが、世の中全体を見たときに、大きなプラットフォームを作れている会社は、ほとんどすべてファウンダーがエンジニア出身だと思います。例えば、最近NVIDIAがAppleの時価総額を抜きましたが、NVIDIAのジェンスン・フアン氏も、もともとGPUというグラフィックスカードを作っていたエンジニアですよね。彼に抜かれたAppleも、もともとはスティーブ・ジョブズやスティーブ・ウォズニアックというエンジニアが創業した会社です。また、僕がいたAdobeも、今はプロフェッショナルCEOが率いていますが、もともとは2人のPh.D.ホルダー、つまり博士たちが創業した会社なんです。彼らは画像やグラフィックスに関する研究をしていたエンジニアでした。

伊藤:確かに、アメリカの大手企業はそういった背景を持つ創業者が多いですよね。

田中:マイクロソフトも同じです。アジアに目を向けても、時価総額が大きな企業は中華系のネット企業が多いですよね。例えばバイドゥ、テンセント、シャオミも、すべてエンジニア出身のCEOが率いています。唯一の例外がアリババのジャック・マーで、高校の英語教師出身の方ですね。ただ、それを除けばほとんどの中華系企業もトップはエンジニアです。だからこそ、彼らはグローバルトップ10に入るようなインターネット企業を作れています。

伊藤:その点、日本はまだそういったスケールの会社が生まれていないですよね。

田中:残念ながらそうなんです。日本からも、そうしたグローバル規模で活躍できるプラットフォーム企業が生まれてほしいと願っています。『PLUG』も製品として非常に魅力的ですが、エンジニア社長が作ったからには、ぜひグローバルプラットフォームを目指してほしいと思っています。

グローバルで勝負を仕掛けていくには

伊藤:グローバルプラットフォームになるためには、日本からどう進んでいくべきだと思いますか?

田中:まずは日本からスタートすること自体は全然悪くないと思います。ただ、『PLUG』という製品ができた背景を見ると、クッキーが使えなくなるという状況で、AppleやGoogleの新しいプライバシーポリシーに準拠した、eコマース向けの集客プラットフォームのニーズは、日本だけでなく世界中にありますよね。ガラパゴス化を避けるのが大事です。昔のiモードのように、日本で一番使いやすいものを作るだけだと、結局海外で誰も使ってくれないという事態になりかねません。むしろ、グローバルで標準となるようなものを長期的には目指していただきたいですね。

伊藤:グローバルといってもスケールが大きいですが、まずどの地域から攻めるべきでしょうか?

田中:市場の大きさでいえばもちろんアメリカもやるべきですが、STRACTが海外に出て行った際にリーチしやすいという点では、アジア市場は非常に魅力的ですね。我々の投資先で、香港系の会社があるんですが、アジアのミドルクラス層をターゲットにしたプラットフォームを運営しています。この会社は200万人ほどのユーザーを抱えていて、アジア中のミドルクラス層が世界中から買い物できるプラットフォームになっています。

アジアでは日本、韓国、香港、台湾、マレーシア、シンガポール、オーストラリア。欧米ではヨーロッパ、北米(カナダ、アメリカ)ですね。そして面白いのが、そのプラットフォームで一番売れているのが日本の商品なんです。これは、日本の商品が海外で特に需要が高いことを示しています。STRACTのように日本国内のeコマースプラットフォームと関係を持っていることは、アジアの人たちにアクセスする一つのカギだと思います。それをうまく活用して、アジア市場への足掛かりにしていけると良いですね。

伊藤:だんだん具体的なイメージが湧いてきました。会社でもグローバルの話はよく議論します。まずは国内の大きなマーケットをしっかり攻めたいという思いがありますが、その先にグローバル市場は必ずやらなければいけない市場命題だと思っています。

田中:ぜひ頑張ってください。グローバル市場で成功する姿を期待しています。

伊藤:普段からグローバル市場の情報はウォッチされていますか?

西島氏(以下、西島):海外だと特にUS、またVCの発信をよくチェックしています。日本国内では「Safari」などがキーワードになると思いますが、今後はさまざまなプロダクトを開発していく中で、ECの最適化を主軸にしつつ、国内だけでなくグローバル市場も視野に入れて展開できれば、非常に大きな成長が期待できると思います。楽しみにしていますよ。

田中:今「Safari」というキーワードが出ましたが、一つ『PLUG』の視点で良いなと思うのは、現時点でAndroidにまだ100%対応できていないとしても、Safari対応だけで十分入り口としては悪くないということです。アジアのミドルクラス以上の富裕層は、多くがiPhoneを使っていると思うんですよね。確かにAndroidの数は多いですが、iPhoneは高価なデバイスなので、使っている人はある程度所得がある層に限定されますし、eコマースにも積極的に参加する層でもあります。そういう意味で、最初のターゲットとしては非常に良いフィルターがかかると思います。

伊藤:グローバルという視点でいくと、大川もアメリカにいましたね。

大川:前職が伊藤忠商事でシリコンバレーに駐在し、2年間ほど住んでいました。

田中:パロアルトとか、その辺りですか?

大川:3年ほど前のことですが、当時はその辺りによく行っていました。

グローバルで成功している類似サービス

大川:アメリカでは「PayPal Honey」や今はRakuten.comになっている「Ebates」といったサービスがあり、現地にいた時から本当に愛用していました。当時はまさか自分が日本で『PLUG』のようなサービスをやるとは全く思っていませんでした。が、先輩や後輩がアメリカに来た際には「Honeyを入れた方がいいよ」とよく勧めていました。それほど便利で刺さるサービスであり、ユーザーとして価値を感じていました。

物を安く、お得に買いたいというニーズは普遍的で、老若男女問わず、誰しもが持っているニーズです。そう考えると、やはりグローバルに視点を向けるのは必然だと思います。

そして、グローバルに展開する際には、入り方をきちんとカスタマイズすることが重要だと思っています。たとえば、アメリカではクーポンコードを探す文化が根付いていますよね。これを自動化することで、サービスの利用が爆発的に増えたのが「PayPal Honey」の成功要因です。

日本では、楽天やYahoo!ショッピングなどECモールが乱立している状態です。この特殊なマーケットに対してしっかりとカスタマイズしたことで成功しているのが『PLUG』の強みです。これをグローバル展開に置き換えるなら、その国ごとの特性に合わせてサービスをカスタマイズすれば、十分成功する余地があると思います。

現地の文化や消費者感覚をしっかり収集して、それをもとにプレストをしながら市場に入っていくのは面白いと思います。地域ごとのニーズを理解することが鍵になるはずです。

西島:日本の製品は高品質で、海外から見れば価格的にも競争力があります。海外ユーザーにとって、日本の製品が「買う価値がある」と感じられるのは大きな強みです。この強みを活かせば、グローバルで成功する可能性は十分にあると思います。そして、それを実現することで、次世代のグローバルスタートアップとして成長できるのではないでしょうか。

IVSとの歩み、IVSの目指す世界観

伊藤:実は僕、IVSの大ファンで、高校生の時からIVSの「LAUNCH PAD」をずっと見ていました。Ustreamで配信されていた時代から、高校を休んでまで見ていました。特に2012年、株式会社Labitが優勝した時の大会には感銘を受けて、そこからスタートアップをやろうと決意したんです。

田中:2012年は大学生企業家がブームになっていた頃ですね。若手の起業家が多く登場して、非常に活気がありましたね。

伊藤:まさにその頃です。僕もその頃からプロダクトを作っていて、2013年の春に17歳で応募したんですが、普通に書類審査で落ちてしまいました(笑)。そこから9年越しで、2022年に沖縄のLAUNCH PADに出場させていただき、そこで初めて田中さんや西島さんと出会って、シードで出資していただきました。LAUNCH PADがきっかけで、そこから一歩を踏み出せたというのが懐かしいですね。

田中:ありがとうございます。まさかそんな昔の話が出るとは思いませんでした。

伊藤:西島さんに審査してもらったのですが、当時どういう印象を持たれていましたか?

西島:最初の印象としては、とても便利そうだと思いました。自分もECで買い物しますし、社内の備品なども僕が買ったりするのですが、『PLUG』を使ってスマホで購入するとキャッシュバックがもらえるな、これは便利だなと思い実際に今も使っています。

シリーズのディスカッションを進める中で、便利さはもちろんなのですが、EC体験の最適化やエージェントとしての将来像に大きなポテンシャルを感じて、「ぜひ一緒に」と思いました。

伊藤:IVSは国内で一番大きなスタートアップイベントだと思いますが、HeadlineにとってIVSはどういう存在ですか?

田中:IVSの原点は、日本国内のスタートアップエコシステムが海外に比べて小さかったので、それを育てようという意図から始まりました。規模は大きくなりましたが、課題は「スタートアップの数」よりも「スタートアップのスケール」にあると思います。

東証はIPOしやすい環境は整っていますが、小粒なスタートアップが多い。ユニコーン企業の数を見ると、日本は東南アジアよりも少ない状況です。また、GDP規模が日本の3分の1程度しかない韓国よりも少ないですし、人口規模で言うと劣るドイツやフランスの方が多くのユニコーン企業を輩出しています。

これは、グローバル化と密接につながる課題だと思います。大きなことをやるスタートアップがまだ日本から出てきていないことが要因の一つですね。次のIVSのステージとしては、グローバルプレイヤーになれるスタートアップをどんどん輩出し、そのためのコミュニティを作っていきたいと考えています。


伊藤:Web3のような分野にも注目されているのは、日本からグローバルに出ていく会社を増やしていきたいという意図があるからでしょうか?

田中:我々の前の世代の日本のベンチャー企業、例えばソニー、ホンダ、トヨタ、任天堂などがありますよね。彼らは日本国内でトップクラスの企業ですが、売上構成を見ると圧倒的に海外比率が高いんです。

そういった産業をもっと日本から生み出さないと、円安の流れは止まらないと思います。ぜひ『PLUG』ももっと海外に出て、外貨を稼いで欲しいですね。

伊藤:ECは世界共通ですし、日本の商品は特に売れやすいですから、これはチャンスだと思います。

大川:まさにその通りです。今回リードで出資いただいて、結果でお返しするという点で行くと、ユニコーンを目指すのはもちろんですが、時価総額5,000億円と言っている中でそれすらも通過点として、さらに超えていける会社を目指していきたいと思います。


Headline Asia5号ファンドの設立

伊藤:Headline Asia、5号ファンドの設立おめでとうございます!

田中:ありがとうございます。

伊藤:ニュースにもなっているかと思いますが、今後どのような投資をされていく予定なのか、ぜひお聞かせください。

田中:名前に「アジア」とあるように、ファンドは日本だけでなくアジア全体を対象としています。ただし、日本が我々のメインマーケットですので、ファンドの6割ちょっとを日本に割り当て、残りをアジアでという感じです。

その中で我々が今注力している分野がいくつかありまして、一つはフィンテックですね。
フィンテックは、世界でもっともユニコーン企業を輩出している分野です。

最近だと、例えば、ブラジル発のフィンテックの「Pismo」という会社が、アメリカのカード会社のVisaに1ビリオンで買収されるなど大型のイグジットが色々ある中で、御社が行っている事業も広い意味でフィンテックに分類されると考えています。お金の流れに関わるビジネスであり、日本やアジア全体で非常に大きなチャンスを秘めた分野だと思います。
そうしたこともあり、フィンテックは注力している主要領域の一つです。

もう一つ注目しているのが、御社のマーケットとも非常に相性の良い、クロスボーダーのeコマースと物流です。この分野ではすでにいくつかの投資を行っていますが、今後、日本国内のeコマース市場だけを見ていては、市場規模の限界が見えてくると考えています。

一方で、海外から日本の製品やサービスを買いたいというニーズが増えています。私たちとしては、そうしたニーズをさらに増やすことが必要だと考えています。

相性の良い連携先として挙げられるのが、クールジャパン機構さんです。彼らのミッションは、日本のIPやサービスを海外に展開することであり、クロスボーダーのeコマースや物流の領域には、今非常に興味があります。

シリーズAでリード出資をしていただいた理由

西島:理由は大きく二つあります。一つ目はプロダクトとその構想ですね。価格比較やキャッシュバックの便利さはもちろんですが、伊藤さんが語られている「ユーザーのインターネット体験の最適化」という構想に大きな可能性を感じました。『PLUG』が将来的に「ECならPLUG」という存在になるポテンシャルを持っていると考えています。

二つ目は、お二人との関係性です。2020年から様々な機会でお話させていただいて、個人的にも「一緒にやりたい」という思いが強くありました。伊藤さんのプレゼンは何度聞いても面白いし、周囲の人々も同じように感じています。チーム全体が『PLUG』の成長に情熱を持っていて、その熱意が伝わってきました。

会社の雰囲気やチームの目指す方向性も素晴らしいと思います。一度会社に遊びに行けば、それがリアルに伝わると思いますよ。

伊藤:外から見るだけではわからない部分も多いですよね。

西島:STRACTのチームは「文明を作る」というスケールの大きな世界観を共有していて、それに向かって本気で挑戦している姿が印象的です。

田中:西島が『PLUG』に転職しちゃうんじゃないかって心配になっちゃうくらい(笑)。

伊藤:そう言っていただけて嬉しいです。何よりも、みんなの目線が本当に高いんですよ。さまざまな分野で活躍してきた人たちが、もう一度スタートラインに戻って「大きな山に登ろう」という姿勢で集まっている。それは、『PLUG』がやろうとしている事業のスケールの大きさや、目指している世界観が本当に壮大だからこそだと思います。みんなが本気で「面白い世界を作るぞ」という気持ちでやっていますね。人生をかけて、「文明を作るんだ」という意気込みでやっている。我々は基本的に出社型の会社なのですが、毎日顔を合わせて、共有していくことが、会社の成長に繋がっていると感じます。リアルでのコミュニケーションの場が、チームの一体感や目標に向かう力を高めているんですね。興味をもった方は、一度会社に来ていただければその空気感が伝わると思いますよ。



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