ホテル運営企画やソリューション連携にて、業界のDXを推進していくパートナー企業の方々とSQUEEZE CEO舘林による「DXパートナー対談」企画!
今回は2010年の創業以来、民泊物件運用の先駆者として施設の企画プロデュースから運営までを手掛け、現在は北海道内外で約160室を運用しているMASSIVE SAPPORO(マッシブサッポロ)の川村社長にご登場いただきました!
MASSIVE SAPPOROの運営物件においては、そのすべてにSQUEEZEが提供するクラウド型宿泊管理システム「suitebook」を導入いただいています。
SQUEEZE創業当時から続くそのパートナーシップと両者で描く未来について熱く語っていただきました。ぜひご覧ください!
【プロフィール】
〈川村 健治 かわむら けんじ〉氏
1978年、北海道札幌市に生まれる。 2004年より総合不動産デベロッパー株式会社プロパストにて、多数のプロジェクトマネージャーを歴任。 2009年より株式会社トランジットジェネラスオフィスグループの不動産部門であるリアルゲイトの創立メンバーとなり、お台場『the SOHO』原宿『THE SHARE』などのプロデュースを行う。 同時期に株式会社MASSIVE SAPPOROを創業し、札幌にてシェアハウスの草分けとなるBUIEをプロデュース。 2011年11月に帰札し、シェアハウス・シェアオフィス・民泊や簡易宿泊所のプロデュースとオペレーション、仲介や改修工事、設計施工などの事業を行う。
可能性しかない、でも前例もない 民泊黎明期の荒野を振り返る
― この2ショットは久しぶりでしょうか。お二人は2014年SQUEEZE創業以来のお付き合いだと伺っています。
SQUEEZE代表・舘林(以下、舘林):SQUEEZEを創業してしばらくした時に、Airbnb日本支社から、雪まつりに向けて札幌の物件を増やしたい、現地に良いオペレーターはいないかと聞かれたんです。それでいろいろと調べていくうちに、既に札幌で複数物件を運用している方を発見して、それが川村さんでした。すぐにFacebookでメッセージを送りました!
MASSIVE SAPPORO・川村社長(以下、川村):かなり鮮明に覚えていますよ! しかも北海道の共通の知り合い経由で連絡をくれたんですが、そういうところもニクい。その頃MASSIVEはシェアハウスを軸に、札幌で7物件ほど運営をしていましたね。
舘林:とにかく川村さんとつながりたくて必死でしたから!(笑)2014年には「民泊」というと個人で運用している物件がほとんどで、法人オーナーが運営代行会社に依頼をするビジネスはまだ数えるほどでした。
川村:まさに民泊「黎明期」でしたよね。舘林さんから「インバウンド需要の可能性」「国内宿泊客の民泊利用へのニーズ」などを熱くプレゼンされて、圧倒されました。それまではシェアハウス運営が本業で、そのシェアハウスに競争優位性を付加するためにAirbnbに掲載していたんです。Airbnb経由で物件を利用した海外ゲストと、シェアハウスのゲストが国際交流できたら面白いし、差別化になるなと。でも話を聞いて、あれ、もしかしたらもっと民泊・宿泊利用客のニーズに応えられるポテンシャルがあるんじゃないかと気付くきっかけになりました。
MASSIVE SAPPORO HPより
舘林:そもそもAirbnbを補完的なサービスとして使いながら、シェアハウスのバリューアップを図っていたこと自体が面白いですし、唯一無二ですよね。川村さんのそういう発想がすごく好きです。これまでの歴史の中では、時に激論を交わすこともありましたが…
川村:けんかではないけど、意見をぶつけ合うみたいなのは何度もありましたよね。なにせ民泊市場全体がまだまだ成熟していなかった。誰も正解を知らないし、舗装されていない荒野を歩いていくようなもので、転んだり、いろんな人が出てきていろんなことを言われたりして、それでも何とか目的地を議論しながら進んできました。そうそう、2015年頃に舘林さんと一緒にどこかの物件に宿泊した時、運営代行している民泊物件のゲストからのメール返信を舘林さん自らやっていたのがすごく印象に残っていますね。この業界って、現場感覚がないと絶対に良いマネジメントはできないと思うので、手を動かしながら現場を理解しようとしている姿勢にすごく共感したし、信頼できるなと思いました。
舘林:そう言っていただけると嬉しいです。あの時の経験があるから、今も現場感覚を絶対に忘れないようにと常に心に留めています。法律もなかったところから、いわゆる「民泊新法」が2018年6月に施行され、行政への届け出が必須になり、営業日数の上限が加わるなど、民泊運営へのハードルが高くなりました。一方で整備がされたことで大手ディベロッパーやホテルオペレーターが民泊型のホテル運営に参入し始めるなど、急速に市場が拡大していった印象はありますね。
民泊とホテルの違いは、ゲストには関係ない どんな体験価値が提供できるかが大事
― まさにSQUEEZEの歴史はMASSIVE SAPPOROとともにありですね。長きにわたって 事業パートナーとして連携してこられたポイントはどこにあるのでしょうか?
舘林:お互いの強みをうまく生かせていることがポイントじゃないでしょうか。MASSIVEは現地での企画設計やオペレーション・オーナーリレーション、SQUEEZEは「suitebook」やオンラインコンシェルジュサービスを軸にしたオンラインでのオペレーション構築・全体の仕組み作りと、それぞれの得意とする領域で連携することにより、さまざまなタイプの物件を効率的に運営しながら、新たな宿泊体験価値を創造できていると自負しています。
MASSIVE SAPPOROの無人ホテルブランド「UCHI」の一例
川村:不動産をいかにして利活用するか、という観点では、これまでの企画・プロデュースの実績から、施設の作り込みや開業ノウハウには自信を持っています。ただIoTを駆使した無人チェックイン」など、新しいスタイルのホテル運営、オペレーションを実現していく上ではSQUEEZEのソリューションが不可欠です。これは両社の連携のポイントとは違う話ですが、SQUEEZEは先見の明が光っていると思っています。この業界で資金調達をどこよりも先に実施してきていますし、先ほど話したような市場の変化にもいち早く順応して、システム開発やサービス提供につなげていている姿から学ぶことは多いです。舘林さんの日々の情報収集や発信力のたまものですね。
舘林:いやあ本当に恐縮です。これからもいち早く有益な情報をお届けできるように頑張ります! MASSIVEさんの企画プロデュース力とスピード感にもいつも勉強させてもらっています。1カ月で20~30部屋ぐらい開業していた時もありましたよね? あれは本当に驚きました。
川村:こんな感じで褒め合っていていいんですかね?(笑)ありがとうございます!
― ぜひ褒め合ってください!少し話は変わりますが、MASSIVEさんも創業から少しずつ事業内容を変化されてきていますよね。
川村:はい。創業した当時は、事業を多角化したいと思っていた時代もありました。「北海道を愉快に楽しくMASSIVEに」というコンセプトを軸に、主にインバウンド向けのレンタカーサービス、忍者体験、茶道体験など、いろいろな領域に踏み込んでみたのですが、今はある程度絞り込んで不動産のバリューアップに注力しています。「UCHI」という民泊・無人ホテルの自社ブランドの展開もスタートしました。
舘林:アパートメントタイプや一軒家など、一貫して「グループで泊まれる」という価値を訴求しているのもMASSIVEの特徴ですよね。私たちはよく「民泊とホテルの違いって何ですか?」と質問されることもあると思うんですが、これに関しても川村さんの持論をぜひ聞きたいです。
川村:その質問待ってました!民泊とホテルって、実はもはや施設をオープンする時にどういう法律にのっとって開業するかという、事業者側のオペレーション上の違いでしかないんですよね。ゲストにとっては民泊なのかホテルなのか、ましてや許認可がどうかなんて関係ない。大事なのは「そこでどんな体験ができるのか」だと思うんです。われわれの運営する物件を利用してくださるゲストは「宿泊をみんなで同じ空間で楽しみたい」というグループ、家族旅行の方が大半です。そういう方たちにいかに楽しんでもらえるかを重視しています。
UCHI大通11の客室
舘林:SQUEEZEも「家族やグループみんなで泊まれるホテル」がコンセプトのホテル「Minn」を運営しています。シングルやダブルで泊まれるホテルの客室の供給数に比べて、大人数で1つの空間で泊まれるホテルはまだまだ圧倒的に市場に足りていないですよね。
川村:そのとおり! 旅行市場の6割近くがグループ旅行者である中で、3名以上で泊まれる客室は4割弱しかないというデータ※1もあります。 友達と旅行したら旅館の部屋で枕投げしたいでしょ?
舘林:これからは広いアパートメントタイプのホテルで枕投げ、がスタンダードになるかもしれませんよ。(笑)
川村:それ良いですね。「費用が安いから、民泊やアパートメントタイプのホテルを選ぶんでしょ?」というのは大きな誤解。ここは声を大にして言いたいです。もちろん3名以上で宿泊すれば1人当たり単価が安くなることもあるかもしれませんが、逆に2名以下で宿泊したら割高だったりもしますよね。費用もさることながら、空間利用の目的に対してふさわしいから選んでいるわけであって、そもそもの商品価値が全然違うんです。
銭湯を無人ホテルにコンバージョン 「無人オペレーション型ホテル」によって観光資源を生かし、地域活性につなげていく
― MASSIVEさんは2020年7月には札幌の『山鼻温泉』を無人ホテルとして再生されました。この取り組みも非常に興味深いです。
川村:銭湯は地域の心のよりどころであり、重要な観光資源だと考えています。後継者の問題や収益など、さまざまな課題があり銭湯として継続していくことが難しいケースは全国に数多くあると思いますが、立地がいいと廃業後にマンション用地などに使われがちなんです。原型を残しながらも、新たな宿泊施設としてその資源を維持することに貢献していきたいと思っています。
舘林:「あるものをどう生かすか」という考え方にすごく共感します。ここにもMASSIVEの企画から運営までトータルでプロデュースできる強みが生きていますよね。銭湯のオーナーの方からしても、ホテルとして事業継続するのはかなり画期的だと思います。SQUEEZEもシステムやオペレーション面でサポートさせてもらっていますが、無人化・省人化した運営も今回のプロジェクトのポイントですよね。
川村:労働力不足は宿泊業界全体の大きな課題ですからね。今はコロナ禍で需要が落ち込んでいますが、近い将来必ず旅行者は戻ってきます。そうなった時の労働力不足については地方は特に顕著です。この山鼻温泉の銭湯ホテルはSQUEEZEと連携することにより無人運営が可能になっていて、施設全体管理や清掃業務だけオーナーの方自らが行っているような状態です。自身の働き口は確保しながらも、それ以外の人手の心配をしなくても良いのはオーナーにとっては非常に大きなメリットではないでしょうか。
SQUEEZE運営施設の一例 チェックインや決済手続きはお客様ご自身のスマートフォンで完結でき、タブレットからオンラインコンシェルジュへのテレビ電話が可能
舘林:これってまさにホテル業界におけるSDGsへの取り組みの一つだと思うんですよね。ディーセント・ワークを推進していくためには、システムで代替できることはカバーしながら、業務をスリム化し、本質的に人が取り組むべき仕事に注力できるようにすることが大事ですし、地方のみならず業界全体として省人化・DXに対するニーズは高まり続けていると感じています。
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)より
アフターコロナに向けた戦いは既に始まっている MASSIVE SAPPORO×SQUEEZEで目指す次世代のホテル運営
― コロナワクチンの普及とともに、国内の旅行需要は徐々に回復傾向にあります。最後に、お二人の今後の展望について教えてください。
川村:ビフォーコロナを振り返ると、どんどん施設を開業させて、取り扱い室数を増やそう!と数にコミットしていたような気がしています。もちろんそれも大事なんですが、初心に立ち戻り「ゲストにもっと喜んでもらう、良い体験をして帰ってもらう」にはどうしたら良いのかをより追及していきたいと思っています。例えば、無人チェックインに関しても人が介在しないという省人化や衛生面でのメリット以外の、ゲストの体験価値向上にはまだまだ工夫の余地があると思っています。
舘林:少し前までは「無人だとサービスレベル低いんでしょ?」と、業界での信頼もあまりない状態が普通でした。でも今の若い方にとっては、自分のスマートフォンを使ってチェックインをしたり、人に会わずにシステムだけで完結するような体験は、もはや当たり前に受け入れられるものになってきていますよね。ニーズも多様化しているのに提供できるサービスは昔のままではいけない。人がいないからではなく、体験価値としてもゲストが望んでいるから、無人オペレーションを推進する事例がもっと一般化してくると考えています。あとは前述しているように、「1部屋でみんなで泊まれる」というニーズを掘り起こせるような、ホテルの新たな使い方の訴求や作り込みをMASSIVEとしていけたら面白いなと考えています。
2019年1月にTBS「がっちりマンデー」“スゴい社長が気になるあの会社!”のコーナーでSQUEEZEが取り上げられた際には、クライアントとしてご登場いただきました
川村:やっていきましょう! 「suitebook」も日々進化していて、今後もいろいろなアップデートを予定しているとのことなので、とても楽しみです。SQUEEZEにはさまざまな地域の物件活用の相談やDX案件の話が来ていると思うので、企画・プロデュース面でMASSIVEが力になれる部分があればぜひ今後もどんどん連携させてください。
舘林:はい! MASSIVEのプロデュース力を、SQUEEZEのシステム・オペレーション構築が支えるスタイルでこれからもたくさんの魅力的な次世代のホテルを展開して、共に「北海道だけでなく、日本全体を愉快に楽しく、MASSIVEに」していきましょう! 伸びしろしかないこの業界、本当に楽しみですね!
※1(出所:国土交通省観光庁「旅行・観光消費動向調査 2018年1~12月期」、 「2020年旅行・観光消費動向調査 年報 集計事項一覧」、一般財団法人日本旅館協会「営業状況等統計調査」、厚生労働省「令和元年度衛生行政報告例」より)