世界最高レベルのAI技術を持つ香港のセンスタイム社を技術パートナーに、ソフトバンクが画像認識ソリューションの開発と提供を手掛ける新会社日本コンピュータビジョンを設立しました。ソフトバンクから日本コンピュータビジョンに出向し事業立ち上げを推進している本島と師岡に、日本に訪れる新しい認証の世界について聴きました。ぜひご覧ください!
”コンピュータビジョン(画像認識)”の世界最先端を、日本へ
AIの世界最先端を主導する企業、センスタイム
本島 日本コンピュータビジョンは、世界最高レベルのAI技術をもつ香港のセンスタイム社を技術パートナーに、2019年5月にソフトバンクの子会社として設立されました。”コンピュータビジョン(画像認識)”という要素技術を日本でさまざまな事業領域に適応し、展開し販売していくことを目的につくられた会社です。
センスタイム社は香港中文大学が発祥で、2014年度の学会発表はエポック・メーキングな出来事として世界中で大きな話題を呼びました。人間の顔の認識率において、同社が開発したディープラーニングが初めて人間の平均的な認識率を上回ったからです。
ディープラーニングはまだ新しく、今現在も研究が進んでいます。そのため、学術研究の専門チームを有すること、そしてその学術研究を社会実装し、数多くのデータでトレーニングした経験値があること、この両方を持っているセンスタイム社は非常に稀有な存在です。過去4年の画像認識関連学会(CVPR、ICCV、ECCV)の採用論文数は200に上り、これはGoogleやFacebookを上回ります。スマートシティの領域においても、社会実装を拡大しています。
ソフトバンクグループの1社でもあるアリババグループから出資を受けるなど、AIのスタートアップ企業群の中で資金を集め、最も会社価値が高い会社の一社と言われています。」
日本のデジタルコンバージェンスの適応を推進する
センスタイム社のディープラーニングとコンピュータビジョン技術は、顔を識別して、どこにある、どこを向いている、誰であるという認証で広く使われています。顔認証機能があるアンドロイド端末の7割ほどで同社の技術が使用され、自撮りカメラアプリ「SNOW」の顔検出技術提供や、日本では本田技術研究所との自動運転のAI技術に関する共同研究開発が知られています。
今回、 ソフトバンクのAI革命を日本でさらに推し進めるため、日本コンピュータビジョンの設立が実現しました。センスタイム社の画像認識技術を活用し、さまざまなビジネス向けソリューションを開発し、提供することで、日本のデジタルコンバージェンスの適応を拡大します。新たなライフスタイルや、ワークスタイルを創出に寄与できるはずです。
AIで、日本の社会課題を解決する
時代は「所持認証」から「生体認証」へ
本島 日本は超高齢化社会の到来が予想される中、AI技術の社会適応が大きく期待されています。AIといっても幅広く、実例はまだ僅かですが、画像認識、言語認識や推論の分野は社会適応が始まっている分野です。
画像認識のAIでどんな利便性が期待できるかというと、例えば、「家の鍵」を考えたとき、ご高齢の方やお子さまに鍵を渡して、絶対になくさないようにするのは困難ですよね。これは鍵を持つという「所持認証」だからであって、忘れた、無くした、人にあげた、盗られたということを踏まえてセキュリティの設計が必要です。一方で顔認証をはじめとする「生体認証」は、その本人自身を確認するため、「所持認証」で起こりえるリスクを考慮することがなくなり、セキュリティレベルが上がると言えます。
スマートビルディング、そしてスマートリテール
画像認識の領域は非常に広く、日本コンピュータビジョンとしては将来的には全部手掛けていきたい。まずは生体認証の利便性を理解をしていただきやすい領域から、順番に広げていく。まずは安心・安全の領域であるアクセスコントロール、ビルの入退館管理などから初めて、その後それに近いスマートオフィスの領域、そしておもてなしの領域である店舗や商業施設の空間デザインの最適化や、受付や案内の効率化、決済の利便性の向上、オフィス環境の向上などを実現していく考えです。
技術を体感していただいて、センスタイムの技術の良さや精度の高さをご納得いただいた上で、適応領域を広げていきたいと思っています。
パートナーとともに、社会課題を解決していく
センスタイムの基礎技術や開発速度が非常に稀有なものですので、日本で競合になるところはないのではないでしょうか。一方、この要素技術を実際にお客さまに使っていただくにはたくさんのパートナー企業が必要です。
例えば、ビルのアクセスコントロールをする際は、ハード面ではカメラやセキュリティゲートのメーカーとの協業が、ソフト面ではID管理や勤怠管理のシステムとの接続のためにソフトウェアメーカーやシステムインテグレーターとの協業が必要です。志を共にする多くのパートナー企業と組むことで、事業をつくり、日本をより便利で、安心できる社会にしていきたいと思います。
この技術が日本に来ると、”便利”という言葉の大きさが変わる
キャリアはシステムの開発から、事業の開発へ
師岡 私はJENS株式会社というプロバイダ企業に新卒で入社し、合併・買収で現在までに3回社名が変わり、結果ソフトバンクで働いています。入社後は、オープンソースの統合監視ソフトウェア「Zabbix」の社内導入プロジェクトのマネジメントや、米国スプリントとの協業プロジェクトにおけるブリッジエンジニア、最近では海外のAI企業のテクノロジーデューデリジェンスを手掛けてきました。
約1年前からセンスタイム社との協業プロジェクトでプロダクト調査を担当し、日本コンピュータビジョンの設立に伴い同社に出向。プロタクトチームとマーケティングチームを立ち上げつつ、製品のローカライズや、複数のプロダクトを組みわせたソリューション開発を進めています。
世界トップのエンジニア集団から受ける刺激
センスタイム社との協業においては、私のエンジニアの概念が見事に壊されました。開発スピードとスタンスに圧倒されたからです。過去にスプリント社とのプロジェクトでも、ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違いを感じたことはありましたが、その時とは比べ物にならないくらい早い。時に機能として微妙なクオリティのものが出てきたりしますが、「2週間後にはちゃんと動くから問題ない」と言い、開発を止めることはありません。
多少品質が低くても、まずはプロダクトとして見えるようにしてフィードバックもらい、開発サイクルを高速に回転させる。センスタイム社は創業からまだ約5年ですが、この間にとんでもない数のプロダクトを生み出し、ビルやリテール、公共事業からエンタメまで、さまざまな業界にプロダクトを供給しています。この結果とパワーを見ると、こういう作り方もありなんだと、カルチャーの違いに刺激を受ける毎日です。
iPhoneの再来、その瞬間を見ることがモチベーション
約10年前の日本、ガラケー端末がどんどん小型化しそれが美しいとされていた時代、iPhone3Gが来日しました。当初は端末のサイズも大きく、文字もフリック入力で、”よくわからない”と評価が分かれたと思います。今、私たちは近しいことをやっている実感があります。
例えば、機械が人の顔を認識して「あなたは師岡さんですね」と言ってくると”ちょっと怖い”と感じる人がまだ多いかもしれません。でも、もし今後便利なプロダクトやサービスが出てくれば、きっとこういう声がなくなると思うんです。顔をかざすとドアやゲートが開いたり、よく行くお店でパーソナライズされたお得なクーポンが届くことは、一度体感すると想像以上に便利なことがわかります。そしてすでに中国ではこれが当たり前になっています。
文化が異なる日本ですべてが同じになるとは思いませんが、この最先端の技術があれば楽しくて快適な場所を創れる、この技術は日本の文化を変えるパワーがある、そう確信しています。その瞬間に立ち会いたい、早くこの目で見たいという想いでプロダクトを、日本コンピュータビジョンというスタートアップを育てています。
日本コンピュータビジョンで求める人物像
本島 日本コンピュータビジョンは、ソフトバンクグループのスタートアップとしてのカルチャーを創っている最中です。ソフトバンクで事業開発や営業の経験者が集まり、センスタイム社からCTOも来ています。年齢・国籍もさまざまで、社内は英語、日本語、中国語が飛び交い、異文化への興味とリスペクトが不可欠です。スタートアップの経験者も未経験者もいますが、一人何役もこなさなければならなかったり、大企業とスタートアップ、両方のマインドセットが必要になる瞬間があります。
ひとつ確かなのは、私たちは”プロの素人集団”ということ。少なくとも今は、プロの画像AI集団ではなく、マーケティングも経理も技術オペレーションも、その道のプロからしたら無駄が多いように映るかもしれません。その反面、一般的な常識に捉われず、海外のよいものをすぐ取り入れたりすることができます。
もちろんさまざまな分野の専門性は大歓迎ですが、過去の経験や専門性は生かしつつも、捉われないことが大事です。そして自分で何事も率先してやるというマインドセットを持った方が合うでしょう。転職した直後はどこまで勝手が許されるのかを気にされると思いますが、それを早く脱却して、右も左もわからない中で自分はこう思ったからこうやったんだと、自信を持ってやってくれるような方を歓迎します。
日本コンピュータビジョンで働くことの魅力
本島 ソフトバンクのさまざまな事業の中でも、センスタイム社との協業は本当にいいチャンスです。AIの画像領域では世界最高と言っていいチームと共に会社を創って、AI群戦略を推進する孫 正義を筆頭に経営陣の熱さがあって、コラボレーションできそうなAI企業が次々とソフトバンクグループのファミリーに加わっている。そして良くも悪くも熱を帯びて迎えられているマーケットがあり、そこに本来のスタートアップでは得られない、ソフトバンクからのさまざまなリソースのバックアップがある。こんないいオポチュニティは他にないと思います。
このスタートアップをこういう会社にするんだというくらいの想いの方に、ぜひ来ていただきたい。共に、日本を変える瞬間に、立ち会いませんか。